Q.黒霧さんどこ行ったの?
A.戻ってきたら死柄木弔も荼毘もトガもいなくて困ってた。後でちゃんと出頭した。
Q.もしかして最終回?
A.いや全然まだまだ続きます。
Q.(自称)魔王なのに第2形態とか【いてつくはどう】とかないんですか?
A.((自称)魔王だけどラスボスじゃなかったから)無いです。ちなみにいてつくはどうはあった所で自分にかかっている弱化は解けないのであんまり変わらない。
その光景に名前を付けるなら、悪夢という他なかった。
まるでこれまでの戦いをおさらいしているような、あらゆる手を尽くしたこちらの策略を力ずくで捩じ伏せられていく歴史を再確認させられているような感覚。
他人の人生をも奪い尽くしてきた魔王が、その身一つで戦う英雄に悉くを凌駕されていく。力も、速度も、手数さえも、何もかも。
個性を組み合わせて超破壊力の空気砲を放つ。パンチの風圧で相殺される。もう一度放つ。今度は防御の姿勢すら取らず空気砲の中を駆け抜けて来る。
個性を組み合わせて全方位へと衝撃波を撒き散らす。周囲が破壊されるよりも早く体をかち上げられ無意味となる。
黒い鉤爪を伸ばし刺突や斬撃を狙う。腕一本で砕かれ、残骸を掴まれてへし折られる。
黒いヘドロで遠くへの転移を試みる。あまりのスピード差に捕捉さえ叶わず数発のパンチを叩き込まれる。
無限に等しい手札も有効打を与えられないのならば何の意味もない。数十の手札がたった一枚のジョーカーに磨り潰されていく。
老人はその光景を冷や汗を流しながら見守ることしかできない。戦う力もなければ見つかってもいけない。魔王が蹂躙される様を見届けることしかできない。
呼吸が浅くなっていることを自覚しながらも冷静さを取り戻すことができない。やがて目に見えて荒くなる呼吸も無視して、老人は独り言を零した。
「あの時の子供がこんな力を持つとは……!」
やがてモニターの中で魔王が地に倒れ伏した。英雄はそれを見下ろし、片手を挙げて己の勝利を世間へと伝えていた。
もしこの部屋に他の誰かがいたのなら、きっと気づいていただろう。フゥフゥと息を荒らげる老人の様子に。
「素晴らしい……!
老人は恐怖や焦燥に駆られていたのではなく、興奮を抑えられなくなっていたことに。
◇
魔王は討たれた。他でもない真の英雄……オールマイトの手によって。
本来の目的であった敵連合については、真相はどうであれリーダーである死柄木弔を捕縛した事で決着がついたという扱いになった。
敵連合という大捕物から始まり、神野区で起こったこの戦いは後に『神野事件』として広く知れ渡り、数多くあるオールマイトの功績の一つとして埋もれていくことになるだろう。
現在はその戦いの後始末中。敵連合のアジト周辺は何の被害もなく済んだものの、脳無工場ではオール・フォー・ワンとオールマイトの戦いで周囲が瓦礫だらけになっていた。
これもヒーロー活動のひとつ。とはいえ敵連合という大物と戦う想定でいたエンデヴァーやエッジショット達トッププロは消化不良のような顔で対応にあたっていた。
「ふん! 結局俺達が来る必要なぞなかったではないか!」
「それは結果論でしょうに……まあ、過剰戦力では? と思わなかったわけではありませんがね」
「そう言わないでくださいよお二人とも。アイツマジでヤバかったんですから」
一方、二人を宥めているホークス。彼はこの結果を数多の奇跡の上に成り立つものだと思っていた。
自分やベストジーニストでさえ一撃で重傷まで持っていかれて、朦朧とした意識の中でレディ・ナガンの狙撃を防いでいたのを確認していた。
正直なところアレに一方的に勝利したオールマイトがあまりにもバケモノじみているという感想しか出てこないのだ。
ちなみに現在はジーニストもホークスも元気いっぱい。近くに森岸というヒーラーがいたお陰でかすり傷ひとつ残さず治療済である。こっちの方がヤバない?
「ふん……そういえば貴様、あのサイドキックはどこで拾った?」
「オブセスですか? 彼は任務中に保護して育てただけですよ」
「……奴の炎は凄まじい出力だったが、まだ制御が不安定なようだった。暇があれば俺のところに連れてこい。面倒を見てやる」
「え、嫌です」
「貴様ァ!!」
それとエンデヴァー、
敵連合アジトで再会した時、燈矢は物凄く気まずそうにしていた。諸々を飲み込んで消化したつもりではいたのだが、いざ本人を目の前にすると言語化し難いモヤモヤが湧いてくるのだとか。
しかしエンデヴァーは目の前のスパイが息子だなんて思ってもいない。ヒーローの一人として対応し、ついでに自分と同じ炎熱系個性だと知ってその場で少しアドバイスをしていた。
それを後から聞かされたホークスは腹を抱えて笑いつつ、いつかは自分で解決しなよ? と釘を刺していたとか。
「ナ゙ガ゙ン゙ざん゙!! 怖゙がっ゙だ!!」
「分かったから落ち着け……よく頑張ったな」
「生きた心地がしませんでしたよぅ……」
また同じ頃、潜入捜査をやり遂げた……やり遂げた? 渡我被身子は泣きながらレディ・ナガンに抱きついていた。
この二人が初めて会ったのはとある病院の待合室。原因は違えどどちらもカウンセリングを受けに来ており、トガの方から声をかけていた。
というのも、渡我被身子の個性【変身】は他人の血を摂取する事でその人物に変身する事ができるというものであり、その個性由来なのか血を吸いたくなる……吸血欲求があった。
それを気味悪がっていた親が何とかしてやめさせようとカウンセリングに通わせていたのだが、そこでナガンと遭遇。
「あの時の子供がこんなに大きくなって……本当、よく頑張ったよ……」
「ふぇぇ……ナガンさん……血吸わせて……」
「今はダメだ。せめて帰ってからにしろ」
「じゃあ母乳で」
「仮に出てももっとダメだ馬鹿たれ」
その結果がナガンにオギャるようになったのはどういう変遷を辿ったんだろうか。ママみを感じるなママみを。
まあ吸血欲求を矯正できなくてほぼ育児放棄している実の親に比べ、ナガンの方が余程親らしい事をしていると言われれば否定はできないのだけども。
ちなみに森岸と知り合いだったのはナガンがトガに『同年代の友人1人くらい作っとけ』と紹介していたからだったり。
その森岸はというと。
「何という万能デニム……よかったら将来うちに来ないか?」
「ちょっと抜け駆けですよ!」
「Mt.レディもだろうに。というか学生に色仕掛けしようとするなよ……」
「あの、忙しいんであっちいっててくれません??」
少数とはいえオール・フォー・ワンとの戦闘の余波で生じた被害者達の治療にあたっている所をプロヒーロー達からスカウトされていた。
大抵の怪我は【ベホイミ】か【ベホイム】一回で完治し、直接攻撃を受けて重傷だったヒーローでも【ベホマ】で治療可能。それに他人の強化もできるものだからそりゃあ引っ張りだこである。そいつ一応誘拐被害者なんですよ?
流石にヒーロー達もそれは分かっているらしく、スカウト文句を並べた後で申し訳なさそうに口を開いた。
「すまないね……被害者の君にまで仕事を押し付けてしまって」
「これに関しては俺がやりたくてやってるんでいいですよ。それに……ちょっと意識改善中なんで」
「? そうか」
あっさりと解決して本人も元気とはいえ森岸は立派な被害者の一人。それを本人が言い出したとはいえ仕事を与えているのは心苦しかった。
森岸がしているのは負傷者の治療と、瓦礫を片付ける人々に強化魔法を付与する事の二つ。実は森岸一人で事後処理が数倍の速度で進んでいたりする。
一通り負傷者の治療も終わり、後はどうするかなと森岸が思案していると後ろから声をかけられた。
「森岸少年……」
「あ、オールマイト。お疲れ様です」
「ああうん……少し、良いだろうか?」
魔王を討ち取った英雄が、オールマイトがそこにいた。どうしたのかと聞いてみると、少し人がいない場所へ行こうと言う。
それなら、とオールマイトについて行くとその先にはグラントリノが待っていた。二人ともやり遂げた、という顔をしていながらどこか心残りがあるといった面持ちだ。
「さて……何から話すべきか。いや、まずは……ありがとう」
「へ? いやこちらこそ……助けてくれてありがとうございます……?」
「奴を……オール・フォー・ワンを倒すことができたのは君のお陰だ……」
オールマイト曰く、森岸の【魔法】がなければ勝てたかどうか分からなかった、との事。簡単に決着がついたようにも見えたが、その実オールマイトは冷や汗を流していた。
もし森岸の【魔法】で身体が治っていなかったら、もし森岸の【魔法】でオール・フォー・ワンが弱っていなければ、もし森岸の【魔法】で強化されていなかったら……負けたとまでは言わなくとも確実に勝てたとは思えなかった。
オールマイトからすればオール・フォー・ワンと戦って
それが蓋を開けてみればこの程度。被害者こそ出ているものの森岸が数十分対応すれば終わる程度の人数であり、死者は一人も出ていない。
またヒーロー達についても同じで、かつてのオールマイトのように後遺症が残る者もいなければ
「ちょっと待ってください!? 個性を、奪う!?」
「ああ……オール・フォー・ワンの個性【オール・フォー・ワン】は他人の個性を奪い、逆に他人に個性を与える事ができるというものでね」
「俺の【魔法】取られてたら本当にヤバかったのか……」
「本当にな。坊主のヤバさが分かっていたからこそ、俺達はそれを警戒していたんだ」
オールマイトとグラントリノが想定していた最悪とは、オール・フォー・ワンの手に【魔法】が渡る事。そうなるとオールマイトがそうなったように、オール・フォー・ワンの身体が万全の状態にまで回復するかもしれなかった。
それ故にオールマイトは現場に駆けつけた際、オール・フォー・ワンの近くに森岸がいるのを見て背筋が凍りついていたという。
まあその森岸は山盛りの弱化を与えてオールマイトクラスの一撃を叩き込んでいたわけだが。
「とにかく……私達は君に大いに助けられた。ありがとう」
「……俺こそ、ありがとうございます。オールマイトに、ヒーローの皆さんに助けていただけて本当に良かった」
「……HAHAHA!! なァに! それが我々ヒーローのお仕事だからね!!」
世間を騒がせた敵連合は終わりを迎え、闇に潜む魔王も打倒された。
オールマイトは森岸を一度雄英まで送り届けた後、平和の象徴としての責務を全うした。
「あのー……そろそろ離れてくれません?」
「………………」
「心配だったのは分かったからさあ……もう一時間くらいこの状態だよ?」
「………………」
「流石にトイレとか行きたいし……マジで離してくんない? 中まで着いてくるとか言わないよね?」
「………………」
「あのちょっと響香さん? 響香さーん!?」
エンデヴァー「何だその拙い制御は……火力ばかり上げて制御訓練を怠っていたな? 同じ炎熱系個性だ、暇な時にオレが訓練を見てやろうか?」
オブセス「ははは(火力の上げ方しか教えなかったのはテメェだろうがクソ親父ィ! 今必死こいて調整を学んでるんだから邪魔すんじゃねェ!)」
ホークス「草」
オブセス「焼くぞテメェ」