魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.森岸だけやってる事変わってなくね?
 A.逆。プロヒーロー達が考えに考えてたどり着く訓練に近いことを普段からやってる森岸の方がおかしい。

 Q.これ轟の火傷痕とか治ってる?
 A.本人から頼まれて治してない。治そうと思えば治せる。

 Q.スパイってもしかして……?
 A.大体皆さん想像ついてると思います。







36.長い長い夜の始まり

 

 

 合宿三日目。今日も今日とて個性伸ばし訓練の時間である。

 

 やることは昨日と何一つ変わらない。強いて言うならば補習組が更にキツそうな顔をしているくらいだ。

 

 

 しかし、教師達はなるべく平等に目をかけているつもりだがどうしても個人差というものは出てくるわけで。

 相澤の場合は補習組を抜きにしても色んな意味で問題児である緑谷や森岸あたりに視線が向きがちだ。

 

 という事で開始してから一時間ほど経った頃、相澤は近くにいた森岸から様子を確認しに向かった。

 

 

「? どうしました?」

「何……昨日は【ベホマ】を完成させていたが、今日は何をしようとしているのかを確認しに来た」

「ああ……今はあれです。その【ベホマ】から更に派生させようとしてます」

「……早速弄ってるのか」

 

 

 聞かなきゃよかったかもしれない。必要な事とはいえ相澤は少し後悔していた。

 

 

 相澤としては【ベホマ】だけでも十分……いや十二分にプロとしてやっていけるんじゃ? と思わないでもないのだけれど。そこから翌日にはもう派生を作ろうとしてるとは思ってもみなかった。

 

 下手をすれば【ベホマ】欲しさに世界中からスカウトが来てもおかしくないくらいなんだけど、今度は一体どんな【魔法(厄ネタ)】を作ろうとしているのやら。

 

 

「んー……とりあえずは既存の【魔法】全部置き換えてますね」

「置き換え?」

「全部【ホイミ】から派生させてたんで……【ベホイミ】とか【ベホイム】みたいに出力上げられるのが分かったら、他の【魔法】も効果はそのままに出力を上げられるようになるんですよ」

「……つまりアレか? USJで俺に使ったような【バイキルト】や【ピオラ】の強化率がより大きくなると?」

「はい」

 

 

 わあいい返事。相澤はそっと胃薬を取り出した。

 

 ちなみに強化率は【ベホマ】習得前を二倍とした時、習得後は三倍になるそうです。なんだこの化け物。

 

 尚、倍率が上がった代わりに重ねがけの回数上限も減った模様。これまで三回まで重ねがけできていた者であっても次からは二回までになる。その倍率の差は八倍と九倍。あれ? 上がってね?

 

 つまり重ねがけの回数は減ったのに倍率がちょっと上がったわけだ。メリットがデメリットを上回り過ぎでは?

 

 

「あとは──」

「今はいい……後で聞く……」

「? はあ……」

 

 

 あーあ。とうとう相澤先生疲れちゃった。まだ始まったばっかりなのに。

 

 煤けた背中で逃げるように緑谷の方へと行ってしまった。貴方が面倒を見るべき化け物生徒だろ。責任もって見てあげなさいよ。

 

 

 

 後に相澤はこの時の事を激しく後悔する。あの時ちゃんと最後まで確認していれば……と。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 昼間の厳しい訓練をムチとするならば、夜から行われるこの肝試しはアメだろう。

 

 ただの肝試しではない。A組とB組でのクラス対抗肝試しだ。

 脅かす側は直接接触禁止。個性を使って脅かさなければならない。創意工夫を凝らし、より多くの人数を脅かせたクラスが勝ちとなる。

 

 と、この通り明確な勝敗を決めるルールではない。クラス対抗と銘打ってはいるけれど、その目的は生徒達のガス抜きだ。

 

 

「大変心苦しいが……補習連中はこれから俺と補習授業だ」

「ウソだろ!!?」

 

 

 まあそれは学生の本分を真面目にやっていればの話だけども。勉強と訓練漬けだった芦戸は目をひん剥いて悲鳴のような声をあげた。

 

 念の為にと即座に捕縛布が放たれる。あっという間に補習組の五人をぐるぐる巻きにすると、重たかろうにそのまま相澤に引き摺られるように連行されていった。

 

 

「すまんな。日中の訓練が思ったより疎かになってたのでこっちを削る」

「うわああ堪忍してくれえ!! 試させてくれえ!!」

「哀れ……」

 

 

 だからといって止めてくれる人はいない。だって自業自得だもの。一歩間違えていたら自分達もああなっていたのかもしれないと戒めるのが精一杯である。反面教師ですね分かります。

 

 彼らの悲鳴が聞こえなくなったあたりで再び説明タイム。脅かす側先行はB組で既にスタンバイ済み。

 A組は二人一組で三分置きに出発し、ルートの中間地点にある名前の書かれたお札を持って戻って来なければならない。

 

 ちなみに二人組はくじ引きで決まる。くじを用意したのは生徒達ではなくプッシーキャッツだ。そこに何の意図も作為もないと保証されているのだが……。

 

 

「「すいません誰か変わってください……!」」

「馬に蹴られろと?」

「あんな話聞かされて交代は無理よ」

「どうしたの二人とも?」

 

 

 そこには揃って手を挙げる耳郎と森岸の姿が。なんでやねん。

 

 

「ウチも詠士もあんまり怖いの得意じゃなくてぇ……」

「ジャンプスケア的なヤツは来ると分かってても無理。俺ら滅茶苦茶進行遅いぞ」

「ええ……」

 

 

 お互い相手が嫌なのではなく、怖いのに慣れてる人を付けないとグダグダになるぞということらしい。その面でか森岸。

 

 しかしくじはくじ。むしろその方が面白そうだという理由で却下されペア交換は無しに。森岸がボソッと「最悪最高速度でぶち抜いてやれば……」とか言ってたのは聞かなかったことにしよう。

 

 

 というわけでクラス対抗肝試しスタート。常闇と障子のペアから始まり、三分ごとに一組、また一組と真っ暗な森の中へと消えて行く。

 

 四番目である耳郎と森岸がガッチリ手を握っているのを見届けてから三分後。次は麗日と梅雨ちゃんの番が来る。

 

 

「じゃ、五組目。ケロケロキティ(蛙吹梅雨)ウララカキティ(麗日お茶子)GO!」

「うう……怖いよ梅雨ちゃん……めっちゃ悲鳴上がっとるし……」

「響香ちゃんと森岸ちゃんね。手を繋ぐといいわ。大丈夫よ、私平気なの」

 

 

 そしてまた一組。森の中へと足を踏み入れて行く。

 

 

 

 その中で何が起きているのかも知らぬまま。

 

 

 有毒ガスと黒煙が渦巻く敵のテリトリーへと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何この焦げ臭いの……」

「黒煙……?」

 

 

 

 

 

「飼い猫ちゃんは邪魔ね」

 

 

 

 

「っ、危ない!」

「へ───わひゃっ!?」

 

 

 ピクシーボブの意識の外側。誰もいないはずの暗闇の中からヌルリと、音もなく現れた男が丸太のようなもので殴りつけようとしていた。

 

 その悪意に唯一気づいたのは緑谷。半ば突き飛ばすような勢いでピクシーボブへと駆け出し、そのまま彼女を抱えあげて駆け抜ける。

 

 ドゴン! と、鈍い音。地面へと叩きつけられた人の背丈ほどもある棒状の凶器が小さな亀裂を生んでいた。

 

 

 

「な……何で……! 万全を期したはずじゃあ……!?」

「何で……何で敵がいるんだよぉ!!?」

 

 

「あら、残念」

「まあ早まるなマグ(ねえ)

 

 

 マグ姉と呼ばれた男と爬虫類のような特徴を備えた男の二人組。雄英が最も危惧していた存在が、敵が現れた。

 

 

 マンダレイは即座に【テレパス】を使用。この場にいない生徒や教師達へと向けてこの状況を伝達する。

 

 これまでの事例を見るに目の前の二人だけではない可能性が高い。今森の中にいるB組はどうなっているのか、従甥……洸太がどこで何をしているのか。不安が焦燥を駆り立てる。

 

 対する敵は余裕の笑み。初撃の不意打ちを躱されたマグ姉……マグネは武器を構え直し、ニタリと笑っている。

 

 

「ご機嫌よろしゅう雄英高校!! 我ら敵連合開闢行動隊!!」

「敵連合……!? 何でここに……!」

「安心するがいい……生殺与奪は全てステインの仰る主張に沿うか否か(・・・・・・・・・・・・・・・)!!」

 

 

 ヒーロー殺しの名が出た瞬間、飯田は察した。ステインに、彼の思想にあてられた(・・・・・)敵だと。

 

 

「申し遅れた、俺はスピナー……彼の夢を紡ぐ者だ!」

 

 

 そうしてスピナーが背中から引き抜いたのは、ありったけの刃物を無理やり束ねたような凶器。包丁やノコギリからナイフにククリ刀まで、全てを鎖やベルトで締め上げただけの乱雑な武器だ。

 

 

「てめぇらのような利己的なヒーローもどきは、粛清(しゅくせー)対象だ!」

「虎! 指示は出した! 他の生徒の安否はラグドールに任せよう! 私らは二人でここを抑える!」

「うむ……!」

 

 

 

 長い、長い夜が幕を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃。補習組を連れ帰っていた相澤。

 

 合宿所内に戻るとそこにいたのはB組の担任であるブラドキングと、B組唯一の補習者物間。

 口を開けば「こっちは一人なのにそっちは五人もいたのか」と煽ってくるけれど、その一人がお前なのはいいのか物間。

 

 補習組の切島達もその態度には呆れるばかり。よくもまあ飽きもせず同じ煽りを繰り返せるものだ。

 

 その間に相澤とブラドキングは補習の内容についての相談を始める。今までは筆記を中心に行っていたが、今回は演習を入れようかと話していた時だった。

 

 

 

『皆!!』

「!」

「っ?」

 

「マンダレイの【テレパス】だ」

「これ好き。ビクってする」

「交信できるわけじゃないからちょい困るよなあ」

 

 

 突如脳内に響く声。その正体はプッシーキャッツの一人、マンダレイの【テレパス】によるもの。

 

 生徒達がキョトンとしたりしている中、脳内の声は焦りを滲ませて言葉を続ける。

 

 

『敵二名襲来!! 他にも複数いる可能性アリ!』

 

『動ける者は直ちに施設へ!! 会敵しても決して交戦せず撤退を!!』

 

 

「は……!? 何で敵が……!?」

「っ……! ブラドここ頼んだ。俺は生徒の保護に出る」

 

 

 考えたくはないけれど、思考を止めてはならない。相澤はすぐにブラドに生徒を任せ、合宿所から飛び出していく。

 

 冷や汗が伝う感覚に押されるように走り、外へ出て真っ先に目に入ったのは立ち上る黒煙と燃えている森。

 

 

 

 ──そして同じく冷や汗塗れの火傷男。

 

 

 

「…………? 何だお前」

 

 

 一瞬敵を疑ったが、何か違う。隠れる気もなければ戦う気もない。何せ両手を上げて物凄く気まずそうな顔をしている。

 

 しかし警戒を怠るわけもなく、捕縛布に手をかけながら問い詰めるとその男はゆっくりと口を開いた。

 

 

「──俺、公安直属のヒーロー(・・・・・・・・・)なんだけど……すまん、やらかした」

「は……公安?」

 

 

 荼毘と名乗っていたはずの男──イレイザーヘッドと同じアングラヒーロー・オブセス(轟燈矢)はそう告げた。

 

 

「待て、どういうことだ!?」

「指示を受けて敵連合に潜り込まされてたプロヒーローだよ……まあ、この件は公安じゃなくて上司の独断でやらされてんだが……」

「っ、お前の上司は誰だ!?」

「上司はホークス(・・・・)だ」

「ホっ…………!?」

 

 

 理解が追いつかない。立ち止まっている暇はないというのに、膨大な情報を詰め込まれた相澤は呆然としていた。

 

 

 

 

 






耳郎「……」←小鹿の如き足腰の震え
森岸「……」←真顔だけど死ぬほど警戒してる

小大「やあ」←個性で色々した地面から飛び出した

耳郎「くぁw背drftgyふじこlp;@:「」!!?」
森岸「ピエ」

骨抜「驚き方逆じゃない?」
拳藤「抱き合って泣いてるし……」



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