魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.ホークス大丈夫? エンデヴァーに幻滅してない?
 A.思うところはあるけどまだ大丈夫。

 Q.孤児院は放置なの?
 A.燈矢が抵抗した時に事故って火事になりました。

 Q.燈矢個性使って大丈夫なの?
 A.ホークスの元で制御方面の訓練をしたので短時間なら問題なく使える。火傷した時は公安お抱えの治癒系個性に治してもらってる……ってことにしておいてください。



 Q.燈矢が轟家帰ってたらどうなってた?
 A.詳細は省くが最終的には丸く収まる。しばらくエンデヴァーだけ針の筵状態で、雄英入学の時点で焦凍は立派な天然紅白饅頭系男子になってる。





38.そうは……そうはならんやろ……!

 

 

 

 敵連合の荼毘改め、公安直属のヒーロー・オブセス。彼が言うには敵連合に潜入しているスパイであり、この事態に収拾をつけたいとの事。

 

 であれば納得できない事がある。彼の個性は【蒼炎】といい、轟焦凍どころかエンデヴァーをも超え得る超高火力を操る能力だ。

 

 あの遠くで立ち上っている黒煙はどう説明するつもりなのか。

 

 

「話すと長くなるんだが……まずここにいる俺は敵連合のメンバーの個性で作られた偽物だ」

「……何?」

「尖兵として出るどさくさに紛れて脳無を仕留めるつもりだったんだが……一瞬燃えただけで仕留められなくてな」

 

 

 どうやらここにも脳無が来ているらしい。それを仕留めようとしていたのだが、致命傷には程遠く炎を振り払ってそのまま行ってしまった、と。

 

 しかしその脳無、周りの事などお構い無しに炎を振り払ったものだから炎が周囲の木々に引火。元が超高火力の【蒼炎】だった事もあり小さな火種はあっという間に膨れ上がってしまったという。

 

 

「つまり?」

「完全に想定外です」

「……責任はホークスに取ってもらえ。それか敵のせいにでもしてろ」

「そうする……」

 

 

 本当は雄英側に敵連合の存在を通達するつもりでいたのだが、欲をかいた結果があのザマである。何やってんだお前。

 

 ちなみに彼の偽物を作り出したのはトゥワイスという人物の個性によるもの。

 

 その個性の名は【二倍】。増やす対象を精緻に把握しておく必要こそあるものの、それさえ叶えば理論上はあらゆる存在を無限に複製してしまえる能力。

 

 しかし肝心のトゥワイスが未熟なのか、或いは何か事情があるのか自分を増やすことはできず能力の範囲も有限だとか。

 

 

「って、こんなこと話してる場合じゃねェ! 今回の襲撃にはヤバい敵がいる! それも二人!」

「どんな奴だ?」

「脱獄した死刑囚のムーンフィッシュと、あの『血狂い』マスキュラーだ!!」

「なっ……!? それを早く言え!」

 

 

 だが、今はどうでもいい。それ以上に優先すべき事がある。

 

 脱獄死刑囚ムーンフィッシュ。所謂サイコキラーに分類される敵であり、人体の断面に美しさを見出す狂人。間違っても生徒達と遭遇させたくない敵。

 

 そして『血狂い』マスキュラー。残虐かつ嗜虐的なシリアルキラー。プロヒーローと互角以上の戦闘力と危険性を有しており、過去にはプロヒーローであるウォーターホース……洸太の両親(・・・・・)を殺害している。

 

 そんな危険な存在が、今この瞬間にも生徒達の誰かと遭遇しているかもしれないのだ。

 

 

「敵連合の目的はアンタらプロヒーローを留めておくことと、爆豪勝己つったか? あの子供を攫うことだ!」

「爆豪を……?」

「不本意かもしれねェが生徒達にも戦わせろ! ターゲットは生徒だ! 自衛させねェと何もできずに負ける!」

 

 

 狙いはオールマイトと同じプロヒーロー……ではない。より雄英の信頼を堕とす一手となる生徒。

 

 とうとう本格的にヒーロー個人ではなく、ヒーロー全体への攻撃を行い始めた事を嫌でも理解させられる。おそらくこの事件が成ってしまえば雄英への、ヒーローへの信頼は酷く落ち込んでしまうだろう。

 

 ならば取るべき択は一つ。生徒を攫わせない為に生徒自身にも戦闘を許可すること。

 

 

「っ……! 分かった!」

「他のヒーローの所にも敵が向かっている! 急げ!」

 

 

 苦肉の策だが致し方ない。すぐにでも指示を飛ばすためにマンダレイとの合流を目指し、相澤は森の中へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃森の中。脅かす先行を取っていたB組やルートを回っていたA組は混乱の真っ只中にいた。

 

 

 周囲には燃え広がっている炎と、その反対側で渦巻いている有毒のガス。視界も悪ければ呼吸すらもままならない危機的な状況。

 

 ガスにいち早く気づけた拳藤は【大拳】で骨抜と小大を巨大化させた手に包み込んで保護。その後八百万の【創造】で創られたガスマスクを手にした鉄哲、塩崎らと合流。

 

 拳藤らもガスマスクを受け取り装着。撤退を提案するも鉄哲がガスの発生源を叩こうとした為に拳藤も同行することに。

 

 

 また爆豪と轟が脱獄死刑囚ムーンフィッシュと遭遇。ムーンフィッシュの足元には切断された片腕が落ちており、最悪の状況にあることを把握。

 

 そのまま二人はムーンフィッシュと交戦を開始するも、彼の個性【歯刃】は想像以上に強力。本人が相当な場数を踏んでいることもあり、逃げるにも戦うにも手詰まりと言わざるを得ない状態となっていた。

 

 

 そして同時刻。麗日と梅雨ちゃんの元にも招かれざる客が現れていた。

 

 

 

「違うんです聞いてくださいいや本当にマジで違うんです敵じゃないんです信じてください!」

「一息で言い切ったわね」

「そんな事言われても……」

 

 

 敵連合から支給された違法サポートアイテムを放り捨て、両手を上げて懇願する少女。

 

 彼女の名は渡我被身子(トガヒミコ)。レディ・ナガンのサイドキックにしてヒーロー見習い中の可愛い可愛い女の子である。

 

 

 肝試しに出発してから少し進んだ後、トガはすぐに二人の前に姿を見せた。

 

 一瞬B組の誰かの個性による脅かしかとも思ったものの、彼女が装備しているサポートアイテムやナイフを見て違うと判断。

 もしや敵連合が合宿先にも乗り込んできたのかと慌てて距離を取り、警戒心を込めて思い切り睨みつけたのだけれども。

 

 

「本当ですって! この先には一番ヤバイ敵がいるんです! 早く逃げないとろくな事にならないんですよ!」

「それなら他の子達はどうしたの?」

「そ、そうだよ! 何で私達の時にだけ出てきたの!?」

「暗闇に慣れてなくて全然遭遇できなかったからですが!? ああもう、だから暗視ゴーグルくらい欲しいって言ったのに……!」

 

 

 開口一番に出てきた言葉は『危険だから逃げて』という内容。これには二人とも首を傾げた。

 

 明らかに敵にしか見えない装備を身に纏い、闇の中から音もなく忍び寄っておいてその振る舞い。どこまでが演技で嘘なのかが分からない二人は信じることも疑うこともできずに困惑するばかり。

 

 トガとしてもそれでは困る。だって本当にヤバイし。同年代の女の子を見殺しにするなんて後味の悪い結末は絶対に避けたい。

 

 

「いいですか? 先に行った方々を助けたいのは山々ですが……ぶっちゃけ危険過ぎてまだ(・・)近づけないんです」

「……まだ?」

「向こうにいらっしゃったプロヒーロー、ラグドールさんでしたっけ? あの方ともう一人顔見知りの人(・・・・・・)に敵の制圧を頼んでいます」

 

 

 ひとまずトガは時間をかけてでも現状を理解してもらうことにした。

 

 今ここにいる麗日と梅雨ちゃんは危険地帯に踏み入るギリギリの場所にいる。彼女達より先に森へと入っていった生徒達は既に敵連合のテリトリーに踏み込んでしまっている。

 

 人数が多いこともあってトガだけでは救助不可能。それに今の彼女はスパイとはいえ敵連合側としてこの場に来ている。

 

 故に敵と交戦することもできなければ生徒達を救助することもできない。できることと言えばこうして生徒達を引き留めることと、自力で脱出してきた生徒を合宿所へと逃がすことくらいしかない。

 

 

「問題はマスタードのガスですけど……まあ最悪私が何とかします」

「……結局私達はどうしたらいいの?」

「合宿所に戻ってください。もしくはプロヒーローが護れる場所にいてください」

 

 

 結局トガの言いたいことはそういう事だ。敵連合は生徒を狙って来ているのだから生徒は攫われない位置にいて欲しい。それだけだ。

 

 今既に交戦している生徒達についてはどうしようもない。せめて無事に戻ってくることを祈るだけだ。

 

 

 

 

 

 ……余談だが、そこまで戦闘力に自信がなく経験の浅い渡我被身子が何故敵連合という特大のヤベー所へ潜入しているのか。それには理由がある。

 

 諸々あってナガンの元で保護され、ついでにトガからの頼みもあってヒーローとして鍛えられていた彼女だったが、渡我被身子の適性は戦闘よりも潜入や暗殺にあった。

 

 ナガンとしてはそんな事を強要したくはなかったのだけれど、他でもないトガ本人から『適性があるならそれでも構わない』と強く主張され、潜入捜査官のような技能を磨いていった。

 

 そしてトガの技能が育ってきたある日、レディ・ナガンは彼女にこう告げた。

 

 

 

 ──そろそろ実地研修といくか。

 

 

 

 要は一度潜入捜査官の真似事をしてみろ、という話だ。

 裏社会に適当なデマをバラ撒き、少年法に守られた敵予備軍として潜入。そこらの敵組織から情報を抜いてきてみろ、とどう考えても未成年にやらせていいはずがない職場体験が始まった。

 

 

 トガはナガンの教えを忠実に守っていた。表側の人間であると悟られぬよう破綻者を演じ、下半身でしか物事を考えられない阿呆共の股間を潰し、自分以外を誰一人信用しなかった。

 

 彼女が辿り着いたのはとある闇の仲介人。なんでも裏社会ではそこそこ名の知れた仲介人なのだとか。

 

 その男の紹介を受けてノコノコとついて行ってみれば、なんという事でしょう。世間を賑わせている敵連合にたどり着いてしまったではありませんか。そうはならんやろ。

 

 顔合わせが終わった後、トガはすぐにナガンに連絡を取った。一番アカン所と接触してもうたと涙目で連絡を取った。

 

 

『わたっ、私どうしたら……!』

『……一回落ち着け。今からお前に酷いことを言うぞ』

『ひぃん……!』

 

 

 ナガンから言われたのは以下の通り。

 

 顔合わせ直後に逃げると向こうから追いかけてくるという警告と、今の状況はとんでもないチャンスかもしれないという激励。

 

 未だ雄英を悩ませている敵連合との接触はとてつもない大手柄。上手くいけば敵連合が育つ前に刈り取れる可能性がある。

 

 

『いいか? おそらくそう遠くないうちに連合はまた雄英を狙う。離脱するならその時だ』

『ど、どうしたら……?』

『なに、そう難しい話じゃない。ヒーローに負けたフリをして捕まればいい。それか事情を話して保護してもらえ』

『……いけますかね?』

『話はこちらから通しておく。責任は私が取る』

 

 

 そういうわけで彼女はその時を待っていた。酷い話だが敵連合に早く行動してもらいたかった。さっさと敵連合から離れたかった。

 

 

 

 

 

 そして今日、ようやくその時が来たのだ。

 

 しかし先も述べた通り自分より歳下の子供達を見捨てて逃げるのも後味が悪い。だからこうしてギリギリのところで踏ん張っている。

 

 

「……分かったわ」

「梅雨ちゃん……」

「この人が本当に敵ならとっくに動いてるはずよ。それどころかナイフに目もくれずこちらを見つめていたもの。信じていいはずよ」

「ありがとうございます……!」

 

 

 これで少なくとも二人の少女を救うことができた。そしてそれがトガにとって精一杯できることだった。

 

 やっと信じて貰えた安堵から、ホッと溜息をつき涙目になりながら二人を見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誤算……なんてものではなかったな」

 

「まさかこれ程とはね……僕が出て尚、目的のものを得ることができないなんて思いもしなかったよ……」

 

「……それにしても」

 

 

 

「僕にいったい何をしたんだい? 森岸詠士……」

 

 

 

 

 







ナガン「やめとけって……」
トガ「()! 私達はできます!」
ナガン「はあ……そこまで言うなら仕方ないか」
トガ「やった!」



トガ「アーウ!」
ナガン「言わんこっちゃない……」
トガ「ウワアアア!!トガチモリチャバダンギジマセヨ!ステインヌニロッケポンニョッチョギンニョカリアニランマリエヨ~!!」
ナガン「ええいなんて言ってるか分からん落ち着け!」
トガ「助けて」
ナガン「うわあ急に落ち着くな!」



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