Q.謹慎組の家族からはどんな反応が?
A.以下の通り。
・爆豪家
面談中もボコボコに叩かれてた。爆豪も何も言えず言われるがままされるがまま。流石に堪えた様子。
・緑谷家
お母さん大号泣。それはもう個性では?ってくらいの量の涙に相澤の方が引いた。緑谷も深く深く反省中。
・轟家
焦凍がそういう方面でやらかした事がなかったので困惑の方が強かった。それはそれとしてちゃんと怒った。特にエンデヴァーからヒーローの観点から怒られたのが一番効いた様子。
Q.公安の人何してんの?
A.「だって皆強かったし……あの【魔法】があれば少しくらい休めるようになるかなって……」と死んだ魚のような目で語っていたとか。
Q.ナガンさん出てきたりしなかった?
A.トガちゃんがホークスに要請かけなかったら危なかった。次はないぞという警告で済ませてくれた。
ゴウゴウと黒い風だけが鳴いている中、ポツンと切り取られた部屋のような景色。
フワフワと実感のない足元と、こちらを見つめる七対の瞳。そして何より本能に似た部分がここが現実ではないと告げていた。
『……貴方達が、
緑谷出久は噛み締めるようにそう呟き、眼歴代継承者……【ワン・フォー・オール】を託し、託されてきた者達は静かに頷いた。
かつては喋るどころか鼻から上と手首から先の僅かな部位のみがあるだけだった。今の緑谷には全身……とまではいかずとも、意思疎通を図るのに苦労しないだけの自由があった。
視線の先にいるのは
それから最初に口を開いたのは真正面にいた人物。およそ戦えるようには見えない細身の男が語りかけてきた。
「……以前は揺らぎの隙間を縫うようにしか干渉できなかったが、今はもうその限りじゃない」
「四ヶ月くらい前だったか。【ワン・フォー・オール】が急速に成長を始め……同時に俺達継承者達の意識も輪郭を帯びた」
「継承者同士でもコミュニケーションが取れるようになったさ。まープライベートは保証するから心配ないさ」
それから続くように目つきの悪い──どこか爆豪に似た男と、対抗戦にて姿を見せたスキンヘッドの男が口を開いた。
彼ら【ワン・フォー・オール】継承者達の意識が明確になったのはB組との対抗戦……と思われるだろうが実際は少し違う。
緑谷の度重なるハードワークによって想定以上のスピードで【ワン・フォー・オール】が成長していた為、何も無ければ文化祭の時点で歴代継承者の個性のどれかが発現していた。
しかしそこに【魔法】が悪さをしていた。
日頃のハードワークが終わると森岸から回復魔法をもらうのが日課になっており、その回復魔法のせいで【ワン・フォー・オール】は停滞していた。
回復魔法の効果は『対象者の体を最も最適な状態へと治す』というもの。過剰な負荷や反動が現れるような変化すら止めてしまう。
故に、本来であれば『緑谷出久の手に負えない程の出力』に到達した時点で何かが発現していたところを、体にかかる負荷の大きさが回復魔法にひっかかってしまっていた。
継承者同士でのコミュニケーションが取れなかった頃でもその感覚は覚えているのか、唯一の女性継承者が苦笑いをしながら語った。
「私達としてはもどかしい事この上なかった。まるでくしゃみを無理やり我慢させられていたような気分だった」
「あれは酷かったね……とっくに身体なんて失ってるはずなのに、あちこちがムズムズしてて鬱陶しかった」
『す、すみません……』
どうも彼らからするとあまり気分のいいものではなかったらしい。彼女に続いて細身の男も同じように苦笑していた。
緑谷としては自分が原因で気分を害してしまったと大慌て。すぐさま頭を下げて謝罪の言葉を口にした。
「まあまあ……気にしてないよ。それよりまずは一人ずつ自己紹介といこう。彼もいきなりこんな所へ呼び出されて混乱しているだろう」
「どうせ短い付き合いになるだろうけどな」
『へ?』
短い付き合いとは? そんな緑谷の疑問を挟む余地もなく、一人ずつ名前と個性、何代目の継承者なのかを語っていく。
まず最初に名乗ったのは細身の男。彼こそが【ワン・フォー・オール】の始まりであり、あのオール・フォー・ワンと血を分けた者。初代【ワン・フォー・オール】。
「僕は死柄木与一。個性は……言うまでもないか」
『貴方が……』
「うん、僕が全ての始まりで……元凶、と言ってもいいのかな?」
「いや、元凶はオール・フォー・ワンだ。お前じゃない」
どこか自罰的な雰囲気を漂わせる初代に、横から鋭く切り捨てた男が後に続く。
彼は二代目の継承者。名を駆藤敏次と言い、オール・フォー・ワンに対抗する組織を立ち上げた人物だと言う。そして初代をオール・フォー・ワンの元から連れ出した人物でもある。
そしてもう一人、三代目。くすんだ水色の髪を束ねた男、ブルース・リーもその組織のメンバー。オール・フォー・ワンによる支配を良しとしなかった者だ。
「できれば俺達の手であの魔王を終わらせてやりたかったが……魔王の最期があんなものになるとはな」
『あんなもの? 見てたんですか?』
「八代目からも少し情報が来ていてな。今ここにはいないが、その分彼が見た光景が俺達にも僅かにだが届いていた」
あれは痛快だった。対抗組織にいた二人はほんの少し口の端を吊り上げて笑っていた。
同じ個性因子としての存在だからか、継承者達にはオールマイトに見えていた以上のものが見えていたらしい。
そこにあったのは何の抵抗もできないまま個性因子を破壊されていき、子供の駄々のような悲鳴だけを上げるオール・フォー・ワンの姿だったという。
その最期はエンデヴァーの【プロミネンスバーン】によって跡形もなく消えるという綺麗さっぱりとしたもの。そこまでを見届けた継承者達は胸がすく思いだったと言う。
「あの酷い時代を思えば当然だな。私以外皆変人だった」
「四ノ森さんも十分変人さ」
「先輩から色々教えてもらったけど……そうですね、としか」
「酷い言われようだ」
次に立ち上がったのは四代目達。顔に亀裂のような痣がある男の名は四ノ森避影。何でも俗世に嫌気が差して仙人のような生活を送っていたという。
その四代目から受け継いだのが五代目。【黒鞭】の持ち主だったスキンヘッドの男。万縄大悟郎。この中では最もフランクに話しかけてくれている。
五代目を先輩と呼ぶのは揺蕩井煙。六代目継承者であり、緑谷の事を気にかけるようにずっとこちらを見ていた。
そして最後の一人。唯一の女性であり、オールマイトから何度か話を聞いていた人物。
「本当なら色々と警告とか助言とかしなきゃいけないんだろうけど……まずはお礼を言わせて欲しい。ありがとう」
『七代目……オールマイトの師匠』
「ああ……俊典が随分と迷惑をかけたみたいだな。もう少し厳しくしておくべきだったか?」
『あ、あはは……』
死柄木弔──志村転孤の祖母にしてオールマイトの師。志村菜奈が前に出て礼を口にした。
「死柄木弔は……あの子は私の孫でね」
『えっ!?』
「オール・フォー・ワンに利用されていたと知った時は君の身体を乗っ取って飛び出しかねないくらいに憤っていたよ」
実際にできるかはともかく。そう語る七代目の目は今こそ穏やかなものの、当時の怒りが想像に難くない熱を残していた。
その転孤についての情報は現世のオールマイト伝いで七代目にも届いており、涙を流して安堵していたという。
尚、緑谷は今初めてそれを知った模様。ともすればこの手で継承者の孫と殺し合いになっていたかもしれないのだと理解し、改めてオール・フォー・ワンの悪辣さにゾッとしていた。
「そのオール・フォー・ワンも終わった今、この力は君のものだよ」
『……はい』
「そうそう。それに、君が最後になるしね」
『はい……えっ?』
でもその魔王も打ち倒された。【ワン・フォー・オール】の目的は果たされたのだ、と喜んだのも束の間。
初代からの衝撃的な一言に緑谷は再び困惑した。なんて言った?
それに応えるように前に出たのは四代目。彼は淡々とした口調で緑谷に尋ねた。
「君は私の享年と死因を聞いているだろう?」
『……歳は40。死因は……聞かされてません』
「む、やはり俊典の奴隠していたな。気持ちは分かるが話しておくべきだろうに……」
オールマイトが緑谷に渡した資料。その中には歴代継承者の享年や死因についても記載されていた。
そのほとんどはオール・フォー・ワンによって殺された、もしくは不明だったのだが……四代目の死因については何も書かれていなかった。
否、それも少し違う。途中まで書いて消したような跡だけが残っていた。
七代目はオールマイトが何をしたのか分かっているらしく、眉間に皺を寄せて僅かに怒りを滲ませていた。
話が逸れそうだと思ったのか、四代目は咳払いをして答えを語った。
「コホン……私の死因についてだが、老衰だったそうだ」
『老衰……!?』
それから四代目が語ったのは緑谷にとって衝撃的なものだった。
四代目はオールマイトに次いで【ワン・フォー・オール】の保持期間が長く、十八年もの間オール・フォー・ワンから逃れて只管に力を培っていた。
継承した時点でオール・フォー・ワンに勝てないと判断した四代目は、自分を力を培うターンとして割り切っていた。
「そして晩年……身体にヒビが入った」
『……!』
当時の四代目は鍛え方が足りない、或いは未知の感染症を疑っていた。だが現世でオールマイトが病歴や検死結果を調べたことで真相が判明した。
40での老衰は複数の個性を手にしていたが為……【ワン・フォー・オール】を所持していただけで命を燃やしていた。
しかしここで気になるのがオールマイトの存在。四代目が継承した時よりも強大となった【ワン・フォー・オール】を、四代目よりももっと長い間保持していた。
オールマイトも【ワン・フォー・オール】の所持に伴う負荷には辿り着いていたけれど、自分と四代目の違いが何なのかを考え……一つの答えを出した。そして緑谷も同じく、今この場で理解した。
『……! オールマイトは、無個性……!』
「そう。つまりはそういう事なんだ」
生来の個性と【ワン・フォー・オール】は同居できない。無理やりに詰め込めば器である身体に皺寄せが来る。
それから緑谷の脳裏を過ぎったのは脳無の成り立ち。オールマイトから聞かされていた情報では、複数個性に
それは逆に言えば、普通の人間では個性の複数所持には耐えられないという事だろう。
『……歴代の個性が発現した今、尚更
「そうだ。君の世代で絶滅危惧種となった無個性で、且つ……力を必要とする者が現れない限りはね」
「それも【ワン・フォー・オール】を受け取れるだけの素養を持った、な」
それがどれだけ低い確率で、ありえない可能性なのかなんて緑谷自身が一番理解している。だってそれが理由で自分も青山も虐められていたのだから。
目を伏せる緑谷に対し、初代は困ったように笑いながら、こう続けた。
「だからまあ……その力はもう君のものだ」
『……え』
「オール・フォー・ワンは打倒された。次代の継承者も存在しない。後は君が君の為に、ヒーローとしてその力を使ってくれ」
既に目的は果たされた。少し、いやかなり想定と違う形で決着はついた。魔王は今を生きる人々の手によって倒された。ならばいつまでも過去の残滓が口出しをすべきではない。
魔王を倒す為に拵えられた剣も、魔王がいなければ数ある剣と何も変わらない。ならばその使い道は持ち主に委ねればいい。
「……一応言っておくがまだ消える気はない。傍から見てお前の個性の使い方は危なっかしいからな」
「見てるこっちがヒヤヒヤする時もあるさー……最初の頃の暴発なんて見てられなかったさ」
『ゔっ、そ、それは……』
それはそれとして言いたいことは山ほどある。力の使い方は安定してきたけど、いざ【黒鞭】が発現してみればあのザマ。いやしょうがないとは思うんだけども。
【黒鞭】一つであれでは他の個性の併用など以ての外。少なくとも【ワン・フォー・オール】を含めた個性全てが安定して運用できるまでは口出しさせてもらうと継承者達は告げた。
そして初代は「あ」と何かに気づいたような声を漏らした瞬間、緑谷の身体が黒霧の身体のように霧散し始めた。
「……そろそろ時間切れだね」
『へ? わっ……!?』
「大丈夫、目を覚ますだけだよ。これからは僕らからも君からも呼びかけることができるから心配しなくていい」
真の意味で緑谷の力となった【ワン・フォー・オール】を完遂ではなく、完成させる為に。歴代継承者は去っていく緑谷の姿を見届けながら微笑んでいた。
「……でもアイツ今謹慎中なんだよな」
「俊典の後継者らしいっちゃらしいんだけどなあ……ブレーキぶっ壊れてるし」
「本当に最初に発現したのが先輩の個性でよかったですね……」
「確かに。難易度で言えば【黒鞭】と【変速】の制御が難しい……先にその二つを終えれば後はどうにかなるだろうな」
「逆に四ノ森さんと煙は制御も何もないさ。何時でもいいんじゃ?」
ついでに今後の育成方針について和気藹々ともしていた。楽しそうでなにより。
初代「すんごいムズムズする」
二代目「……気持ち悪い」
三代目「何……この、何?」
四代目「出そうで出ないくしゃみみたいだ」
五代目「痒いところに手が届きそうで届かない感じさ……」
六代目「何かすっごいそわそわする」
七代目「んん……何か落ち着かない……」
森岸「ほれ【ベホマ】」
緑谷「ありがとう!」
歴代継承者's「「「ああああああ!?」」」
八代目(ノーコメントで)