魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 今更ですが主に本編開始前などで一部時系列が異なる部分があります。本当におかしい部分があったら感想欄にてご指摘頂けると助かります。

 また今回の展開はご指摘をいただく可能性が高いと判断し、匿名設定を解除することにしました。これでパクリとは言われないな! ヨシ!
同じ展開の使い回しとか言わないでもろて。




 Q.言うほど初動遅いか?
 A.本人の認識では遅い。比較対象のヒーローがオールマイトとかミルコのようにノータイムで殴りかかれる方々だからというのが理由。

 Q.先生全員気づけなかったの?
 A.ハンデありとはいえ一対一で殴り合いしてプロに勝てる奴の方がおかしいからしゃーない。

 Q.ミッドナイト抱きついてたけど耳郎ちゃん怒ってない?
 A.尋ねたところキョトンとした顔で「何で?」って言われました。何で……何で?







32.パニックエンカウント

 

 

 

 コンコン、と薄暗いノックが響く。次いで死柄木さん、と旗頭の名を呼ぶ声がした。

 

 

「よう。こっちじゃ連日あんたらの話で持ち切りだぜ。何かでけえ事が始まるんじゃねえかって」

「……で、そいつらは?」

 

 

 腹立たしい様子を隠そうともせず、死柄木弔はグラスを握り潰して粉々にしてしまう。

 

 ただでさえ不機嫌そうだった彼の目に映ったのは仲介人の連れ。片やありふれた女子高生の様な出で立ちで、片やゾンビも真っ青な火傷の酷い男。

 

 両者に共通しているのは『明らかに表の人間では無いという雰囲気』のみ。どこか破綻したような空気を纏っている二人を見て、死柄木弔は目を細めた。

 

 

「……生で見ると気色悪ィなァ」

「手の人! ステ様の仲間だよね!? ねえ! 私も入れてよ敵連合!!」

「…………黒霧、コイツらトバせ。俺の大嫌いなもんがセットで来やがった」

 

 

 彼から見た二人の第一印象は礼儀知らずとガキ。真面目に取り合うだけ馬鹿らしいと思ったのか黒霧に命令を出した。

 

 しかしそういうわけにもいかない。既に仲介人と黒霧の間で金が動いている。一目見て気に食わないからと追い返してしまえば支払い損だ。

 加えて仲介人は裏社会でもそれなりに名の知れた男。そんな人物が紹介したのだから少なくとも戦力としての期待はできる。

 

 

「そうそう、紹介くらいは聞いときなよ。まずこっちの女子高生から」

「トガです! トガヒミコ! 生きにくいです! 生きやすい世の中になってほしいものです!」

 

 

 名も顔も知れ渡っていないけれど、連続失血死事件の容疑者として追われているという少女。トガヒミコと名乗った彼女の目は何を映しているのか妙にギラギラとした輝きを持っていた。

 

 ヒーロー殺しを『ステ様』と呼び、様を付けるほど敬愛しているのにそのヒーロー殺しを殺したい、だから敵連合に入れてくれと宣った。

 

 

「……意味がわからん。破綻者かよ」

「会話は一応成り立つ。役に立つよ」

 

 

 仲介人としても思うところはあるのだろうが、死柄木弔が求めている戦力としては申し分ないだろうと苦笑を浮かべる。

 

 それからもう一人。目の下、口から鎖骨の下まで。服の隙間から覗く肌さえも焼け爛れた痕が痛々しい男。

 仲介人によれば目立った罪は犯していないものの、ヒーロー殺しの思想に固執しているという。

 

 

「不安だな……この組織、本当に大義はあるのか? まさかこのイカレ女入れるんじゃねえよな?」

「おいおい、その破綻JKすらできることがお前はできてない。まず名乗れ。大人だろう」

「今は荼毘で通してる」

 

 

 火葬を意味する名を名乗った男はつまらなそうに死柄木弔を見つめている。本名を語る気はないようでその態度がますます死柄木を苛つかせる。

 

 そして最後の一線は酷くアッサリと越えられた。

 

 

「ヒーロー殺しの意志は俺が全うする」

「聞いてないことは言わなくていいんだ……どいつもこいつもステイン、ステインと……」

「いけない、死柄木弔……」

 

 

 

「良くないな……気分が良くない」

 

 

 

 ゾア、と肌が粟立つような殺意が放たれる。そして一切の躊躇なく【崩壊】を齎す手がユラリと伸ばされた。

 

 同時にトガヒミコと荼毘も動く。死柄木がそうしたように二人もまた手を、或いはナイフを突き出そうとし───

 

 

「──落ち着いてください、死柄木弔」

「…………!」

「これが……」

 

 

 それはダメだ、と黒霧が【ワープゲート】を割り込ませた。

 

 ナイフは床に突き立てられ、荼毘と死柄木の手は何も無い虚空へと向けられた。殺意の衝突は黒い揺らぎに逸らされてしまった。

 

 

「排斥ではなく受容を。死柄木弔……利用しなければ全て……彼の遺した思想も全て」

「……うるさい」

 

 

 黒いモヤから手を引き抜くと、死柄木は拗ねた子供のように中身のない反抗を口にした。

 そのまま誰の静止も聞くことはなく、行先も告げぬままドアの向こう側へと行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 ──信念なき殺意に何の意義がある。

 

 

 そう語っていたただの敵はその後アッサリとヒーローに敗れた。それもプロヒーローですらない、職場体験中の雄英生に。

 

 死柄木弔は理解できない。この日常が詰まったショッピングモールの光景が。誰もが平然と笑い合い、楽しそうにしている様が。

 

 

 彼の言う"警鐘"とやらは何の意味もないように見えた。何人ものヒーローを終わらせた彼の戦いは対岸の火事にさえなれなかった。

 

 人々は誰も考えもしない。今隣にいる人間が次の瞬間には敵になるかもしれない可能性を。数秒後に血が流れる未来の想像さえしていない。

 

 

 ──俺と、アイツの違いは何なんだ

 

 

 ヒーロー殺しの理想は潰えた。他ならぬヒーロー殺しがヒーローに負けたことで偽物の英雄を消すことは叶わなくなった。

 

 だというのに、彼の意志だけが遺っている。

 何も考えずにただ『カッコイイから』と模倣する者もいれば、メディア越しに伝え聞いた信念に惹かれて敵連合の門を叩いた者もいる。

 

 その差が死柄木弔には分からない。自分もステインも"気に食わないものを壊したい"という一点においては同類であるはずなのに。何故、どうして彼ばかりに目がいく。

 

 

 

 

 

「お前はどう思う? あの日あの時、ヒーロー殺しと戦ったんだろ? なあ……」

 

 

 

 

 

「森岸詠士……」

 

 

 

 

 

 彼の首に手をかけながら、死柄木弔はそう尋ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 期末テストを終えたA組。その結果は5名の赤点が出たというものだった。

 

 赤点は学校で補習地獄。そう聞かされていたこともあり心当たりのある5人は死刑宣告2秒前という面持ちで相澤の言葉を待っていた。

 

 

『林間合宿は全員で行きます』

 

 

 まさかのどんでん返し。5人は一斉に声を上げ、そのうち1人は羞恥心もあってすぐに俯いていた。

 

 相澤によると、要は合理的虚偽。生徒を追い詰めて尻に火をつける為だとか。

 それに赤点が出たのは全て演習試験だ。ならば尚のこと力を付けてもらう必要があり、合宿不参加はマイナスでしかない。

 

 それはそれとして全部が全部嘘というわけでもなく、補習が地獄であることは変わらない。ぶっちゃけ学校に残る方が楽だと相澤は言う。

 

 赤点の5人は始まる前から地獄が確定してしまったが、何にせよ林間合宿は全員で参加できる。そうなるとテンションが上がるのも当然なわけで。

 

 林間合宿に向けて準備するなら皆で買い物に行こう! という話になり、轟と爆豪を除いたA組全員でショッピングモールへと足を運んでいた。

 

 

 そこで最悪のエンカウントが発生した。

 

 

 

「……首に手ェかける友人なんざ異質だろ。何もしねェからこれ離せよ」

「そうしたいのは山々なんだがな。これがなきゃ俺はお前を止められないんだ」

 

 

 

 トイレに行って戻ろうとしていた森岸と死柄木が遭遇。体育祭で見た、とファンを装って接近し【崩壊】を与える手を首に這わせた。

 

  何がしたい、と尋ねてみれば『お前と話がしたいだけだ』と笑う。加えて怪しまれぬよう友人のように振る舞え、とも。

 

 

「安心しろよ。個性の無断使用は犯罪だ。ヒーロー志望な以上抵抗する術はねェよ」

「はあ……? お前、それマジで言ってる?」

「大真面目だよ。犯罪覚悟でお前を倒すか大人しくするかしかない。それなら今の俺は後者を選ぶってだけだ」

「はっ、ヒーローの卵が敵殴って捕まるのか。皮肉だな」

 

 

 一歩間違えれば、或いは間違えなくとも死柄木の気分次第で殺されかねない状況で森岸は極めて冷静だった。

 

 声を荒らげることもなければ恐怖に震えてもいない。それこそ死柄木の要求通り友人にするように気安い態度を取っていた。

 

 

「話がしたいなら聞いてやる。だからこれ離してどっか座らせろ。この体勢だとすぐにバレて大騒ぎになんぞ」

「……俺が言うのもなんだが大した度胸だなおい」

「ここで戦ってもお互いロクな結果にならねぇだろ。他の皆と出会して騒ぎになる前に行くぞ」

 

 

 なんなら会話の主導権を握り返していたりもする。脅迫されてるんだよな? と死柄木ですらちょっと引いている。

 

 しかし他の生徒との合流が不都合なのも事実。死柄木は渋々ながら森岸の提案に従い、手を離してベンチへと移動した。

 

 

 薄らと張り詰めた空気の中、ベンチに横並びで座る二人。まだ自分の正体に気づかれていないことを確認し、死柄木は話を切り出した。

 

 その内容は『ヒーロー殺しと敵連合の違いとはなにか』というもの。

 

 森岸にも心当たりがある。保須市の事件ではヒーロー殺しに加えて脳無の存在が、敵連合との繋がりを報じられていた。

 だが敵連合の扱いはヒーロー殺しの付属品程度。どちらかと言えば"あの"ヒーロー殺しが、という雰囲気だった。

 

 

「誰も俺を見ないんだよ……何故だ?」

「……」

「いくら能書き垂れようが、結局の所は奴も気に入らないものを壊していただけだろう」

 

 

 それが気に食わない。同じことをしていて注目に差が出る理由が分からない。直接ヒーロー殺しと戦い、打ち破った森岸ならば何か知っているだろうと尋ねた。

 

 

「…………アホか」

「あ?」

「どんな大層な話かと思ったら……『何か思ってたよりバズらなかった』って相談された身にもなれよ」

 

 

 死柄木の問いかけに対し、森岸は呆れたように答えた。

 

 一瞬、苛立ちのままに殺してやろうかと血管が浮き出た死柄木だったが、少なくとも森岸は何かしらの答えを持っているとわかりなんとか踏みとどまる。そしてどういう事だ、と続きを促した。

 

 

「活動開始から半年の敵と数年間のうちに何十人も殺した敵。注目度合いが違うのは当然だろうが」

「……それは」

「そもそもの知名度が違い過ぎるんだよ。ポッと出のよく分からん敵と、何年もかけてやっと捕まった敵だぞ」

 

 

 何か想像とは違う回答が返ってきた。死柄木は少し困ってしまった。

 

 いや全くもって正論ではある。積み上げた罪状が違い過ぎるし、敵連合が世間に出たのも今年の四月だ。そりゃあ注目度合いが違う。

 

 ただ死柄木が聞きたいのはそういう事じゃない。そういう事だけどそうじゃない。何かこう、他にないのかと敵とは思えぬ態度で質問を続けた。

 

 

「他、ねえ……強いて言うのなら思想の有無だろ」

「思想……信念というやつか?」

「信念……まあ間違っちゃいないか。ヒーロー殺しには英雄回帰って思想があったが、お前ら敵連合はそうしたものを主張しなかった」

 

 

 持論だが、と森岸は前置きした上でこう続けた。

 

 

 思想の有無は敵の種類を明確に分ける。

 

 例えば金目当てで人を殺した敵には『金の為なら人だって殺す人間』という認識になる。そしてそれ以上の興味が湧くことはない。

 

 ヒーロー殺しの場合は『間違った社会を正す為にヒーローを殺した人間』であり、何故そんな事をしたのかに興味が続いていく。自然と彼の思想を理解するものだって現れる。

 

 その点敵連合はどうだろうか。何の主義主張もなくただ暴れるだけ。脳無という不気味な存在もいるけれど、それだって今のところは不気味なだけでやってる事は破壊行為でしかない。

 

 裏社会で注目が集まっているのなら、それは単に力を持っているから。他の敵が己の思想の為に利用できるかもしれないと舌なめずりをしているだけだろうと。

 

 

 森岸の指摘に思うところがあるのか死柄木は黙ってしまった。

 事実、敵連合の元に来たトガヒミコと荼毘はヒーロー殺しにあてられた事で生まれた目的があって来たわけで、敵連合の仲間になりたくて来たという風ではなかった。

 

 

「お前ら敵連合はそこら辺のチンピラが『気に食わないから』で人を殴ってんのと何ら変わらん。理解も共感もしようがない」

「…………」

「注目を浴びて何をしたいのか知らねえが、単に暴れてスッキリしたいだけならもうやめとけ。もっと取り返しがつかなくなるぞ」

「…………何を、したい」

 

 

 そして突き放すように締め括ると、死柄木はどこか上の空の様子でフラフラと立ち上がるとブツブツと呟きながら去って行った。

 

 

 それから入れ替わるように数人のA組生徒が駆け寄ってくる。耳郎が青い顔をして心配そうに声をかけた。

 

 

「詠士! 今のって……!」

「……敵連合の死柄木弔だった」

「大丈夫!? 何もされてない!?」

「…………人生相談された」

「……はい?」

 

 

 いや本当にそうとしか言えないんです。だからそんな胡乱げな目で見ないであげてください。

 

 

 

 

 







森岸(バズらなくて悩んでるインフルエンサーかよ)
死柄木「おい何だその目は」
森岸「いや別に……」



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