魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 43話のALLにて【ズッシード】という魔法についての解説を入れるのを忘れておりました。同話の後書きに追加しております。


 Q.トガちゃんなにしてんの……?
 A.ナガンとか森岸から普通に血を吸わせてもらえるようになって若干性癖が歪んじゃった。具体的にはバブみとかママみを求めるようになってる。それはそれとして血は吸いたい。

 Q.オブセスから見たエンデヴァーってどんな感じ?
 A.何だかんだ憧れであることは変わらない。時々昔の怒りがメラッと来ることもあるけど、それ以上に家族全体への罪悪感の方が強い。はよ帰ってやれよ。



 Q.もしAFOが【魔法】奪ったらどうなってたの?
 A.▼ しかし MPが 足りない!



45.お疲れ様でした

 

 

 

 合宿所から攫われて敵連合のアジト、それから神野区の後は雄英に警察……必要な事だとは分かってはいるんだが、一回家に帰らせて欲しかった。もう夜明けちゃってるじゃん。

 

 怪我もしてなければ変な洗脳とか施されてませんって言ってるのに、トータルで10回くらい『本当に大丈夫か?』って聞かれた。心配なのは分かるけども。

 どっちかと言うと常に気を張ってたから精神的な疲労の方がキツい。流石にあの状況でリラックスできる程肝は太くないんだ。

 

 迎えに来てくれて泣きながら抱きしめてくれた両親にも悪いが、今はマジで眠い。無理やり【ザメハ】で目を覚ましてもすぐ眠くなりそうなくらいには疲れてる。

 

 家に帰ってシャワーで汗だけ流して、自分の部屋に戻ってからスマホをつければ大量の通知が。大体雄英の皆と中学の時の友達からだな。

 

 悪いけど返信は起きてからにさせてくれ。今できるのはプロフィール欄に『一回寝ます。起きてから返信します』と設定するのが限界。

 

 設定を終えてどうにか充電器をぶっ刺すことに成功すると、そこで俺の意識はプッツリと途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ…………」

 

 

 何で起きたら響香がいるんです???

 

 

 ガッチリ抱きつかれて離れそうにないし。ご丁寧に【イヤホンジャック】まで巻き付けて……これ引っ張られたら痛いだろうに。

 

 どうにか手を伸ばしてスマホを拾ってみると、新たな通知が一つ出ていた。母親からのメッセージ?

 

 

 

 ──昨日、響香ちゃん来てたから通しておいたからね。

 

 

 

 昨日? ……あ。俺あれから一日丸々寝てたのか。日付が一つ進んでら。てか昨日って、何時から……メッセージの時刻的に俺が帰ってきて一時間もしないうちに来てたっぽい……ん? ということはそれからずっとここにいたのか?

 

 

「……思ってたよりずっと心配かけてたのか」

 

 

 誘拐されてから怒涛の展開で感覚が麻痺していたけど、何だかんだ合宿の日から二日経ってたんだ。そりゃ心配されるはずだ。

 

 何より誘拐現場には俺の血が大量に落ちていたと聞いたし、俺の【魔法】なら治せると分かっていても最悪の結末がずっと頭の中にあったのかもしれない。

 

 悪いことしたなあ……いや、悪いことされたのは俺なんだけども。そういう話じゃないし。

 

 

「ん……?」

「あ」

 

 

 おっと、そうこうしているうちに響香が起きてしまった。騒がしくしたつもりもなかったけど、響香耳いいからな。ちょっとした身動ぎでもうるさかったか?

 

 ちょっと腕の力も緩んだし、一回起きて……ダメか。【イヤホンジャック】あるからあんまり動けないや。響香に起きてもらった方が早いか。

 

 

「えぃ……じぃ……?」

「……おはよ」

「……………………詠士!?」

 

 

 はい森岸詠士で痛ででででで。痛い痛い痛い。抱きつくならもうちょい優しくして。今何の強化もしてないから痛いもんは痛いから。

 

 

「生きて、る……? よかった……よ゙かっ゙たぁ……!」

「…………おう。ただいま」

 

 

 ……こりゃ離してもらえそうにないな。

 

 

 

 

 で、しばらく泣きながら抱きつかれていたんだけども。ちょっと落ち着いたのかひとまず泣き止んでくれた。ほらティッシュあげるからチーンってしなさい、チーンって。

 

 

「大丈夫なの? こう、怪我とか……」

「それはもちろん。【ベホマ】もできたし覚醒(・・)もしてたから全然大丈夫だよ」

「そっか」

 

 

 あれは不幸中の幸いだった。【ベホマ】ならどれだけ重傷を負っても一瞬で回復できるから何かあった時の保険を用意できるようになってた。

 それがなかったらもう少し余裕がなかっただろうし、オール・フォー・ワンとも戦おうとは思わなかった。

 

 あ、そういえば響香達は敵連合とかオール・フォー・ワンのことどこまで知ってるんだろうか? 一応警察の方や相澤先生からは燈矢とトガの事以外なら話してもいいと言われてるけど……。

 

 

「聞きたい?」

「今はいいかな……詠士が無事だったのが一番大事だし」

「本当に心配かけて悪かった。まさか一瞬で捕縛されるとは思わなくてさあ……」

 

 

 そう、アイツだよクソマスク。カウンターギリギリで避けられた挙句に触れられた瞬間には捕まってたんだが。何だあの理不尽個性。

 

 響香は皆と一緒に合宿所に戻ってからは何もなかったらしく、他のA組B組とヒーロー達も誰一人として死傷者が出なかったそうだ。

 合宿では脳無の焼死体が一つと『血狂い』マスキュラーに脱獄死刑執行のムーンフィッシュ、それからマスタードと三人の敵が捕まったとか。

 

 つまりあの合宿での被害らしい被害は俺の誘拐だけだった事になる。尚更あそこで捕まったのが悔やまれるな。

 

 まあ過去の事でああしていれば、こうしていればと語っても仕方ない。とりあえず腹減ったし何か朝ごはんでも……?

 

 

「響香?」

「何?」

「ちょっと動きたいから離してくれると助かるんだけど……」

「…………()

「響香さん??」

 

 

 いやあの、トイレとかも行きたいから離してくれないと困るんですけど。え? 詠士なら強化すれば私を抱えたまま動けるでしょ、って? できなくはないけどさあ……。

 

 いやダメだわ。いくらなんでも響香抱えたままトイレに行くのはマズイが過ぎる。大にしろ小にしろ大惨事間違いなしだわ。

 

 

「ちょ、マジで離れて!? また戻ってくるから! またやっていいから!」

「や」

「響香さん!? そんな幼稚園みたいな拒絶しないでくれません!?」

「や!」

「響香ああああ!?」

 

 

 

 この後マジでトイレに行こうとしたら流石に離れてくれた。でも出てきたらまた引っ付かれた。判断が早い。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 詠士が帰ってきた。

 

 それを知ったウチはすぐに森岸家へと向かっていた。

 

 先にメッセージを送信していたからか、インターホンを鳴らすまでもなく玄関で詠士のお母さんが待っていた。

 

 

「詠士が帰ってきたって、本当ですか!?」

「ええ、ついさっき帰ってきて……シャワーを浴びたらそのまま眠っちゃったみたい」

「っ……無事、なんですね?」

「うん。手も足も無事。五体満足で眠たそうに帰ってきてくれたよ」

 

 

 それを聞いて安堵の息を漏らす。そして同時に強烈な『会いたい』という欲求が膨れ上がった。

 

 そんなウチの胸中を察したのか、詠士のお母さんは何も言わずに家の中へと案内してくれた。家の中に上がると、リビングでは詠士のお父さんがウチを見て微笑みながら頷いていた。

 

 もう何度も訪れているはずなのに、詠士の部屋までがあまりにも遠く感じられた。ほんの数秒でさえ待ちきれないように、体感時間が引き伸ばされていく。

 

 そうして詠士の部屋の前に付くと、詠士のお母さんはゆっくりとドアを開いた。

 

 

「ぁ……」

 

 

 そこに、ちゃんといた。

 

 目を閉じてぐっすりと眠っている、手も足も無事に揃っている詠士が。

 

 あの日、ただ一人だけ敵の手に落ちてしまった詠士が、生きていた。

 

 

 そんな余裕もなかったのか、電気はつけっぱなし。スマホも充電器が繋がった状態で床に落ちてしまっている。

 

 私にしか聞こえないくらい、静かな寝息を立てて詠士はそこに生きていた。

 

 気づいた時にはウチの足は動いていて、フラフラと頼りない足取りでベッドの横まで近づいて、縋り付くようにしゃがみ込んだ。

 

 

「よかった……本当によかった……!」

 

 

 生きてる。握った手は温かく、穏やかな呼吸が途絶えることもない。安心するような心臓の音が私の耳に届いている。

 

 

「……余程疲れちゃってたのか、気絶するみたいに寝ちゃってね……しばらくは起きそうにないから、今日は泊まっていかない?」

「っ……はい。両親にも、連絡しておきます」

 

 

 本当なら、なるべく外出はしないようにと言われているけれど。今は……今だけは詠士の側を離れたくない。

 

 

 ずっと一緒にいるのが当たり前だと思っていた。ずっと隣にいてくれると思っていた。

 

 だからこそ、怖い。その当たり前が崩れさるのが、この聞きなれた鼓動が聞けなくなってしまう事が怖くて仕方ない。

 

 

「……もう、いなくならないで」

 

 

 これはウチのワガママ。もしかしたら詠士を縛り付けてしまうかもしれない、自分勝手な願い。

 

 それでもウチは、一度体験した喪失が怖くて仕方がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃。神野区の事後処理現場から少し離れたビルの屋上。

 

 オール・フォー・ワンとの決戦を終えたオールマイトに対し、グラントリノは静かに尋ねた。

 

 

「それで……どうなんだ? 俊典」

「……残っては、います。逆に言えば……それだけです」

「……そうか」

 

 

 グラントリノが尋ねたのは【ワン・フォー・オール】……既に緑谷出久へと継承された個性、それの残り火(・・・)についての事だ。

 

 森岸の【魔法】によって身体は(・・・)回復したものの、個性【ワン・フォー・オール】が回復することはなかった。

 

 一応身体の回復によって残り火の消耗はかなり抑えられるようになり、かつては一日に3時間も活動できればよかった状態から安定して5時間の活動ができるまでに持ち直してはいた。

 

 しかし、それだけ。あくまでも長持ちするようになっただけであり、個性そのものが回復したわけではない。

 

 

 そして今回のオール・フォー・ワンとの決戦。森岸の支援もあってアッサリと終わったように見えたが、実の所オールマイトは最初から最後まで全力で戦っていた。

 

 誰よりもオール・フォー・ワンの手口を知っているオールマイトとしてはどれ程優勢であろうとも油断することはできず、少しでも早く勝ち切るべきだという判断をしていたのだ。

 

 結果として残り火は激しく消耗。一日に一時間の活動が限界となり、それも長くは保たないだろうと直感のような部分が認識していた。

 

 

「平和の象徴も終わりが近い……か」

「……いえ、最早終わったも同然です。私の役目は……平和の象徴としての役目は終わってしまった」

「俊典……」

 

 

 まだ戦える。けれど、この力を次代を育てる為に使いたい。オールマイトはそう思っていた。

 

 死をも覚悟していた最後の戦いを生き延びた。オール・フォー・ワンを倒して平和の象徴(オールマイト)は終わったが、八木俊典(オールマイト)は生きている。

 

 

「引退……か」

「勿論、何かあれば私も戦いましょう。ですが……役目を果たした人間が、いつまでものさばっているわけにもいかないでしょう」

「……緑谷出久はまだ未熟だ。平和の象徴(お前)の後を継がせたいってんなら、お前がちゃんと見ててやれ」

「はい……!」

 

 

 ならばこの拾った生命は次世代の為に使おう。緑谷出久を、次代のヒーローを育てよう。それがオールマイトとしての最後の仕事だ。

 

 

 この翌日、オールマイトは記者会見にて事実上の引退を表明した。詳細な理由をボカしつつ、個性が衰えてきた事を表向きの理由として発表。

 まだ戦えるのでは、という意見も出たもののオールマイトは『後進の育成に専念する』と回答。多くの人々に惜しまれながらヒーロー活動に幕を下ろした。

 

 

 

 尚、森岸に回復してもらったお陰でずっとマッスルフォームを保つことができた為か『本当に?』と疑われ続けているのはご愛嬌。

 

 

 

「……お前本当に弱ってんのか?」

「弱ってますよ!? 少なくとも全盛期とは比べるまでもなく貧弱になってて……」

「そりゃ比較対象が悪いだろ馬鹿たれ」

「日本全国対応できてたのが関東圏しか対応できなくなった、みたいに言われてもな……」

 

 

 

 






森岸母「……ねえ、あんたそれ」
森岸「今は何も言わないでくれると助かる」
耳郎「……」←前からセミみたいに抱きついてる
森岸母「いや無理。気になって仕方ないから」
森岸父「……もう一日くらい泊まる?」
耳郎「泊まる」
森岸「食い気味」


エンデヴァー「」
焦凍「あっ……」
冬美「そっとしておいてあげて……」
焦凍「親父……」
エンデヴァー「」




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