1日でお気に入り登録が150まで増えてた……怖……。
ありがとうございます!
「えーと……何がダメだったかわかる人……いる?」
オールマイトの言葉に反応を返せる者は一人もいなかった。
そりゃあそうだろう。何せ第一、第二戦と比較してもあまりに口を挟む余地がない。いや第二戦よりはマシかもしれないけど。
耳郎&上鳴ペアVS森岸&峰田&八百万トリオ。その内容は森岸の【魔法】によって強化された身体能力によるゴリ押しと、八百万による詰めの一手にて決着となった。
単なる人数の差も上鳴の個性にかかれば微々たるものに収まるはずだった。そうでなくともヒーローチームの二人の攻撃範囲の広さは十分に強力だった。
だが、その強みを発揮する前に潰されてしまってはどうしようもない。むしろ人数差というこれ以上なくわかりやすい強みを押し付けられてしまった。
他の生徒達も、自分だったらどうしたか……なんてことを言葉にすることもできず『いやあれはもう無理では?』という視線をオールマイトに向けるばかりだ。
「まあ……森岸少年は味方がいる状況では最強クラスと言ってもいいからね……! あまり気を落とすんじゃないぞ!」
挙句オールマイトも『あれはしゃーない』と言い出す始末。おい教師。
しかしオールマイトでもそうなってしまうのも無理はないのだ。
そりゃあオールマイトクラスの化け物フィジカルがあるならともかく、入学したばかりで経験値なんてあるはずもない。
逆転の可能性まで丁寧に摘み取られてしまえばそのまま敗北まで流されるしかない。
例えば第一戦のどちらかに森岸がいた場合を想定してみよう。
仮に緑谷と麗日のチームに森岸が加わった場合、強化された緑谷がそのまま爆豪に殴り勝ってしまう。緑谷を侮っていたのであれば尚更。
もしくは強化をもらった麗日が先行し、飯田と普通に殴りあって勝つかもしれない。
逆に爆豪と飯田に森岸が加わったら? そりゃお前、緑谷も麗日も爆発さん太郎一人に潰されて終わりますが何か。
つまりはそういう事。多人数戦において、森岸という存在は単独で状況を一変させてしまうカードである。
戦力差を覆す、或いは強固なものにする。勝てそうな相手には負ける可能性を減らし、負けるはずだった相手に対して下克上を突きつける。そういう存在なのだ。
そして今回の戦闘訓練では使われなかったが、何とかして撃破した相手を【回復魔法】で復活させてくることもできる。なんだこれ地獄かね?
(なるほど……他の先生方が言うわけだ)
オールマイトは改めて理解させられる。雄英の教師達……プロヒーローをして『最も
尚、当人の
「き、気を取り直して次、いってみよう!」
その後、オールマイトは何とか下がりきったテンションを戻すのに四苦八苦しながら授業を進めていた。
ちょいちょいカンペをガン見してて苦笑いされたのは内緒である。
◇
「……で、何のご要件です?」
放課後。初のヒーロー基礎学、初の戦闘訓練ということもあって同級生達と反省会でもしようぜ! となっていた森岸。その彼は現在、担任の相澤に呼び出されていた。
特に悪いことをした覚えのない彼だが、それでも呼び出されてしまえば『何かやったっけ!?』と慌てて記憶を遡ってしまう。それを1ミリも表情に出してないのは凄いけども。
対する相澤は少し気だるげ、というかいつも通り。昨日のように不審者感満載の寝袋二足歩行スタイルで森岸に向き直った。
「……昨日と今日、緑谷の怪我を治したらしいな」
「? はい」
「婆さん……リカバリーガールから色々と聞いておいて欲しいと言われている。少しつきあえ」
雄英高校は基本的にスパルタ教育。生徒を徹底的に鍛え上げ、定期的に試練を与え乗り越えさせる。そうして成功体験、或いは失敗から学びの経験を与えることで伸ばしていく方針だ。
その過程で怪我をすることなんて珍しくもない。骨折した生徒を治癒して授業に戻したかと思えば、一時間もしないうちにまた怪我をして戻ってくるなんてこともある。
なのに今年の一年生は今日初めて緑谷出久が来ただけ。それも授業が終わった後に森岸が立ち寄ると、数分もしないうちに元気になって帰っていった。
相澤は事前に森岸が使える【魔法】を全て聞かされていた為、森岸によって治療されたとまでは理解していた。
ただ、実技試験での負傷といい今日の戦闘訓練での負傷といい、短時間で何の代償もなく治せる程度ではなかったはずだ。
そこで森岸本人に『お前の【回復魔法】ってどんだけヤバいの?』と直接尋ねることになった。恐る恐るといった様子で相澤は問いかける。
「お前の【魔法】……【ホイミ】と【ベホイミ】だったか。あれはどこまでの怪我を治せる?」
「……【ホイミ】なら通常の骨折くらいまでで、【ベホイミ】なら切断された手足をくっつけるまでできます」
「……それは、そこまでが限界という意味か?」
「いえ?
「は…………?」
おっと、相澤想定外の返答に困惑。初日の威圧感はどこへやら、ポカンと口を開けて固まってしまった。
そんな相澤のリアクションを見た森岸はまた焦りを加速させた。何かマズかったか、と慌てて追加の情報を吐き出した。
「だ、大丈夫です! 前に
「あ、ああ───ちょっと待て、お前今なんて言った?」
爆弾発言のオカワリがきた。相澤の脳みそはもうパンク寸前。胃はちょっと痛くなったきた。
「え。何か変なこと言いました……?」
「……自分で試した、というのはどういう事だ」
「そのままですけど……? トレーニングしてたら結構怪我すること多かったんで、その都度自分で治してましたから」
「………………?????」
とうとう相澤の背景に宇宙が出てきた。スペース相澤。
森岸曰く、ヒーローに憧れた日からトレーニングを始めたはいいものの、トレーニングの知識が全くなかった為に相当な無茶をしてきたそうだ。
常に【ピオラ】と【バイキルト】、【スカラ】と【インテ】の四つを併用しながらのトレーニング。
最初は近所をランニングしていた程度だったが、すぐに物足りなくなった彼は日常的にそれらの【魔法】をかけながら生活するようにしていた。
長時間【魔法】で強化し続ければそれだけ肉体にも負荷が積み重なっていくし、強化が解けた瞬間に受け止めきれなくなった負荷は明確なダメージとなって彼の身体を傷つけていた。
「だからまあ、【強化魔法】のインターバルにくるダメージを【魔法】で治して、また【強化魔法】を使って……の繰り返しをしてて」
「……ということは、だ。お前はそのトレーニングの中で骨が折れたこともあったし、身体がちぎれるようなこともあったと?」
「ちぎれるっていうか……破裂?」
今度こそ相澤は頭を抱えた。なんだこの自殺志願者。デイリーミッションに死にかけるとかそういうのが入ってるタイプか?
誰が新入生の中に日常的に自殺紛いのトレーニングをしている阿呆がいると思うんだ。というかもしかして今もしてるのか? と聞いてみると流石に首を横に振った。
「今はしてませんよ。あ、でも高校生活に慣れたら再開しようかなとは思ってますけど」
「絶対するな」
「え」
「無断でそれやったら除籍するからなお前」
「何で!?」
当たり前だろう。授業中にいきなり生徒が赤い水風船になるかもしれないと言われたら誰だって止めるわ。
納得がいかないという顔をしている森岸。納得いかないのは相澤の方である。何で許されると思ってるんだ。
「……というかお前、そんな危険な個性を他の奴に使ったのか?」
「違いますよ!? 5日間くらい強化しっぱなしじゃないとそこまでなりませんから!」
「5日も持続するのか!?」
「え、まあ……一部の【魔法】なら俺自身限定で……はい」
なんだろう。ちょっと叩く度に山のような埃が出てくるこの感覚。これ以上掘り返すともっとヤバい情報が出てくるかもしれない。相澤は酸っぱいものが込み上げてくる感覚にも襲われた。
いやどんな【魔法】が使えるかを聞いた時もそんな感じはしていた。想像以上の数の【魔法】が伝えられ、一つ一つの効果を確認していく度にため息が増えていった。
今のような詳細を知ると、ため息どころでは済まなそうな【魔法】がいくつもあった。教師の立場としては知っておかなければならない事なのだが、相澤にはどうにも一度に全ての情報を捌き切れる自信がない。
一つ咳払いをして正気を取り戻す相澤。色々とツッコミどころはあったが、まだ確認しなければならない部分がある。
滅多に使わないはずだった胃薬を口の中に放り込み、10秒チャージなゼリーで飲み下して話を続けた。
「……次なんだが、お前の【魔法】による強化には個人差がある、というのはどういう事だ? 相性の問題とかそういうやつか?」
「それは個人差というか、【魔法】による強化は基本的に『強化対象の能力』を基準にするんですよ」
「何?」
「例えばですけど、相澤先生とオールマイト先生に【バイキルト】……パワー強化をかけたとしましょう」
森岸の説明によると、彼の強化は強化元の能力に左右されるそうだ。
相澤のパワーを10、オールマイトのパワーを200と仮定した場合、【バイキルト】による強化は相澤のパワーを20にし、オールマイトのパワーを400にする……という挙動になる。
なので元の能力が優れていた場合はより多くの恩恵が得られるわけだ。また、優れていなくとも平均値程度の能力があればそれだけでも高水準と言われる領域まで強化される。
凡人を超人に変え、超人を怪物まで押し上げる。それが【魔法】だ。
「なので俺以外にはあんまり安定しないんですよね。何もしないよりはマシだとは思うんですけど」
「……お前はもう少し自分の個性がどれだけ恐ろしいものかを自覚しろ」
「はい?」
「もういい。今日は呼び出して悪かったな」
今この場で言えることはこれくらいしかない。ひとまず聞きたいことは聞けた。聞きたくないことも聞いてしまった気もするがそれはもういい。
背筋を冷たいものが伝う感覚を味わいながら、相澤はこれからの事を想像して『面倒なことにならなきゃいいが』と呟いていた。
森岸「ちなみに何の怪我もない人に【ホイミ】使うとこうなります」
相澤「肩凝りが消えた……!?」
森岸「やり過ぎると悪化しますけどね」
マイク「俺! 俺にも!」
森岸「どうぞ」
マイク「喉の違和感が消えた!」
相澤「おいバカ、そんなことした他の人も……」
※この後滅茶苦茶【ホイミ】使った