魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 節目の50話に遅刻しました。クソわよ。すいませんでした。



 Q.前回の【魔法】解説無くない?
 A.効果が対して変わらないので本編の方で説明します。

 Q.ますます支援向きになってない?
 A.なってる。指摘しても多分そんなに気にしない。

 Q.何か後書きに見覚えがある人がいたような……?
 A.個性が【馬】なだけの一般通過女子です。気にしないでください。






50.始まりそうで始まらない

 

 

 

「フヘエエエ……毎日大変だぁ……!」

「圧縮訓練の名は伊達じゃないね」

 

 

 今日もまた圧縮訓練が終わり、寮に戻った生徒達はクタクタになった身体を共同スペースのソファに預けていた。

 

 元々合宿で行われていた個性伸ばしでも死ぬほどキツかった所へ必殺技の開発まで重なっているのだ。そりゃあ多少は弱音も漏れるだろう。

 

 なんならこれでも訓練後に森岸に回復してもらっているのでまだマシですらある。それがないB組はA組よりもキツそうにしていた。

 

 ちなみにA組は森岸の回復前提で訓練内容をハードにしているのだが、B組がそれを見て『負けてたまるか!』と張り切った為だったりする。やめとけ。

 

 

「ヤオモモは必殺技どう?」

「うーん……やりたいことはあるのですがまだ体が追いつかないので、少しでも個性を伸ばしておく必要がありますわ」

「梅雨ちゃんは?」

「私はよりカエルらしい技が完成しつつあるわ。きっと透ちゃんもびっくりよ」

 

 

 それでもキツさに見合った成果はあったらしく、必殺技の完成が見えていたり自身の課題を再確認できたりと手応えを感じていた。

 

 八百万、梅雨ちゃんと続いて今度は麗日にも尋ねてみると。

 

 

「お茶子ちゃんは?」

「…………」

「お茶子ちゃん?」

「うひゃん!?」

 

 

 返事がない。どうしたのか見てみるとジュースのストローに口を付けたまま何も無いところをぼんやりと眺めていた。

 軽くつつきながらもう一度呼んでみると、珍妙な悲鳴をあげて飛び跳ねた。

 

 どうやら圧縮訓練でお疲れのご様子。それに寮生活もまだ始まったばかりなのだ、慣れない環境も相俟って心身共に疲弊しているのだろう。

 

 心配をかけまいとしているのか、或いは本心なのか。麗日は慌ててそれを否定した。

 

 

「いやいやいや! 疲れてなんかいられへん、まだまだこっから……の、はずなんだけど……何だろうね、最近ムダに心がザワつくんが多くて……」

「…………恋だ」

「ギョ」

 

 

 おっと、流れ変わったな?

 

 

「な、何!? 濃い!? それとも故意!? 知らん知らん!」

「緑谷か飯田!? 一緒にいること多いよねえ!」

「チャウワチャウワ!」

 

 

 図星を突かれたのかそれとも不意にとんでもない矛先を向けられたからなのか、動揺しまくった麗日はパニックのまま【無重力】を発動しとうとう宙に浮いてしまう。

 

 しかし否定すればするほど怪しく見えてしまう。麗日も顔を赤くして必死になるものだから尚更皆の興味が向いてしまう。

 

 つい先日の耳郎と森岸の話は弄りようがなかったせいか、フラストレーションを解放するように芦戸や葉隠が詰め寄る。

 

 

「誰!? どっち!? 誰なのー!?」

「ゲロっちまいな? 自白した方が罪軽くなるんだよ」

「ちち、違うよ本当に! 私そういうの本当……わからんし……」

 

 

 空中で上下ひっくり返りながらも弱々しく否定する。ああ言ってはいたが疲労自体もあった為か既に麗日はオーバーヒート寸前。お目目グルグルで【無重力】で身体もグルグルしている。

 

 流石に可哀想だと思ったのか、他の女子達が鼻息荒い二人に静止をかけた。無理に詮索するのはよくないと梅雨ちゃん、あしたも早いからそろそろおやすみしましょうとヤオモモ。

 

 しかしアオハルなイベントに飢えている芦戸としては少し物足りないらしい。

 

 

「ええー! やだ、もっと聞きたーい! 普通の(・・・)恋バナが聞きたいのー!」

「今遠回しにウチのこと普通じゃないって言った?」

「普通ではないよ?」

 

 

 それはそう。本当にそう。

 

 しかし疲れが溜まっているのも事実であり、それ以上食い下がることもできずその日は解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 訓練の日々は流れ、9月。ヒーロー仮免許取得試験当日。試験会場である国立多古場競技場に到着していた。

 

 

「緊張してきたぁ」

B組(物間)いなくてよかった……絶対うるさかっただろうし」

「それな」

 

 

 この仮免試験で半数が落ちるとされており、様々な修羅場を潜り抜けたA組であっても緊張してしまう。

 

 余談だがB組は別会場。この試験は全国三ヶ所で一律に行われる事となっており、同校生徒での潰し合いにならぬようどの学校(・・・・)でも時期や場所を分けて受験させている。

 

 

「逆境を跳ね除けてこそだ。仮免許を取得できればお前達ヒーロー志望(タマゴ)は晴れてヒヨっ子……セミプロへと孵化できる」

「他校との合格の奪い合いだもんなー……」

「しかも僕らは修得過程前倒し……」

「っしゃあ! なってやろうぜヒヨっ子によォ!!」

「いつもの一発決めて行こうぜ!」

「せーのっ、Plus……」

 

 

 円陣を組み、気合い入れの為に校訓を叫ぼうとしたその時。見慣れぬ制服の男子が一人、円陣へと加わった。

 

 

 

「Ultra!!」

 

 

 

 

「勝手に他所様の円陣へ加わるのは良くないよ、イナサ(・・・)

「ああしまった!」

 

「どうも大変!」

 

「失礼!!」

 

「致しましたァ!!!」

 

 

 黒い学帽を被ったガタイのいい丸坊主が喧しく頭を下げる。その勢いは地面に頭を打ち付けるほど。怖い。

 

 まるで飯田と切島を足して割るどころか二乗したような暑苦しさ。雄英でもあまりみないテンションにタジタジになっていると、周囲の受験生達のざわめきが聞こえてくる。

 

 

「待って、あの制服……」

「アレじゃん! 西の、有名なヤツ!」

 

 

「……東の雄英、西の士傑(・・・・)

 

 

 数あるヒーロー科の中でも雄英と並ぶトップクラスのエリート校、士傑高校。それが彼らの名だ。

 

 

「一度言ってみたかったっス!! Plus ultra!! 自分雄英高校大好きっス!! 雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極み!! よろしくお願いします!!」

「あ、血」

「……行くぞ」

 

 

 注目を集めていた彼らはついていけない雄英を置いて嵐のように去っていく。いったい今のは何だったのか、と呆然としていると相澤がポツリと彼の名を呟いた。

 

 彼の名は夜嵐イナサといい、昨年度……即ち今のA組の年の推薦入試においてトップの成績で合格したのにも拘わらず、何故か入学を辞退したという。

 

 つまり彼は皆と同じ1年生。1年で仮免を目指すのは全国でも少数と聞いているからこそ、彼もまた自分達と同じ異端であると理解させられる。

 

 そしてもう一つ。推薦入試でトップということは同じく推薦入試を受けていた当時の轟よりも上の実力を有しているという事になる。

 

 予期していない強烈なライバルの登場に警戒心が跳ね上がる。元々簡単にいくとは思っていない彼らだが、更に難易度が上がったと見るべきだろう。

 

 

「イレイザー! イレイザーじゃないか!!」

「げっ……」

 

 

 A組達の空気がヒリついた所、またも声をかける者が現れる。しかし今度は生徒ではなく相澤の客らしい。

 

 バンダナにノースリーブとどこかコミカルな印象のある女性ヒーロー。彼女を見た途端相澤は物凄く嫌そうに顔を顰めた。

 

 

「テレビや体育祭ぇ姿は見てたけど、こうして直で会うのは久しぶりだな!! 結婚しようぜ!」

「しない」

「わぁ!!」

「しないのかよ! ウケる!」

「……相変わらず絡み辛いな、ジョーク」

 

 

 彼女の名はMs.ジョーク。スマイルヒーローの名を持ち【爆笑】という個性で狂気的な敵退治をしているという。

 

 どうやら相澤の知り合いらしい彼女も学校の引率で来ているようで、せっかくだからと生徒達が呼ばれた。彼女の受け持ちは傑物学園高校……の、2年生。先輩にあたるはずなのだが有名人でも見るような態度で接してきた。

 

 

「おお! 本物じゃないか!」

「すごいよすごいよ! 体育祭で見た人ばっかり!」

「1年で仮免とは随分ハイペースだね。まあ色々あったし……やる事が違うよ」

 

 

 そのうちの一人、目を輝かせた正統派イケメンのような顔立ちの男子が歩み寄り、緑谷の手を取って話し始めた。

 

 

「俺は真堂! 今年の雄英はトラブル続きで災難だったね!」

「えっ、あ」

「しかし君達はこうしてヒーローを志し続けているんだね! 素晴らしいよ!」

 

 

 そのまま近くにいた上鳴と瀬呂まで流れるように握手を交わしながら、爽やかな態度で挨拶していく。

 

 しかし彼の視線はほんの一瞬、爆豪や森岸へと向けられていた。体育祭を見ていたのだから警戒しているのだろう……と、思いたいのだが傑物の女子が轟にサインを強請りにいっているあたりただミーハーの可能性も捨てきれない。なんだコイツら。

 

 

 ある意味では雄英は閉じた環境にあった為か、こうして外部と接すると自分達が有名人だということを改めて自覚させられる。A組は苦笑いを浮かべながら更衣室へと向かって行った。

 

 一方その姿を見ていたジョーク。彼らの背中を見送ったあとキョトンとした顔で相澤にこう尋ねた。

 

 

「……? ひょっとして……言ってないの? イレイザー」

「……」

 

 

 相澤は答えない。だが何のことかは分かっているらしく、それでも口を噤んだまま行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 説明会が始まった……んだけど、人多いな。これの半分が落とされるのか。しかも学生ばかりじゃない、普通に大人の人もいる。この中だと俺達雄英が最年少かな。

 

 壇上では何か滅茶苦茶眠そうな人が頑張って説明をしようとしてくれている。疲れ一切隠してないけど大丈夫か? 回復いりません?

 

 

「えー……ずばり、この場にいる受験者1,540人一斉に、勝ち抜けの演習を行ってもらいます」

 

 

 1,500……そんなにいたのか。それに勝ち抜けか。

 

 

 それからヒーロー殺しの一件から出た世論についても少し触れていた。彼の言う『ヒーローとは見返りを求めてはならない、自己犠牲の果てに得うる称号』という思想。

 

 壇上の公安の人としては動機が何であれ、命懸けで人助けをしている人間に『何も求めるな』と言うのは無慈悲だろうということだが、どういう理由であれヒーローが飽和した今事件発生から解決までの時間は引くほど速くなっているという。

 

 

「よって試されるはスピード! 条件達成者先着(・・)100名を通過とします!」

 

 

 …………は? マジで?

 

 1,500人のうち100人って……半分どころか1割もないじゃん。どういうことだよ。

 

 その条件とやらはターゲットとボール。一人三つ配布されるターゲットを体の好きな場所に取り付け、同じく一人六つ配布されるボールをターゲットに当てるを

 三つ目のターゲットを当てた人が倒したという判定になり、二人(・・)倒した者から勝ち抜けになる……と。

 

 

「キツいなこれ……」

「分かりやすく争奪戦だね」

 

 

 ハイエナ推奨の試験かよ。それも先着合格だから同校の潰し合いの可能性はまずゼロ。学校単位での戦いになりそうだ。

 

 ……って、壁が倒れた!? どういう所に手かけてんだ公安!

 

 

 でもまあ、丁度いい。新しい手札を試すには絶好の機会だ。

 

 

「ド肝抜いてやる……!」

「うわ、悪い顔」

「ドン引きやめて?」

 

 

 そんなに悪かった?

 

 

 

 






芦戸「あれが普通の恋バナなわけあるか!」
耳郎「心外にも程がある」
葉隠「いやー……あれはちょっと」
麗日「チャウワチャウワ!!」
葉隠「お茶子ちゃんはそろそろ戻っておいでー」



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