魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

52 / 53


 Q.爆豪達は強化もらってないの?
 A.貰う前にどっか行っちゃった。

 Q.耳郎ちゃん強くなり過ぎじゃない?
 A.まず森岸の回復のお陰で皆原作より強くなってる。その中でも耳郎は色々とPlus ultraしてるので一番強くなってたりする。

 Q.B組の回復への反応を詳しく!
 A.女子のリアクションだけ投げておきます。

拳藤「ひゃっ……!? あ、これすっご……っ……」
小大「んぅっ……んっ……」
小森「ふひゃあっ!? にゃにこれぇ……!?」
塩崎「いけませんこれは……堕落しては……ひうっ!?」
角取「Oh!気持ちイイデース!」
取蔭「あんっ……あ、これめっちゃいい……」
柳「ひっ、あっ……う、うらめしい……」

 尚、一番色っぽい声だったのは物間だった模様。森岸も流石に吹き出した。






52.拒絶と選別

 

 

 

 A組の大半が勝ち抜ける少し前の事。

 

 轟は味方を巻き込みかねない自身の個性を考慮し、森岸の強化を受け取る前に単独行動を開始していた。

 

 個性伸ばしを経て炎と氷の併用を習得しつつある轟の攻撃力は他校と比較しても上澄み中の上澄み。多対一という本来なら不利な状況も彼には何のハンデにもならない。

 

 

 

 はずだった。

 

 

 

 

 

「俺はアンタら親子だけは認めらんないんスよォ!!」

 

「っ……! さっきから何なんだお前!」

 

 

 雄英潰しを目論んでいた他校すら巻き込んで暴風が薙ぎ払う。ターゲットを狙うはずの試験をそっちのけに夜嵐イナサは轟を執拗に攻撃。勝ち抜けどころか試験にすらならない状況となっていた。

 

 

 轟がそうしたように、或いは全く別の理由からかイナサもまた同じ士傑高校の生徒から一人離れて行動していた。

 

 多くの人と競いたいという願望もあってなるべく人が集まっているエリアを探して移動していると、明らかに人が多くなっている市街地を発見した。

 

 真っ直ぐな上に暑苦しい彼はまずライバル達に挨拶をすべきだと考え、ビルの上から声を張り上げ──ようとして、一人の受験生を見つけた。見つけてしまった。

 

 

「アイツの事はアイツに言えよ! 俺は関係ないだろ!」

「いーや! あるんだなあこれが! だってアンタはあのエンデヴァーの息子だ(・・・・・・・・・・・・)!!」

 

 

 イナサにとってヒーローとは熱さ(・・)。熱い心が人に希望や感動を与えるものだと思っている。

 

 故に、彼はエンデヴァーを認められない。あれ程の熱を持っていながら、あまりにも冷たい怒りを宿した目を見た日から。

 

 そして雄英の推薦入試の日、同じ目を見た。エンデヴァーと同じ冷たい怒りを宿した目を。彼と同じ血が流れている轟焦凍の姿を。

 

 

「だからアンタにだけは負けられない! 負けたくない! 以上!!」

「っ……逆恨み通り越して八つ当たりかよ。付き合う理由がねえ」

 

 

 そう。言ってしまえばこれは逆恨みであり八つ当たり。己の尺度で測り、気に食わないものを排除していると表すのならばその行為は"ヒーロー殺し"のそれと大差ない。

 

 おそらくイナサ本人もどこかで自覚しているのだろう。生真面目で熱血であってもバカではない。むしろ自身の心と冷静な部分の板挟みにあり、今の彼は半ばパニック状態になっているとすら言える。

 

 

 しかし轟からすれば身に覚えがない事で絡まれ続けているだけ。まともに取り合うだけ損だと判断しありったけの炎と氷を放出する。

 

 イナサの個性【旋風】は風を操る能力。高出力と精密性を併せ持つまでに研ぎ澄まされているが物理法則を捻じ曲げるには至らない。

 炎に風が浮かされ、氷が物理的な障壁となって風を散らし阻む。これ以上付き合わない、という明確な拒絶だ。

 

 

「んなっ……!?」

 

「うわあっ!?」

「ノーモーションでこの出力かよ!」

「っ……!」

 

 

 イナサを跳ね除けた僅かな時間を見逃さず、自分を狙っていた受験生二人を氷で拘束。すぐにターゲットへボールを当てて条件を達成し、イナサとの戦いから降りたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 A組の大半、そして轟も条件を達成していた頃。断絶した高架線のようなエリアに残る三人……爆豪と上鳴、切島はいた。

 

 未だ勝ち抜けこそできていないものの、脱落はしていない。だがそこに切島の姿が見当たらない。

 

 

「緑谷達の方行っときゃ良かった!! 君達が走ってっちゃうから、寂しくてついて来ちゃったらこれだよ!!」

「じゃあ行けやカス……!」

「行けるわけねえだろ!? 切島があんなん(・・・・)なっちゃったんだぞ!?」

 

 

 そうして上鳴が指さした先。士傑高校の一人、肉倉(ししくら)の手に掴まれた脈打つ肉塊を心配そうに見つめていた。

 

 死んでいるわけではない。彼の個性【精肉】による能力だ。

 

 揉んで肉体を変化させる事ができ、他人の肉体すらも捏ねて丸くしてしまえる。また自分自身の肉体に限っては自由度が高く、切り離しての操作や集中させて巨大化する事も可能。

 

 そして肉倉の周囲には十数名分の肉塊が転がっている。彼は単独でそれだけの受験生を無力化できるだけの実力を有していた。

 

 だとすれば一つ疑問が残る。何故それ程の実力を有していながら未だ条件を達成していないのか。

 

 

「……これは示威である。就学時より責務と矜恃を涵養する我々と、粗野で徒者(ただもの)のまま英雄を志す諸君との水準差」

「ハッ、嫌いなタイプだ」

「何つったあの人!? 全然頭に入ってこねえ!!」

 

 

 その理由は選別。ヒーローに相応しくないと判断した受験生を脱落させる為、敢えて条件を達成していなかった。

 

 肉倉の思想は"ヒーロー殺し"のソレに近く、ヒーローという存在を神聖視するあまり勝手に自分の規準に当てはまらない人間を篩い落そうとしている。

 

 ならば爆豪達は彼の目にどう映っているのか。

 

 

「雄英高校……私は尊敬している。御校と伍する事に誇りすら感じていたのだ……それを一年A組(諸君ら)は品位を貶めてばかり……」

さっきの(・・・・)また来るぞ! キモイやつ!」

「ハッ……責務だの矜恃だのペラペラペラペラと……口だけじゃなくて行動で示してみろ!」

 

 

 結果は不適合。ヒーローも雄英も尊敬しているからこそ、爆豪の態度が許せなかった。

 

 肉倉の肉体が蠢き、五本の指へと変化する。切島もあの肉塊に触れられて転がされてしまった。上鳴が覚えたように警戒を促すが爆豪は耳を貸す素振りもなかった。

 

 

「特に貴様だよ!! 爆豪!!」

「くっだらねェなァ先輩ィ!!」

 

 

 肉倉が動く。変化させた肉体と共に駆け出し、爆豪への接触を狙う。触れさえすれば抵抗は不可能、最短経路を最速で突っ切ろうとし、爆豪の手が爆ぜた。

 

 

「【徹甲弾(A.Pショット)機関銃(オートカノン)】!!」

「ぬぅっ……!」

 

 

 手のひら全体の【爆破】を一点集中に切り替え指向性を与えた連続爆撃。形成された五本の指が吹き飛ばされ、その威力に肉倉が思わず立ち止まる。

 

 そして同時に自分が乗せられた事を悟った。自分自身が触れずとも変化させた肉体が触れさえすればいいというのに、何を自ら突撃しているのか。

 

 今の自分から冷静さが失われていることを自覚し、再び距離を取ろうとした瞬間、今度は爆豪の方が踏み込んだ。

 

 

「な、速───!?」

「テメェから仕掛けといて逃げてんじゃねェぞ!!」

 

 

 先程も述べた通り触れた時点で抵抗は不可能。だと言うのに爆豪は躊躇うことなく肉倉の前へと思い切り踏み込んでいた。

 

 体育祭で両手を【爆破】させて加速していたのは見ていたが、目の前の爆豪はその時よりも更に速い。安全圏だと思っていた距離が全く安全ではなかった。

 

 無意識に頭の中から除外していた可能性と、想像以上のスピード。冷静さを取り戻すよりも早く動揺を畳み掛けられた肉倉にガードが間に合うはずもなく爆豪の手のひら───ではなく、拳が彼の顔面を打ち抜いた。

 

 【爆破】の攻撃を覚悟していたところへ原始的な暴力。握りしめた拳を受けた肉倉は今度こそ完全に困惑していた。反撃すら頭からすっぽ抜けるほど。

 

 

「がっ……!?」

「テメェの理想論なんざ、知ったこっちゃねェンだよ!! 爆破式(エクス)カタパルト】ォ!!」

 

 

 硬直の一瞬、爆豪は肉倉の首を鷲掴みにするともう片方の手を【爆破】させ回転。遠心力を上乗せし肉倉を思い切り地面へと叩きつけた。

 

 ズダァン!! と、ド派手な音を響かせてコンクリートへと叩きつけられた肉倉は僅かに抵抗を見せたものの、数秒と保たず倒れ伏したまま意識を手放した。

 

 

「うっわ、滅茶苦茶痛そう……」

「痛くなきゃダメージにならねえだろうがアホ面」

「……お前、そういう喋り方すっからその人みたいなのに絡まれるんじゃねえの?」

 

 

 ごもっとも。

 

 それはともかく、肉塊の意識が落ちたことで彼の個性も解除された。転がされていた切島が元の体へと戻り、また他の犠牲者数達も【精肉】から解放されていく。

 

 

「くっそスマン! 助かった! ありがとう!」

「お、おう。まあやったのは爆豪なんだけど……って、他の皆さんも解放されちゃってんじゃねえか!?」

「コレに転がされた端役(モブ)共だ、ビビるまでもねえ」

 

 

 今更数的不利程度で怯む程ヤワではない。気絶している肉倉のターゲットを作動させつつ爆豪達は受験生との交戦を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 いやあ一次試験は強敵でしたね。どうも森岸です。

 

 それなりに雑な作戦だったんだが想像以上にハマって開始早々にA組17人が突破。それも俺達が一番最初だった。

 

 飯田が「委員長として爆豪君達を置いて行く訳には……」とか言っていたけど、流石に爆豪と轟は心配しなくてもいいと思う。アイツら俺が回復してくれる前提で毎日オーバーワークしてるし。

 

 

「ドリンクと軽食まで用意してくれてるとは思わなかったけどな」

「そこはほら、個性の都合上補給がいる事もあるからじゃない?」

「俺とかな。糖分切れるとマジでやべえ……」

 

 

 今は待機中。100人目が出るまで休憩してていいよ、と言われた。

 

 なので全員の体力回復に【ベホマラー】を使ってからは雑談タイム。まだ戻ってこない爆豪達の事を心配したりしながら過ごしている。

 

 

「そういや森岸さんよぉ! いつの間にあんなの習得してたんだよ!」

「そーだそーだ!」

「そのテンションは何?」

「いや気になるでしょ。かく言うウチも知らなかったし」

 

 

 響香と駄べりながら休憩していると、芦戸さんと葉隠さんが妙なテンションでこっち来た。何か響香と付き合い出してからよく絡んでくるようになったよなこの二人。

 

 で、何の話かと思えばあの全体魔法の事か。皆圧縮訓練してて話す機会なかったからなあ……ちゃんと説明してなかったっけ。

 

 

 あの全体魔法は俺の視界内に入っていて、尚且つ俺から15メートル以内にいる人物を対象とすることができる。

 

 じゃあ視界に入って15メートル内にいれば誰でも【魔法】の恩恵があるかというとそうでもない。何故ならその条件を満たした者の中から選んで【魔法】を使えるから。

 

 なので敵味方入り乱れる乱戦状態でも関係ない。二つの条件さえ満たしてしまえば味方にだけ強化を配ることができる。

 

 

「まあ試験開始前に言った通り、一人ずつに使うよりも強化倍率は落ちてるんだけどな」

「いやいやいや! 十分凄いって!?」

「うわー……ますますチーム戦に森岸必須になるじゃん……」

「どうも、一人で戦況をひっくり返せる男です」

「誰も否定できねえよ」

 

 

 だろうね。そうなる為に覚醒の方向性弄ったんだから。

 

 

 これができるようになった事を相澤先生に打ち明けた時、俺のことを褒めてくれた後にこう続けた。

 

 

 ──で、お前は『自分で』に拘るのか?

 

 

 ……まあ入学してからちょいちょい言ってたことではある。最強になりたい、俺一人で全部やれるようになりたいって。

 

 全体魔法の習得はその真逆。俺一人じゃなくて多くの味方と戦う前提のものだ。だからこそ相澤先生はわざわざそう言ってくれたんだろう。

 

 心配というか忠告してくれたんだろうけど、その時にはもう覚悟は決まっていた。ガキみたいな反抗からもう一歩踏み出した目標ができた。

 

 

 俺だけじゃない、A組全員で最強になりたい。

 

 

 神野で誘拐されて帰ってきてから響香に泣かれて、スマホの通知で自分が思っていたよりもずっと心配されていた事に気づいた。

 

 でも合宿の時、俺は最善の行動をしていた。最善だと思う立ち回りをしていたつもりで、あれ以上どうすればよかったんだろうかと考えて考え続けて、ようやく出せた結論は『無理』の一言だった。

 

 俺一人強くても俺は一人しかいない。俺が来たら必ず助けられるとしても俺が来るまでに手遅れになったらどうしようもない。そして何より、俺が負けたら俺を助けられる人間がいない。

 

 

 ……それであの時は連れていかれちまったわけだしな。

 

 あの時緑谷か轟を頼っていたら結果は違ったかもしれない。俺なら何とかできるなんて思わずに大人を頼るべきだったかもしれない。

 

 人によっては傲慢に聞こえるだろうけれど、俺はそう考えたんだ。俺が皆を助けるから、皆にも俺を助けて欲しい。そうすりゃ今度こそ絶対負けない、最強のヒーローになれるはずだ……と。

 

 後はまあ、響香を泣かせたくないというか……俺一人で突っ走って置き去りにしたくないから、かな。

 

 

「お、轟……と爆豪達も来たっぽい」

「マジ!? A組全員一次試験突破じゃん!!」

「うおッシャア!!」

 

 

 おっと、回想に浸ってたら戻ってきたのか。これでA組全員一次試験突破だな。そのうち士傑高校とか傑物学園高校の人達も来るだろうしパイプ椅子開いとくか。

 

 

 

 






イナサ「アンタら親子だけは認められねえ!」
肉倉「特に貴様だよ爆豪!」

森岸「厄介ファンみたいなの多いな士傑」
轟「……ファン、なのか?」
爆豪「アレはアンチでいいだろ」
上鳴「解釈違いって言ってるから両方厄介ファンだろ」
切島「確かにかなり厄介だった」



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。