魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.森岸の素の実力ってどのくらい強いの?
 A.雄英のとある三年生くらいのフィジカルはある。

 Q.……何で?
 A.何かあっても【魔法】で治るからと馬鹿みたいなトレーニングを繰り返してたから。脱いだらすんごい身体してる。

 Q.ミルコと森岸の模擬戦の結果は?
 A.森岸が吹っ切れたせいでミルコが酷い目にあった。






 Q.で、エッチなことしたんですか!?
 A.体と体を激しくぶつけ合って気持ちよくなってました(意味浅)てかお前峰田だろ。はよMt.レディんとこ帰れ。







25.悪意の芽

 

 

 

 職場体験三日目──の、夕方。

 

 緑谷出久はグラントリノとの模擬戦を繰り返していた。森岸といいそんなんばっかだなコイツら。

 

 

 森岸や相澤のサポートもあり(原作と違って)【フルカウル】自体は早い段階で完成されていたものの、個性そのものに対する圧倒的な経験不足は否めない。

 そうした部分を埋める為にと個性を使わせ続けるついでに戦っていたのだが、一つ懸念が出てきた。

 

 

「……これ以上同じ戦法の奴(おれ)と戦うと変なクセがつくかもな」

 

 

 それは同じ相手と戦い続けることで先読みに妙なクセがつき、グラントリノではない相手にもグラントリノを相手した時と同じような対応をしてしまう可能性がある。

 

 ということで対戦相手を変えよう、という話なのだが緑谷としては不安が残る。ひっくり返されたまま特訓の続行を求めていた。

 

 

「いえ、クセとか以前にまだまだ慣れが足りないです! もっとお願いします!」

「それは分かってんだよ。だから、フェーズ2……職場体験だ!」

 

 

 頼む相手なんて探すまでもない。ヒーローの職場体験に来ているのだから敵を相手に経験を積めばいいと、グラントリノは緑谷を外へと引っ張り出した。勿論コスチュームを装備させて。

 

 緑谷はやはり不安なのか「いきなりですか!?」と困惑の声を漏らしているが、グラントリノはスパルタ教育者。いいから行くぞとタクシーを止めて強引に移動を開始した。

 

 目的地は渋谷。人口密度が高い都市部ほど犯罪の発生率も高く、トラブルの大小も幅広い。まさにヒーローの卵が経験を積むにはうってつけと言える。

 

 

「となると……新幹線ですか?」

「そうなるな」

 

 

 それを聞いて緑谷の不安は別の物に塗り替えられる。ここから新幹線となると、途中で保須市を……ヒーロー殺しの事件があった街を通ることになる。

 

 そして同時に飯田の職場体験先のヒーロー事務所がある場所でもあるな、と。

 

 

 

 新幹線に乗った頃にはそこそこ日が暮れていて、向こうに着く頃には夜になっているだろう。

 それを尋ねるとグラントリノはむしろ歓迎していた。曰く、その方が小競り合いが増えて楽しいだろう、と。

 

 いい加減この厳しさにも慣れてきたのか、顔を青くして苦笑いを浮かべながらも然程動揺はしなかった。

 

 それでも流石に新幹線の中では大人しいようで、緑谷はスマホを取りだしてメッセージアプリを確認していた。

 

 トークルームの相手は飯田。いつもなら既読から三分以内には返信をくれるのだが、職場体験中はそうもいかないのか返信がない。

 

 それだけなら何も思わないのだが状況が状況だ。もう何度目か分からぬ心配が頭を過ぎり──そのまま前の席へ衝突した。

 

 

 

「づうっ……!?」

 

 

 

 次の瞬間、壁を突き破ってヒーローが車内へと吹き飛ばされてきた。

 

 

「っンだアイツ……!?」

「え、ヒーロー!?」

「一体何が───!?」

 

 

 それに遅れてもう一人。緑谷にとって忘れようもない、脳を剥き出しにした異形の人型が姿を見せた。

 

 

「脳無!?」

「っ、小僧座ってろ!!」

「え──グラントリノ!?」

 

 

 あまりにも予想外の再会に驚愕している緑谷。逆に脳無に対する情報を持たないグラントリノはいち早く動いていた。

 

 緑谷に動くなと命じると、これまでの組手で見せていた直線的な加速を発動して自分ごと新幹線の外へと押し出した。

 

 だが脳無のことを知っている緑谷が大人しくできるはずもない。出された指示を無視して新幹線の外を見る為に座席から立つと───

 

 

「っ……一体何が起こっている……!?」

 

 

 ───街の中。奇しくも勝手に不安を抱いていた都市、保須市のど真ん中で大きな黒煙が上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 少し時は遡り、前日。

 

 悪意と殺意の衝突は──殺意の勝利に終わっていた。

 

 時間にして数秒。触れさえすれば全てを【崩壊】させる手のひらは届くことなく捩じ伏せられた。

 

 

「何を成し遂げるにも信念……想いが要る。無い者、弱い者が淘汰される……当然だ」

 

 

 

「だから死ぬ(こうなる)

 

 

 

 

 倒れ込んだ死柄木弔の右肩には大振りな短刀が食い込んでおり、もう一本の短刀が首のすぐ真横に突き立てられていた。

 

 抵抗のしようもない。右腕は痛みで、左腕は踏みつけられて動かせそうにない。間違いなく詰みといっていい状況だ。

 

 その状況を黒霧は黙って見ている……というわけではない。動きたくとも動けずにいた。

 

 

「ハッハハハ……! 痛ってェ……強過ぎだろ! 黒霧! こいつを帰せ早くしろ!」

「っ……身体が動かない……! おそらくヒーロー殺しの個性です……!」

「ヒーローが本来の意味を失い、偽物が蔓延るこの社会も……徒に力を振りまく犯罪者も……粛清対象だ……」

 

 

 このまま死柄木弔の命は終わる……かと思われたその時。

 

 ステインの短刀が死柄木弔の手、顔に貼り付けられた誰かの手に触れた瞬間に空気が変わった。

 

 

「ちょっと待て待て……この掌はダメだ……」

 

 

 

 

「殺すぞ」

 

 

 

 

 痛みを凌駕する憎悪が手を動かした。

 

 首へと落とされるはずだった短刀が握られる。感情に呼応するように【崩壊】が起こり、あっという間にボロボロと朽ち果てていく。

 

 

「口数が多いなァ……信念? んな仰々しいもんないね……強いて言えば、そう……オールマイトだな……」

「───!」

 

 

「あんなゴミが祀り上げられているこの社会を、滅茶苦茶にぶっ潰したいなァ……とは思ってるよ」

 

 

 

 怖気がたつような悪意の発露。何人ものヒーローを殺してきたステインがほんの一瞬、完全に気圧された。

 

 本能に突き動かされるまま、死柄木の上から飛び退く。血を流している死柄木は幽鬼の如くユラリと立ち上がり、狂気を宿した目でステインを射抜いていた。

 

 

「……それが、お前か」

「は?」

 

 

 ようやくステインは理解した。目の前の男はまだ道半ばなのだと。

 

 あまりにも異質で歪であるが故に見抜けなかった。子供のような振る舞いを見て切り捨てていた。

 死柄木弔には信念……未だ芽でしかないけれど確かな何かを持っていたことに気がついた。

 

 

「お前がどう芽吹いていくのか……始末するのはそれを見届けてからでも、遅くはないかもな……」

「始末すんのかよ……こんなイカれた奴がパーティーメンバーだなんて嫌だね俺……」

 

 

 手は組まない。だが最後まで見届けよう。ステインはそう告げると黒霧に保須へと戻すよう言った。

 

 

 

 

 【ワープゲート】の先はどこかのビルの屋上にあるタンクの上。黒いモヤを潜ったステインは眼下に広がる街を冷たく見下ろしている。

 

 

「この街を正す。それにはまだ……犠牲がいる」

 

 

 犠牲、それはヒーローのことだろう。

 

 無作為ではない。彼の標的は英雄気取りの拝金主義者、或いはヒーローとして相応しくないと判断した者のみ。

 

 歪みを抱えたまま直そうともしない社会への怒りを隠そうともせず、ステインは再び動き出した。

 

 

「ンだよ……あれだけ偉そうに語っといてやることは草の根運動かよ。健気で泣けちゃうね」

 

 

 だが死柄木弔は気に食わない。あれだけ偉そうに持論を語っておきながらその程度なのかと。ヒーロー殺しなんて名乗っておきながら、その実態は理想のヒーローを追い求めていたなんて滑稽でしかない。

 

 やはり合わない。死柄木はそう零すと黒霧に命じた。

 

 

「黒霧脳無出せ」

「……」

「俺に刃ァ突き立ててただで済むかって話だ。ぶっ壊したいならぶっ壊せばいいって話だ」

 

 

 

「あんたの面子と矜恃、潰してやるぜ大先輩」

 

 

 

 そして改造人間が解き放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 街は大混乱。当然だ。明らかに異形の怪物が暴れているのだから。

 

 近くにいたヒーロー・マニュアルも動く。現場が近いことを察知し、飯田に着いてくるように指示を出す。

 

 

「天哉くん! 現場行くよ!」

「っ、はい……!」

 

 

 飯田もマニュアルについて行くつもりでいた。今の自分は職場体験中の学生でしかなく、どこまで行ってもお客さんとしての扱いにしかならないと。

 

 でも、見てしまった。

 

 人混みの向こう側。血のように紅い巻物と全身に刃物を携帯した異様な雰囲気の男の姿を。

 

 

「っ、マニュアルさん!」

「うえ!? どったの!?」

「……ヒーロー殺しが!」

「なっ……!?」

 

 

 咄嗟に先行しそうになる足を何とか踏みとどまり、現場へ向かおうとしていたマニュアルへと呼びかけた。

 

 マニュアルからすれば想定外なんてもんじゃない。戦えないというわけではないが、あのインゲニウムでさえ負けた相手となればどうしたって躊躇してしまう。

 

 だが迷っている暇はない。ビルの隙間から見えた黒煙を見るに向こうの現場も被害は甚大。自分の個性が役に立つのはヒーロー殺し相手ではないという自覚がある。

 

 

「っ……今は無理だ! 僕と君じゃ勝てない!」

「ですが! こうしているうちにもヒーローが犠牲になっているかもしれないんですよ!?」

「それでもだ。僕は雄英から、君の親御さんから君を預かっているんだ。その立場としては、君をヒーロー殺しの元へ行かせるわけにはいかない!」

「ぐっ……!」

 

 

 ヒーローとして選べと言うのなら、マニュアルは躊躇しながらでも市民の命と目の前の子供を選ぶ。それがヒーローの仕事なのだから。

 

 飯田も頭では分かっている。どちらが正しくてどちらが間違っているのかなんて。

 

 それでも、ここに来て兄をやられた怒りが顔を出した。このまま奴を見逃していいのかと、復讐の熱が頭を焼くのだ。

 

 このままでは平行線。下手をするとマニュアルを振り切ってでもヒーロー殺しへと向かいかねない危うさがある。

 

 どうしたら……と睨み合いになったその時。

 

 

「───え!? あ、あなたが!? い、いえ……それなら、お願いします! 情けないと思うかもしれませんが──」

 

 

「いいから行け!」

 

 

 

 

 

「このミルコさんとレックスがきっちり仕留めてきてやるよ!」

「っ、お願いします!」

 

 

 

 

「マジでいたのかヒーロー殺し……あ、飯田も来る?」

「そんな軽い調子でいいのか!?」

 

 

 

 

 






 【速報】保須市、ミルコ参戦!!


脳無A「わァ……! ァ……!」
脳無B「人の心とかないんか?」
脳無C「なんだよもおおおお! またかよおおお!」



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