Q.耳郎ちゃんゼブラみたいになってない?
A.エコーロケーションとかはできないのでセーフ。ちなみにキックでも似たようなことができる。
Q.爆豪がベジータみたいな事しようとしてない?
A.野菜人じゃないので瀕死から復活しても特にパワーアップはしない模様。地道に【クラスター】から派生進化するしかない。
Q.物間のヤツってもしかしてビルダーズ?
A.大体そんな感じ。相澤先生が【抹消】した後に心操が【洗脳】で止めた。魔力切れと脂質切れで割とヤバかった。
森岸詠士。彼の個性【魔法】は同級生やヒーロー科どころか、世界中のヒーローや敵と比較しても頭一つ抜きん出た性能をしている。
鍛錬を重ね覚醒を経た【魔法】は万能と呼ぶに相応しく、先の戦いに参加していたヒーローの中には『彼なら次代の象徴足り得るのでは』と考える者もいる程。
一言詠唱を諳んじるだけで自他を強化し、どんなに酷い怪我であっても死んでさえいなければたった三文字の言葉だけで完全に治療してしまう。その価値が分からない者などいないだろう。
しかし、その【魔法】も最初からそうだったかと言われると違う。何度も述べてきた通り、今の【魔法】があるのは森岸自身の努力と研鑽によるもの。そして三度も命の危機から生還したが為のものだ。
三度目の覚醒は雄英の合宿先でオール・フォー・ワンからの襲撃を受けた際の【パルプンテ】が理由だった。
では残る二回の覚醒は何が原因だったのか。
まず一度目……初の覚醒は森岸が小学五年生だった頃にまで遡る。
「それじゃあ皆今から教頭先生からお話があるので、静かに聞いてください」
「「「はーい!」」」
ことある事に『上級生になったんだから』と言われるようになった五年生。その日はとあるキャンプ場にて宿泊体験学習が行われていた。
小学校ではよくあるイベント。家でのお手伝いの延長線のようにカレーを作ったり、大きなキャンプファイヤーを囲んだりした後にテントで一夜を明かすというもの。
子供達はカレーの準備に取り掛かると、手際がいいとは言えないけれど和気藹々と楽しそうに手を動かしていた。
各々の班事に出来上がったカレーを楽しんだ後はキャンプファイヤーのお時間。特に練習もしていない、思い思いに踊ったり騒いだりしながら炎を見つめていた。
円陣の片隅。そこで森岸少年と耳郎少女はぼんやりと立ち上る炎を見つめていた。
「……ねむい」
「響香はしゃいでたもんな」
「そんなことないし……」
周囲のテンションに着いていけないという訳ではなく、体力を使い切ったらしい耳郎に付き添って大人しくしているようだった。
とはいっても寝落ち寸前という程ではなく、ふとした瞬間にぼんやりと虚空を見つめる程度。それでも集団の中でそんな状態になってしまうと心配されるもので、森岸が声をかけて連れ出した形だ。
もうこの時既にただの同級生と言うにはかなり距離が近い気がしなくもないけれど、同じように他の子供達や教師からも『あの二人はそんなもん』と認識されつつあった。
なので森岸が耳郎を気遣う様子を見せても特に何を思うでもなく、アッサリと『ああ、わかった』と任せていた。
その耳郎はというと、ややうつらうつらとしていたところで急にスクッと立ち上がると、ボソリと言った。
「……トイレ行きたい」
「おう、行ってらっしゃい」
「一人で行くのヤダ。こわい。ついてきて」
「そんな離れてないけど……? まあいいけどさ」
キャンプ場のトイレはキャンプファイヤーをしているエリアからほんの少し離れた位置にあり、お化けやらを連想してしまうタイプの耳郎には少し厳しい配置。
眠気があっても想像力はバッチリ働いてしまうらしく、森岸の服の袖をクイクイと引っ張ってついてきてもらった。
近くにいた先生に一声かけた後にトイレへと向かう二人。都会の明るさもない、キャンプファイヤーから離れた先は夜の暗闇が薄れた光を塗りつぶすようにあった。
流石に女子トイレにまで入るわけにはいかず、トイレの外でキャンプファイヤーを眺めていた森岸。しかし次の瞬間、想定外の出来事が起こった。
「───えっ」
ゴウゴウと燃えていたキャンプファイヤーの炎が一瞬にして消え去った。突如として炎という灯りが消えた為かキャンプファイヤー付近にいた子供達は軽いパニック状態になっており、叫び声やざわめきが森岸にまで届いていた。
当然森岸の周りも真っ暗。月明かりが微かに視界を確保してくれるだけで、トイレの中の方が余程明るいだろう。
それを耳郎も感じ取っていたようで、中から「何!? こわい!」と怯えた様子で声を漏らしている。
森岸とて冷静ではなかった。子供といえどあれ程の炎が一瞬で消える事がおかしいという事くらい理解している。消火器だの放水だのではあんなにも瞬く間に消えるような事にはならない。
では一体何があったのか。ひょっとして誰かの個性が原因だろうか、と考えた時の事だった。
「おや……こんな所にもいたのか」
「っ…………!?」
ピタリと、音が止んだ。
子供達の騒ぎ声も、風に揺れる木々の音さえも。自身の拍動音すら聞こえてくるような、呼吸音さえうるさく感じてしまうような静寂。
その元凶らしき存在は意にも介さず、ザフザフと森岸の近くへと歩み寄ってくる。
明らかに異質な存在感。少なくとも真っ当な人間では無いと、森岸の本能に似た何かがそう告げていた。
「すまないね……まさかこんな所に人が来るなんて思わなくて……少しばかり脅かしたくなったんだよ」
「…………!」
「そう怯えなくていいのにねえ……そんなに私が怖いのかな?」
個性や機械で弄っていなければ、恐らく男。地の底から響いてくるような低い声は宥めるように、しかし嘲笑を滲ませたような声音だった。
暗闇ということもあり姿はよく見えない。ただ、キャンプ場に黒いスーツというミスマッチな姿だけが微かに分かる程度。
男はそれから何かを考えるような素振りを見せたあと、パッと両手を開いて持ち上げた。
「そうだ! なら、私と友達になってくれるかい?」
「とも、だち?」
「そう! 今から君に素敵な贈り物をしてあげよう。だから君も私に何かをしてくれればそれでいい!」
当然そんな言葉に頷けるはずもない。しかし目の前の男に抗う何かをこの時の森岸はまだ持っていなかった。
まるで一秒が何時間にも引き伸ばされるような感覚。言い表すならば走馬灯にも近い何か。今の自分にできることを、【魔法】で何かできないかを考えていた。
男の手がこちらへと差し出される。手のひらが森岸の頭へと触れる寸前。森岸は口を開いた。
「【パルプンテ】!」
「……ん? 何だいそれ、は…………?」
わけの分からない言葉に一瞬男が怯んだかと思ったその時、二人の頭上に大きな影がかかった。
何だ、と顔を上げた時、それは二人の視界に映っていた。
「えっ……!?」
「
何故、という疑問など不要。どう考えても目の前の子供の一言がこれを呼び寄せたのだろうと男は判断した。
そして同時に余裕がない。その流星はあまりにも速くこちらへと向かっており、逃げる余地などなかった。
「っ、仕方ない……!」
とんだやぶ蛇だった。男はそう吐き捨てると、左腕から無数の攻撃を放ち、右腕を歪に変化させて隕石へと叩きつけた。
到底一つの個性で起こせるはずもない現象。しかしそれでも流星が止まることはなかった。
叩き込まれた右腕が押し返される。まるで
「ぐ、うっ……!?」
「ひっ……!?」
──巨大な爆発が巻き起こった。
地面は大きく陥没し、土煙が巻き上げられた周囲は夜の暗闇もあって何も見えやしない。何より、流星の爆発に巻き込まれた森岸の体はボロボロで、立ち上がって走り出すなんてことができる状態ではなかった。
一体何が起こったのか。【魔法】を使っておきながら森岸自身もよく分かっていなかった。
何せその場でとにかくありったけの魔力を注ぎ込み、今使える【魔法】全てを混ぜただけ。何が起きるのかも分からない自爆スイッチを押したようなものだ。
近くにあったトイレもボロボロ。壁が砕け屋根が吹き飛び、原型が残っているのが奇跡的な程。
「っ、そうだ……響香は? アイツは?」
そこでようやく自分以外の存在を思い出した森岸。何故か潤沢にある魔力で【ホイミ】を使い、立ち上がりながら周囲を見回した。
少なくとも先程の得体の知れない何者の姿はなかった。あの異質な存在感を見逃すとも思えず、森岸は耳郎の状態を確認することを優先した。
壁が崩れ屋根も消え失せたトイレへと入り、歪んだドアを無理やりこじ開ける。そして。
「響香! 大丈夫か!?」
「あ……えい、じ?」
傷一つない、しかし恐怖に震え涙を零す耳郎の姿がそこにあった。
【イヤホンジャック】の優れた聴力は全てを聞いていた。子供達の騒ぎ声や悲鳴も、突然静まり返った事も───得体の知れない誰かが森岸と対峙していた事も。
耳郎はフラフラと立ち上がりながら森岸に抱きつき、堪えていたものを吐き出すように泣き喚いた。そして一頻り泣いた後、皆がどうなったのかを気にしていた。
「……とりあえずアレはどっか行った。もう大丈夫なはず」
「うん……」
「一回見に行こう。先生なら連絡する方法を持ってるはずだし」
その後二人はキャンプファイヤーのエリアに戻ると、そこにいた子供達は皆意識を失っていた。しかし特に命に別状はなく、教師達も同様の状態だった。
それでも彼らを起こすことは叶わず、ならばと多少の罪悪感を覚えながらも教師の懐にあったスマホを借りて通報。たまたま近くにいた名も知らぬ老人のヒーローが駆けつけた。
そのヒーローはキャンプ場近辺で何かを探していたらしく、何人かの警察もいた為即座に緊急車両等が動かされた。
「その、ありがとうございます……」
「おう、どういたしまして。それがヒーローの仕事だからな。しかし……」
「……?」
「……いや、何でもない」
そのヒーローは特に名乗ったりもせず、後から来た多数のヒーローや警察に引き継ぐとそれっきり姿を見せることはなかった。
子供達の被害やキャンプ場にできた巨大な破壊跡は新聞やニュースでも報道され──ることはなく。保護者達への謝罪はあれど何故か事件がそれ以上公になる事はなかったという。
「何があったらそんな大怪我で帰ってくるんじゃ……先生にしては珍しいのう」
「ははは……【超再生】がなかったらマズかったね」
そして男も……オール・フォー・ワンもまた少なくないダメージを受けていた。
オール・フォー・ワンが小学生達を襲った事に特に深い理由はない。ただ隠し拠点の近くに大勢の気配を感じていたから少し探ろうとしただけだった。
ついでにいい個性があれば貰っておこう、もしくは使える駒があれば確保しておこう程度の認識でいたのだが、そこでとてつもない地雷を踏み抜いてしまった。
「信じられるかいドクター! 僕がそこそこ本気で使った大量の個性全てが! あの程度の隕石に負けるなんて!」
「うむ、改めて調べてみたが……あの程度のサイズならまず砕けたはずじゃ。それに隕石の欠片が何ひとつ残っていなかったのも不思議じゃのう」
集団から外れたところにいた一人の子供。彼の一言がオール・フォー・ワンすら太刀打ちできない流星を呼び出してしまった。
手元にある使い慣れた個性を総動員して迎撃に当たったものの、隕石には傷一つつくことはなかった。サイズとしては精々三メートルもない程度だったというのにだ。
手応えからしてそもそもまともではなかった。金属とも石とも違う、しかし只管に硬いソレは思い返しても異様な感触だった。
そんなモノを呼び出せる個性となればオール・フォー・ワンは欲しがるのでは、というドクターの予想は外れた。
「アレはいらないね。使えそうにもない」
「おや、何故?」
「おそらくアレは本人にとっても予想外の現象だった。自爆というには本人まで困惑していたしね」
オール・フォー・ワンは見ていた。流星を目の当たりにした森岸の反応を。
それはどう見ても狙い通りの現象を引き起こしたとは思えない反応。愕然とし、迫る死の恐怖に怯える表情だった。
となればアレは本人でもコントロールできていない事象。そして何が起こるか分からないもの。そんな不確かな個性を使うくらいならばもっと使い勝手のいい個性がいくらでもある。
「まあドクターが欲しいというのなら手を貸そうか。珍しいのは確かだ」
「ふぅむ……脳無の試運転も兼ねて狙ってみるか」
後に中学生となった森岸を再びドクターが差し向けた脳無のプロトタイプが襲撃したものの、同じく何かを唱えた森岸の姿が掻き消えたことますますドクターの興味を引いてしまったという。
ちなみに当時のことを森岸はこう語っている。
──時間停止の解除方法がわからなくて滅茶苦茶困った、と。
AFO「子供おるやんけ。脅かしたろ!」
森岸「ひっ、パ、【パルプンテ】!」
AFO「ん?なんやそれ……ファッ!?」
森岸「わー隕石だー()」
AFO「アカンアカン死ぬ死ぬ死ぬゥ!!」
ドクター「死にかけてて草」
AFO「怖っ……近寄らんとこ……」
森岸「何か魔力増えた」
耳郎「ガタガタガタガタ」
グラントリノ「ええ……」