Q.相澤先生に報告したらどうなるの?
A.「アレで付き合ってなかったのか……?」と返ってくる。あと別に除籍したり罰則与えたりとかしない。
Q.ミッドナイトいたらどうなってた?
A.致死量のアオハルに耐えきれなくて尊死する。
Q.ベッドがセミダブルだった件について詳しく!!
A.大体ご想像の通りです。ちなみに描写してませんが耳郎の部屋のベッドもセミダブルになってます。
やあ皆。絶賛響香に押し倒されてかれこれ10分は経過している森岸だ。誰か説明してくれ。何が起こってる。
部屋披露だか部屋王だかも終わったし少しギターやってから寝るかと思ったらドアがノックされ、開けてみると響香が立っていた。
それを見た俺の感想は「ああ、また眠れないのね」だった。
というのも神野の一件が想像以上に堪えていたのか一人だと眠れない時があるそうで、そういう時は一緒に寝るとあっという間にコロンと眠りに落ちていた。
そういう事情もあって一昨日までは一緒に寝ていたが、昨日の段階で寝る前に電話をしていれば普通に眠れるまで回復してはいた。
もしかしたら環境が変わってまた寝付けなくなったのか? ととりあえず部屋の中に招き入れると、流れるようにベッドの上に押し倒された。俺の方が背デカいのに押し倒された……!?
で、そのまま俺の上から覆い被さって10分。それ以上は何をするでもなく何も言わないものだから俺はどうすればいいのかさっぱり分からない。誰か乙女心の取扱説明書を持ってきてくれ。
「……そろそろ何か言ってくんない? 来ないとは思うけど相澤先生見回りに来たらどうすんのよ」
「…………」
「……寝てないよな?」
「起きてる」
「うわびっくりした」
急に喋るな。心臓止まるかと思った。
「どしたの? また眠れなくなった?」
「……ある意味、そう」
「ある意味?」
ある意味眠れない……とは? まだ眠気を誘う【魔法】できてないから一緒に寝るしかないんだけどどうしよう。相澤先生に連絡しておいたら許してもらえないだろうか。
とりあえず一回俺の上から退いてくんない? このままだと寝るにしろ何にしろ俺動けな……くはないけど動きにくいから。
ちょっと強引だけど響香を退かす…………って、何だその表情。初めて見たぞ。
「……その覚悟決めた顔は何? 俺今から何されんの?」
「…………今は、何もしないよ」
後で何かされるのが確定したぞおい。俺をどうする気だ。
「……ねえ、詠士」
「……何でしょう」
「ウチ、詠士のこと好き」
「え、うん。俺も響香のこと好き」
ああ……咄嗟に返事しちゃったけどそういうことか。そりゃああいう顔にもなる。
思えばその傾向はあった。神野の一件がなくてもその少し前……雄英に入るくらいからちょっとずつ変化していた。
それまでは割と親友枠っていうか、双子の兄妹的な感じの距離感だった。滅茶苦茶近いけどそっから先は無いみたいな。
でも雄英に入ってからはそこから更にちょっとずつ、ちょっとずつ距離を詰めてきた……気がする。USJの後とか普段ならあんまり聞かない様なことを聞いてきてたし。
まあそういう事なんだろう。うっすら自覚しつつあった感情の正体が分からないまま死別の可能性を突きつけられて動揺していた……そんな所か。
俺は攫われた側の人間だったし、あの時俺の身が危なくても響香は無事だと分かっていたから今冷静でいられる。逆だったら多分同じくらいかそれ以上に動揺していると思う。
なんて考えていると響香がへにゃりと身体を預けてきた。あら可愛い笑顔。ちょっといい匂いもする。
「……あーよかった、断られなくて」
「断るわけないだろ。それに……そんな理由で頷いたわけじゃないけど、今響香フったら他の女子に殺されそう」
「あー……芦戸とヤオモモは確実に殺りに来るかな」
「こっわ」
よりにもよって【酸】と【創造】が殺しにくるのかよ。怖過ぎない? 絶対ろくな死に方できない組み合わせじゃん。
しかしまあ……先に言われちゃったか。もう少し響香が落ち着いたら言おうかと思ってたけど、予想より立ち直るのが早かった。
前時代的思考かもしれないけど、こういうのは俺の方から言いたかったよ。普段から好意を向けてもらえてる分、ハッキリ口に出すのはこっちからにしたかった。
それに、この曖昧なゼロ距離にいい加減名前をつけたかった。ようやく決着がついた、って気分だ。
「しかし……入寮の日に来るのかあ」
「……嫌だった?」
「違う違う。そんなんじゃないよ」
ただちょっと……うん、流石に学校の敷地内で一線越えるわけにもいかないからヤキモキするだけ。寮生活初日にヤるのは流石にマズい。
だから今はこれで精一杯。
「ん……」
「んっ……」
…………所でこれ、不純異性交遊とかで処分受けたりしないよね?
◇
ミッドナイトなら致死量になりかねないアオハルが起こっていた翌日。世の学生の大半が夏休みの惰眠を謳歌しているであろう朝、A組は制服に着替えて教室に集まっていた。
森岸と耳郎の間にあった事を知らない男子達はただ眠たそうにしており、相談を受けていた女子達は物凄く気になる! といった様子で二人に視線を向けている。
まあ昨日の今日でいきなり様子が変わるというわけでもなく、強いて言うなら耳郎が元気になっているくらい。森岸も同様だ。
そんなA組を教壇に立った相澤が見回した後、やや眠たげな顔で口を開いた。
「……昨日話した通り、まずは仮免取得が当面の目標だ」
「はい!」
「ヒーロー免許ってのは人命に直接係わる責任重大な資格だ。当然取得の為の試験はとても厳しい」
曰く、仮免でさえその合格率は例年5割を切るという。
それもそのはず、ヒーロー免許とは言わば特権のようなものなのだ。本来は規制されている公共の場での個性使用が国から許される国家資格である。
それを高校生、それも一年生のうちに取得を目指すのだから厳しいなんてものではない。
丁寧に脅されたものだからA組全体にやや暗い雰囲気が流れ出すが、落ち込む間もなく相澤は更に話を続ける。
「そこで今日から君らには一人最低でも二つ……「必殺技を作ってもらう!!」……まあそういうことだ」
「学校っぽくてそれでいてヒーローっぽいのキタァア!!!」
おっと流れ変わったな。三名の教師が教室に入って来た。相澤の説明にミッドナイトが割り込み、その後からエクトプラズムとセメントスが続いた。
必殺技。読んで字の如く
昨今のショービズの流れもあり、今日日必殺技を一つも持っていないプロヒーローは絶滅危惧種と言われる程だ。
当然、見栄えだけではない。一連の流れを身に染み込ませた技・型は分かりやすい強みとなり、戦闘において押し付けるべき手札の一つとなる。
詳しい話は実演を交えて……と、コスチュームに着替えて体育館γへと移動する。そう、体育館γ……即ち──
「
(((TDLはマズいのでは!?)))
((体育祭以来かあ……))
ちょっと略称が怪しい体育館である。校長がネズミでなければ即死だった(大嘘)。
体育祭前に森岸の【魔法】の詳細を確認したり、緑谷が【フルカウル】を習得したりしていた場所。その時はセメントスがおらずただ広いだけだったが、セメントスがいればできる事は大きく増える。
セメントスが床に手を当てると床が隆起する。彼の個性【セメント】は触れたコンクリートを操るというもので、床や壁がコンクリートでできたこの施設では地形から一人一人にあわせた物を用意することができる。
「しかし……何故仮免取得に必殺技が必要になるんですか?」
「ああ……ヒーローとは、事件・事故・天災・人災……あらゆるトラブルから人々を救い出すのが仕事だ。仮免許の取得試験ではその適正を見られることになる」
例として挙げるのならば雄英の入試の実技試験。あの時は他の受験生と比較され、情報力・機動力・判断力・戦闘力で優劣がついた。
仮免許試験においてはそこに他者と協力する為のコミュニケーション能力や統率力、或いは人気や信頼を得られる為の魅力が必要とされる。
「その中でも戦闘力。これからのヒーローにとって最も重視される項目の為にも必殺技は作っておくべきよ」
「うん。状況に左右されることなく安定行動を取れるということは、高い戦闘力を有している事になるんだよ」
現在のプロヒーローで言えばシンリンカムイの【ウルシ鎖牢】やエンデヴァーの【赫灼熱拳】が該当する。
A組で言えば飯田の【レシプロバースト】や爆豪の【
敵の襲撃によって中断させられた合宿での個性伸ばしは必殺技に至るまでの基礎となる部分を鍛える為のものだった。
故に、これから夏休み明けの後期始業までの十日余りは個性伸ばしを行いつつ必殺技を編み出す事を目的とした訓練……圧縮訓練が行われる。
「ああそうそう……個性の伸びや技の性質に合わせてコスチュームの改良も並行して考えていくように」
「ワクワクしてきたぁ!!」
「っしゃ! 必殺技何にしよっかなあ!」
舞台はセメントスが、対戦相手はエクトプラズムが用意してくれている。後は生徒達次第だ。
「とは言ったものの、どうすっかねぇ……」
で、我らがイカレポンチ個性の森岸はというと。個性そのものは強力無比であるものの、彼の見た目に分かりやすい変化などが生じるわけではない。
そうなると必殺技らしい必殺技といえば【バイキルト】を重ねがけしてオールマイト的な超パワーパンチくらいしか候補がないのだ。
彼が攻撃魔法を渇望していたのもそうした部分が占める割合が大きい。どれだけ子供っぽいと言われようが男子はいつまで経ってもかめ〇め波に憧れるのと似たようなものである。
「フム……ソノパンチハドノ程度ノ威力ナンダ?」
「神野の中継……には映ってなかったんでしたっけ。【スカラ】で補強してから【バイキルト】5回かけたらオールマイトのスマッシュくらいの威力出ますよ」
「……十分必殺技ト呼ンデイインジャナイカ? 後ハ名前ヲドウスルカダナ」
ああ、あれ必殺技でいいのか……と森岸は一安心。それなら既に必殺技は二つできているな、と呟いた。
未だに使い所がなく披露するタイミングがなかったが、森岸は既に一つ必殺技を作っていたらしい。
「ホウ。ドンナ必殺技ダ?」
「ちょっと助走いるんでそこで待っててください。すぐできるんで」
「突進技カ。ソウイウ技ハ奇襲向キデアッテ損ノナイモノダ。見セテミロ」
その必殺技には助走がいるといい、森岸はエクトプラズム(の分身)から20メートル程離れる。そんなことをしていると目立つもので、他の生徒も手を止めて森岸の方を見ていた。
一体どんな必殺技だ? という視線と森岸の奴何する気だ……? と訝しげな視線の二種類。ちなみに相澤は後者。
念の為エクトプラズムの背後にもコンクリートの壁を作って準備万端。エクトプラズムの合図を見た森岸は自分に【ピオラ】を2回かけて走り出した。
飯田の【レシプロバースト】の如き超加速。20メートルの距離を一瞬で食いつぶし、エクトプラズムと衝突する寸前に森岸はこう唱えた。
「【アストロン】!」
「ハ───」
タックルの姿勢の森岸がほんの一瞬、全身を鋼鉄に変化させる。飯田の全力の蹴りでさえ傷一つ付かず、揺らすこともできない超重量かつ超硬度の塊がエクトプラズムの分身へとぶつかっていった。
凄まじい威力によってエクトプラズムの分身は消滅。その後ろに用意されていたコンクリートの壁すら粉砕して数メートル先で【アストロン】が解けた森岸が立っていた。
「名付けて【メタ・ストライク】……で、どうでしょう?」
「……ホトンドノ相手ニ過剰火力ダナ。切島デモ危ウインジャナイカ?」
「えー……」
「普通ニ使ウト死人ガ出ルゾ。セメテ速度ヲモウ少シ落トセ」
まるで横殴りの隕石のような破壊跡。どうみても殺人級の威力である。必ず殺す技という意味では確かに必殺技と言える。本当に殺す奴があるか。
とはいえ強いことは強いので調整が利くのならば実用的な技に化けそうではある。【ピオラ】の回数や衝突時の姿勢等で改善を試みていると、先程の威力に若干へっぴり腰となった上鳴が声をかけた。
「なあ、そんなんしなくても【アストロン】しながら落ちてくるだけでいいだろ」
「あ、それでもいいな。じゃ今度はそっちで試すか」
「……一応言っておくけど、絶対俺の方に落ちてくんなよ?」
「ハハハ」
「おいこっち見て返事しろ森岸!!」
その後、技名はそのままに上から降ってくる形式で必殺技として仕上がった模様。それでもやっぱり高度次第では威力がえげつないことになるので使用の際は慎重に調整するよう釘を刺されていた。
耳郎(あー……なんだろ。詠士の上滅茶苦茶リラックスできる。このまま寝落ちしそう。今寝たら絶対ヤバいけど凄い気持ちよく眠れそうな気がしてきた……)
森岸(うわー……めっちゃいい匂いする。つか抱き枕として丁度よすぎる。先生に見つかったら絶対エライ事になるのに寝落ちしそうになってきた……何とか起きろ俺、耐えろ俺……)
※この後耳郎はしっかり自分の部屋に戻って寝た。