魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 ※タグに『耳郎響香』を追加しました。




 Q.何で迎えに来たの?
 A.無いとは思うけど試験前にコッソリ【魔法】を使わないか見張る為。

 Q.何故ミッドナイト?
 A.【魔法】抜きでギリギリ戦えそうな個性がミッドナイトくらいだった。13号とかプレゼントマイクだったら普通に負ける。


 Q.前書きの『いつも通り』について詳しく!
 A.いつも通りはいつも通りです。勉強の息抜きに耳郎の家でセッションしたり、座りっぱなしで疲れた森岸に耳郎が膝枕してあげたり、無理して頑張ろうとする耳郎を森岸が寝かしつけたりしてたくらいです。







31.教師が2の2対1

 

 

 

 森岸詠士 対 ミッドナイト(with【抹消】)

 

 

 普通に考えれば森岸の勝ち目が薄いなんてもんじゃない程の不利を背負わされた組み合わせ。

 

 ミッドナイトの個性は【眠り香】といい、体から放たれる香りによって強制的に眠らせる能力を持つ。ついでに女性より男性の方がよく効く。

 

 香りとは言うものの鼻でなくとも口で吸っても効果がある睡眠ガスのようなもの。つまり迂闊に近づけばその時点で森岸の敗北が確定する。

 

 だというのに対抗手段に成り得る【魔法】を【抹消】によって封じ込めてくるのだ。

 

 

「やり過ぎなんじゃ……って言いたいところだけど、正直これでも安心できないのよねぇ……」

 

 

 いくら教育現場と言えども過剰にしか見えない布陣。ミッドナイトとてあまり気が進んではいないけれど、そうでもしなければ試練にならないことを自覚している以上は何も言えなかった。

 

 今、ミッドナイトは脱出口となるゲートの前で待機している。シンプルだが最も森岸を困らせるであろう配置だ。

 

 これから30分間、森岸はイレイザーヘッドを振り切ってこれるのか。それとも何らかの対策をして真正面からミッドナイトを打ち破るのか。

 

 らしくもなく自身が挑戦者側だという意識を持ちながら、いつ来るかも分からない森岸を警戒していた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

『それじゃあ森岸の演習試験を始めるよ!』

「始まったか……」

 

 

 リカバリーガールのアナウンスが流れる。その瞬間からイレイザーは【抹消】を使用して森岸を睨む。これで森岸の個性が使えなくなった。

 

 それでも加減を知らない殺人的なトレーニングを積んできた森岸であればイレイザーの視線を切ることができるだろう。そうなれば【魔法】を取り戻した森岸がミッドナイトが待ち受けるゲートへと向かうはずだ。

 

 この試験は言わば二段階構成。教師達の想定ではまずイレイザーヘッドの【抹消】から逃れられるかをテストし、その後如何にしてミッドナイトを超えるかというもの。

 

 無論ミッドナイトと交戦中になっていてもイレイザーが森岸を発見した場合は【抹消】を使われる。

 

 つまり森岸は【抹消】が切れたタイミングでミッドナイトの元に向かい、イレイザーヘッドが追いついて【魔法】が切れる前に勝つしかない。

 

 少なくとも教師陣はそう思っていた。

 

 

 故に、彼が下した判断は想定外にも程があった。

 

 

 

 

 

「じゃ、先に相澤先生倒しますか」

「────は?」

 

 

 

 

 何を言ってるんだコイツは。そう思った時には目の前に森岸が踏み込んで来ていた。

 

 一瞬遅れて理解したイレイザーは不格好に横っ跳びをして距離を取る。ついさっきまで自分の頭があった空間に森岸のパンチが振り抜かれていた。

 

 

「え? これダメなやつですか?」

「いや、駄目とは言ってないが……そうくるのか……」

 

 

 完全に読み違えた。舐めてかかっていたというつもりはなく、ただ漠然と誰もが逃げの一手を選ぶとばかり思っていただけだ。

 

 何よりイレイザーも自分で言っていた。【魔法】抜きの森岸との模擬戦で10回中2回は負けると。

 

 そして今のイレイザーはハンデとしての重りを装備している上に『戦闘には参加しない』と宣言している。

 模擬戦の時よりもずっと不利な状況、なるほど森岸からすればイレイザーの討伐を選ばない理由がない。

 

 

(これはやらかしたな……すいませんミッドナイトさん)

「何回目か忘れましたけど、今回は勝たせてもらいますよ」

「……お前は本当、嫌になるくらい優秀な生徒だよ」

 

 

 加えてイレイザーに逃走は許されない。イレイザーが逃走すれば森岸はすぐにでも【魔法】を使う。そうなればますますイレイザーとミッドナイトの二人には勝ち目がなくなる。

 

 開始数秒で立場が逆転した。【抹消】を振り切らなくてはならなかったはずの森岸によって【抹消】を継続する為に森岸から離れられなくなってしまった。

 

 とはいえ黙ってやられてやる程イレイザーは優しくない。

 

 

「そうくるなら、俺も抵抗させてもらう!」

「っ!」

 

 

 最早二つ目の個性と言ってもいいレベルで使い込まれた捕縛布。真っ直ぐに森岸へと向かって伸びるそれはイレイザーの手元一つで変幻自在に軌道を変え、森岸を絡め取らんとうねり始める。

 

 対する森岸は捕縛布を避ける──のではなく、敢えて左腕に受ける。バチン! と鞭のように叩きつけられ巻きついた瞬間、背負い投げのように思い切り捕縛布を引いた。

 

 

「っ!?(こっちが引き寄せられ───)」

「後で治すんで勘弁してくださいよ!」

 

 

 捕縛布が引っ張られ、森岸に接近させられた(・・・・・)イレイザーの体勢が大きく崩れる。その先に待ち構えているのは右腕を大きく引いた森岸。

 

 マズイ、と分かっていても抗えない。咄嗟に腕を交差させてみるが、その上から力一杯に振り抜かれたテレフォンパンチが叩きつけられた。

 

 ミシリと痛みを訴える両腕。折れるまではいかなくともヒビくらいは入ったのか鈍い痛みが痺れと共に主張してくる。

 

 

「ぐ……いつもの事ながら個性抜きのパワーとは思えんな……!」

「鍛えてるんで……ねっ!!」

「ちっ!」

 

 

 イレイザーにとって何より辛いのは重りによる対応速度の低下だ。各教師の体重の半分となる重りはいつもよりコンマ数秒の遅れを生み出してしまう。

 

 普段なら対応できていたはずの攻撃に対応できない。追撃の回し蹴りを跳躍による回避ではなく痺れの残る右腕でのガードを選ばされる。

 

 そして最悪は積み重なる。

 

 

「【スピオキルト】!」

「しまっ───」

 

 

 体勢が崩れた一瞬を森岸が見逃さなかった。視線が外れたのを確認した瞬間に【スピオキルト】を使用。これで森岸のパワーとスピード、そして防御力が強化された。

 

 それはイレイザーヘッドの敗北と同義だった。

 

 

 

「これ、ミルコさんから教わったんですよ」

「───クソ、後で治せよ」

 

 

 

 踵半月輪(ルナアーク)。兎の脚力から放たれていたかかと落としを模倣した森岸の蹴りがイレイザーを地面へと叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで【魔法】全開でいきますね」

「カヤマヲイジメヌンデ……」

 

 

 で、イレイザーヘッドがいなかったらこうなるわけ。

 

 悲しいかな近接戦闘を拒絶する為の【眠り香】は【バイキルト】の重複によって得た超パワーの風圧であっさりと吹き飛ばされた。

 ならば鞭で攻撃を、と思ったら【スピオキルト】による防御力強化のせいで怯んでもくれない。

 

 挙句の果てになりふり構わず真正面から抱きついて【眠り香】を吸い込ませたかと思えば【ザメハ】という眠気を吹っ飛ばす【魔法】を使われた模様。

 

 ならばしがみついて【眠り香】漬けにしてやろうと試みるも、普通にパワー負けしていたせいであっさり振り払われた上に抵抗すんなと横抱きに抱えあげられる始末。

 

 

『森岸詠士、条件達成だよ!』

「ふぅ……何とかなったか」

「はわわ……」

「あの、そろそろ下ろしていいですか? 首に回した手、離してもらっていいです?」

 

 

 ちょっとキュンとしてんじゃねえぞ31歳。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 しんどい。何がしんどいって【スピオキルト】に【バイキルト】二回重ねたせいで腕が滅茶苦茶痛い。早く治したいんで離してくれませんかミッドナイト先生。

 

 よかった降りてくれた。あー、これは【ベホイミ】くらいいるかな。三回分重複でこれなら【スカラ】で耐久上げてからした方がいいな。

 

 

「コホンッ……そ、それにしても想定外だったわ。まさかイレイザーヘッドを倒してから来るなんて……」

「重り無しならそんな選択肢なかったんですけどね。そうなれば相澤先生も抵抗してくると思ってたんで」

「だろうな……クソ、何時間も会議しておいてそんな事にも気がつかないとは……」

 

 

 あ、相澤先生もう戻ってきたんですか。結構強めにやったからしばらくは戻ってこないと思ってたんですが。

 

 とりあえず二人に【ベホイミ】を使用。ついでに【ホイミ】も使って怪我だけじゃなく疲労まで消しときますね。

 

 

「あ……ああっ……なにこれ凄い……ぃっ!」

「……変な声出すのやめてくれませんか」

「むしろよく相澤先生無言でいられますね」

「何回もやられれば慣れもする」

 

 

 うっわエッロ。そのコスチュームで悶えながら艶っぽい声出すの股間に悪いんでやめてくれませんか。

 

 

 まあ、これで試験クリアってことでいいんだろうか。リカバリーガールに聞いた話では課題によってはクリアしても内容次第で不合格判定になるとか言ってたけど。

 

 相澤先生に聞いてみたけど首を横に振られた。この場では教えてくれないかやっぱり。

 

 でもミッドナイト先生によると多分大丈夫じゃない? との事。やったぜ。

 

 

「それにしても……教師として情けない話だけど、あなたの弱点ってなんなのかしらね。誰が相手で何されてもピンピンしてそうなんだけど」

「あるにはありますよ?」

「……お前が思うお前の弱点か。聞かせてみろ」

 

 

 俺の弱点かあ。無いわけじゃないんだけど……と思ったら相澤先生が食いついてきた。

 

 とはいってもそんなにおかしな弱点ではないと思う。誰にでもありそうな弱点だし。

 

 

 まず【魔法】の明確な短所として『初動が遅い』という部分がある。

 

 強化する前から一撃で仕留めにかかられると負けるし、不意打ちに滅法弱いとも言える。強化という段階を挟む必要があるのでその前に動かれると対応しきれない可能性がある。

 

 次に『口を塞がれた時点で負ける』もある。

 

 【魔法】は特定の言葉を詠唱しなければ発動できず、喋れないようにされると【魔法】が使えなくなる。

 唯一【ホイミ】だけは使えるが【ホイミ】だけではどうやっても敵を倒すことは不可能だ。

 

 それと『遠距離攻撃の手段がない』というのもある。

 

 一応【バイキルト】で強化したパワーで物を投げるという手段はあるけど、これは周囲の環境に左右されるから安定しない。

 その前に近づいて殴ればいいんだろうけど、触れたら発動するタイプの個性とかいたら手間がかかってしまう。

 

 4つ目に『強化が味方の足を引っ張る可能性がある』だ。

 

 職場体験の時にふと思いつきで試したのだが、元の能力が優れている人に更に強化をかけると制御しきれず自爆するという事が判明した。

 

 スピードに優れたヒーローに【ピオラ】を使ったり、パワーが凄いヒーローに【バイキルト】を使ったりする時はその辺を考慮しないと邪魔にしかならないのだ。

 

 ……いやでもオールマイトに【バイキルト】二回かけた時は何ともなかったな。あれ?

 

 

「…………」

「…………」

「……あれ? どうしました?」

 

 

 なんか相澤先生もミッドナイト先生も凄く微妙な顔をしておられるんだが。

 

 

「……お前の言う弱点、それ色んな奴に当てはまるんじゃないのか」

「え」

「不意打ちに弱いって……そもそも不意打ちに強い個性なんてないでしょ。あなた何と比較してるの?」

「ええ……」

 

 

 そんな事言われましても。自分なりにできない、足りてない部分を挙げるとこうなるんですもん。

 

 

「改善点を探すこと自体は悪くないが……お前の悩みは他の連中と比べると贅沢に見えるな」

「そうねえ……いっそ弱みの克服じゃなくて強みを伸ばす方向で考えたらいいんじゃないかしら」

「強みを?」

 

 

 【魔法】の強みっていうと手札の数か? いやでも最近は新しい【魔法】の考案も行き詰まりを感じるしな……それか【ベホイム】の先を考え───あ。

 

 

 

 

 

「……ありがとうございます」

「あら?」

「今ので少し、いい事を思いつきました」

「……何故だろうな。胃痛が加速する気しかしない」

 

 

 

 

 






・ザメハ

 味方全体の眠りを回復する魔法。こっちが先に出たのに後に【キアリク】が麻痺回復と眠り回復を複合した効果になってしばらく出番がなかった。
 本作では単体効果。眠くなる状況下が限定的過ぎてあんまり出てこないと思う。


香山「この心臓の音……もしかしてこれが恋?」
森岸「倍近い年齢差は流石にちょっと。というか教師と生徒の関係性でそれはいかんでしょ」
相澤「急激にアオハル成分を摂取したせいでは?」
香山「やっぱそうよね。アオハル成分恐るべし……」
森岸「アオハル成分って何???」
相澤「知らん」



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