Q.森岸自力で脱出できないの?
A.できない。もしできても脱出せず解放の瞬間を待つ。じゃないと全員叩きのめすことができないと思ってるので。
Q.これ緑谷トラウマ抱えない?
A.現在進行形でトラウマになってる。指示を無視して動いた結果が同級生の誘拐なので実は耳郎と同じくらいショック受けてる。
Q.あの場で【圧縮】解いたらどうなってた?
A.更地になってた。その後魔王(笑)が出てきてまた【パルプンテ】されて魔王(笑)が酷い目にあって終わり。このルートだとここから先敵連合も魔王(笑)も豚箱行きで出番終了になる。
死柄木弔は悩んでいた。
キッカケはショッピングモールでの出来事。体育祭優勝者だった森岸詠士と遭遇し、答えの出ない苛立ちを吐露した。
その内容は『ヒーロー殺しと敵連合の違いはなんなのか』について。どちらも同じ敵でありながらヒーロー殺しの思想は火種が燃え広がるように人々へと伝わっていった。
対する敵連合はヒーロー殺しの添え物扱い。裏社会でのネームバリューも『あのヒーロー殺しが手を組んだ』という文句が最初に来ている。
死柄木弔の疑問に対し、森岸はこう答えた。
──お前達は思想も信念も主張しなかった。
それは『如何にして自分達が敵になったか』を説明できないという事。敵連合の暴力には何の正当性もなければ考慮すべき背景もない。
言ってしまえば危険性以外、敵連合に注目する理由が何一つないということになる。
故に死柄木弔は考えた。何故自分は敵連合を始めたのか、何故自分は敵をやっているのか。
そうして彼は己の原点……オリジンへと辿り着いた。
蓋をされていた記憶は冷静に、ゆっくりと開かれた。何故という言葉が噴き出す度に痒みに襲われ、記憶を一つ辿る度に吐き気を催した。
結論から言おう。彼の憎しみの根源は家族だった。ヒーローを嫌う父親と、その父親を擁護する祖父母。幼い死柄木弔の憧れを踏み躙る家が嫌いだった。
家も家族も【崩壊】させた彼に行くあてなどあるはずもなく。街の中をフラフラと彷徨う幼子に手を差し伸べてくれる者は一人として現れなかった。
その果てに辿り着いた彼の怒りこそヒーロー社会の歪み……『誰も手を差し伸べてくれなかった』という怒りだ。
少し詳細に言語化するならば、いつかヒーローが来て助けてくれるから自分達一般人は助けなくてもいいよね、というある種合理的な区別であり割り切りである。
自身の怒りを
憎悪すべき家族は己の手で殺した。しかしそこから先……誰にも助けて貰えなかった怒りを誰に向ければいいのか、考えてしまった。
──悪いのはヒーローか? 本当に?
一度でも疑問に思ってしまえば無視することはできない。誰かに問いかけられたのならともかく、自分で気づいてしまった以上自分で答えを出すまで忘れることもできない。
しかし答えは一向に出ず、思考の袋小路へと辿り着いてしまった。ここから先を誰に尋ねるべきか、死柄木弔は大いに悩んだ。
何てったって敵連合にいるのはヒーロー社会をぶっ壊ーす! なチンピラかヒーロー殺し万歳! な狂人ばかり。ちょっと前まで自分もそうだったんだけども。
そんな連中に『本当にヒーローは悪いのか?』なんて尋ねようものなら、よくて尻込みしてんじゃねえと笑われる程度。最悪裏切り者扱いされて自分が殺されかねない。
どうしたものかと悩んでいると、先生の指示で生徒を攫ってきたらしい荼毘達が帰還していた為丁度いいやと話をしようと思っていたのだが。
「……まあお前以外は敵しかいない状況なのは分かりきってたもんな」
「……」
「そりゃ警戒しないはずがないし、解放された瞬間をチャンスだと思うのも理解できる。でもな……」
「初手で金的狙うのはやめろよ?」
「まさか無抵抗だと思わないじゃん……」
そこには股間を押さえて内股で怯える敵連合リーダー、死柄木弔の姿があった。ひえっ。
◇
危機的状況……のはずなんだけどどういう状況だこれ。死柄木弔が立ってたから金的入れてやるつもりだったのに、両手を上げて降参のポーズしてたからギリギリ止めたけど。
というか他の敵はどこいった。あのエンターテイナー気取りのマスク野郎だけは絶対ぶん殴る。腕ちぎりやがって、痛いんだよクソッタレ。
「……で、今度は何だ? 一応言っておくが、俺はまだ戦闘許可解けてねえからな。今度はお前をぶん殴ってもつかまらねェぞ」
「分かってっから話くらい聞けよ……あの時と違ってこっちに勝ち目ないんだよ」
おや、素直。どんな心変わりだ?
……まあ、逃げようと思えばいつでも逃げられる。あのよく分からん個性に捕まってる間に【スピオキルト】を三回重ねてるし、戦闘になっても負けはしないだろう。
問題はあのフルフェイスのヤバい敵が出てきた時だが……周囲に誰もいないようだし最悪【パルプンテ】で賭けに出ればいい、か?
それにどうも死柄木弔から殺気を感じないというか……USJやショッピングモールで出くわした時から雰囲気が変わっている。何があったのか聞くくらいはしておくべきか。
「……お前は、今のヒーロー社会をどう思う」
「は?」
「俺は昔、誰にも手を差し伸べられなかった。いつかヒーローが来てくれるからと誰も助けてくれなかった」
「何を言って……」
「その怒りは、誰に向けるべきだと思う」
……もしかしてあれか? ショッピングモールの時と同じで人生相談されてんのか? わざわざ解放して何をするのかと思えば、死柄木の過去話を聞かされてどうしろと。可哀想だとは思うけども。
というか何でこんな回りくどい手段取ってんだよ。俺が雄英高校のヒーロー科だからかそりゃそうか。真正面から接触したら通報されて捕まるわ。
なら……少し真面目に考えてやるか。
まずヒーロー社会で誰にも手を差し伸べられなかった、か。どういう状況かにもよるが、コイツのいう昔ってのがいつだ? まず死柄木弔が何歳なんだ?
「……? 何が言いたい」
「いや……時代によっちゃ治安が悪かったからしょうがねえだろとしか言えねえし……」
「今は20歳で5歳くらいの話だが……治安が悪いと、どうなる」
「そりゃお前、子供だろうが個性で犯罪犯してるかもしれないんだから警戒されるだろ」
確かオールマイトのヒーローデビューが30年くらい前だったか? あの人がヒーローになってから凄い勢いで治安が良くなっていったとはいうが……それでも限度ってものがある。少なくとも一般人の意識はそう簡単には改善されない。
で、死柄木弔は今20歳らしいから……まあまあ治安が悪かった頃じゃないか? オールマイトの活動開始から10年は経ってるが、逆に言えば10年
そうなるとヒーロー任せにして誰も手を差し伸べようとしなかった、ってよりは下手に手を出すと自分の身が危ないから遠巻きにするしかなかった、って理由だったりするんじゃないだろうか。
実際現代でもその辺は変わらないはずだ。下手に素人が手を出した方が危ない可能性があるからこそ、そうした事態への対応をヒーローに任せられている。
「だからまあ……怒りを誰に向けるべきだと言われると、そん時の治安を悪くしていた敵共だろ」
「ヒーローは悪くないと?」
「いや、お前がヒーローと遭遇して助けて貰えなかったってんなら話は別なんだが……ヒーロー、会ってなかったのか?」
「…………会って、ない」
逆恨みもいい所だろそれ。何をどうしたらそこからヒーローに怒りが向くんだよ。
過去にどれ程酷い目に遭ったのか知らないが、それでも『俺は助けてもらえなかったのに何でお前らは助けられてるんだ』と他人を害するのは間違っていると言い切れる。
そう言いたくなる気持ちも分からんでもないが、行動に移したのならそれは止められなければならない。罰されなければならないんだ。
「今聞いた話がお前の敵としての原点だって言うなら、お前にできることは何もないよ」
「……」
「だって、お前の
死柄木弔という敵の原点は間が悪かったの一言に尽きるのかもしれない。運悪く治安が悪い時代に生まれ、運悪くヒーローと会うことができなかった。
それを分かった上で『知るか悪いのはヒーローやヒーローを崇める社会だ』と言われちまったらそれまでだが、多分死柄木弔はそうはならない。なれない気がする。
そうでなきゃわざわざヒーローの卵の俺なんかと話そうとはしないはずだ。
「…………そうか」
「……そりゃどういう意味の返事だ」
「納得した、って意味だ。徒に力を振り撒く……なるほど、ステインの言葉は間違ってなかったわけだ」
ステイン? そこで何でヒーロー殺しが出るんだ……え、何か殺されかけた? 敵連合も粛清対象扱いされた? ええ……?
そのステインによると徒に力を振り撒く犯罪者も粛清対象、と言われたらしい。まあ確かに保須事件まではそんな感じだったしな。
じゃあ、死柄木弔はこれからどうするつもりなのだろうか。
「あー……どうすっかなあ……納得しちまった以上敵やってても何の意味もねえし……」
「……とりあえず出頭してこいよ。その感じならやり直しきくだろ」
「はっ、やり直しか……それもアリかもな」
そう言うと死柄木は隣の部屋へと行ってしまった。え、これ俺逃げていいの? ダメなの? どっちなん?
「「ちょっと待って!」」
「おわぁっ!?」
今度は何!? ……って、何か見覚えのある方々がいるんですが。
「燈矢と、被身子ちゃん?」
「そう! ……え?」
「そうです! ……ん?」
おいどういうことだってばよ。
◇
「……つまり、二人は敵になったわけじゃなくて潜入してるサイドキック……って事であってる?」
「あってるけどあんまりデカイ声で喋るなよ。他の連中は死柄木弔と一緒にどっか行っちまったけど、いつ戻ってくるか分かんねえんだから」
「まさか荼毘さんもそうだったとは……」
敵連合荼毘とトガヒミコ改め、絶賛潜入中の轟燈矢と渡我被身子。二人は森岸の監視役をかって出ると、外に出ていこうとする森岸に慌てて縋りついていた。
いや脱出させてくれよと森岸は言ったけれど、二人はそれを止めた。
というのも現在、敵連合は二分しつつあるらしいのだ。
二人によるとこれまでのリーダーは死柄木弔だったのだが、合宿襲撃を指示したのはその死柄木弔の先生を名乗る人物だったという。
「今、その先生とやらは死柄木弔を疑い始めている」
「何で……いや、さっきの話を聞いたら納得か」
「そうなんです。今の死柄木弔は先生の想定を外れた方向に揺れ動いてます」
死柄木弔の補佐のような立ち振る舞いをしている黒霧に尋ねた所、隠すことでもないと思ったのかアッサリと内情を語ってくれたそうだった。
曰く、今の死柄木弔の成長は先生に取って想定外で、敵連合のリーダーとしてはあまりよくない傾向にあるとか。
続けて『不安になったら僕が直々に出るから大丈夫だとも』と言っていた事も教えてくれた。
「じゃあ……その先生とやらは死柄木弔が自分に都合のいい駒で無くなりつつある事に気がついてる、と?」
「多分な。まだ気がする程度の違和感だろうが……死柄木を信用しなくなっているのは確かで、監視の目も少し厳しくなっている」
「今不用意に動くと先生が出張ってくる可能性が高いので、もう少しだけ待ってはくれませんか?」
何を待つんだ? という森岸の問いに対し、二人は同時に答えた。
──ヒーローが救けに来るのを、
「何故俺が雄英の尻拭いを……こちらも忙しいのだが」
「まあそう言わずに……OBでしょう」
「しかしまあ……これだけの戦力が集まるとはね。ヒーローランキング
「いやあ、サイドキックが絡んでるんで……」
「うちもだよ。だからやめとけって言ったのに……あの馬鹿」
「過剰戦力とは言うまい。彼らは最早明確な脅威だ」
「少年少女達の未来に手をかけたんだ、宣戦布告はとうに為されている」
「反撃の時だ! 流れを覆せ!!」
「ヒーロー!!!」
森岸「こっから出たらダメなん?」
燈矢「そもそもそこ開かないぞ」
森岸「うわ、キッチリロックしてやがる」
渡我「まあ開いてても出ない方がいいんですが」
燈矢「そっから逃げたら先生が来そうだしな」
森岸「何だこのゲームのシステムに足止めされてる感」