Q.AFOどんだけボロボロにされたの?
A.致命傷には程遠いけど重傷ってくらい。【超再生】がなかったら神野のあたりまで後遺症がちょっぴり残る程度。
Q.結局【パルプンテ】の効果って何なの?
A.『40.何してくれてんの?』の伏字を元に答え合わせをすると以下の通りになる。
・森岸以外の時が止まる
・ランダムにドラクエのラスボスor裏ボスが一体呼び出されて恐慌状態になる
・最上位攻撃魔法がランダムに出る
・マダンテの発動
・流星が降り注ぐ
細かい設定に関しては後で設定纏めみたいなものを作るつもりなのでそちらでご確認ください。
ズドン、ドカン、とまるでカートゥーンアニメの効果音のような衝突が連続する。
ぶつかり合うのは衝撃波か拳、或いは蹴り。右へ左へとシルエットが動き回り、正しく目で追えているものがどれ程いるだろうか。
観客達の視線はステージから少し上。戦う二人は地面に足をつけることはなく、重力の枷から解き放たれたように。抜けるような青空の下で飛び回っている。
観客達は激しいぶつかり合いと残像すら残るスピードを見て息を飲み、声を張り上げて応援していた。
「いけいけデク! 殴り勝て!!」
「負けんなレックスぅ!! お前ならいける!!」
「凄い熱気やね……」
「やはり三年生の体育祭は別格なんだろう。観客席もこれまでで一番規模が大きいな」
「ちっ……」
最終種目の決勝戦。奇しくも一年生の時と同じ競技、一対一のデスマッチ。最後に残ったのは緑谷出久と森岸詠士の二人だった。
片や歴代継承者も含めて【ワン・フォー・オール】を完璧に扱えるようになった緑谷。片や
緑谷は【浮遊】で、森岸は【トベルーラ】で飛翔しながらの空中戦。更に【ワン・フォー・オール】に蓄積された超パワーと【スピオキルト】の重ねがけによる超強化が釣り合い、戦局は完全に拮抗状態。
【黒鞭】と【発勁】を合わせた【黒鎖】や、自在に操れるようになった【変速】と【発勁】による一時的なスピードやパワーの向上は凄まじく、100%まで引き出された【ワン・フォー・オール】もあって全盛期のオールマイト以上。
森岸も負けておらず、度重なる覚醒によって倍率も許容限界も引き上げられた事により、全力の【ワン・フォー・オール】と殴り合いを成立させるだけの……否、平均的な出力に限れば凌駕しうる程の力を見せていた。
「【デトロイト】ォ!!」
「ぐっ……!」
「【テキサス】!!【ワイオミング】!!」
先に限界を迎えたのは
「【カロライナ】!【ミズーリー】!!【カリフォルニア】……ッ!!」
二発のパンチから鉄槌、そして両の手刀を交差するように叩きつけてもう一度手刀。振り切ったまま地面へと降り立ち、バネのように跳ね上がってかちあげる。
如何に強化を重ねていようとも【ワン・フォー・オール】100%の連撃。森岸の身体にけして軽くは無いダメージを刻んでいく。
「【ニューハンプシャー】!!【オクラホマ】!!」
「…………っ、が……!」
飛び上がった姿勢からパンチの反動で体当たりし、密着状態からラリアットに巻き込んで回転。勢いのままにリングのど真ん中へと放り投げて叩きつける。
まだ終わらない。オールマイトへの憧れから始まった必殺技の先。緑谷出久が手にした"脚"という選択。エネルギーの迸る回転蹴りが振り抜かれた。
「【セントルイス・スマッシュ】!!」
三年生用──特にバ火力問題児だらけのA組対策に作られていたバリアに亀裂が走る。観客席とステージを分けるはずの境に限界が近づいていた。
恐るべきはそれが攻撃の余波であるということ。特注のバリアでこうなるのならば、その本命を受けた森岸がどうなっているかなんて最早想像もつかない。
舞い上がる土煙と共に静寂が訪れる。遅れて森岸の様子を心配する声がチラホラと現れ──
「……いくら俺だからってやり過ぎだろお前」
「事実倒せてないじゃん!」
──ドン引きした様子の森岸がステージギリギリのところで持ち堪えていた。それも無傷で。
しかし観客や緑谷の方がドン引きである。アレでひき肉になってないお前の方がおかしい。同級生達も『そんな気はしてたけど改めて見せつけられるとウワッ……』的な顔をしている。
「【スピオキルト】何回かけてたと思ってんだお前。それに【リベホイム】までやっても最後の後に【ベホマ】使わされてるからな?」
「あの連撃を最後の三文字で無効化されるこっちの身にもなって欲しいなあ……!!」
「悪いな緑谷……俺も
連撃に【変速】も【発勁】も注ぎ込んだ緑谷にその先の手立てなどあるはずもなく。いやあるにはあるけど森岸に立ち向かえるほどではなかった。
それまでの激戦から一転し、酷くあっさりと緑谷が押し切られて場外へ。森岸詠士が雄英体育祭を三連覇した瞬間となった。
「ちぇっ……最後くらい勝ちたかったのに……」
「響香も爆豪も同じこと言ってたぞそれ」
「というかA組B組全員思ってたよ。せめて回復魔法縛ってくれないと無理」
観客席の方からちょっとだけ『もうあいつら二人だけでいいんじゃないかな』という声が聞こえた気がした。
◇
時間の流れというのは早いもので、気がついたら卒業式が迫る頃となっていた。それだけ雄英のイベントは濃かったからなあ……さもありなんと言うかなんというか。まるで時が飛んだような気分になる。
一年生の頃のアレコレがつい昨日の事のように思い出せる。改めて振り返るとイカれたスケジュールになってて笑うしかなくなる。
敵連合の襲撃から始まった激動の一年を終えた二年生。完全に無視してよくなった、というわけではないけれど、最も警戒していた敵連合もオール・フォー・ワンも消えたお陰で一年生の時よりずっと予定通りに進んでいた。
体育祭では俺が三連覇を成し遂げるという偉業を達成した。響香には苦笑いされたし、オールマイトや相澤先生からも『そこまでやられると笑いしか出てこない』と褒め言葉(?)を頂いた。
文化祭では恒例となっていたライブを行った。というのも一年生の時にやったライブが俺達の想像以上にウケていたらしく、先輩や他科の生徒だったりプレゼントマイク先生だったりから『今年もライブすんの?』とリクエスト的なものが来ていた。
A組としてもライブは楽しかったし、せっかく練習して身につけたんだから……とライブを続投。二、三年のどちらでも新たな曲を演奏し、ネット配信でも物凄い数字を叩き出していた。
「何かあっという間だったね」
「本当になー……イベント塗れで退屈しない三年だったよ」
「二年からはインターン増えてエグかったしな」
響香と上鳴も同じ意見の様子。すっかり住み慣れてしまったハイツアライアンスの1階共有スペースでは他の皆も同じように、残り少ない時間を噛み締めるように会話を楽しんでいる。
卒業まであと何日だったかと、カレンダーのマスを指でなぞりながら数えてみればあと数日しかない。
世間では俺達の体育祭やインターンを見て『ヒーローの新時代が来る』なんて期待の声も上がっていた。きっと多くの人達が俺達のヒーローデビューを待ち望んでいる。
「その筆頭は詠士と緑谷でしょ」
「やっぱずりぃよ『オールマイトの弟子』って肩書きはさあ」
「俺達全員あの人の教え子だから名乗ろうと思えば上鳴も名乗れるぞ?」
「流石に無理があるって。絶対シラケるじゃんか」
特によく名を挙げられるのは俺と緑谷。緑谷はオールマイトが直々に『私の弟子だからね!』と喧伝したものだから注目も期待も頭一つ抜けている。
まあ『あの平和の象徴の弟子』ともなれば当然だろう。世間もすっかりエンデヴァーが一位のビルボードチャートに慣れているけれど、殿堂入りという例外を作り出したオールマイトの影響力はもう20年くらいは衰えることはないだろう。
俺はというとあの時の戦いの支援がヒーロー間で少しずつ知れ渡っていたらしく、プロヒーローからの注目が集まっている。
二年生になったばかりの頃は『是非ともうちのサイドキックに!』って声の方が多かったんだが、体育祭で二度目の優勝を果たすとパッタリとスカウトの声が止んだ。ザマミロ。サイドキックに収まって堪るか。
それでも極一部のヒーロー……というか知り合いとかお世話になった所からはスカウトが来たりする。ナガンさんとかホークスとかエンデヴァーとか。ミルコは何故か『さっさとデビューしてチームアップしようぜ!』的な方面だったな。
逆に俺達の卒業を望んでいない、というか素直に喜べない人もいる。相澤先生とリカバリーガールって言うんだけど。
「先生のため息凄かったよね」
「『お前がいると色々合理的に進んだんだが……』って直接言われたぞ」
「リカバリーガールからも似たようなこと言われてなかった?」
まあそりゃそうだよね。一番使い勝手のいい治療能力を持ってる奴がいなくなるんだから。去年なんか白熱し過ぎて体育祭で大怪我した一年生の治療にまで駆り出されたし。
卒業後はプロデビューするつもりだし、何かあったら手を貸すとは言ってるので大丈夫だろう。そう伝えたところ根津校長が一番喜んでいた。
なんて話していると、上鳴がポツリと零した。
「……そうだよな。あと数日もしたら俺達ヒーローになるんだよな」
「今更か」
「いやだってさあ、いざその時が来るとやっぱ緊張するって」
気持ちは分かるぞ上鳴。特に二年生からの授業にあった諸々の事務処理やら手続きやらの事を思うと不安になる。
何人かはインターンでの収入で確定申告とかの処理を経験しているし、俺もその一人だけど未だに慣れない。まだ二回しかしてないから当然と言えば当然なんだけども。
最悪事務員雇ってどうにかするか。その辺のツテはナガンさんとかエンデヴァー頼れば何とかなるはず。
「さて……今日もそろそろ消灯時間だな」
「あーあ、これでまた一日が終わっちゃった……あと何日雄英生でいられんのかな」
「聞きたい?」
「やめて! 現実逃避してたいの!」
「それこそ今更では?」
耳を塞いで首を横に振る上鳴を二人で笑いながら、それぞれ自分の部屋に戻っていく。こんなやり取りももうあと数日しか残ってないのか。少し寂しくなる。
名残惜しむように手を振りながら、降りてきたエレベーターの中へ足を踏み入れた。
そして数日後、俺達は雄英を卒業した。
相澤「養護教諭として残らないか」
森岸「先生?」
相澤「必要な書類ならこちらで用意してやるから」
森岸「先生??」
根津「これくらい出すのさ!足りないならもっと──」
森岸「誰かツッコミ役いません?」
ミッドナイト「ごめんなさいね。私が回収しておくから」
次回、最終回です。