Q.耳郎もうちょい工夫できたんじゃ?
A.プラグ刺す場所によっては普通に通った。でも目とか鼻とか耳からやるともっと大惨事になりそうだったので流石にやめた。後メタい話絵面が酷いので……
Q.森岸にお母さん属性追加ですか?
A.そもそも緑谷の件から割と面倒見がいいので追加も何も最初から持ってる。メンヘラを2、3人くらい浄化できる包容力があるとかなんとか。
Q.もしかして森岸ってモテる?
A.恋人としてではなく結婚相手としての評価が高くなるタイプ。つまりモテるけどモテない。
『ああ麗日……ウン、爆豪一回戦とっぱ』
『やるならちゃんとやれよ……』
……なんつーかこう、ヤバかった。
語彙力が死んでるのは麗日さんと爆豪の試合を見ていたから。そう、あの麗日さんと。爆豪の。
最終種目の組み合わせはクジで決められてるから仕方の無いことではあるんだけど……一番相性が悪い組み合わせだった。
おそらく麗日さんは一度触れられればどうにかなるかもしれない……と思っていたのだろう。だけど、俺の予想だと触れたくらいじゃどうもならないと思う。
あいつ最初の個性把握テストと対人戦闘訓練の時から【爆破】の反動で飛び回ってたし、【
まあこれも所詮は俺の憶測でしかない。既に響香がそうしたように、俺が知らない何かを隠し持っていた可能性だって全然ある。
事実、麗日さんは爆豪の【爆破】で生まれていたステージの瓦礫を大量に浮かして攻撃しようとしていたし。
切り替えてこれからの話だ。二回戦第一試合は轟と緑谷の組み合わせ。
……まあ緑谷には悪いけど勝ち目薄いよな。というかあの規模の氷結と勝負できるやつの方が少ないし。
俺の【魔法】の中には対抗できそうなものもいくつかあるけど……流石にあんなものを見せられた後じゃあ自信を失くす。あれはちょっとヤバい。
だからこの試合で何かしら轟に勝つ糸口を探ることができたらいいんだが、緑谷もどれだけ食い下がれるか……。
『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!! まさしく両雄並び立ち、今!!』
『緑谷VS轟!!!』
『START!!!』
さあ始まる……って、オイオイオイマジか!?
「開幕ブッパ……!」
それも
なーるほど。今んとこ轟の戦い方は初手大技で一瞬で終わらせてきた。だからそれを読んで相殺して──それから【フルカウル】で逃げ回ると。
だけど危ういな。緑谷の回避より轟の制圧力の方が高い。どうしても避けられない瞬間が出てきてる。
そうなるとどっかで氷に捕まって……また暴発か。あいつ自分の指のこと残弾扱いしてないだろうな? 治せるからって無茶すんなよ。俺やリカバリーガールいなかったらどうする気だお前。
ついでにチラッと響香の方にも視線をやるとサッと目を逸らされた。自覚アリ、ヨシ。
「にしても轟の奴、あんなにポンポン範囲攻撃出して大丈夫なんかね?」
「え? 何でだ?」
「……たりめェだろ。ポンポンじゃねェ」
あら爆豪さん。同じ意見でしたか。
「個性だって身体機能だ。奴にも何らかの限度はあるハズだろ」
「だねえ。八百万さんの【創造】に対する脂質然り、峰田の【もぎもぎ】の毛髪然り。補給や回復はできても無限ではないだろ」
「……テメェが一番意味不明だろうが魔法野郎」
そんなこと言われましても。個性発現したばっかりの頃は魔力切れとかあったんだぞ。多分成長と共に上限が死ぬほど増えただけで。
とと、試合に話を戻そう。
案の定、緑谷は追い詰められている。個性の出力だけじゃなく、判断力や応用力でも圧倒的に負けている。
逆に緑谷はよく生き延びてるな。あの範囲攻撃を連発されて凌ぎ切ってるって十分褒められることだろ。
でもそれだけじゃあ轟には勝てない。あの氷を避けるか、或いは氷ごとぶち抜くか。そうしなければ勝負にならない。
もう指の暴発だけで四回、それと左腕丸ごとを一回。一撃も入れられてないのに逃げ回るだけであそこまでボロボロになるんじゃあ──
「どこ見てるんだ……っ!!」
…………やっぱ俺の読みあてになんないわ。
響香といい緑谷といい、見てる方が痛々しいくらいなのに……凄いよ。
さっきの一言だけがやけに鮮明に聞こえたけど、また観客達の声に掻き消されて聞こえなくなった。けど何かを話しているのは分かる。
そんで話が終わったのかまた動き出し……遅いな。まさか冷気を使い過ぎると体力が、いや体温が下がって動きが鈍る? だとすると最大規模は出せないと見ていい……いやでも
うわおクリーンヒット。指がイカれた方の腕で【フルカウル】一発入れやがった。ありゃ痛いぞお互い。
立場が逆転したな。逃げ回ってた緑谷が攻めに回って、轟が氷でなんとか引き離そうとしている。
でもそこに最初程の勢いはない。本人の動きも氷結の速度も酷く鈍い。持久戦になるとキツイのは緑谷だとばかり思ってたが、冷えすぎるとこうなるのか。
もう走ることもできないのかほぼ棒立ちで殴り飛ばされてる。おいおいマジで左側使うくらいなら負けるって──
「俺だって……ヒーローに……!!」
──使った。左。
何となく分かる。なにか、ヤバいのがくる。
「全員伏せろ!」
「へ?」
「っ!」
そして一瞬、スタジアムから音が消えた。
……結果から言うと、轟の勝ち。氷で踏ん張れた轟と踏ん張る壁がなかった緑谷の差が勝敗を分けた。
威力そのものは互角……だったと思う。それか負傷してた分だけ緑谷が負けてた。
幸い怪我人は当人らを除いてゼロ。ステージは滅茶苦茶になってしまったようだが、それはセメントス先生がいればいくらでも直る。
「……ちょっと行ってくるわ」
「? ああ、次試合だもんね」
「いやそれもだけど……あの緑谷放置したらちょっとマズそう」
でも、人間の身体はそうはいかないんだぞ緑谷。頑張ったのも強い意志があったのも凄いけど、死んだらそこでお終いなんだからな?
◇
ステージの修復にはそれなりの時間を要した。
時間的余裕ができたこともあり、森岸による緑谷の回復は最後まで行われた。真横で見ていたリカバリーガールは密かに『後継者みーっけ』の表情である。
緑谷が目を覚ました頃にはすっかり全回復。試合前に申し訳ない! と風を切る音がする速度で頭を下げ倒していた。スゲーけど【ワン・フォー・オール】そんな事に使うなよ。えっ、使ってない? 素でそれ? 怖……。
そうして緑谷の回復を終えた森岸はそのまま控え室へ。座りっぱなしで固まってしまった体を解すためにじっくりとストレッチを行っていた。
「……で、響香は何でずっといるのさ」
「んー、なんか気の利いた事言おうと思って来たんだけど思いつかなくて……」
「語彙力さんお出かけ中でしたか」
「トコトコしてる」
その隣には当たり前のように耳郎響香。ちなみに彼女の試合は森岸の試合ともう一つ試合を挟んだ後なのでここに来るにはだいぶ早かったりする。
じゃあ何故いるのかと言えば幼馴染に激励でも、と思って足を運んだようだ。しかしここに来てから三分くらいは無言だった模様。
どうしたものかと言葉を選んでいた耳郎だったが、ふと何かを思い出したように口を開いた。
「そういえばさ、なんか変なこと思い出してたりする?」
「………………まあ、ちょっとだけ」
激励、ではなく問いかけ。耳郎の質問に対し森岸は呟くように答えた。
まだ誰にも話したことのない二人だけの思い出。おそらく二人の家族でさえ知らない話。森岸はぼんやりとそんなことを思い出していた。
引き金となったのは一回戦の耳郎と先程の緑谷の試合。ボロボロになってまで何かを成し遂げようとする姿。
「あれ思い出すと未だにちょっと背中が冷たくなる。普通に怖かったし」
「……本当にヤバかったら先に言ってね。あんな【魔法】ここで使われたらヤバいし」
「流石に大丈夫よ。アレとまた遭遇でもしない限りはまずない。それに……どれ使っても大惨事間違いなしだから、そもそも使う気もねェよ」
【⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎】なんて──と続けようとして、プレゼントマイクのアナウンスに遮られた。
「お、もう直ったのか。早いなあ」
「詠士が緑谷治す方が早いのもおかしいからね?」
「はいはい……んじゃ、勝ってくるわ」
「決勝で待ってるぞー」
そうしてやや雑なやり取りを終えると、ステージへと上がって行った。
『さあさあステージもバッチリ直ったところで2回戦第二試合!』
『隠密! タフネス! 次は何を見せてくれる!? 森岸詠士!!!』
『ならばスピードで応えてやれ! スピードスター、飯田天哉!!』
「だってよスピードスター飯田」
「悪意を感じるぞ!?」
森岸の対戦相手は飯田。個性【エンジン】によるスピードと速度が乗った蹴りを武器としている。
これまで速攻を仕掛ける者がほとんどだったが、おそらく今回も速攻狙い。何せ時間をかければ【魔法】の強化が増えてしまうのだから当然だろう。
現に飯田は隠す気もないのか、スタートの合図をクラウチングスタートの体勢で待っている。
「……いいぜ、受けて立つ」
「む……」
明らさま。普通なら回避の構えを取るべきところで、森岸は敢えて腕を組んで直線の位置で仁王立ちの姿勢を取った。
観客のボルテージも上がる。先の痛々しい試合もあり、この試合への期待が膨らんでいるらしい。
それを二人は気にも留めず、まるで早打ち勝負のガンマンのようにその時を無言で待っている。
『START!!!』
「【レシプロバースト】!!」
「っ───!」
そして開始の合図──と、ほぼ同時。居合抜を思わせるような反応速度で飯田の蹴りが振り抜かれた。
決まる。飯田がそう確信した瞬間、圧縮された一秒の中で森岸と目があったような気がした。
「ぐっ!?」
「っっっっ……ぶねェ!?」
『う、おおお!? 今何したアイツ!? 避け、避けたのか!?』
側頭部を狙って放たれたハイキックが、後ろに倒れていく森岸の身体を捉えることはなかった。ブオン! と唸りを上げる【エンジン】に猶予はあれど、最速の一撃を避けられた衝撃は大きい。
何故、と疑問を抱える余裕はない。飯田の【レシプロバースト】は言わば意図的にオーバーヒートさせているようなもので、その負荷は数秒以内に手痛いツケとして返ってくる。
ならば思考に時間を割いている場合ではない。今は一瞬一秒でも攻撃に回さなければならない。
対して森岸はむくりと立ち上がると、飯田の目をジッと見ながらこう告げた。
「さて飯田。今からやる【魔法】はちょっと痛いぞ」
「……!?」
まさか【攻撃魔法】──と頭を過ぎったが、すぐにその可能性を切り捨てた。
飯田は、いやA組も教師も知っている。森岸詠士は【攻撃魔法】だけは使えないことを。多くの手札を持ってはいるが、最終的には己の肉体以外の武器を持っていないことを。
つまりはブラフ。そう判断した飯田は更に【エンジン】を加速させる。一度は避けられたが二度目はどうか。
「おおおおおおっ!!」
「後でちゃんと治すよ。だから───」
「折れても文句言うなよ。【アストロン】」
ガゴンッ!!! と、鈍く重い音。そして同時にバキリ、と乾いた音が響いた。
「っっ…………!? ぁ……ぐ……」
「───ふう」
『は……な、何だ今の!? 森岸が一瞬、鉄の塊みたいに変化したぁぁ!!』
超スピードで振り抜かれた蹴りは森岸の身体を捉えていた。鋼鉄へと変化した身体を。
防具も何も無い、生身の足で力いっぱい鋼鉄の塊を蹴ればどうなるか。言うまでもなく足の方が砕けるだろう。
森岸がしたことはそれだけ。自分の身体を鋼鉄に変える【アストロン】を使うことで防御そのものをカウンターへと昇華させた。蹴りの威力の高さがそっくりそのまま彼の足を破壊したのだ。
「完全に折れてるみてェだし……諦めな」
「ぐぅっ……ぐ……こ、『降参』だ……!」
ドンピシャのタイミングに合わせられたカウンターは試合続行を諦めさせるだけのダメージになったらしい。
らしくなく涙を浮かべて苦しそうに唸りながら、飯田は降参を宣言。ミッドナイトもそれを受領し森岸の勝利が決まった。
「んじゃ【ベホイミ】っと」
「っ〜…………! はあっ、はあっ……」
「悪いね。これ以外お前のスピードに対抗する手段がなかったんだわ」
「い、いいんだ。真剣勝負には怪我は付き物だからな……!」
「いやもうちょい穏当な手段も無くはなかったし……」
「……あったのか」
真剣勝負なのだから文句なんてない。でもそれはそれとしてもうちょっと痛くない方法があるならそっちを選んで欲しかった飯田だった。
──森岸詠士、三回戦進出決定。
・アストロン
対象者を鉄の塊にして一切行動できなくなる代わりに一切の影響を受け付けなくなる魔法。作品によって効果範囲と効果時間が変化しまくってる。
原作では基本的に無敵。強制解除されたり特定の武器による即死効果以外は全部防いでくれる。全然関係ないけど作者はDQMBVの『おおめだま』が使うアストロンが一番印象に残っている。
本作では鉄っぽいけど明らかに鉄より硬い何かに数秒だけ変化できる仕様。タイミングを間違えると隙だらけの所に攻撃をぶち込まれるゲームのパリィみたいなものになっている。
切島「俺らのアイデンティティがっ!?」
鉄哲「ちくしょう持ってかれた……!」
森岸「そこまで使い勝手よくないから大丈夫だって」