魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.爆豪達の方が得点上なの?
 A.爆豪は真正面から分捕ったけど森岸達は巻き込まれないように動いてたからハチマキ一つにかける時間が違った。

 Q.これ周囲からはどう見えてるの?
 A.(見えて)ないです。

 Q.……アピールの場だよね?
 A.あっ。






14.お昼の時間になりました

 

 

 

 何が起こっているのか分からなかった。

 

 

 交渉が始まってから数分。誰とも話していない奴を探して声をかけ、個性を使って【洗脳】した。

 

 自我がない状態でもヒーロー科、何もできないまま終わるなんてことにはならないだろうとタカをくくっていた。

 

 

 騎馬戦が始まって数分もしないうちにハチマキが消えていた。

 

 いつの間に、なんて疑問を抱く余裕もなかった。0ポイントで終わってしまうと負けが確定してしまうから。その瞬間から思考は焦燥に染められた。

 

 そこからはもう手当り次第に近くにいる奴に片っ端から個性を使ってみたものの、まるで上手くいかない。同じようにハチマキを失った連中ばかりで混戦極まる状態。流れ弾一つで【洗脳】がすぐに解かれてしまう。

 

 

「クソ、クソ……! 何でだよ……!?」

 

 

 原因と思われる騎馬は三組(・・)。一千万を狙った範囲攻撃を撃っている轟焦凍と、同じく一千万を狙いつつ目に付いたハチマキを乱獲している爆豪勝己。

 

 そしてその二人から逃げ回る緑谷出久。やや偏った三つ巴が周囲を巻き込み、結果としてあの三組(・・)に全てのハチマキが集中してしまっていた。

 

 俺の騎馬達の【洗脳】はとっくに解けてしまっているが、自我が戻った程度であの混沌を越えられるとも思えない。たった一つのハチマキを得るだけでいいのに、その一つがあまりにも遠い。

 

 

「一千万抱えて逃げ切りゃいいってか!? ヒーロー志望とは思えねェ情けない勝ち方だな!」

「…………!」

「それとも勝てばどうでもいいってか!? 笑っちまうぜ! そんなパワーあったらなんでもできちまうもんなァ!」

「…………」

「っ……なんとか言えよ! 恵まれた人間にはわかんないだろ!? 誂え向きの個性に生まれて、望む場所へ行ける奴らにはよ!!」

 

 

 何を言っても、何をしても通らない。派手な【爆破】や氷に遮られ、誰の耳にも届かない。本音をぶちまけるように叫んでも、相槌ひとつ打ちやしない。

 

 

 結局、たった一つのハチマキすら得られないままタイムアップを迎えた。

 

 

「っ……クソッ!!」

 

 

 遠い。俺とヒーロー科の差は、あまりにも遠い。

 

 

 

 ……それでも。

 

 ああ、それでもだ。

 

 

 

「憧れちまったもんは仕方ないだろ……」

 

 

 まだ、諦められない。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 騎馬戦が終わり、最終種目へ進出する生徒が決定。一時間の昼休憩を挟んでから午後の部を始めるとアナウンスが入った。

 

 思いっきり身体を動かした思春期の子供だ。休息も欲しいがそれ以上に腹が減っている。

 第一、第二種目それぞれの反省点を話しながらも足の向きは食堂へ。やがて学食でお世話になっているランチラッシュのご飯の匂いに迎えられた。

 

 腹ぺこ学生を迎え撃つのはカレーやラーメン、牛丼といったハイカロリーかつ満足感たっぷりなメニュー達。

 

 その中から牛丼を選んだ森岸とカレーを選んだ耳郎の二人は、栄養補給を終えて雑談をしていた。

 

 

「やー……しくじった」

「まあまあ、確実に勝ち上がる方法ではあったから……相澤先生も『色んな意味で注目されてた』って言ってたし」

「いい考えだと思ってたんだけどなあ」

 

 

 話の内容は先程の騎馬戦について。【ステルス】と【レムオル】を使った隠密作戦にて無事に最終種目まで進出できたのはよかった。

 

 問題はこの体育祭がアピールの場(・・・・・・)であるということ。

 

 目立ってなんぼの舞台で自ら目立たなくするという、逆張りオタクでもそうはならんやろみたいな戦法を取ってしまった。

 

 勿論気づく人は気づくだろう。別に光学迷彩やらなんやらで完全に透明になっているわけではなく、ただ極限まで気配を薄くしてちょっと認識されにくくなっているだけだし……無理があるか。

 

 

「でも最終種目がまだあるし何とかなるでしょ」

「そう言ってくれると助かるわ……葉隠も砂藤も文句言うどころかお礼言ってくれたし」

「あれ多分半分くらいは『コイツが敵に回らなくてよかった』的な意味だと思う」

「なんてこった。詠士はもうダメです……」

「冗談だってば。あの二人がそんな事考えるわけ……ない、はず。多分」

「段々自信を無くさないでもらえる?」

 

 

 とはいえまだ舞台は残っている。何だかんだ言って最後には己の力がものを言う世界だ、種目によっては第二種目の目立たなさを帳消しできる可能性だって全然ある。

 

 何せ最終種目は毎年1対1のバトル形式。多少ルールに違いはあれど、そこだけは揺らがない。

 

 ここまで大人数の競走であったりチーム戦だったりと、個人が目立つには秀でた何かがなければ厳しい競技が続いていた。

 しかし最終種目になればたとえどれ程地味であっても注目が集まる。そこまで来た時点で多少なりともヒーローの目が向けられるだろう。

 

 何とかポジティブな結論に持っていけたな。ヨシ! と森岸は半ば自己暗示のように悩みを打ち切った。それでいいのかお前。

 

 

「やあやあやあ! そこにいるのは特に見せ場のないまま騎馬戦を勝ち抜いたA組じゃあないか!!」

「グフッ」

「あ、詠士が死んだ」

 

 

 が、ダメっ……!! B組の物間がピンポイントでぶっ刺してきた。言葉のナイフ。

 

 

 この物間、結構ストレスが溜まっている。

 

 というのも第一種目ではB組全体で敢えて下位に収まり、A組に個性の情報を与えないという立ち回りをさせていた。

 

 そして第二種目で油断したA組を初見殺しで潰すつもりでいたのだが──いつの間にかハチマキが消えてるわB組全滅だわでまあまあ酷い目に遭わされた。

 

 物間のハチマキを奪ったのは耳郎だし、B組が全滅したのは轟と爆豪が暴れて森岸達がコソコソ奪っていたから。

 つまり八つ当たりに見えて実は正当な復讐だったりもする。結局は八つ当たりではあるんだけども。

 

 

「……というか本当に何をどうやったらあの舞台で目立たないんだい? 三位だったよね?」

「まあ……そういう立ち回りしてたから……」

「流石にそれだけじゃ説明がつかないんだよねぇ……映像を見返しても君ら全然映ってなかったし」

 

 

 それとは別に分析も欠かさなかったらしく、煽りカス挙動はどこへやら。急にスンッ……とした顔になると心底不思議だとでもいう風に尋ねてきた。

 

 森岸としては、別に教える分にはなんら問題がない。手の内が割れたところで対策できるわけでもなし、何をしたのかを教えてやってもよかった。

 

 

「そっちは知らんよ……お前が言った通り、地味で見せ場がないから外されたんじゃね?」

「どう考えても開き直りだよねぇ!? 信じるわけないだろうそんなの!」

 

 

 でも全部説明すると絶対面倒くさくなりそうだったので黙っておくことにした。正解。

 

 ちなみにここでバカ正直に教えてやった場合、論破という言葉を覚えたばかりのクソガキのように煽りカスとなるので黙っておいて本当に正解だったりする。

 

 かといってそんな説明で黙ってくれるはずもなく。いいや何かある嘘つくなと喚き始めた瞬間、物間のうなじを手刀が叩いた。

 

 

「カフッ……!?」

「悔しいからって変な絡み方すな」

「首トンってマジでできるんだ……!」

「どこに注目してんの」

 

 

 途端に崩れ落ちる物間。床に倒れる寸前で襟首を掴まれダラリと手を垂らすが、意識までは刈り取られていなかったらしい。

 

 忌々しいものでも見るように下手人を睨みつけるも、いつものことなのか堪えた様子もない。それどころかため息をつかれる始末。

 

 

「あー……B組(うち)の物間がごめんね? コイツいつもこうなんだ」

「お、おう……というか、あなたは?」

「そういえばお互い初対面か。私は拳藤一佳、よろしくね!」

 

 

 拳藤曰く、USJで敵の襲撃を退けた事でA組だけが注目を集めているのが気に食わなかったらしい。それから何かとA組を引き合いに出してはB組(自分達)が上だと証明したがるそうだ。

 

 いやA組だって別に襲撃されたくてされたわけじゃないし……というのは当たり前だが、どれもこれもA組からすれば『知るか』の一言に尽きる。だって全部A組じゃない人達が勝手にやってることだし。

 

 A組を襲うように頼んだわけでもなければ、注目してくれとお願いしたわけでもない。どこにA組の咎があるというのか。

 

 

 おそらくそこまで引っ括めて物間という人物はちょっとアレなんだろうなあ、と森岸。耳郎は普通にムッとしている。それはそう。

 

 

「……言っとくけど、アレを有名になるチャンスとかいう馬鹿みたいな認識でいるならやめた方がいいよ」

「ぅ……悪かったよ……」

「本当だぞ物間。お前怪我人とか死人出てた可能性もあるんだし、洒落にならないんだからな」

「分かったか物間」

「彼限定で謝罪を取り下げさせてくれないかい?」

「ダメです」

「カフッ!」

 

 

 哀れ物間。これ以上いらん事言う前に、と追撃を入れられとうとう意識を手放した。次に目覚めた時は最終種目が始まってしまっていることだろう。

 

 何やらコントを見せられたような気分の二人だったが、昼休憩もあまり残っていないので移動しておくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というわけで最終種目──……とはならず。ここまで活躍できなかった生徒達の挽回のチャンスでもあるレクリエーションのお時間だ。

 

 そしてその前に最終種目のトーナメント表の作成。第二種目上位4組16名の組み合わせ決めを行わなければならない。

 

 その方法はくじ。1位のチームから順番にくじを引いて組み合わせが決まっていく。

 

 結果は以下の通り。

 

 

 

 緑谷出久 対 砂藤力道

 

 轟焦凍 対 瀬呂範太

 

 森岸詠士 対 上鳴電気

 

 飯田天哉 対 発目明

 

 芦戸三奈 対 葉隠透

 

 常闇踏陰 対 八百万百

 

 耳郎響香 対 切島鋭児郎

 

 麗日お茶子 対 爆豪勝己

 

 

 

 正に悲喜交々……とでも言うべき組み合わせ。似たようなパワータイプの組み合わせもいれば、この二人戦わせたら絵面ヤバくね? というものまで様々。

 

 では森岸は対戦相手が上鳴であることをどう思っているのかというと。

 

 

 

「よかったな。骨の2、3本折れようがその場で治してやれるぞ」

「それは折るっていう宣言かな!?」

「ハハハ」

「待って俺何されんの!? 怖い! 誰か変わって!」

 

 

 

 ……とりあえず上鳴くんの無事を祈っておこう。

 

 

 






上鳴「アイツの弱点なんか知らない!?」
耳郎「あー……デスソースとか苦手だよ」
上鳴「それは全人類共通だろ!」
爆豪「は? デスソース美味いだろ」
上鳴「えっ」
耳郎「えっ」
爆豪「あ?」


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