魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.ステインの最後のシーンカット?
 A.カットされました。映像が出回ったりしなくなったので影響力に若干下方修正入りました。

 Q.敵連合のメンバー減るのでは?
 A.先に言うと減ります。誰が減るのかはその時になってからのお楽しみです。



 Q.欲求不満()のミルコはどうなったんですか?
 A.そこに丁度いい職場体験中の生徒がいるじゃろ?







27.成長の兆し

 

 

 

「……つまり、危ないと分かってはいたけど僕やグラントリノを心配して出てきてしまった、と?」

「うん……僕の杞憂でしかなかった……」

「お前結構無茶するよな」

 

 

 ヒーロー殺しの捕縛、並びに脳無達の捕縛が完了した翌日。職場体験中だった緑谷、轟、飯田の三人(・・)は病院の一室で休息を取っていた。

 

 

 保須市での騒動は敵のネームバリューに対し、酷くあっさりとケリがついていた。

 

 ヒーロー殺しステインをミルコと森岸と飯田が撃破し、三体の脳無はエンデヴァーとグラントリノ、そして轟焦凍によって撃破された。

 

 被害は道路や新幹線等、周辺へのものが多く人的被害は極僅かなもの。

 

 ちなみにその僅かな被害……負傷者達はミルコとエンデヴァー監督の下で森岸が治療中。ミルコはつまらなそうに、エンデヴァーは目を丸くしてその光景を見守っている。

 

 

 ヒーロー殺しと脳無の捕縛。職場体験中とは思えない功績を残し、ヒーローの卵としてもいい経験ができた……と、終わらせるわけにはいかなかったり。

 

 というのも雄英男子四人のうち、緑谷だけはプロヒーローの許可を得ずに行動してしまっている。何なら指示を無視して勝手に動いているので尚更タチが悪い。

 

 

「何か……僕だけ情けないなあ……」

「いや、それは結果論だろう。確かに君が来なくともミルコさんや森岸君が来ていたが、あの場では分からなかったんだから」

「それにあいつ……エンデヴァーが来てたのも知らなかったんだろ。その状況なら俺でも動く」

 

 

 ギリギリ情状酌量の余地がある……と言われればあるかもしれない……かも? というくらい。少なくとも結果だけを見ると緑谷が動く必要は全くなかった。

 

 唯一幸いと言えるのは誰とも交戦していなかった事。グラントリノと飯田を捜索していた為脳無と交戦することはなく、ヒーロー殺しと出会うこともなく全てが終わっていた。

 

 つまり公的な記録は何一つなく、罰則らしい罰則もない。精々グラントリノの管理不行き届きを少し咎められるくらい。いやくらいじゃないんだけども。

 

 

 その事を思うとどうしてもやってしまった感が拭えない緑谷。しょぼんと俯いていると、ゴンゴンとやや荒いノックが聞こえた。

 

 

「おお、元気そうだな小僧共!」

「グラントリノ……! その……すいませんでした!」

「まったくだ! お前二度とすんじゃねェぞ!」

「おっ、お前か! 指示ガン無視して殴り込みかけたって奴は! そういう奴は嫌いじゃないぜ!」

「うえっ!? み、ミルコ!?」

 

 

 ノックの主はグラントリノ。その後ろにはミルコも立っていた。

 

 まさかもう森岸の仕事が終わったのかと聞いてみると、また別の仕事をしている最中だという。

 

 

「今レックスがしてんのはヒーロー殺しの治療だ。もちろん厳重に拘束した状態のな」

「え……ヒーロー殺しを?」

「下手に治療中に暴れられても困るってんで、可能なら頼むって言われてたぜ。そっちはエンデヴァーのオッサンに任せた」

 

 

 では何故ミルコは戻ってきたのかと言うと、単に何人もゾロゾロ入れる場所ではなかったので引き下がっただけである。ヒーロー殺しにはもう何の関心もないし。

 

 それとは別にもう一つ。雄英を襲った敵連合や脳無という存在について何か聞いていないかを確認したかった。

 

 

 ミルコが現場に着いた時には既にエンデヴァーらによって脳無の制圧が済んでおり、個性どころか起きて動いているところさえ見ていない。

 

 あの異形な存在について少しでも情報が欲しいと、ミルコは三人に問いかけた。

 

 

「その……僕達もあまり知らなくて……」

「ま、そりゃそうか。現場にゃオールマイトと他にもプロヒーローが二人も居たっていうし、交戦してねェわな」

「アレが居たってことは敵連合が関わってたんだろうな。そっちと遭遇してたら死んでたかもな」

「う……すいません……」

 

 

 しかし彼らの本分はあくまでも学生。そうした情報を持っているはずもなく申し訳なさそうに答えた。

 

 収穫としてはヒーロー殺しと敵連合の繋がりが判明したことと、そのヒーロー殺しを捕縛できたことくらい。喜びこそすれど安心には程遠い結果だ。

 

 

「どうせレックスもすぐ戻って来るだろうし、私は先に行くぞ。じゃあなガキ共!」

「は、はい!」

「ったく、騒がしい奴だな……お前らもそのうちマニュアルとエンデヴァーが来るから大人しく待っとけよ。こいつみたいに勝手なことすんなよ」

 

 

 ミルコはスタコラとすぐに出ていってしまい、続くグラントリノはニヤリと笑ってそう言うと緑谷を連れて行ってしまった。

 

 その後様々な報告や監督を終えたマニュアルとエンデヴァーも二人を迎えに来ると、職場体験の続きへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 こうして保須市の騒乱は幕を閉じた。

 ヒーロー殺し逮捕のニュースはすぐさま全国を駆け巡り、功労者としてラビットヒーロー・ミルコ、並びに職場体験中であった雄英生……森岸と飯田の名が知れ渡った。

 

 またヒーロー殺しの素性もあらゆる角度から暴かれ始め、彼の主張する『英雄回帰』の概念も世間を賑わせた。

 

 

 だがそれはあくまでも表の世界の話。

 

 殺人という間違った手段でありながら、彼の生き様は僅かにだが世間に楔を打ち込んだ。エンタメの延長線上でしかなかったニュースに確かな思想を微かに混ぜることに成功した。

 

 何も全国を駆け巡ったのはネームド敵確保のニュースだけではない。ヒーロー殺しステインという人物の信念を感染させていた。

 

 

 とある闇の仲介人はこう語った。

 

 

「前科無数の極悪人から逃走中の重罪人まで多くの『ネームド』に一つの実績を見せつけちまったのさ」

 

「どういう形であれ芯の通った悪意を持った連中は今、ヒーロー殺しの残滓にあてられている。諦観と絶望に屈したはみ出しものに熱を与えた」

 

「そうした連中の目は彼が所属したっつう組織……敵連合に向けられ動き始めている」

 

 

 たった一人の思想犯の炎は今も尚、残り火となって燃え続けている。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 やあ。職場体験が終わっていつもの授業に戻った森岸だよ。

 

 何か爆豪が8:2分けの髪型になってるんですけど。どこで何があったらそうなんの? そういう個性の敵とでも戦ったの?

 

 

「敵退治までやったの?」

「そっちと違って避難誘導とか後方支援だよ。交戦もしてないし」

「私もトレーニングとパトロールばかりだったわ。一度隣国からの密航者を捕えたくらい」

「「何それ詳しく」」

 

 

 梅雨ちゃんさん???

 

 あと麗日さんは何があったの? 何か闘気が立ち上ってるというか、気迫が違うというか……うわ何そのコークスクリューブロー。怖。

 

 そっちの峰田は峰田でどうした。爪ガジガジやめな? Mt.レディんとこで何があったし。

 

 

「でも一番変化というか大変だったのは飯田と森岸だな!」

「へ?」

「そうそう、ヒーロー殺し! 命あって何よりだぜマジでさ」

 

 

 ああ、そういやニュースになってたんだったか。取材の類はミルコさんと雄英が対応してくれてたから実感なかったわ。

 

 ニュースでは保須事件の犯人としてヒーロー殺しと脳無が報道され、敵連合との繋がりがあるのではという見解が出ていた。

 ただ現場にいた身としてはどうなんだろうとも思う。組んでいたというにはヒーロー殺しと脳無の騒動が別々に動き過ぎていた気もするし。

 

 それと話は変わるが轟の話題は完全にエンデヴァーと脳無に持っていかれてた。まあNo.2ヒーローの活躍と敵連合と比較したらどうしてもそうなるか。

 

 ……あ。そういえばインゲニウムの復帰も報道されてたっけ?

 

 

「そういや飯田コードネームどうなったんだ?」

「ああ、その件なんだが……兄から『二人でインゲニウムやっていこうな!』と言われてね。引き続きインゲニウムを名乗るよ」

「マジでよかったな! インゲニウム奇跡的に復活して!」

 

 

 そうそう、インゲニウムは奇跡的な回復を遂げたということになっている。この超常社会だと何が起きても不思議じゃないよね! ってことで怪しむ人は割と少ないらしい。ヨシ。

 

 

 

 

 

 

 

「ハイ、私が来た。ってな感じでやっていくわけだけどもね。ヒーロー基礎学ね!」

 

 

 ヌルッと入ったなオールマイト。とうとう導入パターンも品切れか。

 

 職場体験直後ということもあり、今回は遊びの要素を含めた救助訓練レースを行うという。

 

 あれ? 救助訓練ならUSJがあるんじゃ……と思ったが向こうは災害時(・・・)を想定した訓練場だから今回の授業とは少し用途が違うらしい。

 

 今俺達がいるのは運動場γ。密集工業地帯を再現したという訓練場で、複雑に入り組んだ迷路のような細道が続いているそうだ。

 

 5人4組(1組だけ6人)に分かれて1組ずつの訓練。この訓練場のどこかでオールマイトが救難信号を出した瞬間一斉スタート。誰が一番速くオールマイトの元に辿り着くのかを競う。

 

 

「もちろん建物の被害は最小限にな!」

「指さすなよ」

 

 

 いや爆豪はちょっと個性といい前科といい……な?

 

 まあ要は障害物が多く視界不良の中での機動力勝負というわけだ。現在地の把握とオールマイトの位置を把握しながら動かないといつまで経ってもゴールすらできなくなるだろう。

 

 

 最初の組は緑谷、尾白、飯田、芦戸、瀬呂の5人。A組の中でも機動力高めのメンバーが揃っているが、飯田はどうだろうか。直線の機動力は高いけど障害物の多いここでは難しいかもしれない。

 

 他の皆もトップ予想をしているがまあまあバラけている。純粋なスピードなら飯田だが柔軟性は瀬呂という評価で、運動神経の高さから芦戸さんと尾白も悪くはない。

 それでいうと緑谷はまあまあありそうだ。入学したばかりの頃は自爆してたけど、今のあいつは【フルカウル】があるし。

 

 

 

『START!!』

 

「お、始まった!」

「ホラ見ろ! こんなごちゃついたとこは上行くのが定石だろ!」

 

 

 まあそうなるか。開幕と同時に【テープ】で上に行ける瀬呂有利だわな。

 

 ただ、立体機動という意味なら緑谷も負けてはいない。

 全身にエネルギーを纏ってスパークさせている緑谷も上へと跳躍し、瀬呂同様上からの進行を選んでいる。

 

 

「うおおお!? なんだあの動き!」

「一週間で変わりすぎだろ!」

「これ緑谷あるだろ!」

 

 

 職場体験で随分と変わったな。【フルカウル】自体は体育祭前から習得していたけど、安定感や出力が向上している気がする。自然体で扱えるようになってきてるな。

 

 不安視されていた個性の安定感が克服されただけでこうも変わるとは。そのまま瀬呂とデッドヒートを繰り広げた後僅差で緑谷が1位を取った。

 

 

 次は俺、爆豪、八百万、峰田、葉隠の5人。俺以外だと速そうなのは爆豪と……八百万さんはどうなんだろう? 【創造】が何でもできるせいで判断が難しいな。

 

 その爆豪は完全にこっちをロックオンしているようだけども。あくまでもレースであって殴り合いじゃないからな? オールマイト放ってこっち殴りに来んなよ?

 

 

 

『START!!』

 

「っと、もうか!【ピオラ】! 【トベルーラ】!」

 

 

 いきなり過ぎるって。そんじゃあ、先人に倣って上から行きますかね。飛行よりも【バイキルト】足して走った方が速いし【トベルーラ】は解除だ。

 

 ……ふと思ったが、これ【バイキルト】重ねがけして一気に跳んだらどうなるかな? 訓練だし試してみるのもありか?

 

 

「オールマイトは……あっちか。よし……【バイキルト】もっかいやって……っ!」

 

 

 思いっきり壁を蹴る───って、はっや!? ヤバいこれオールマイトにぶつかる! 【ピオラ】解除!

 

 

「っ……セーフ!」

「うわびっくりした! ミサイルか何か飛んできたのかと思ったよ!?」

「すんませーん!」

 

 

 クッソ、ミルコさんに教わった踏み込みがあるだけで思ったより変わるな。ただ速く走るんじゃなくちゃんと蹴って加速って意識しただけなのに。

 

 少し遅れて爆豪も到着。俺を見るなり「あ゙!?」ってキレたけど舌打ちしてそのまま黙っちゃった。どうしたお前。

 

 

「やはりお二人は速いですね……」

「八百万さんも来たか。お疲れ──何それ……?」

「これはジェットパックですわ。使い捨ての加速装置(ブースター)も使って飛んで来ましたの」

 

 

 なんてこった。八百万さんに飛行能力までついちゃってる。下手すりゃ俺より万能ヒーローやれるんじゃないかこれ。

 

 

「それは流石に……」

「ンなわけあるか魔法野郎」

「へ?」

 

 

 何か怒られた。何でや。

 

 

 

 

 






エンデ「……むぅ」
森岸(何かめっちゃ睨まれてる……!?)

エンデ(どんな個性かと思えば想像以上の万能性……味方の強化や回復まで熟せる上に本人も戦力として申し分なし。もう数年早く生まれていれば……いや、今からでもサイドキックに欲しいくらいだ。それかいっそ冬美とくっ付けて……)

ミルコ(はよ終わらんかな)
マニュアル(俺何でここにいるの……? トップクラスと並ぶほど貢献してないんだけど……!?)



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