魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.インゲニウムややこしくない?
 A.感想でも何人かから頂いてましたが本編終了後には1号2号とつくようになる。本作でインゲニウムという単語を使う場合はどちらなのか区別がつくよう気をつけます。

 Q.エンデヴァーさんカス過ぎない?
 A.改善する前は割とこんなもん。前回の後書きの思考が森岸にバレたらドン引きされて二度と関わってくれなくなる。

 Q.もし冬美とくっつけたらどんな子供になる?
 A.炎と氷の攻撃魔法持ちの子供が生まれる。轟の完全上位互換……とまでは言わないが轟から反動と消耗を引っこ抜いたような感じ。

 Q.……もし実行したら上手くいくか?
 A.仮にくっつけるとこまで上手くいっても最後はあなエンデヴァーだけ蚊帳の外扱いされて縁切られる事になるからやめた方がいいですよ。







28.自意識改善中の化け物

 

 

 

 訓練中は真面目に、終われば学生らしく賑やかに。救助訓練レースを終えたA組は更衣室にてコスチュームから制服へと着替えていた。

 

 しかし雄英に来るだけの向上心からか、着替え中の雑談も訓練内容の反省会のようになることも珍しくない。

 今回は職場体験の後ということもあり久々の授業。非日常的な体験からまたコツコツと積み上げる日々に戻ったせいかいつもよりハッキリと改善点が見えていた。

 

 

「俺、防御ばっか磨いてたけど機動力課題だわ」

「個性でどうこうできない以上、情報収集で補うしかないな」

「でもそれだと後手に回っちまうからなあ……常闇とか瀬呂は羨ましいぜ」

 

 

 その中でも今回は機動力に焦点が当たっていた。同級生とのレースという目に見える形で出された結果は無視できないらしい。

 

 あれが欲しいこれが欲しいと言っても詮無いことだが、彼らはまだまだ未成年。数年前にはランドセルを背負っていたのだから仕方の無い部分でもある。

 

 

「やっぱお前ずりィ! 一人でいくつ能力持ってんだよ!」

「ハハハ、羨ましいかね」

「腹立つ! 一個くらい【魔法】寄越せ!」

 

 

 まあそれで言うとコイツは何なんだよという話でもある。皆手札一枚しかないのに何でお前だけトランプフルセットくらい持ってんの?

 

 

「でもなんでそんなに【魔法】があるんだよ。自分で作ってるとか?」

「ああ、全部自作。【ホイミ】だけは最初から使えてて、それ以外は全部【ホイミ】を元にして改造したものなんだ」

 

 

 森岸曰く、彼の【魔法】は全て自作のもの。【ホイミ】だけは物心がついた時には使えていたらしく、【ホイミ】の感覚を元に効果を変えて別の【魔法】を編み出していったらしい。

 

 【ホイミ】の回復という事象を手探りでこねくり回して変化させ、研究と訓練を重ねた結果ようやくできあがったのが【バイキルト】だった。

 

 一度感覚を掴んでからは【魔法】一つ作るのにそう時間がかからないようになり、様々な【魔法】を思いつくままに編み出していったという。

 

 

「一々【魔法】を声に出してんのはイメージを固める為だよ。【ホイミ】なら言わなくても使えるんだけど……【アタカンタ】とか【トベルーラ】は声に出さないと失敗する」

「へー……そんな感じでやってたのか」

「いつかは声に出さずに全部使えるようになりたいんだが……まだ無理だな」

 

 

 と、割と真面目な話をしていたのだがいきなり峰田が素っ頓狂な声をあげた。人数の多さもあってあまり広いとは言えない更衣室に汚い高音が響き渡る。うるせえ。

 

 なんだなんだと全員の視線が集まった先では壁にあった張り紙を捲った峰田がおり、指一本分より一回り大きいくらいの穴が空いていた。

 

 

「見ろよこの穴ショーシャンク!! 隣はそうさ、分かるだろう!? 女子更衣室!」

「あー……峰田?」

「峰田君やめたまえ! 覗きはりっぱな犯罪行為だ!」

「オイラのリトルミネタはもう立派なバンザイ行為中なんだよォォォ!!」

 

 

 最低である。

 

 何か言いたげな森岸と飯田の静止も無視してヨダレを垂らし、いざ桃源郷へと目を穴に向けようとして───

 

 

 

 

 ドックンッ!!!

 

 

 

 

「ああああああ!!?」

 

 

「……多分響香に筒抜けだからやめとけ、って言おうとしたのに」

「耳郎さんの【イヤホンジャック】……正確さと不意打ちの凶悪コンボが強み!」

 

 

 哀れ峰田。壁一枚向こう側から【イヤホンジャック】による眼球へのダイレクトアタック。ギャグ補正がなかったら失明待ったなしである。よかったなギャグ補正あって。

 

 

 その後、どこの阿呆がやったのか分からない穴は八百万の個性によってしっかりと埋められた。

 ついでに峰田は耳郎からヤオモモ製のハリセンを手渡された森岸から一発ケツハリセンをもらっていた。

 

 

 

「わざわざ【バイキルト】かけてすんなよォ!? めっちゃくちゃ痛ェし!」

「女子皆から言われたからだぞ。下手すりゃオレじゃなくて緑谷にやらせてた可能性もあったってのに」

「ハリセンスマッシュはケツが6つに割れちまう!?」

「割れないよ!?」

 

 

 多分割れる。ちぎりパンみたいになる。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。緑谷がオールマイトから【オール・フォー・ワン】についての話を聞かされている頃。森岸はまたもや相澤に呼び出されていた。

 

 体育祭の少し前から行っていた【魔法】の詳細確認の続きともう一つ、今回から別の理由が増えていた。

 

 

「というわけで普通科の心操だ」

「いやあの……どういうわけで?」

「……よろしく」

「ああうん、よろしく……」

 

 

 心操人使。先の体育祭で発目明と並びヒーロー科以外から第二種目まで勝ち残っていた普通科の男子生徒。

 

 さも『どうせ知ってるだろ?』とでも言いたげな相澤だが、知ってるは知ってるけどここにいる理由までは流石に知らない。

 相澤も『冗談だ』と珍しく非合理的な言葉を口にし、説明してくれた。

 

 

「体育祭で最終種目にすらいけなかったのが悔しかったようでな。職員室に来て『俺を鍛えてください』と言うから見てやってるんだ」

「おおう……見た目にそぐわぬ行動力……」

「……なりふり構ってられないからな」

 

 

 どうやら体育祭で鼻っ柱をへし折られた心操だったが、心までは折れていなかったらしい。

 教師達としてもそれだけ向上心がある生徒を『普通科だから』という理由で切り捨てる気にはならず、手が空いている教師が訓練を見てやっているとの事。

 

 確かに今の心操は体育祭の時と比べて僅かに身体がガッシリしており、ただの普通科と言うにはどこか風格のある様子になっている。

 

 しかしいつまでも同じことばかりさせていればそれでいいというわけでもなく。

 

 

「お前達の職場体験中はずっと体づくりをさせてたんだが、そろそろ次のステップに進ませたくてな」

「あー……怪我しかねないから回復させてやってくれと?」

「そういう事だ。勿論断ってくれても構わん」

 

 

 身体の基礎はできあがってきたから戦闘訓練に移らせたい。そうなるとどうしたって怪我をしてしまう。

 

 ただ治癒するだけならリカバリーガールに任せればそれでいいのだが、森岸の場合は体力の消耗無しで回復が可能な為少しでも多くの訓練を行うことができる。

 なので相澤としては頼めるならば森岸を頼りたいというわけだ。

 

 とはいえこれは相澤の、心操の都合に寄るもの。授業が終わった放課後故に強制力はなく、特に何の理由がなくても断ることができる。

 

 

「いいですよ? 全然」

「……いいのか?」

「はい。あ、でもそろそろ【魔法】の確認も終わるんで、それまででいいですか? 期末テストに備えたいんで」

「ああ。むしろ請け負ってくれただけでありがたい」

 

 

 だが森岸はあっさりと了承した。【魔法】の確認が終わるまでという条件付きで。

 

 森岸は見ていた。体育祭の騎馬戦であまりにも必死の形相でポイントを奪いに行っていたのを。

 

 何より彼が吠えていた『恵まれた人間』という言葉がずっとこびりついていた。

 望み通りでなかっただけで、他人よりも恵まれていた個性を『地味で目立たない』と決めつけていた事を自覚するきっかけをもらっていた。

 

 なのでお礼としてほんの少し手を貸してあげたい。そう思って森岸は回復役を請け負うことにした。

 

 

 

 

「それじゃあいい加減……一番ヤバイ【魔法】をやりますか」

「あれか……」

「え、何? どんな個性なんだ?」

 

 

 尚、この後まあまあ酷い目にあった。相澤からも『二度と使うな』とお墨付きを頂いた。何してんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

「ヒーロー殺し……捕まるとはね。それも子供相手に」

 

 

 薬品臭と機械の駆動音が混じり合う澱んだ空気。薄暗い部屋の中で煌々と光るモニターを無感動に見つめながら男は呟いた。

 

 

「暴れたいだけの人間、彼に共感した人間……様々な人間が衝動を解放する場として敵連合を求めるだろう」

 

「死柄木弔はそんな人間達を統括しなければならない立場となる!」

 

 

 キッチリと着込んだスーツからはところどころ管が伸びており、腕や胸、果ては喉や顔にすら管が差し込まれていた。

 

 しかしその声には微塵も弱々しさはなく、それどころか粘ついた悪意を滲ませながら楽しみで仕方がないとでもいう風に笑っていた。

 

 そこにもう一人の、やや嗄れた老人の声が差し込まれた。彼とは違い、どこか怪訝な様子で異を唱える。

 

 

「できるかねあの『子供』に。ワシは先生が前に出た方が事が進むと思うが……」

「ハハ……では、早く体を治してくれよドクター」

「【超再生】を手に入れるのがあと5年早ければなあ……傷が癒えてからでは意味のない、期待はずれの個性だった!」

 

 

 先生と呼ばれた男は苦笑し、叶わないと分かっていながらドクターと呼んだ男へそう告げる。

 ドクターとてそうできるならばしたいのだろう。しかし一通り様々な個性を試した後の現在、手の施しようがないのか吐き捨てるように言った。

 

 

「どこかにおらんもんかのう……数年前の怪我を後遺症ごと治してしまう個性」

「それは無い物ねだりというやつだよドクター。多くの個性を見てきたが……年月を飛び越えるような事象を引き起こす個性は一つか二つしかなかったからね」

 

 

 然程残念でもなさそうに先生は零す。ちなみにそれ貴方の天敵の所に一人いますよ。

 

 まさか先生も思うまい。己の天敵が、今自分が最も欲している個性となんの脈絡もなく遭遇していて、自分が望んでいたはずのことを天敵に施していたなど。

 

 この時点で先生とやらが想定している前提がクレーンゲームで荒っぽく獲得したスナック菓子の如く砕かれているのだけれど、それを先生が知る術はどこにもない。

 

 ただただ己の勝利を信じて疑わず、最後に笑うのは己であると全てを嘲笑う。その嘲笑が己に返ってくる末路を想起することもなく。

 

 

「そんなことはもういいのさ! 彼には苦労してもらう! 次の僕となる為に(・・・・・・・・)!」

 

「あの子はそう成り得る、歪みを生まれ持った男だよ」

 

 

 顔の上半分を潰され、最早口以外のパーツを持たぬ盲目は笑う。呼吸すらままならない身体にありったけの悪意を満たし、粘ついた笑みを浮かべていた。

 

 

 

「今のうちに謳歌するといいさオールマイト……この仮初の平和(茶番)をね」

 

 

 

 男は、オール・フォー・ワンはそれだけ言うと口を閉ざしてモニターを見つめ続けていた。

 

 

 

 ……しかしオール・フォー・ワンは知らない。本当に仮初の平和(茶番)を謳歌しているのはどちらなのかを。

 

 

 自意識改善中の化け物が天敵のすぐ側にいることを。

 

 

 

 






化け物「ヘクチッ」
耳郎「風邪?」
化け物「多分噂された」
耳郎「今有名人だもんね」
化け物「その度にクシャミしてたら死ぬって」
耳郎「それしゃっくりじゃなくて?」
化け物「いや普通に鼻と喉が」


Dr「いないかのう……つよつよ回復個性」
アフォ「いるわけないって」
Dr「雄英に実は一人くらい……」
アフォ「そんなんいたらもう気づいてるでしょw」
Dr「それもそうか……」



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