Q.七代目のリアクションはやっぱりエロかったの?
A.人妻経産婦がソワソワしながら「なんかムズムズする……」とか言ってるんだぞ、エロくないわけがないだろ。
Q.継承者から見た森岸ってどんな印象?
A.以下の通り。
初代「あの個性が兄さんに奪られなくて本当に良かったよ」
二代目「俺達の時代にいれば少しは……いや、何でもない」
三代目「あのもどかしさはアイツのせいか」
四代目「よく鍛えられているな。素晴らしい」
五代目「九代目にいい仲間がいて嬉しいさ」
六代目「ヘイヘイヘイ、ちょっと強すぎない?」
七代目「転孤を引き留めてくれて本当にありがとう……!」
異能解放軍掃討作戦や卒業式など、相変わらず破天荒な日々が続いていた雄英高校。
しかし時が経てばそれも思い出の一つに成り下がる。あれだけ忙しなく動き回っていた教師達もいつの間にか通常運転へと戻っており、過労死が懸念される程だった校長も今ではしっかり七時間睡眠を取れるようになった。お労しや根津上。
生徒達も同様。いつまでも進級や相澤が担任に固定されたことに喜んでいられる程雄英の授業は温くはない。
今日も今日とて学生らしく勉強を、そしてヒーローの卵らしく訓練を。そんな当たり前の日常が帰ってきただけなのだが。
「そんじゃ今日は──……おい、アイツらはどうした。何があった」
「午前の授業で燃え尽きたらしいです」
「だから予習くらいしとけって言ったのに……」
学生にはよくある話。学年が一つ上がっただけで授業の難易度が凄く上がったような気がするアレ。その犠牲者として上鳴と芦戸が真っ白になっていた。
ちなみに真っ白になっていないだけで不安を覚えた者は何人かいるらしく、明日は我が身かと微かに恐怖を覚えていたり。
勿論相澤は彼らをスルー。教師が言うことじゃないが勉強くらい自分で何とかしてみろと言いたい時だってあるのだ。特にヒーロー科は。
それに今日は謹慎を受けていた緑谷と爆豪が復帰した日。ぶっちゃけただ勉強ができないだけの上鳴や芦戸に構っている暇はない。何せ問題児二人、ただし最強クラスなのだから。
とりあえず授業の説明に戻ろうと、真っ白な二人と問題児二人から目を逸らしながら口を開いた。
「……まあそいつらは放っておくとして、今日は少しいつもと違う事をする」
「! 今度は何が!?」
「そもそもいつも違うことしてるような……」
「はいそこ静かに」
いつまで経ってもそのリアクションは変わらないんだな、とどこか遠い目をしながら相澤は話を続ける。
「今日は……というか今日からお前達には個性の
「覚醒……!?」
「何それカッケェ……!」
「あー……そういう」
良さげなワードに真っ先に常闇が反応し、続いて上鳴が勉強のダメージから復帰。一人森岸だけは何かを理解したように頷いていた。
個性の覚醒。やや仰々しい言い方をしているが、要は『何かのキッカケで個性が著しく性能を引き上げる』現象を指す。
一言に覚醒と言ってもその成果はバラバラ。個性によって変わるものも違えばキッカケも違う、共通点なんて『個性が急激に強くなる』以外何一つない。
例えば異能解放軍の外典。彼は元々『氷を操る』という事しかできず、操っている氷が全て溶けてしまえば無個性と何ら変わらなくなってしまっていた。
しかし個性を覚醒させた事により『氷の温度を操る』能力に目覚め、水分さえあれば氷を増殖させることができるようになった。
例えば森岸。彼の【魔法】は優秀なものの、最初の頃は【ホイミ】数回程度で魔力切れを起こす程に燃費も貯蔵量もなく、一度魔力切れを起こすと回復に数日はかかっていた。
これを度重なる覚醒により克服。最早尽きることがない程に膨大な魔力容量と回復力を手にしており、加えて【魔法】の合成や一度に維持できる数、挙句一度で複数人に【魔法】を使えるようになっている。
「そしてつい先日、麗日が個性の覚醒に成功した」
「えっ!?」
「いやー……あはは……」
相澤の発言に緑谷がグリンと麗日に視線を向ける。爆豪もまた驚愕に目を見開きながら麗日を見ていた。
当の本人はやや照れくさそうに頬をかいており、また覚醒当時の事を思い出した他の生徒達は「あれかあ!」と納得したように頷いている。
先日──まだ緑谷と爆豪が復帰する前のこと。
ヒーロー科に編入したばかりで慣れていないだろうという気遣いも含め、A組とB組合同で訓練を行っていた。
とは言っても前回のような対抗戦の形式ではなく、個性伸ばしや必殺技開発を行いつつ互いにアドバイスしていこうという内容の訓練。
始まってからしばらくの間は皆和気藹々としながらも真面目に訓練に取り組んでいたのだが、そこで事件が発生した。
「物間が森岸と八百万の個性を【コピー】した時に起こったアレが覚醒だったのか……!」
「え、何それ。何が起こったの?」
「いや俺達もよく分かんねえんだけどよ、何もねえところから大量に1メートル四方のブロックが出てきてな?」
森岸から【インテ】を貰っていたとはいえ処理しなくてはならない情報が多すぎる【魔法】と【創造】を同時に【コピー】したのが原因なのか、物間の個性が暴走した。
本人の意思を無視して【魔法】が発動したかと思えば、どんな効果だったのか何も無いところから突如1メートル四方のブロックが生み出された。それも大量に。
鉄だとか土だとかブロックの素材はバラバラだが、そんなものが降り注げば災害にしかならない。咄嗟に森岸が全員に【スクルト】をかけた為怪我人はでなかったものの、後始末を考えると面倒でしか無かった。
物間の暴走が収まり、麗日がそのブロックに触れた時に覚醒は起こった。
「麗日の許容限界は3トンが精々だったが、あの時出てきたブロックはどう見積もってもそれ以上。更に言えば【無重力】が
「!」
彼女が触れたブロック以外のブロックにも【無重力】が付与され、あっという間に全てのブロックが空中へと浮かされた。
何が起こっているのか本人にも分かっておらず、それどころか急激に現れた負荷のせいでその場に倒れそうになっていた。
ひとまず森岸に【バイシオン】を使わせ、全員でブロックを片隅へと移動させた後に麗日を【ベホマ】で回復させたが、それでもブロックに付与された【無重力】が解けることはなかった。
「それで別の訓練場で同じことができるかを試してみたんだが……二回目からは麗日が自分の意思で【無重力】を伝播させられるようになっていた」
「え! あれコントロールできたんだ!?」
「う、うん。吐き気もあんまりなかった……」
どうも一度覚醒のフェイズを挟むと、二度目からは自分の意思でその現象を引き起こせるようになるらしい、と相澤は結論付けた。
そして同時に、もしこれを他の生徒達もできたらどうなるかを考えていた。
「それと、恐らくだが既に覚醒している者もいる」
「え、誰だろ」
「森岸……は分かりきってるから違うか」
ざわめく生徒達に答え合わせをするよう、相澤は彼女の名を呼んだ。
「耳郎だ」
「うぇ!? マジで!?」
「あ、やっぱりか」
「いやでも……納得ではある」
耳郎響香。彼女もまた覚醒を経たと思われる人物だ。
いや、まあ、そうだろう。元々の【イヤホンジャック】はプラグを刺して物音を探ったり心音を増幅して流し込んでダメージを与えるとかそういう能力だ。
それを『自力で心音をより強くできないか』と試行錯誤した果てとはいえ、音の衝撃波を全方位にばら撒くわ指向性を持たせてビームみたいにするわ、どう見ても元の性能を逸脱し過ぎている。
なんなら最近は音の振動をパンチのタイミングに合わせて放つ事で砂藤の【シュガードープ】並の破壊力を軽く出せるようになった。砂藤は泣いていい。
それだけの変化を間近で見ていた生徒達は露骨に目を輝かせる。何せ耳郎があれだけ変化したのだ、ならば自分の個性ならどうなるかを考えるとそりゃあ色めき立つものだろう。
「お前達も知っての通り、覚醒の前後で個性の出力は大きく変化する。もし覚醒する事ができればそれは強力な武器になるはずだ」
「おお……!」
「……とは言ったものの、俺達も個性の専門家もまだよく分かっていない現象だ。目標にはするがノルマではない。気長にやれ」
だが未だに個性覚醒のメカニズムは解明されていない。そもそも全ての個性に覚醒という現象が存在するのかも分からない。
なのでこれはあくまでも目標。相澤にしては珍しい話だが『できたらいいな』程度の試み。
それでも向上心の塊である彼らには十分だったらしく、ここ最近で最も力強い返事が返ってきたのだった。
◇
今日も今日とてよく学び、よく鍛えた。後はもう寝るだけ──……なんだけど、夜更かしもまた学生の特権。
特に最近はエンデヴァーからのお礼(強制)とか決戦での報酬もあってお金に困らないから、欲しかった機材買って響香と一緒に音楽を聞いたりしている。
次はどの曲にしようか、なんて考えていると響香がポツリと呟いた。
「覚醒かあ……」
「どした? 急に」
個性の覚醒。今日の訓練で相澤先生が話題に出していた現象。
俺も響香もとっくに覚醒のステップは超えてたから普通に訓練してただけになったけど、何か引っかかることでもあったんだろうか。
そのまま疑問を響香に尋ねてみると、視線はこちらに向けられないまま響香はポツポツと語る。
「……先生はさ、覚醒の条件は分かってないって言ってたじゃん?」
「らしいね。共通点が何も無いとか」
「ウチ、何となく分かったかもしんない」
え、マジで? だとしたら皆も覚醒させられるんじゃ? というかその共通点って何よ。
一応俺も多少考えてはいた。俺と響香、それから麗日さんに過去の事例を調べて色々捏ねくり回してみたんだけど……どうにもそれらしい結論は出せなかった。
まあ研究者の方々ですら出せてないような答えを出せるはずもないかと思って諦めていたんだけど……まさかそれに響香が辿り着いた?
少し躊躇いがちに、間を開けてゆっくりと響香はそれを言った。
「多分なんだけど……生命の危機が迫ってるとかそういう状況だと、覚醒しやすいのかなって」
「……ああ、確かに?」
何ともまあ単純というか、フィクションじみた話だが否定できない。
言われてみればそうだ。響香は心音の増幅を狙って色々試した結果、心臓が破裂する寸前までいっていた。麗日さんもブロックが崩れそうになっていた所に慌てて割り込むように【無重力】を使っていた。
ああ、それでいうと感情がトリガーになってる可能性はあるな。燈矢も確か『感情の昂りによって出力が上がる』とか言ってたような気がする。
響香の仮説はまあまあありそうだな。命の危機が迫る、もしくはそれと同じくらいの感情の昂りがあれば覚醒の可能性も……?
これは相澤先生にいい話ができるんじゃないかと思ったのも束の間。響香は物凄くしょんぼりとした顔をしていた。
「? 何でそんな顔してんの?」
「いや、だってさあ……だとしたら詠士は覚醒の数だけ死にかけた、ってことでしょ?」
「………………」
……否定できないなあそれ。
俺が覚醒した回数は三回。そもそも三回も覚醒できるのかって話だが、少なくとも覚醒する度にできることが大幅に増えていたから覚醒と言う他ないというのが現状だ。
それに一度目の覚醒については響香も同じ場所にいたから誤魔化しようがない。
二度目は……まあこっちも死にかけたと言えば死にかけた事に変わりはないけども。響香がいないところで起こってるから心配されるのは当然か。
「大丈夫大丈夫。今ちゃんと生きてるから。なんなら今となっちゃ死ぬほうが難しいから」
「それは分かってるけどさあ……やっぱりちょっとこう、嫌だなあ……って」
「素直でよろしい。かわいいね」
うーん、この幼馴染め。のそのそと擦り寄ってきて俺をどうする気だ。
でもまあ、改めて思い出すと俺よく生きてんなあって感じではある。特に一回目の覚醒の時。
……今思うとアイツってオール・フォー・ワンだったのでは???
爆豪「俺を覚醒させろ!」
麗日「ええ……?」
森岸「どうしろと」
耳郎「覚醒ってそういうもんだっけ」
相澤「違うそうじゃない」