魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.増強型が可哀想だと思わないんですか!
 A.実は一番強化の恩恵を受けられるので味方にいるならむしろ喜ぶべき。競合相手だって? それは……ご愁傷さま?

 Q.でも本人は支援役は嫌なんでしょ?
 A.それだけを求められるのが嫌なだけで、戦闘前の準備段階なら普通に強化を配ってくれる。途中で強化が切れた場合は森岸を探してまたかけてもらいに行きましょう!

 Q.ちなみに一番相性がいい人は?
 A.オールマイト

 Q.……それ以外で。
 A.戦闘力が高い順に名前を挙げていくだけだぞ。






19.術式反転……え? 原作が違う?

 

 

 

 

「うっぜえなぁああああ!! それ!!」

 

 

 森岸の決勝進出が決まっての準決勝第二試合。

 

 麗日に耳郎と女子ばかり捩じ伏せて来たものだから観客から若干『まさかそういう趣味か……?』と思われつつあることなど知らない爆豪。

 

 彼の対戦相手は常闇踏陰。彼もまた轟のように真正面から速攻をしかけてここまで上がってきた強者。

 しかしその時の攻撃力はどこへやら、無敵に近かった個性であっても防戦一方。爆豪の攻撃を凌ぐのに精一杯だ。

 

 その光景を森岸は不思議そうに眺めていた。

 

 

「疲弊……いや違う。攻撃を受ける度にヘタってる気がするし」

「緑谷達が言ってたけど、常闇の個性って光に弱いらしいよ」

「マジ? 相性最悪じゃんか。防御できても別のダメージが積み重なるとかどうしようもないじゃん」

 

 

 耳郎の言葉に森岸は眉をひそめて両手を合わせた。おい殺すな。

 

 

 常闇の個性【黒影(ダークシャドウ)】の弱点は光。名前の通り、逆に暗闇であればより力を増幅させられるそうだ。

 

 対戦相手が爆豪であることがあまりにも致命的すぎた。何せ弱点が割れていようがいまいが、爆豪の攻撃は何一つ変わらない。意図的だろうがそうでなかろうが戦いが長引けば【黒影】は確実に削られていく。

 

 勝ち目がないとまでは言わずとも、下克上を成し遂げるにはあまりに厳しい組み合わせ。やがて爆豪の苛烈な攻撃に追いつけなくなった常闇は背後を取られ、閃光弾(スタングレネード)を食らった後ステージに倒されていた。

 

 

「まァ……相性が悪かったな、同情するぜ……詰みだ」

「…………っ、まいった」

 

 

 爆豪からすればあまりに惜しい。相性がなければきっといい強敵になっていた。それだけに同情という言葉さえ口にした。

 

 常闇の降参により爆豪勝己、決勝進出。よって決勝戦は爆豪と森岸の試合となった。

 

 

 

 

 

 

 

 選手控え室2。そこで森岸はその時を待っていた。

 

 まだ温まりきっていない体を軽いストレッチで起こし、今の自分に切れる手札を一つずつ反芻していく。

 

 相手は爆豪勝己。現時点での1年A組において間違いなく最強と言えるレベルの戦闘能力を有した同級生。憧れに近づきたければどこかで必ずぶつかるライバル。

 

 

 そのライバルが何故か森岸の控え室のドアを乱暴に蹴り開けた。

 

 

「……あ?」

「……おん?」

 

 

 お互いフリーズ。別に仲がいいわけでもなければ特段嫌悪し合うような仲でもない。色々と気まずい二人の目が、バッチリとあってしまった。

 

 何故、と尋ねるよりも早く爆豪が口を開く。

 

 

「あれ!? テメェがなんでここに……控え室……あ、ここ2の方か!! クソが!!」

「……何か肩の力抜けたわ」

「あ゙あ゙!?」

 

 

 どうやら控え室を間違えた様子。なんで自分が悪いと分かっててその態度なんですかね爆豪さん。

 

 森岸としてはらしくもなく緊張していた所に騒々しく入ってきた挙句、一人でコントじみたことをやっていたのだからそりゃあリラックスもする。

 しかし爆豪からすればその反応の方が気に食わない。お前人の挙動見て安心してんじゃねェぞテメェ、という感じである。理不尽。

 

 

「ああそうだ、爆豪」

「あ゙!?」

「俺、本気で勝ちにいくから」

「…………けっ、言われるまでもねェわ」

 

 

 爆豪はそこまで聞いてまたドアを潜って行ってしまった。

 

 だから爆豪はその続きを聞き損ねた。

 

 

 

 ──何されても文句言うなよ、という言葉を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さァいよいよラスト!! 雄英一年の頂点がここで決まる!!』

 

『決勝戦!! 森岸(バーサス)爆豪!!!』

 

 

 ピリピリと肌を指す緊張感。そこに爆豪も森岸も言葉はない。ここまで来たのなら言葉はいらないだろうと、両者の目が雄弁に語っていた。

 

 下馬評では爆豪の勝利を信じる者が多く、それだけにジャイアントキリングを望む者もいる。結局の所どちらが勝っても観客にとっては最高の娯楽であり、プロヒーローにとってのスカウト対象。

 

 だが、その全てが今だけはどうでもいい。目の前の相手を全力で叩き潰す。それだけを考えていた。

 

 そして、今。どちらが上かを証明する。

 

 

 

『START!!!』

 

 

「死ねェ!!!」

 

 

 

 開始と同時。およそヒーローとは思えぬ掛け声で高威力広範囲の【爆破】を放った。

 

 爆豪の狙いは単純。倒せる時に倒す。可能ならば最初の一撃で場外まで吹っ飛ばしたかった(・・・)

 

 その願いは既に過去形となっている。

 

 

「……チッ!」

「容赦ねェなァ!!」

 

 

 忘れてはならない。森岸は【魔法】がなくとも高い身体能力を有している。少なくとも爆豪の開幕ブッパを読んで横っ飛びすれば範囲外に出られる程度の。

 

 そして森岸の【魔法】が発動する。【スピオキルト】によってパワー、スピード、防御力が上昇し、更にもう一段【スピオキルト】が重ねられる。

 

 

「こっちも一発、くれてやるよ!!」

「っ!」

 

 

 二段階の強化は並大抵の増強型に並ぶ、或いは凌駕する。この時点で森岸の蹴りは爆豪に無視できないダメージを与える威力となっていた。

 

 それを隠す気もない、力任せの一撃を跳躍の落下と共に振り下ろした。

 

 轟の試合でも見ていたパワー。いざ至近距離で目にすればより深く理解できる。単純な身体能力や個性の挙動だけではまず勝てないほどの差があると。

 

 

「チッ……ムカつくなァ!!」

「よく言うぜ! すこぶる冷静な癖によ!」

 

 

 ならば真っ向からぶつかれば押し負ける。パワーではなくスピード、それも手数で押し切るべきか。爆豪はそう判断しギアを一つ上げる。

 

 両手の【爆破】による反動を利用した加速が起こる。人体のみではまず起こりえない急激な加速は森岸の不意を突くには十分だった。

 

 

「ッ……ラアッ!!」

「うわっ、とおっ!?」

 

 

 右手の【爆破】のみを継続し、速度をそのまま回転の勢いへと変換。緑谷にも指摘されていた右の大振りにスピードが上乗せされて放たれる。

 

 強化された身体能力とスピードがなければ避けようもなかっただろう。故に、避けられてしまう。

 

 爆豪にとっての誤算は右手で放った【爆破】が想像よりも速度を相殺してしまったことともう一つ。

 

 

 

 森岸の手札を読み違えたことだった。

 

 

 

 

 

「【ヘナトス】」

「っ……!? な……」

 

 

 振り抜いて伸びきった右腕を掴まれた状況で森岸が【魔法】を発動した。何かがマズイ、と思った時には既に遅かった。

 

 咄嗟に左手で反撃。準備も何もない虚仮威しのような一撃。しかし確実に森岸の体を叩いた──

 

 

「……うん、問題なさそうだ」

「……! クソがっ……!!」

 

 

 ──はずだった。

 

 

 爆発の煙が晴れた向こう側には傷一つない森岸が安心したような顔で立っていた。

 

 それだけで爆豪は理解できた。あの【魔法】で何か致命的な状況に陥ったことを。

 

 如何に牽制や虚仮威しであっても【爆破】の攻撃力自体が高いのだ。あれだけ至近距離で叩き込まれて火傷一つないなんて有り得ない。ましてや顔に食らっておいて無傷など。

 

 

「(爆発耐性を上げる……いや、そんなピンポイントなモンあるわけねェ……!)安心しとんじゃねェぞ!!」

「安心するだろ。ちゃんと効果があったんだからさ」

「っ、の……!!」

 

 

 疑問への考察は止めない。しかし足を止める訳にもいかない。長引けば不利になるのは自分の方だと分かっているから。

 

 再び爆撃。一気に距離を詰めながらの一撃がまたしても森岸へ叩き込まれた。間違いなくクリーンヒット。誰がどうみても確実に入った。

 

 

 だが。

 

 

「っ…………!?」

「想像以上に下がってんな(・・・・・・)……【スカラ】もあるとはいえまさかここまで変わるなんてな」

 

 

 煙の向こう側は依然変わらず。微かな火傷があるかもしれない、程度のダメージがあるばかりだった。

 

 【ヘナトス】……それは攻撃力を下げる(・・・)魔法。自分に使用している強化の正反対──弱化魔法。

 

 これまでの試合で使わなかったのはただ一つ。触れなければ使えないという理由によるもの。

 上鳴や轟は触れた瞬間に負ける可能性があった。飯田にはスピード負けしている為に触れるよりも確実な方法を取った。

 

 ただ爆豪だけが弱化魔法を使える条件を満たせた。対象に触れながらでしか発動できないという条件を満たしてしまった。

 

 

 そんな事を知るはずもない爆豪には悪夢でしかない。今の自分が最も誇れる武器が、戦闘能力がまるで歯が立たないなんて。

 

 観客からの声も、歓声よりざわめきの方が大きくなり始めていた。

 今の今まで猛威を奮っていた爆豪の【爆破】がまるで通じていない。たった二発とはいえ、現実離れした光景はそう信じさせるだけの衝撃を与えていた。

 

 

「っ、ふざっ、けんなァ!!」

「!」

「こんな、ここで、終われっかよォォッ!!!」

 

 

 会場全体に充満していた空気を吹き飛ばすように吠える。両手での【爆破】で空へと向かう。明らかに分かる、何かを狙っている動き。

 

 だが森岸は動かない。ただジッと爆豪を見据えている。

 

 そうしているうちにも爆豪は加速する。遮るもののない空中で【爆破】が連続し、速度と回転を強めていく。

 

 

榴弾砲(ハウザー)ァァ──!!」

 

 

 

 そして回転と速度、全てを乗せた爆豪の一撃が解き放たれた。

 

 

 

着弾(インパクト)ォォッ!!!」

 

 

 

 

 

 同時に森岸も一言、こう呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「────【アタカンタ】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『い……今、何が起こった……?』

『……麗日戦で見せた特大火力に、速度と回転を乗せて放ったんだろう。凄まじい威力だった』

『そこまでは俺も分かってんだよ……じゃあ、何で──』

 

 

 

 

 

『何で爆豪が吹き飛んでんだァ!?』

 

 

 右の手のひらを突き出した。たったそれだけで爆豪が全てを込めた一撃がそっくりそのまま跳ね返された。

 

 膨大な爆発エネルギー全てが爆豪を襲い、場外エリアを越えてスタジアムの壁にまで吹き飛ばされていた。

 

 

「……【ヘナトス】を解いての【アタカンタ】だ。そりゃもう100%全部返っていったんだからそうなるわな」

「ク…………ッ…………!?」

「初見殺しで悪いな爆豪。今回は、俺の勝ちだ」

 

 

 ここにきて、まさかのほぼ無傷での勝利。静まり返った会場の中、森岸の勝利宣言だけがハッキリと聞こえていた。

 

 

 

「っ……! 爆豪くん場外!! よって森岸くんの勝ち!!」

 

 

『い、以上で全ての競技が終了!! 今年度雄英体育祭1年優勝は───』

 

 

『A組!! 森岸詠士!!!』

 

 

 

 






・ヘナトス

 攻撃力を下げる呪文。9が初出。
 実はモンスターズで似たような効果の【ダウン】という呪文が先に存在していた。
 ヘナトスは攻撃力を減らすのに対し、ダウンは与ダメ自体を減らす効果。本作では前者の効果を使いたかったのでヘナトスにした。
 

・アタカンタ

 物理攻撃を反射する状態になる呪文。初出の際は【アタックカンタ】という名前だったが、呪文を反射する【マホカンタ】に語感を合わせる為に短縮されたらしい。
 本作では最大でも5秒しか持続しない上に再度使用する際は10秒のインターバルを必要とする。ぶっちゃけこれくらいの弱体化(ナーフ)しないとただでさえ壊れてる性能が更にぶっ壊れるからしゃーない。


森岸「これオールマイトに重ねがけしたら相澤先生でも勝てるようになりますよ」
相澤「ほう……」
八木「ヤメテ!?」


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