魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 禁断の二度打ち食らえ。今日は二話更新してます。


 Q.荼毘ちゃうんかい!
 A.オブセス(轟燈矢)です。

 Q.オブセスって何?
 A.『obsession』という英単語由来のコードネーム。日本語に訳すと『強迫観念』になる。

 Q.火傷治ってないの?
 A.治ってる。荼毘の見た目は特殊メイクで誤魔化してる。






37.轟燈矢:リザレクション

 

 

 

 荼毘は──轟燈矢はエンデヴァーの息子だった。

 

 だった、というのは理由がある。それは決して親子の縁が切れたわけでもなく、どちらかが望んだ結果そうなったわけでもない。

 

 これは未だ結末を迎えていないだけの、ド三流な笑い話の一つ。

 

 

 

 

 

 エンデヴァーは個性婚によって一人目の男児を授かった。そこには己では成し遂げられなかった、超えることができなかった悔しさや嫉妬を、醜い心を打ち砕いてくれる期待があった。

 

 

『今日こそ必殺技教えてよ!!』

『ふ……基礎が固まったらな』

 

 

 幸いにして燈矢はエンデヴァーの……父である轟炎司の指導を嫌がることはなく、それどころか嬉々として特訓に励んだ。

 

 このまま順当に育っていけば、あのオールマイトだって超えてくれる。そう思っていた。

 

 

『───熱っ!?』

『な……っ!?』

 

 

 

 そしてある日、夢は再び潰えた。

 

 

 轟焦凍……この頃はまだ生まれていないが、エンデヴァーの理想は正しく轟焦凍の個性そのものだった。

 

 エンデヴァーの個性【ヘルフレイム】は凄まじい高火力を操る反面、炎の熱を体内に留めてしまうというデメリットが存在していた。

 それ故にエンデヴァーは高い戦闘力に反し、全力で戦える時間は極僅か。熱を冷ましている間にもオールマイトは笑顔で日本中を駆け回っている。

 

 結局、その弱点を克服する事は叶わず、オールマイトを超えるという目標は己の子に託されることとなった。

 己の弱点を補えるだけの個性……冷気を得るために轟冷(当時は氷叢冷)を嫁として迎え入れた。

 

 

 轟燈矢に氷が受け継がれることはなく、しかし炎熱への耐性の無さだけが受け継がれてしまっていた。

 

 これではエンデヴァーの弱点を克服するどころか、己の炎で己を焼いてしまう。夢を託すどころかヒーローになる事さえ不可能になってしまったのだ。

 

 

 それが分かってから轟家は歪んでいった。

 

 

 一度夢を託された燈矢は己を傷つけると分かっていても訓練を止めようとはせず、それを何としてでも止めさせたいエンデヴァー。

 

 やがてエンデヴァーは更なる理想を求めて子を成し続けるようになり、とうとう轟焦凍が……エンデヴァーにとっての理想が産まれた。

 

 しかしその間にも燈矢の炎は薪を焚べられていた。父親から託された夢という種火はとっくに彼のものになっていて、何故自分を見てくれないんだと執念の炎を燃やし続けていた。

 

 

 轟燈矢が13歳になった時の事。

 

 早生まれの小さな身体に二次性徴が訪れ始めた頃、身体の変化と共に彼の炎は赤から青へと……より高温のものへと変わっていた。

 

 感情の昂りによってより高火力となる事に気づいた燈矢は今度こそ認めさせられると思い、嬉々として父親に声をかけた。

 

 

 

 その返事は──何故、という疑問と静止だった。

 

 

 

 子を思うのであれば当然の反応だろう。だが燈矢が求めていたのはそれではなかった。

 

 己の青い炎で身体のあちこちに火傷を作りながら、いつも訓練をしている山の中へと逃げ込んだ。溢れる涙を堪えようとしながら。

 

 

 だが……昂る感情は涙ではなく、青い炎となって現れていた。

 

 

 

 

『わあっ……!? 止まらない……!? 炎が──!』

 

 

 

 

 丹念に積み上げてきた努力によって底上げされた火力はあっという間に燃え広がった。彼自身の身体を焼き、地面を伝い山をも焦がした。

 

 助かるはずもない己自身が火元の山火事。ここで轟燈矢の人生は幕を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………ここ、は?』

 

 

 ──はずだった。

 

 

 彼が次に目を覚ましたのは八年後(・・・)。山の中の焼け跡ではなく、どこかの室内で天井を見上げていた。

 

 そしてもう一つ。八年という歳月を眠って過ごした彼には記憶がなかった(・・・・・・・)。覚えているのは凄まじい高熱の炎と、突き動かされるような衝動だけ。

 

 

 目を覚ました彼を迎えたのは名前も顔も初めましての子供達。彼らは燈矢を『おねむり君』と呼び、七年もの間眠っていたことを教えた。

 

 次に会ったのはこの孤児院(・・・)の院長だという人物。彼は終始ニコニコとした顔で燈矢に話しかけていた。

 

 

『君もこれからここで皆と暮らそう! ここで新しい家族になるのさ! きっとすぐに気に入るさ!』

『っ……い、嫌だッ!!』

『え? ちょっ──』

 

 

 気づけば燈矢は反射的に走り出していた。何故、と言われてもきっと答えられない。ただ、それに頷いた瞬間……自分は意味を失ってしまうと、そう思ってしまった。

 

 引き留めようとする院長を振り切って、どうしたのと声をかける子供達をも無視して。とにかくどこかへ帰らなければとアテもなく走って行った。

 

 

 ──でも、どこに行けばいい?

 

 

 記憶もなければ身体も不十分。そんな状態で走れる距離などたかが知れている。

 

 孤児院を抜け出して数十分。最早呼吸さえままならない燈矢はその場に蹲り、助けを求めることしかできなくなっていた。

 

 

 ──嫌だ。まだ、何も成し遂げていない。

 

 ──まだ……⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎に……

 

 

 死にたくない。そう思っていた時、それと出くわした。

 

 

 

 

 

『滅茶苦茶地味だけど普通に嫌な効果だな!?』

『だからこそ嫌がらせには最適──ん?』

 

 

 

 この世の物理法則に最も喧嘩を売っている個性の持ち主と。

 

 

 

『君、大丈夫?』

『あ……』

⬛︎⬛︎君(・・・)、俺が許可するから治してあげてよ』

『え、いいのそれ』

『いいっていいって。プロが言うんだから間違いない!』

『そんじゃまあ……』

 

 

 プロヒーローと子供。二人との遭遇は燈矢にとって幸運というほかなかった。

 

 ヒーローに促された子供が何かを唱えると、燈矢の身体は急激に活力を取り戻していった。いや活力なんてものではない。まるで生命力そのものを与えられているような感覚がした。

 

 

『うわ【ベホイム】でも足りないとかマジか。ちょっと魔力切れ覚悟でやるか……』

『え、そんなに酷いの?』

『死にかけって感じ。倒れたらあとは任せるから』

 

 

 一度では足りないと思ったのか、その子供は何度も同じ言葉を唱えていた。それが彼の個性だったのか、彼が一言唱える度に燈矢の身体は生命力を取り戻していった。

 

 やがて数えるのも馬鹿らしいほどに子供が唱え続けていると、途端に子供の声が止まった。

 

 

『もーむり……あとヨロ』

『お疲れ様。というか君、どんだけ酷い怪我だったんだ……?』

『あ……えっと……』

 

 

 その頃には燈矢の身体は見違えるように治癒されていた。

 

 欠損した部分を再生組織で補い、別人のように引き攣っていた顔も。各器官の損傷も痛覚等の体性感覚の鈍化も……あの日失った身体を全て取り戻していた。

 

 その奇跡を成し遂げた子供はヒーローの羽根の上でグッタリと体を横たわらせ、こちらに視線だけを投げかけている。

 

 

 ヒーローからの質問には答えられなかった。というより、答えようがなかった。

 

 記憶がない。けれどあの孤児院にはいたくない。到底受け入れられるはずもない現状を話したところで、どうにかしてもらえるとは思えなかった。

 

 

『……訳あり?』

『っ……』

『そっか。なら大丈夫。俺、そういう人の味方だから』

『えっ?』

 

 

 だがそのヒーローはアッサリと燈矢を受け入れた。話したくないけど何もできない。そんな彼に何の追求もせず、手を差し伸べていた。

 

 

『あ、あの……俺記憶がなくて……』

『そりゃ大変だ。尚更助けてやらないと』

『……いいんですか?』

『その為のヒーローだもの』

 

 

 そうして記憶のない少年は最速のヒーローによって救い上げられた。あらゆる足跡を失っていた少年を、何の躊躇もなく拾い上げていた。

 

 

 

 それからそのヒーロー……ホークスの下で色々な事があった。

 

 記憶を失った彼の過去を調べたり、八年の間にすっかり弱っていた身体を鍛えたり、ついでに歳相応の教育を受けたり……挙げればキリがない程、色んな事をしてきた。

 

 回復した身体は優秀だったらしく、一年もしないうちに彼は健康的……を通り越して鍛えられた身体に仕上がっていた。

 

 

『ホークスさん、今日はどうでした?』

『……うん、ようやく分かったよ。君の事が』

『! 本当ですか!』

 

 

 そしてある日、彼の過去が判明した。あのエンデヴァーの息子であり、山火事の中で死亡したことになっていると。

 

 

『…………あ』

『思い出した……のかな?』

『そう……だ……俺、お父さんに……』

 

 

 再び炎が灯る───かに思われた。

 

 

 たった一年にも満たない日々……記憶を失っていた、父親への執念を忘れた日々はもう薪を焚べてはくれなかった。

 

 ただ冷静さを取り戻しただけと言われればそれまで。しかしあの炎を追い求めた日々では、熱に浮かされた自分を止める術を持たなかった。

 

 一度消えた炎は二度とつかない。次についた炎は全くの別物だ。

 

 

『……君次第だ。エンデヴァーさんの所へ……家族の元へ帰りたいのなら俺は──』

『帰りませんよ』

『──……それは』

『どっちかというと帰れない、かな? 多分俺はもう……あの家では過去になってる』

 

 

 八年という時間は自分を過去にしてしまうのにあまりある時間だ。今更帰ってきたところで、もう誰も自分を見てくれはしない。

 

 燈矢は家族を諦めた。ようやく取り戻した過去を胸の奥にしまい込んで終わらせた。自分の中にエンデヴァーの炎が残っていないことを受け入れた。

 

 

『何より俺は……ホークスのサイドキック、オブセス……だろ?』

『……よくもまあ半年以上前の小さな約束を覚えてるもんだ』

 

 

 もうエンデヴァーの夢の代わりにはなれない。だけど自分の夢を得た。だったらそれだけで十分だと、そう思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあオブセス! ちょっといいかい!」

「……絶対ろくなことじゃないと思うけど、何?」

「ちょーっと今話題の敵連合にスパイとして行って欲しいな!」

「よし分かった。今日こそテメェの背中のソレを焼き鳥にしてやる」

「やだなあ美味しくないって……ちょ、マジでやるの? 君の炎だいぶヤバいんだからやめ──」

 

 

 

 






燈矢「今帰っても信じてもらえないでしょ」

〜その頃の轟家〜

炎司「これならオールマイトを……!」
冷「……」
冬美「また家族皆で仲良くなれたら……」
夏雄「クソ親父め」
焦凍「親父なんか嫌いだ」


ホークス(早急に帰ってあげて欲しいけどなあ……)
燈矢「親父の技ムッズ!」
ホークス(本人が望んでないしなあ……)
燈矢「おいちゃんと見てくれよ」
ホークス「あ、はい」





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