魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.森岸家軽くない?
 A.男子の親は割と我が子を雑に扱うので大体こんなもん。ましてやあの森岸なのでしゃーない。

 Q.相澤先生から見た二人ってどんな感じ?
 A.今時の学生カップルってこんなもんなのか? 的な感じ。

 Q.森岸は雄英やめようとしたりしなかったの?
 A.一瞬考えたけどすぐ否定した。どこ行っても狙われそうだし転校してもあんまり意味なさそうだと思ってる。あと耳郎から離れるのも嫌。






仮免試験
47.寮生活スタート


 

 

 

 八月中旬。雄英生徒が家を出た。

 

 雄英敷地内に建築された学生寮。校舎から徒歩五分の位置に建てられた『ハイツアライアンス』が彼らの家となる。

 

 

「でけー!」

「恵まれし子らのー!!」

 

 

 A組21名。全員が欠けることなく再び集まる事ができたこともあり、彼らの興奮も一入。築三日のピッカピカの寮を前に楽しそうに話していた。

 

 そこに相澤が到着し、自然と全員の視線も相澤へと向く。

 

 

「とりあえず1年A組……無事にまた集まれて何よりだ」

「無事に集まれたのは先生もよ。会見を見て、いなくなってしまうのかと思ったわ」

「……俺達が不甲斐なかったのは事実だからな。俺も少し驚いてる。まあ……色々あるんだろ」

 

 

 梅雨ちゃんの言葉に相澤は目を細め、どこか誤魔化すように答えた。

 

 

 先日の神野事件の際、雄英高校は謝罪会見をひらいていた。

 

 他の生徒は奇跡的に無傷(・・・・・・)で済んだものの、誘拐被害者一名を出したという重い失態について沈黙を続けることは許されなかった。

 

 取材陣の質問、及び指摘は主に二点。敵襲撃の際に生徒達に戦闘許可を出した事と、森岸の個性(・・・・・)について。

 

 何人かの記者は露骨に雄英を悪者扱いしようとしていたのだが、偽ることなく誠実に答え続けた相澤達雄英教師から失言を引き出すには至らなかった。

 それどころかその後すぐにオール・フォー・ワンが討伐された為そうした記者達の評判が悪くなったりしている。

 

 それでも責任が誰にあるか、となれば校長の根津と現場にいた相澤とブラドキングの名が上がる。責任を取って辞任……という可能性も有り得なくはなかった。

 

 

 当の相澤もその可能性自体は考慮していたのだが、他の教師や校長から『誰がそんな事させるんだ』と言われ引き止められていたりする。

 

 世間からも【抹消】は教育現場で頼もしい個性だろうと一定の支持を集めていたとか。これには相澤も流石に面食らっていた。

 

 

「まあそれはいい。これから寮について軽く説明するが……その前に一つ。当面は合宿で取る予定だった仮免取得に向けて動いていく」

「そういやあったなそんな話」

「色々起きすぎて頭から抜けてたわ……」

 

 

 話を戻してこれからの事について相澤は説明する。

 

 敵の襲撃によって中断されてしまった強化合宿。その目的はプロヒーロー免許の仮免取得に向けて力をつける事だった。

 

 敵の襲撃がなければ八月いっぱい、夏休み全てを費やすつもりだったのだがそれも中断させられてしまった。

 その代わりとして残る夏休み期間は雄英内で訓練を再開するとの事。

 

 

「以上だ。さあ中に入るぞ」

「「「はーい!!」」」

「返事は伸ばすな」

 

 

 詳しい事は訓練の時にしよう。相澤は話を切り上げてひとまず寮の案内をする事にした。

 

 

 

 1棟1クラス。玄関から向かって右側に女子棟、左側に男子棟と分かれており、1階のみ共同スペースとなっている。

 風呂、洗濯が共同スペースと聞いて峰田(エロブドウ)が興奮し始めたが相澤に釘を刺されクールダウン。お前本当にいつか捕まるぞ?

 

 部屋は2階から。男子と女子の部屋は分断されており、1フロアに男女各4部屋が5階まである。

 

 1人につき1部屋が与えられ、各部屋にはエアコンやトイレに冷蔵庫とクローゼットまで備え付けられている。

 学生寮としてはかなり贅沢な空間なのだが、八百万曰く『我が家のクローゼットと同じくらいの広さですわね』との事。おのれお嬢様め。

 

 部屋割りは雄英の方で決定済み。以下の通りとなっている。

 

 

 2階

 ・峰田

 ・緑谷

 ・青山

 ・常闇

 

 3階

 ・森岸

 ・上鳴

 ・飯田

 ・尾白

 ・耳郎

 ・葉隠

 

 4階

 ・障子

 ・切島

 ・爆豪

 ・麗日

 ・芦戸

 

 5階

 ・口田

 ・砂藤

 ・轟

 ・瀬呂

 ・八百万

 ・蛙吹

 

 

「とりあえず今日は部屋作ってろ。明日また今後の動きを説明する。以上解散」

「「「ハイ先生!!」」」

 

 

 発端は喜ばしいものではないけれど、やはり新生活が始まるとなれば期待が上回る。生徒達はどんな部屋にしようかと楽しそうに各々の部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 ATTOIUMANI(あっという間に)YORU()……

 

 

 

 

 

「経緯はあれだが……共同生活ってワクワクすんな」

「共同生活……これも協調性や規律を育む為の訓練……!」

「気張ってんなあ委員長」

 

 

 部屋作りを終えた男子達は1階の共同スペースに集まり、雑談に興じていた。共同生活が始まることに楽しみを見出す上鳴のような者もいれば、飯田のように妙に張り切る者もいた。

 

 それでもやはり環境が変わる事に体がついてきていないようで、これといった訓練をしていないにも拘わらず何人かは眠たそうにしている。

 

 

「ねえ男子! 部屋できた?」

「お、女子組。うん。今終わってくつろぎ中」

「何か怪我とかしてたら【ホイミ】するから言ってくれよ」

「ありがと! でも皆大丈夫かな」

 

 

 そこに同じく部屋を作り終えた女子達が合流。すると芦戸がこんな風に切り出した。

 

 

「あのね! 今話してて提案なんだけどね!」

 

 

「お部屋披露大会しませんか!?」

 

 

 

 次の瞬間、男子達の何人かから表情が消えた。

 

 

 

 

 

「わああダメダメちょっと待って!?」

 

「わー! オールマイトだらけ! オタク部屋だ!!」

「憧れなんで…………恥ずかしい……」

 

 

 緑谷の静止も虚しく部屋披露大会スタート。最初に披露されたの(ファーストペンギン)は緑谷出久。ドアを開けた瞬間に目に飛び込むのは無数のオールマイトグッズだった。

 

 普段からヒーローオタクな挙動をしている緑谷だが、やはり根っこにある憧れはオールマイトなのだろう。ポスターやフィギュアはもちろんの事、ラグや毛布までオールマイトとは恐れ入る。

 

 突如として始まった部屋披露大会という名のセンス抜き打ちチェック。他人の部屋を見る楽しさと自分の部屋はどう見られるかという不安が入り交じる複雑な感情で男子達は笑っている。

 

 

「フン、下らん……」

 

 

 しかしこうした意見も出るには出るもので。常闇は目を閉じて腕を組んだままドアに寄りかかって冷めた態度を取っていた。

 

 が、その寄りかかっているドアは常闇の部屋のドア。どう見ても『見せたくありません』のポーズである。

 

 必死の抵抗、というには静か過ぎた。芦戸と葉隠が横から二人がかりで押してくると無理やりに退かされてしまう。

 

 

 

「黒!! 怖!」

「貴様ら……」

 

 

 強引に入った部屋の中はなんと言うか、真っ黒。ラグもカーテンも毛布も、なんなら天井まで黒くしている。

 

 一言で言い表すならば厨二病。骸骨をモチーフとした置物や黒魔術的な方面のデザインのものばかりで固めており、ある意味ではコンセプトがハッキリした部屋と言えるだろう。

 

 とはいえそれを人に見せびらかしたいかというとそんなはずもなく。微妙に羞恥心を刺激された常闇から退去勧告を出され追い出されてしまった。

 

 

 それから男子達の部屋披露は続き(原作通りなのでカット)、森岸の部屋。

 

 

「意外と普通……じゃない!」

「ギターある!?」

 

 

 家具そのものは至って普通。強いて言えばくつろぎやすいようにベッドがセミダブルだったり少し大きめの某人をダメにするソファがあるくらい。後はやたら大きなスピーカーと高そうなヘッドホンか。

 

 しかし部屋の奥に一本だけ置いてあるギターケースだけが妙に目立っていた。え、お前そんな趣味あったの? と視線が集まる。

 

 

「響香のお父さんのお下がりだよ。やってみないかって誘われて小学生の頃からやってる」

「へー……意外な一面だ」

「一応防音らしいからうるさくはないだろうけど、何かあったら言ってくれな」

 

 

 どう見ても、というか本人も言っているが明らかに耳郎の影響を受けまくっているであろう趣味。芦戸や葉隠が求める甘酸っぱいアオハルか? と言いたいところだがなんかもうそういうレベルじゃない気がしてきた。

 

 

 その後峰田が『男子ばかり好き勝手言われるのは納得がいかない』と主張。いつもならエロブドウが合法的に女子の部屋に入りたいだけだろ、と一蹴されるのだが、まあまあ自尊心が傷ついた男子達がその意見を後押しした。

 

 ならせっかくだし部屋王を決めよう! と芦戸が更に便乗し女子の部屋も見ることが決定。引き続き男子の部屋を見終えると、1階に戻ってから女子棟へと移動した。

 

 

「恥ずいんだけど……」

「まあ大丈夫だって!」

 

 

 女子最初は耳郎の部屋。やや恥ずかしそうに開かれたドアの向こうは趣味全開といった様相だった。

 

 

「思った以上にガッキガッキしてんな!」

「……マジで全部持ってきたのか」

 

 

 ミニコンポやヘッドホンといった聞く用のアイテムは勿論、エレキギターやエレクトーンにドラムセットまで。それ以外は彼女の推しと思われる『DEEP DOPE』のポスターやタオルが飾られていた。

 

 これ全部弾けるの!? と麗日が尋ねるとやはり恥ずかしそうに一通りは、と答える。それを聞いてふと葉隠はこんな事を尋ねた。

 

 

「……もしかして森岸くんとセッションできたりするの?」

「ん? できるよ?」

「え、聞きたい聞きたい!!」

「夜遅いしやめとこうよ……」

 

 

 森岸は耳郎が親から楽器を教わる際、一緒にやらない? と誘われたこともあって耳郎程ではないが一通り演奏することができるらしい。

 

 余談だが寮に引っ越す前、ベッタリだった耳郎を落ち着かせる為に丸一日セッションに付き合っていたりする。それはもうニッコニコで楽しんでいたとか。

 

 

 その後はエロブドウがやらかさないよう全員で監視しながら女子の部屋も終了。最終的に部屋王となったのは砂藤力道。その理由はシフォンケーキが美味しかったからだそうだ。部屋は?

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 部屋王も終わりそれぞれが部屋に戻る中、女子達は共同スペースに留まっていた。

 

 何故、と言われると明らかに様子がおかしかった人物に聞きたいことがあったから。彼女達の視線はその人物……耳郎響香へと向けられている。

 

 

「えー……それでは今から第一回、アオハル尋問会を始めます」

「アオハルとは程遠い単語過ぎない?」

「しかも二回目も開く気満々やし……」

 

 

 芦戸の開会宣言にツッコミ殺到。しかしそれ以上に耳郎が気になるらしい女子達は耳郎への質問を優先した。

 

 

「誰も敢えて触れないようにしていましたが……耳郎ちゃん」

「な、何……?」

 

 

「何かずっと森岸にくっついてなかった……?」

 

 

 

 そう。相澤が色々説明していた時から、先程の部屋王決定戦まで。何故かずっと森岸の近くにいるようにしていたのだ。

 

 いや普段からそうと言えばそうなんだけども。何か手繋ぐようになってるしいつもより露骨だしで流石に無視できなかった。どう見てもイチャついてるカップルにしか見えなかった。

 

 分かってる。合宿での一件や神野事件(あんなこと)があったのだから良くも悪くも森岸の事を意識するようになったのだろうと想像はつく。

 

 でもなんと言えばいいのか……こう、前より若干重力を感じるというか。メンタルがヘラっておられるとまではいかなくとも重みが増してるというか。

 

 

 

「もしかして耳郎…………ヤった?」

「ヤってないよ!?」

 

 

 

 わあド直球。これには耳郎も思わず【イヤホンジャック】で一突き。妥当な反応である。

 

 

「痛ったー!?」

「なな、なんっ……なんでそうなるの!?」

「いやだって明らかに変だったじゃん! 前よりもっと距離近くなってたじゃん!?」

「流石にストレート過ぎるわ三奈ちゃん」

「でも気になるじゃん! だから皆も集まったんでしょ!?」

 

 

 それはそう。何も言い返せないのか皆一斉に目を逸らした。

 

 ぶっちゃけ今までの距離感でさえ『付き合ってないの? アレで?』という距離感だったのに、更にその先へと踏み込んでいたのだ。何もそんな事までPlus ultra(更に向こうへ)せんでも。

 

 アレ以上に進展するキッカケとなると、それはもう大人の階段を上ったくらいしか思い浮かばないわけで。

 

 どうにか気を取り直すと、耳郎は少し暗い表情で気恥しそうに語り始めた。

 

 

「……やっぱりさ、いつも一緒にいたから……急に"いなくなるかもしれない"って突きつけられて動揺してるんだよね」

「あっ……」

「そしたら何か怖くなっちゃって……ついでに色々自覚させられてさ。無意識に詠士の近くに行っちゃうんだ」

 

 

 ある意味では一線を超えるよりも大きなキッカケ。死という最悪の結末に至る可能性が耳郎の気持ちに変化を齎していた。

 

 それが他の皆にはあまりに急な変化に見えた為に、こうして集まっている。

 

 

「まあ……うん、好き……だよ。詠士のこと」

「おおっ!?」

「告白!? 告白しちゃう!?」

「お二人とも落ち着いてください」

「あんまり茶化していいものじゃないわ」

「うっ……そうだよね……ごめん……」

「ああいや、大丈夫。ウチも相談したくているわけだし」

 

 

 そこで耳郎からの相談があるという。その相談とは───

 

 

「……不純異性交遊扱いで除籍される可能性、あると思う?」

「「「………………」」」

 

 

 誰も答えが出せないものだった。相澤に聞いてもろて。

 

 

 

 

「というか告白はする気なのね」

「え、うん。この後言いに行こうかなって思ってたけど……何か怒られないかなと」

「早ない!?」

「今更照れるものでもないし……」

「でしたら内緒にしていればいいのでは? 相澤先生の前では普通にしていれ、ば……」

「つまりいつも通りだね!」

「それはそう」

 

 

 

 

 






麗日「もうちょっとこう……躊躇いとか」
耳郎「? 詠士もウチのこと好きだろうし」
芦戸「自信が凄い!」
葉隠「でも事実っぽいし……」
八百万「その、断られたりしたら……」
耳郎「断られる……?」
蛙吹「心底不思議そうな顔ね」
芦戸「信頼も凄かった!」



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