Q.B組大丈夫?
A.ブラドキングから滅茶苦茶怒られた。その後相澤と森岸を呼んでB組にも回復をしてくれと土下座する勢いで頼み込んだ。
Q.芦戸は二人の話をどう思ってるの?
A.フルーツ的な甘さが欲しかった所にM〇Xコーヒーぶち込まれたような感じ。つまり供給過多で胃もたれしそう。
Q.世間から見た森岸への印象は?
A.ちょっと普通とは雰囲気が違う人。他と比較して特に個性の全容が掴めてないから一番警戒されてる。一般人視点だと普通に優秀なヒーロー志望者。
例年形式は違えど仮免試験には慣習にも似たとある安定択というものが存在する。
今回は先着100名という厳しい条件がある為余裕がないものの、基本的に同校での潰し合いは起こらない。むしろ手の内が知れている仲間としてチームを組んだ方が余程勝率が高くなる。
それは雄英に限らず全ての学校に言える話。つまりこの試験は学校単位での対抗戦になるのが常。そうなると次はどこの学校を狙おうか? ということを考える。
そして一つだけ、分かりやすく狙いやすい学校がある。全国の受験生が競い合う中、唯一
『START!!』
「自らをも破壊する【超パワー】……まあ、杭が出てればそりゃ打つさ!!」
仮免試験の慣習と言われる程の恒例行事……即ち"雄英潰し"だ。
どこの学校が、なんて話ではない。雄英高校以外の受験生のほぼ全てが彼らを狙っていた。ジョークが連れていた傑物学園高校の生徒達を筆頭に、大勢が彼ら目掛けてボールを投擲され──
「そう、来るよね!!」
「【
『アイヨ!』
「危ねっ!」
──全てが防がれる。
【黒影】の手や【もぎもぎ】がボールを阻み、緑谷や森岸の力任せの一撃が弾き飛ばす。ターゲットを一つたりとも点灯させることは叶わない。
その光景を見ていたMs.ジョークは目を見開き、相澤を目を細めながら呟いた。
「雄英潰し……別に言わない理由もないが結局やる事は変わらんからな」
「へえ……!」
「理不尽を覆していくのがヒーロー。そもそもプロになれば個性を晒すなんて前提条件……悪いがウチは他より少し先を見据えている。それに……」
それから相澤は一人の生徒、どんな問題児よりもタチの悪い教え子に視線をやってこう続けた。
「個性が割れてる程度でどうにかなるほど
「……ん? 誰の事だ?」
◇
一言で言えば想像以上。一斉砲火を受けた雄英の実力は彼らが想像していたよりもずっと上だった。
そもそも彼らが雄英を推し量る基準としていたのは体育祭の頃の映像だ。まだ伸び代が潤沢にある時の彼らを元に推測をする時点で間違っている。
無論そんな事は百も承知。雄英が育っているのならば自分達だって育っている、それに個性不明のアドバンテージもあるのだからそう簡単にはいかせない……と、思っていたのだが。
「体育祭ん時とまるで違う……! 個性もだが
「それにしたっておかしいだろ! どんな訓練してんだ雄英!」
それを差し引いても受け入れ難い程の差を突きつけられていた。
個性の強弱や相性の問題はどうしようもないとして、基礎的な能力が段違い過ぎる。パワーもスピードも並の増強系クラスとは思ってもみなかった。
体育祭で見た限り、この場に来ている雄英生のパワーファイターは主に3名。自身をも破壊する【超パワー】の緑谷出久に何かしらの時間制限がある砂藤力道、そしてパワーの増強
いざ蓋を開けてみればその程度ではなかった。増強系でない個性の者ですら想像できないパワーを持っていた。
「この超人社会で言うことじゃないが、あのガタイのいい男子が女子に蹴り飛ばされる光景を見るとは……」
「なんならあっちのデカい異形型の奴もぶっ飛ばされてたぞ。こえーよ雄英」
「あれ個性とかじゃなくて素の身体能力なのか? トレーニングメニューとか聞きてえな……」
あれが基礎のフィジカルなのか……と誰もが戦慄しているが勿論そんなはずがない。
確かに個性伸ばしに加えてフィジカルトレーニングをする者も多いA組だが、だからといって耳郎や葉隠が年上の男子をふっ飛ばせるようなパワーを身につけているわけではない。
じゃあ何故そんなパワーがあるのか? 聞くまでもなく原因となる個性がある。
遡ることターゲットとボールの配布が終了した頃……試験開始の一分前。森岸はA組に話があると全員に声をかけていた。
「時間がないから簡潔に話す! 今から全員に【魔法】を使う!」
「え、時間一分しかないよ!? 間に合わないよ!」
チーム戦となればしない理由がない反則クラスの個性。それに対し緑谷が間に合わないのでは? と当たり前の疑問を投げかけた。
それもそのはず、チーム行動を嫌った爆豪とそれに着いて行った上鳴と切島、そして個性の都合上巻き込みかねない轟を差し引いても16人いる。その16人全員に強化をするとなれば一分ではとても足りない。
しかし森岸は不敵に笑ってこう答えた。
「今は違う。聞いて驚け! 一度に複数人に【魔法】を使えるようになった!」
「「「はあっ!?」」」
「マジか! お前どんどんやれる事増えてくな!」
相澤にも話した通り、今の森岸は複数人に対しての【魔法】使用が可能となっている。一分……話している時間を引いて30秒もあれば必要な強化を配り終えるには十分な余裕があった。
続けてこれから配る強化についてを話す。全員に配るのはパワー強化の【バイシオン】を2回とスピード強化の【ピオリム】が1回、そして防御力強化の【スクルト】を1回だ。
「体験したことある奴は分かると思うが強化幅が少し落ちているからあんま過信すんなよ! それでも並大抵の増強系くらいはあるから少し慣れるのにかかるから気をつけろ!」
こうして準備時間とも呼べないような短い時間の中、A組全員に強化が行き渡っていた。
そして現在。森岸の【魔法】によって誕生したフィジカルモンスターチームが大暴れしている。
「本っ当に森岸が味方でよかった! あれが相手に回る可能性とか考えたくもねえな!」
「同感、だっ!! 砂藤君のような増強系と相性が良すぎる!」
「委員長も凄いじゃん! さっき凄いキックでボールぶっ飛ばしてたし!」
緑谷や森岸は勿論のこと、常闇や砂藤に飯田といった攻撃力に優れた面々もまたパンチやキックの風圧でぶっ飛ばすという芸当を見せていた。
そうでなくとも単純な身体能力の強化は十分効果的。【もぎもぎ】の投擲や【創造】した武器での戦闘をより強くしてくれている。
「っ……ダメだこりゃ。一回
このままだと押し切られる。そう判断した真堂は一度状況をリセットすることにした。
冷や汗を流しながら地面に手を当て、大きく息を吸い込み個性を発動した。
「最大威力! 【振伝動地】!!」
次の瞬間、地面が崩壊した。
真堂の個性は【揺らす】といい、その名の通り触れたものを揺らす能力。揺れの大きさや速度に応じた余震が反動として体に向かい動けなくなるというデメリットがある。
だが必殺技にまで昇華する程の広範囲への揺れの伝達は地面を砕きヒビ割れさせ、沈下、或いは隆起させる。
「必殺技なら当然、こちらも編んでるよ!」
「だろうな」
「っ!?」
不敵に笑う真堂の真上。【振伝動地】を完全に回避した森岸が見下ろしながら見透かしていたようにそう告げた。
「そういや君飛んでたっけ……!」
「【トベルーラ】って言って10秒……今は1分くらい飛んでられるんですよ」
「これヤッバイなあ!?」
最悪のタイミングでかち合ってしまった。今の真堂は必殺技の反動ですぐには動けない。そこへ雄英でも最も未知数の森岸に見つかった。
流石にマズい。冷や汗をかいて打開策はないかと頭を回すが、動けないのでは策も何もあったものではない。開始数分もしないうちに脱落してしまうのかと絶望すらしかけていた。
しかしその真堂の前に二人、立ちはだかる者がいた。
「流石にヨーくん落とされると困るんだよね!」
「ちょっと君怖すぎるよ。退いてくれると助かるんだけど」
「二人とも逃げろ! 彼、滅茶苦茶強いぞ!」
「アレ、俺悪者扱いされてる?」
同じ傑物学園高校の二人。ただ庇いに来たのではなく、ボールを構えて徹底的に抗戦するつもりらしい。そんな目で見られても困ります。
「ンなこと言わなくてももっと簡単な奴狙うんで大丈夫ですよ。それに……」
「それに?」
「その必殺技、響香がある程度相殺したんで」
「え」
「……やっぱりか」
だが森岸は彼らを狙うつもりはない。どうにも彼らからは曲者の匂いがするというか、今狙いに行ってもろくな事にならなそうな雰囲気を感じ取っていた。
加えて先程の【振伝動地】の大半を耳郎が相殺していた。コスチュームを改良して得た特殊な篭手により【イヤホンジャック】の威力を向上させていたのだ。
真堂が地面に手をついたのを見た瞬間に何かくると察した彼女はプラグを篭手に接続。同じように地面に手を当て【バイシオン】によって強化された超爆音の心音をぶつけることで【振伝動地】の威力をゴッソリと削っていた。
「うっそ……アレ止められたの!?」
「強引に砕くから見えてないんでしょ? その土壁の先20メートルもしない辺りで止まってますよ」
「はは……マジかあ。こりゃ無理だ」
雄英の分断をしつつ足場を崩して混戦にし、長引いた所で漁夫の利を狙うつもりだったが完全にアテが外れた。このまま雄英潰しを続けていても尽く跳ね返されて終わりかねない。
真堂の力が抜けたような声に他の二人もそれを察したらしく、真堂を抱えるとその場から離脱して行った。
「さて……全員合格したいし頑張りますか、ね」
それを見届けた森岸は今度こそニヤリと笑い、自身に【スカラ】を二回と【バイキルト】を五回使用する。あの日と同じ250倍のパワーをその身に宿す。
彼らのやることを止めておいてなんだが、森岸が今からすることは真堂がやろうとしていたことと全く同じ。それも自分達以外にのみ被害を出す形でそれを行おうとしていた。
「っ、上にいるぞ!」
「体育祭優勝者だ! 油断するな!」
「おっと、気づかれちゃった。でもまあ……もう遅い! 派手なヤツ、一発いくぞォ!!」
敢えて周囲に聞こえるよう声を張り上げると、その場でグルンと勢いよく回転し──
「【ウイングブロウ】!!」
──規格外の一撃を振り抜いた。
「うおわあああああっ!?」
「なん……っ……!? 何が起きた!?」
「今の雄英こんなんばっかかよォ!」
250倍となった超パワーによるザ・力技。何の変哲もない腕の一振りが誰もいない地面へと放たれ、あらゆる防御ごと地面を砕きライバル達を吹き飛ばした。
森岸の狙いはこの雄英潰しの包囲網を破壊する事。強化されたA組達は一対一であればまず負けることは無いと確信できる。
しかし今のように複数の学校から狙われている状況ではそれも危うい。雄英潰しに乗じて他校を狙う勢力もおり、一部混戦状態になっているのが見えていた。
そうなると危険なのは流れ弾。明確に狙われていれば多少なりとも対処できるのだが、狙い通りではない跳弾なんかまで気を配るのは難しい。
ならばいっそ包囲網をぐちゃぐちゃにしてやればいい。彼らが雄英を狙うのは雄英が一番不利だからであり、別に雄英憎しで狙っているわけではない…………はず。
「詠士! 腕大丈夫!?」
「おう、平気。ハイエナ狙いの連中にはこれ以上ない撒き餌になるだろ」
「まずは『雄英狙いの空気を消す』か……そんな事できるのかと思っていたが、凄いな!」
包囲網が崩れればこの防戦一方の状態も終わる。攻勢に出ることさえできればA組は負けない。
今の一撃で瓦解したチームを狙った受験生達が動き始めた為、更に包囲網は崩れていく。そうなれば後はこちらが漁夫の利を狙うだけだ。
「よっしゃあ!! オイラ達の出番だぜェ!」
「そうだよなあ……何も投げて当てなきゃいけないとは一言も言ってなかったもんな」
「混戦になった所に【もぎもぎ】と【テープ】を撒いて動けなくしてから当てる……緑谷も割とえげつない作戦思いつくよな」
「そ、そうかな……?」
その後二つの粘着個性をばら撒かれた戦場は阿鼻叫喚。目の前に動けないライバルがいるのに自分も動けないという受験生たちをA組が片っ端からターゲットにボールを当て、一気に17人が通過した。
・ウイングブロウ
Ⅸで初登場した爪武器の特技。攻撃の後に風の刃で追加ダメージを発生させるという効果。
序盤で武闘家あたりが習得する印象。消費MPは2と結構お手軽……と言いたい所だが、武闘家は基本的にMPが低い為数発しか打てない。序盤習得なのに序盤が一番使いにくいってどういうことやねん。
本作では引っ掻くような形の手を振り抜いて衝撃波を放つ技となっており、単なる力任せの風圧攻撃。原作デクのセントルイス・エアフォースみたいな感じ。
以下ボツにした展開。
・一瞬だけ全員250倍まで強化して全員でスマッシュ
【バイシオン】だけで何回使う気だ。時間ないって言ってんのに1発に全ツッパすんな。これやると反動ダメージもヤバいから結局回復に時間取られるし。
・【モシャス】して引っ掻き回す
一瞬アリとも思ったけど真堂が割った瞬間に全部パァになりそうだからやめた。あとそんな事しなくても脳筋技で解決できることの方が多かった。
・ワンチャンにかけて【パルプンテ】
■■■■の効果を発動させようかと思ったけど大惨事になるだけで何もおもしろくならなそうだからやめた。あと【パルプンテ】あんまり乱用するのも違う気がした。
・自分達以外にデバフをばら撒く
第二候補。問題はこれを採用すると森岸のデバフ能力が突き抜けるという事。それでも良くはあったけどデバフを食らったライバル達が先に狙われる展開もありそうだったのでやめた。
・全能力を限界まで強化した森岸が全員気絶させる
第三候補。問題はこれで勝ったとして合格を認めてくれるのか? という部分が引っかかった。あとここでそれを使うのも何かもったいない気がした。