魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.【パルプンテ】どんだけヤバいの?
 A.前回の効果でも上から数えた方が早いくらいにはマシな効果……と言えば伝わるだろうか。

 Q.アレ何?
 A.螟ァ鬲皮視諞朱ュです。

 Q.あの状況で賭けに出たの?
 A.全部の【魔法】の中で一番何とかなる可能性があったのが【パルプンテ】だったから迷わず使った。

 Q.【ホイミ】から【パルプンテ】にはならなくない?
 A.【スピオキルト】みたいに【魔法】を混ぜたらなんかできないかなと試してたら最終的にできあがった。使える【魔法】全てを混ぜた結果なのでそりゃああんなカオスな効果にもなる。

 Q.他にどんな効果があるの?
 A.前回のものも含めて5つの効果がある。どれが出るかは森岸にも分からない。


 【パルプンテ】出たら嬉しいランキング

 1.■■■■の■■■■■
 2.前回の効果
 3.■■■■■■■■■■■■に出る
 4.■■■■の発動
 5.■■が■■■■






40.何してくれてんの?

 

 

 走る。走る。数十秒前の痛みを過去にして、ただ救けたい一心で。

 

 緑谷出久は教師の言葉もプロヒーローの言葉も振り切って、果てには同級生の信用さえかなぐり捨てて走る。

 

 緑谷はわかった気でいるのだ。自分なんかじゃ何の役にもたたないと、皆は自分よりも凄い人だと。

 それでも根っこは変わらない。救けたいと思った時にはもう一歩目を踏み出してしまっているのだ。身体が勝手に動いてしまうのだ。

 

 

「おい! 待てって!」

「っ……!」

 

 

 本当に確実に救けたいと思うのならば、彼を追う森岸の手を借りる方が余程真っ当な思考だろう。しかし今の緑谷からは冷静さが失われている。

 

 何せ敵の狙いは生徒、それも幼馴染の爆豪勝己だ。それを知って不安に思わない人間なんていないだろう。

 

 

 

 故に、それが目の前に来るまで気づけなかった。

 

 

 

「緑谷危ねェ!!」

「──へ?」

 

 

 夜闇よりも暗い鉤爪が木々を薙ぎ倒し、すぐ真横まで迫っていた。しまった、という思考さえ間に合わない。

 

 鉤爪が緑谷を捉えるギリギリの所で【ピオラ】を重ねがけした森岸に抱えられた。一瞬前まで緑谷がいた場所を通過した鉤爪は木の幹さえ容易くへし折っていった。

 

 

「何だ今の……というか緑谷ァ!」

「っ……ごめん……」

「お前マジで二度とすんなよ!? ああもう……今の敵か……?」

 

 

 こういう可能性があるからやめろと言ったのに。森岸の怒声に緑谷は萎びたように返すことしかできない。

 

 それはともかく今の鉤爪は一体何なのか。まさか敵に見つかったか? と呟いた時。

 

 

「いや、違う……あれは常闇だ」

「障子くん!」

「あれが常闇……? どういうこった」

 

 

 二人を呼び止めたのは障子だった。【複製腕】の先から血を滴らせ、明らかに疲弊してる様子。

 

 そんな彼の口から飛び出たのは先程の鉤爪が常闇によるものという衝撃的な事実。何故常闇がこちらを攻撃してくるのか。

 

 

 障子によると、二人もまた敵から奇襲をしかけられたらしく、その際障子が常闇を庇って負傷。斬られた部位が【複製腕】の先だった事もあり、腕そのものを失ったわけではなかった。

 

 しかしそれを知ってか知らずか、常闇の義憤と悔恨が膨れ上がってしまった。それによりただでさえ暗闇では獰猛になる【黒影】がより凶暴化。本人ですら制御不可能の怪物と化してしまっているという。

 

 今の【黒影】は動くものや音に反応し、無差別に攻撃をしてしまう状態。こんな常闇を放っておけるはずがなかった。

 

 

「森岸、何か光を放つような【魔法】はないか?」

「……ないな。懐中電灯とかで事足りるから作ってなかった」

「どうしたら……」

 

 

 【黒影】の弱点は光。強烈な光を浴びせてやればあの暴走も収まるのではないかと思い、森岸に尋ねてみるが望んだ返事ではなかった。

 

 ならば火事の現場か合宿所に連れて行けば、とも思ったがそれには距離が遠い。もしかしたら移動の途中で敵と遭遇したり他の生徒に危害を加える可能性だってある。

 

 どうすれば……と頭を抱える三人。ふと、森岸はある事を思い出した。

 

 

「……爆豪達って肝試しの順番、二番目だったよな?」

「? ああ。その前が俺と常闇だった」

「だったら爆豪達、近くにいるんじゃねえか? あの二人なら光源になれるだろ?」

「っ、それだ!」

 

 

 それは肝試しの順番。障子と常闇が最初に入り、その三分後に爆豪と轟が入っていった。ならば多少のブレはあれど徒歩三分内の距離にあの二人がいるのではないか。

 

 森岸の推測に緑谷がいち早く反応した。爆豪の【爆破】と轟の【半冷半燃】があれば【黒影】を鎮圧させられる上に、敵に狙われている爆豪と合流する事もできる。

 

 そうと決まれば話は早い。まずは森岸から【魔法】による強化を受け取り、行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

「っっ……あ゙あ゙ウザってェ!!」

 

 

 その爆豪と轟はというと。

 

 彼らが遭遇したのは脱獄死刑囚ムーンフィッシュ。【歯刃】という歯から鋭い刃を伸ばしてくるという文字通りの個性を持つ凶悪な敵。

 

 ムーンフィッシュは自身の体重さえ【歯刃】で持ち上げ、高所から一方的に攻撃を続けていた。

 枝分かれしながら伸びてくる刃は予測不能の軌道で二人へと迫り、轟が生み出した氷の壁さえも突き破ってくる。

 

 また周囲の環境との相性も悪い。爆豪の【爆破】は威力を上げると木々へと引火し火事を増やすリスクがある。轟の炎も同様にこの場では使えそうにない。

 

 手数も距離も完全に不利。むしろ二人が未だに五体満足でいられるのは奇跡と言う他なかった。

 

 打つ手がない。どうすればいいのかも分からず焦りが募るばかり。最悪森岸に治してもらう前提で突撃するかと危うい思考が浮かんだ。

 

 

 

「いた! 交戦中だ!」

「!?」

「爆豪! 轟! どちらか頼む……光を!!」

 

 

 氷が削られる音とは別に誰かの声。振り向いた先にいたのは障子と緑谷と森岸……そしてその背後で暴れ回っている黒い何者か。

 

 二人が反応を返すより早くムーンフィッシュが動く。目線も寄越さず【歯刃】を一筋だけ彼らに向けて放ち───

 

 

 

「オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ッ゙!!!」

「ア゙ッ!?」

 

 

 

 ──暴れ狂う【黒影】の一撃に叩き潰された。

 

 

「障子、緑谷、森岸……と、常闇!?」

「な……ンだありゃあ……」

 

 

 理解が追いつかない。自分達のよく知る同級生とあのモンスターの姿が結びつかない。一体何があればあれほどのモンスターになってしまうのか。

 

 しかし次の瞬間、ムーンフィッシュを叩き潰した【黒影】は障子達に狙いを変えたのを見て理解した。少なくともあれは正常な状態ではないのだと。

 

 すぐに炎を構えた轟に対し、爆豪がストップをかける。

 

 

「見境なしか……! すぐ炎を……」

「待てアホ」

 

 

 何を、と視線だけで問うも爆豪は【黒影】から目を離さない。口の端を薄らと吊り上げてただ一言「見てえ」と。

 

 その間にムーンフィッシュが復帰。叩き潰されたものの意識を刈り取るまではいかなかったらしく、うつ伏せの状態から【歯刃】を使って器用に立ち上がり【黒影】へと凶刃を向けた。

 

 

 

 

「強請ルナ三下ァァ!!」

 

 

 

 つい先程まで爆豪と轟を追い詰めていた彼の攻撃は、【黒影】の片手でアッサリと受け止められた。

 

 そして次の瞬間、力任せに振り回される。影の身体に刺さった刃によって逃げることもできず、木々を薙ぎ倒しながら吹き飛ばされていった。

 

 その一撃によってムーンフィッシュの歯は全壊。唯一の武器を失った彼はそのまま意識を手放した。

 

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!! 暴れ足リンゾ───ひゃんっ!』

 

 

 ムーンフィッシュ撃破を見届けた時には二人が動き出していた。炎と爆発を構えた轟と爆豪により【黒影】はすぐに沈静化。悲鳴をあげて常闇へと戻って行った。

 

 

「……テメェと俺の相性が残念だぜ」

「……? すまん、助かった」

 

 

 【黒影】が戻り爆豪達との合流にも成功。後はすぐにでも合宿所に戻ることができれば雄英側の勝利……とは言い難いが、少なくとも敵に目的を達成されることは防げる。

 

 故にこの場で守るべきは名指しで狙われている爆豪。そして実は意識を失っているB組を背負っていた轟。ならば自ずと並びは決まってくる。

 

 

「一番前に索敵能力がある障子くんで、一番後ろに森岸くん……万が一の時は【黒影】を止められる轟くんと常闇くんは一緒に行動しよう」

「勝手に決めてんじゃねえぞデクゥ!」

「文句言うなって。一番安全なのそれなんだから」

 

 

 納得がいかない爆豪だったが、正直今は彼の言葉に耳を傾けている余裕はない。少し強引だが爆豪を囲むようにして走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 荼毘(オブセス)は頭を抱えていた。

 

 本当ならとっくに敵連合から離脱して情報を持ち帰りたかったのだが、選りにも選って『人間を複製して使い捨ての駒にできる個性』がいたせいで敵達の側を離れられずにいた。

 

 それだけならまだ良かった。いや良くはないんだけどまだマシだった。

 

 

 

「テンション上がるぜ! Mr.コンプレスが早くも成功(・・)だってよ! 遅えっつうんだよなあ!? 眠くなってきちゃったよ」

「ああ……うん……そうだな……」

 

 

 

 何で誘拐に成功しちゃってるんだよ。

 

 

 通信によると爆豪勝己を発見したMr.コンプレス……【圧縮】という個性の敵が誘拐を成功させてしまったそうだ。

 

 彼の個性【圧縮】は自身や対象の周囲の空間を球状に切り取り、ビー玉くらいのサイズまで一瞬で縮小してしまう能力だ。なるほど誘拐には打って付けだろう。

 

 ただ問題はその対象。ぶっちゃけ当初の予定だった爆豪勝己の誘拐ですらマズイというのに、何があったのかMr.コンプレスは森岸詠士(・・・・)を確保したというのだ。

 

 

(選りにも選ってそいつかよ!)

 

 

 荼毘は覚えている。右も左も分からない状態でホークスと共に手を差し伸べてくれた彼のことを。今思えば絶対に敵側に渡ってはならない個性の持ち主のことを。

 

 それをMr.コンプレスはピンポイントで捕まえてしまった。それも聞き間違いでなければ彼の腕を欠損させて(・・・・・・・・・)

 

 焦っているなんてものではない。今すぐにでも横で騒いでいるトゥワイスを焼いた後、戻ってきたコンプレスも焼いて土下座したいくらいの罪悪感に襲われている。

 

 

『やー……まさかオジサンの奇襲に気づくとはね。慌ててやったもんだから右腕取れちゃってるよ』

「………………そうか」

 

 

 落ち着け。治る。多分治せる。あの時の自分だって治してもらえたんだから腕一つ取れたくらい治せるはず。頼むからそうであってくれ。

 

 真顔で棒立ちしている反面、彼の胸中は酷く荒ぶっている。もし可視化することができればそれはもうてんやわんやしている事だろう。

 

 ちなみに通信で聞いていた渡我被身子も同じ状況だ。ようやく合宿所が見えたという時にとんでもない爆弾情報を投げ渡されたものだから顔を青ざめさせている。

 

 

「そういや荼毘! どうでもいいことだけどよ! 脳無呼び戻さなくていいのか? お前の声にしか反応しないっていう調整かまされたやつだろ? 大事な事だから確認してやったぜ!」

「……そういやいたな」

 

 

 もう今更そんなのどうでもいいって。イレイザーヘッドと別れた分身の荼毘が画面外で焼き殺してるもん。

 

 頼むからコンプレスどっかでズッコケて捕まっててくれ。最早祈りと言っていいのかも怪しい思考回路に迷走しつつ、背中を冷や汗でビッチャビチャにしながらその時を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう! 戻ってきたぜ!」

「おや……合図から丁度五分ピッタリ……帰還しましょうか」

 

(あ、終わった)

 

 

 荼毘は泣きたくなった。どうしてこんな酷いことするんですか神様と尋ねたくなった。

 

 

 

 







荼毘(嘘だろおい片腕ちぎれたってこれどう考えても責任問題いやでもこれは流石に俺のせいじゃないし多分そう部分的にそう。だけど森岸君の腕取れちゃったのは事実だしあああ助けてあげられなくてごめんねマジで後で必ず助けてあげるから!)

トガ(ちょちょちょ何で何故どうして!? どの面下げてナガンさんの所に戻れば……ごめんなさいごめんなさい本当にごめんなさい! ただでさえ色んな事に巻き込まれてる子をもっとヤバい事に巻き込んじゃってごめんなさい! 後で絶対助けますから! 何でもしますから!)


森岸「痛ってェ腕取れた……治しとこ」




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