魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.もう恋人とかそういう段階すっ飛ばしてない?
 A.ぶっちゃけほぼ両親公認。親が何も言わないのは『どうせ言わなくてもそのうちくっつくでしょ』と思ってるから。

 Q.どっちかが告白、もしくはプロポーズしたらどうなる?
 A.二人にとっては事実確認にしかならないので滅茶苦茶アッサリゴールインする。多分晩御飯のメニューどうしよっかくらいの感覚でポロッと言われてサラッと頷いて終わり。

 Q.これ掘り返したらもっとエピソード出てくる?
 A.雄英入学までのエピソードだけで番外編がいくつかできるくらいには出てくる。







35.個性伸ばし

 

 

 

 合宿2日目。時刻は5時半。

 

 8時間の行軍による疲労が抜けきらない生徒達は眠気を拭いきれないといった様子で体操服に着替えて集まっていた。

 

 ついでに1名。魔力切れという唯一無二の理由で疲弊していた森岸も回復済み。本当なら皆に【ザメハ】と【ホイミ】をかけて万全にしてあげたいところだが、今日も魔力切れを起こす可能性が高いと思いグッと我慢中。

 

 

「おはよう諸君」

「「「おはようございまーす……」」」

「眠そうだな……」

 

 

 相澤の挨拶にもこの反応。いつもならスイッチでも入るように背筋が伸びたのだろうが、流石に今日はそうはいかないようだ。

 

 しかし相澤が話し始めると徐々に目が覚めてきたらしく、全員の目がしっかりと開いたあたりで説明が始まった。

 

 

 今回の合宿の目的は全員の強化及び、それによるヒーロー仮免の取得。敵連合をキッカケに具体的になりつつある敵意に立ち向かう為の準備だ。

 

 その為の訓練として何をするのか。その説明をする前に相澤は爆豪に声をかけた。

 

 

「というわけで爆豪。こいつを投げてみろ」

「これ……体力テストん時のか」

「前回の……入学直後の記録は705.2メートル。どんだけ伸びてるかな」

 

 

 ポンと投げ渡されたのは見覚えのある球体。入学直後の個性把握テストにてボール投げの種目に使われていた計測器だ。

 

 これに生徒達は俄に騒がしくなる。雄英に入学してからの数ヶ月での成長を数字という形で分かりやすく可視化するのだ。楽しみでないはずがない。

 

 爆豪も不敵に笑いつつ自身の成長がどれほどのものか楽しみな様子。相変わらず物騒な掛け声を上げながら全力でボールを吹っ飛ばした。

 

 

 ──結果は709.6メートル。

 

 

「あ……?」

「伸びてはいるけど……思ってたより全然……」

 

 

 その成長は僅か4.4メートル。誤差程度の変化しか見られなかった。

 

 あの爆豪が? という疑問とそんなはずは……という焦りが噴き出す。ストイックな爆豪でアレならば自分達はどうなるのか、と。

 

 ざわめきが育つ前に相澤が声を差し込んだ。

 

 

「約三ヶ月間。様々な経験を得て確かに君らは成長している。だがそれはあくまでも精神面や技術面……あとは多少の体力的な成長がメイン」

「っ、そうか……!」

「今見た通り個性そのもの(・・・・・・)はそこまで成長していない。だから個性を伸ばす(・・・・・・)

 

 

 死ぬほどキツイが、くれぐれも死なないように。相澤はそう締め括ると個性伸ばし開始の宣言をした。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 例えば筋繊維。酷使することによって壊れ、再生する。それを繰り返す事でより強くより太い筋繊維へと成長する。

 

 個性も同じ。使い続けて負荷をかけ、負荷を癒すことを繰り返して強くする。

 

 故にやるべき事は一つ。個性の限界突破だ。

 

 

 上鳴の【帯電】や青山の【ネビルレーザー】のように許容上限のある発動型であれば上限の底上げの為、外部電源からの通電を受け続けたりレーザーをずっと射出させたりとなる。

 また砂藤の【シュガードープ】や八百万のように明確な補給手段と消耗がある場合、補給と消耗を延々と繰り返したりもしている。

 

 異形型、及びその他複合型は個性に由来する器官や部位の更なる鍛錬。A組で挙げるならば障子の【複製腕】や峰田の【もぎもぎ】等が該当する。

 

 要は痛くても辛くても個性を使い続ける。ただそれだけだ。

 

 

 ではその中でも特に異質と言える【魔法】の個性……森岸のトレーニング内容も同じなのかと言うと、半分正解であり半分間違いだ。

 

 何故かと言うと──

 

 

 

「森岸くーん、また一人怪我人出たからよろしくー」

「了解です! 今度は……またお前か緑谷」

「ご……ごめんね……」

「すまんもう一人追加だ。切島が倒れた」

「あ、はい」

 

 

 ……と、まあこの通り他の生徒の治療も受け持っているからだ。

 

 

 正直なところ、教師達の間でも森岸の訓練内容については方針が定まっていなかった。何せ許容上限にしろ手札の数にしろプロヒーローに引けを取らないレベルで仕上がっている。

 

 それが合宿初日にて初めて『魔力切れ』という限界が見えた。これに相澤は目をつけた。

 

 勿論相澤とて分かってはいる。森岸が魔力切れを起こすことなんてそうそうないということを。

 

 しかし『【魔法】を改良、開発する場合においてはその限りでない』ことも判明した。ならば魔力量を強化しておく分には困らないだろうと相澤は判断した。

 

 

 その結果として森岸に課されたのは『【魔法】の改良、開発及び怪我人の回復』となった。森岸ありきで考えてる癖がついてるのは教師の方では? ボブは訝しんだ。

 

 これにより森岸の許容上限は更に強化されつつ、ただでさえ多い手札をより増やす事ができる……かもしれない。

 

 

「まだいけそうか?」

「はい。【インテ】あると魔力効率がちょっとだけ良くなるっぽいんで、少なくとも昼までは保ちます」

「それでも昼までか……倒れる前に止まれよ」

 

 

 とはいえ森岸に倒れられても困るので適宜休憩を取るようにも言われている。森岸の申告によると完全に魔力が尽きた場合と極小量でも残っている場合で復帰の速度が段違いなのだとか。

 

 故に傍から見ると『何かアイツだけ訓練が優しくない?』と思うかもしれないが、その実誰よりもハードモードだったりする。

 

 だってねえ……? よく言えば気をつけてもらってると言えるけど、現実は加減を間違えると『引き際も見極められねえのかこのアホ』って感じで叱られるし……。

 

 

 そんなこんなで彼が最初に着手したのは回復魔法【ベホイム】の改良。全ての【魔法】は【ホイミ】から派生したというのもあり、最も改良しやすいものから手をつけているらしい。

 

 うんうんと唸ってはあれも違うこれも違うと呟き、気絶しない程度に自傷しては回復を繰り返している。何してんだお前。

 

 

「何回見てもびっくりする……」

「ん? ああすまん。見えないようにやるわ」

「いやそういう問題じゃなくて……もういいや。ごめんね」

 

 

 いくら訓練に必要だからって無表情で淡々と自分の指へし折るのは怖いのよ。顔色ひとつ変えずにボキボキ音鳴らすようなことしないでもろて。

 

 今だって緑谷の目の前で指があられもない方へと曲げられていた。言っとくけどお前も大概だぞ緑谷。

 

 流石にプッシーキャッツの皆さんとしても直視したくないのか、ちょっと引き気味。唯一「サーチ」の個性のせいで直視しなきゃいけないラグドールだけが目を逸らせずにいる。可哀想。

 

 

「あ……そろそろ無理そうですね。一旦休憩入ります」

「え゙」

「よーし皆! 森岸くんしばらくいないから怪我しても治せないからねー!」

 

 

 で、休憩に入るとこうなる。

 

 森岸の回復があるうちは結構無茶をしても治してもらえるのだが、森岸が休憩に入るとそうもいかない。

 なるべく怪我をしたりしないようにはしているけれど、森岸がいなくなるともっと怪我への注意力を高める必要が出てくるのでより集中して訓練にあたらなければならなくなるのだ。

 

 尚、森岸がいたらいたで『どうせ治してもらえるからプルスウルトラして頑張れ。しろよウルトラ』されるだけなのでどちらにせよ地獄である。

 

 

「で、どうだ。改良できそうか?」

「そうですね……とりあえず【ベホイム】の一歩先まではいけました」

「ほう……早いな」

 

 

 休憩中は先生の傍で待機。進捗どうですか? と特定の方々を吐血させそうな報告の時間となる。

 

 森岸によるとひとまず改良に成功……したものの何とも言えないらしい。

 

 

「【ベホマ】って言って、重傷軽傷を問わず一発で全回復させる【魔法】ですね」

「……聞いた限りだと十分優れた効果だと思うが、何か欠点でもあるのか?」

「とんでもない重傷ならともかく……【ホイミ】とかで間に合う怪我にまで使うと消耗が大きいだけで無意味なんですよね」

「ふむ……その辺りはお前の判断次第になるわけか」

 

 

 魔力消費量は【ベホイム】より上なのに、怪我によっては【ホイミ】と同程度の効果に終わってしまう。つまり判断を誤ると無駄な消耗が増えるということになる。

 

 何より【ベホイム】でも大抵の負傷を回復できてしまうので、余程死にかけている場合でもなければまず使うことの無い【魔法】だろう。

 

 だが【ベホマ】はあくまでも取っ掛り。ここから【ホイミ】から派生させたように【ベホマ】からまた別の【魔法】へと派生させればいい。

 

 

「なのでまあ……ようやく一歩目って感じです」

「そうか。二日目の午前中でそこまでできたなら上出来だ」

「うっす」

「だからこそ今は休んでろ。午後からも死ぬ気でやってもらうからな」

「うっす……」

 

 

 もう相澤には【魔法】がどこまでいくのかさえ想像がつかないけれど、森岸が本気で取り組むというのならば背中を押してやるだけだ。

 

 森岸は皆の悲痛な叫びを温かい目で見守りながら、魔力の回復を待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 雄英生達の訓練が終わり、夕食に舌鼓を打っている頃。

 

 夜闇の中煌々と明るく目立つ合宿所を崖の上から見下ろす影が複数人。目的も足並みも何一つ揃っちゃいない、悪意に塗れた人影が立っていた。

 

 

「疼く……疼くぞ……! 早く行こうぜ……!」

「まだ尚早……それに、派手なことはしなくていいって言ってなかった?」

「ああ……ガキみてェな態度取ってたクセに、急にそれらしく振る舞いやがってな」

 

 

 

「今回はあくまで狼煙だ……虚に塗れた英雄達が地に堕ちる。その輝かしい未来の為のな」

 

 

 

 悪意が集い嗤う。荼毘が、トガヒミコが、学ランとガスマスクの少年、黒マントに身を包んだ巨漢が。輝かしい未来を見下ろし、悪辣な笑みを浮かべていた。

 

 

 

「……ていうか、これ嫌。可愛くないです」

「裏のデザイナーと開発者が設計したんでしょ。見た目はともかく理には適ってるはずだよ」

「そんな事聞いてないです。可愛くないって話です」

 

 

 管塗れのマスクにつまらなそうな顔をするトガヒミコ。それにガスマスクを着けた学ランの少年……マスタードが咎めるように言うけれど、破綻者らしく聞き入れるつもりはないらしい。

 

 チラと他の連中に視線を向けても会話になりそうな応答は返ってこない。思い思いの欲望を滲ませるばかりで仲間とすら認識していない。

 

 

「どうでもいいから早くやらせろ! ワクワクが止まんねェよ!」

「黙ってろイカレ野郎共。まだだ、決行は10人全員揃ってからだ」

 

 

 荼毘の面倒くさそうな声に呼応するように、後ろからまた数名の足音が響く。ザリ、という音と共に現れたのもやはりまともとは言い難い風貌。

 

 普通の服を着ていながらその手には極太の鈍器を手にしたサングラスの男、口以外の全身を覆われた状態で両手をも拘束された脱獄犯、ヒーロー殺しを思わせる装備に身を包んだトカゲの如き皮膚の男。

 

 誰もがそう遠くない混沌を想像し、ニタリと口の端を吊り上げていた。

 

 

「威勢だけのチンピラをいくら集めたところでリスクが増えるだけだ……やるなら経験豊富な少数精鋭」

 

「まずは思い知らせろ。テメェらの平穏は俺達の掌の上だということを」

 

 

 まだ誰も気づかない。膨らんだ悪意はもうすぐそこまで迫っていることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……で、どのタイミングで離脱しよう。下手するとアレと遭遇しそうだから早く逃げたいんだが。何が『多分大丈夫だよ』だ、帰ったら焼き鳥にしてやっからな)

(すいませんタイミング完全に逃したんですがいつ逃げたらいいんですかナガンさん! 何かヤバい人ばっかりなんですけど! ナガンさん!?)

 

 

 ついでに2名ほど冷や汗ダラッダラな方がいる事を。

 

 

 

 






・ベホマ

 Ⅱ以降ほぼ全作品に登場する回復魔法。その効果は単体のHPを全回復するというもの。
 何故かⅡのラスボスがこの魔法を使っており、まさかのラスボスが全回復するという悪夢が実現している。おいバカやめろ。
 本作では全く同じ効果。もう少し詳しく説明すると『どんな瀕死の重体でも万全の状態まで回復する』という効果。つまり初期のオールマイトでも個性以外は万全まで治る。年齢巻き戻しは不可。




森岸「というわけでこちらが【ベホマ】です」

マンダレイ「んっ……あ……これすっご……っ」
ラグドール「ふにゃあぁ……にゃにこれぇ……」
ピクシーボブ「あ゙あ゙〜……効くわこれ……」
虎「ぬぅっ……ジンワリと熱が……っ、いい……」

相澤(一人オッサンいたな)
ピクシーボブ(誰がオッサンだって?)
相澤(!? 何故【テレパス】をあなたが……!?)



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