魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.回復して連れて行ったらダメなの?
 A.あくまで演技してる方々なので回復しても元気になるだけなのであんまり変わらないしHUCの片方が困惑するだけ。本番だと普通に有効。

 Q.要救助者に【魔法】使ったらダメなの?
 A.使ってもいいけど評価しにくいので点数にはあまり影響しない。訓練だとか試験だとかだと使ってないだけで必要な時はそうする。

 Q.葉隠はいいの?
 A.見えないから別に……だそうです。







54.協力・救助・対敵

 

 

 面倒だ、とあまりにも場違いな感想を抱いているのは俺くらいだろうか。

 

 俺の【魔法】なら要救助者を回復しつつ強化を与え、自力での脱出を促すことができるんだが……それでは試験にならないから、と仮免試験の担当者に懇願されてその手段は使えなくなった。

 

 まあ、許されていたとしても緑谷の対応に減点と言っていたHUCを見るに回復と強化をやるから自力で出ろ、なんて言ったら俺も減点食らいそうだけども。

 

 それに要救助者に一々【魔法】の効果を説明していたら時間が足りない。念の為直接HUCの方々の対応をする時は「簡易的な治療と怪我の防止ができる個性です」とだけ伝えればいいだろう。

 

 

 今は全員に一通りの強化を配り終えたばかりだが、立ち止まって周りを見ていたお陰で少し情報を整理する余裕ができた。

 

 最初のアナウンスでテロ……つまり自然災害や事故ではなく悪意を持った敵によって起こった災害だと言っていた。ならばこの後に敵役の誰かが出てくる可能性が高い。

 

 それからもう一つ。こっちは確証がないけど試験内容を見るに個人の能力じゃなくてチームとしての能力を測られている気がする。

 

 一次試験は実質学校ごとの対抗戦。手の内がよく分かっている仲間と協力しながら戦う事を推奨するような試験だった。

 

 そして二次試験。こちらは学校の垣根を超えての連携、初対面の相手とも協力ができるかを確認されているように思う。

 

 

「……爆豪捕まえとくべきだったな」

「何言ってんのいきなり?」

 

 

 だとすれば自分の能力や個性に適したボジショニングができているのかまで見られている可能性が高い。

 一次試験をマクロとするなら二次試験はミクロ。まず協力ができるかを見られた後に自分の適性を把握して適切な判断ができているかを見られる。

 

 爆豪は誰がどう見ても救助より戦闘向き。敵役出現の可能性を考えると救護所の護衛辺りにつかせるべきだった。

 

 

「……誰か爆豪どこ行ったか知らないか?」

「爆豪君? 彼なら上鳴君と切島君が慌てて追いかけて行っていたが……確か山岳ゾーンに向かっていたぞ」

「山岳……飯田、爆豪連れ戻してきてくれるか? 救護所付近が可能性が高いと言えば多分理解するから」

「救護所付近……ああ、そういう事か! 分かった、行ってこよう!」

 

 

 話が早くて助かる。俺が行ってもよかったんだが、その間に出てこられたら困る。集団戦なら俺の方が確実に爆豪より必要になるはずだ。

 

 来るならいつでも来い。誰が来ても俺がいる限り全員が戦力になる。

 

 

 

 

 

「……いやちょっと待てやァ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと、森岸の想定は正しかった。

 

 放送にあった通りこの救助演習は敵による破壊活動が発端となっており、試験会場の一部を爆破させて敵らしく悪辣に登場していた。

 

 敵役のリーダーが一人と、そのサイドキックが大勢。

 

 

「ヒーローには複合的な動き……即ち救護、そして対敵。全てを並行処理できるかな?」

 

 

 前回のヒーロービルボードチャート10位。ギャングオルカが敵役として彼らの前に立ちはだかった。

 

 

『敵が姿を現し追撃! 現場のヒーロー候補生は敵を制圧しつつ、救助を続行してください!』

 

「なっ……ギャングオルカ!?」

「トップ10常連って、ハードル高すぎだろ!?」

 

 

 当然受験生達からすれば堪ったものではない。一人でもキツいトッププロがサイドキックまで引き連れて来ているのだ。

 

 しかも現れた場所が救護所付近と最悪に近い状況。救助に向かっていた受験生達も状況を理解して顔を青ざめさせている。

 

 全体に動揺が走る中、最初に動いたのは傑物学園高校の真堂。近くにいた緑谷に救護所の避難を指示しつつ、敵の迎撃を試みる。

 

 

「インターバル1秒程の揺れで畳み掛ける! 救護所には近づけさせな───!?」

「温い」

 

 

 一次試験の時と同様、地面を伝う揺れが放たれる。瞬く間に地面が砕け隆起し、サイドキック達の足止めが叶ったのも束の間。ギャングオルカは既に目の前まで迫っていた。

 

 

 

 キィン!!

 

 

 

「が……!?」

「この実力差で殿一人……?舐められたものだ」

 

 

 ギャングオルカの個性は【シャチ】。その名の通りシャチっぽいことができる能力であり、その内の一つとして超音波を放つというものがある。

 

 恐るべきはその威力。1秒にも満たないほんの一瞬の放出で真堂の全身を超音波が叩き、あっさりと麻痺させられてしまった。

 

 想像以上の実力差を見せつけられた受験生達に緊張が走る。

 

 救助に回っていた者や避難誘導を優先していた者達もこれはマズいと判断し、対敵へと動き出す。彼らがヒーロー候補生であることを思えば判断速度を褒めるべきだろう。だが。

 

 

「遅い。そして甘い!」

「っぐ……!」

「クソ強え!」

 

 

 真堂が一撃でやられた光景を目の当たりにし、遠距離から攻め立てるも全てが超音波一つに弾かれてしまう。

 

 

「シャチョーだけ警戒してるとやられちまうぞ!」

「私らがいることも忘れるなよォ!?」

 

 

 加えてギャングオルカのサイドキック。トッププロについていけるだけの能力を有したプロヒーロー達の個性(・・)が牙を剥く。

 

 高圧洗浄機のような水を放つ者や氷の弾丸を放つ者……ギャングオルカを支援してきたサイドキックの弾幕が受験生へと殺到する。

 

 

 

「───【ウイングブロウ】!!」

「【マンチェスター・スマッシュ】!!」

 

「ぬうっ……!?」

「うわわっ!? 雄英か!」

 

 

 それに割り込んだのは二人の超パワー。強化を重ねた拳の一振りで無数の弾幕を跳ね除け、一人切り込んできたギャングオルカを緑谷のかかと落としが迎撃した。

 

 二人だけではない。救助に向かっていた轟の氷結が、そして飯田が連れ戻していた爆豪の爆撃がサイドキックの進軍を押し返した。

 

 散らばっていた戦力が集まりだしたことにより形勢が逆転。多数の制圧に適した轟と爆豪の参戦が特に大きいだろう。そしてもう一人、彼らに引けを取らない戦力が駆けつける。

 

 

「吹き飛べェェエエッ!」

 

「士傑の……! いいぞ、これなら何とかなりそうだ!」

「俺達は救助に回ろう! 戦闘は任せた!」

 

 

 唸る【旋風】を操る夜嵐イナサが裂帛の気合と共に瓦礫諸共サイドキックを吹き飛ばす。これでおそらく今回の試験の最高戦力がここに集結した。

 

 しかしイナサの顔は晴れ晴れとしたものではなく、どこか悩みを抱えたような顰めっ面をしていた。

 

 

「……エンデヴァーの息子」

 

 

 彼の視線の先には轟焦凍がおり、対する轟はイナサに一瞥を向けた後ギャングオルカを油断なく睨みつけている。

 

 

 

 

 二次試験開始前の事。轟がイナサを呼び止めた後、轟はイナサに頭を下げていた。

 

 

「悪い……俺、入試ん時……お前のこと全然見てなかった」

「…………」

 

 

 轟は思い出していた。エンデヴァーへの復讐ばかりに目を向け、それ以外の何も目に入らなくなっていた時のことを。

 

 体育祭で緑谷に抱えていたものを壊されるまで自分の目が曇っていた事を自覚し、それまでにどれだけの事を忘れたままでいたのか。

 

 

 とはいえ轟が謝るべきかと言われるとそうでもない。轟がイナサに冷たい対応をしたというだけでイナサに何らかの危害を加えたわけでもなければ暴言を吐いたわけでもない。

 

 どちらかと言えばこれはイナサが一方的に轟とエンデヴァーを嫌悪しているだけであり、当時の轟はそもそもイナサを見てすらいなかっただけだ。

 

 その事を意識のどこかで自覚していたイナサは正しい返事を持っていない。許すも許さないもなく、これはイナサ自身の問題なのだから。

 

 無言でいたイナサをどう思ったのか。轟はどこか申し訳なさそうに、けれど決意したようにこう続けた。

 

 

「『反省したから許せ』なんて言わねえ……ただ、見ていてくれ」

「……?」

「もう忘れねえ。俺がしてきた事を有耶無耶にはしない」

 

 

 過去は消えない(・・・・・・・)。だからこそこれからの自分を見てくれと、轟はイナサに告げた。

 

 

 

 

 

「何やってんだ俺は……!」

 

 

 一方的に嫌悪して、拒絶して。あの日自分が失望した存在そのものになろうとしていた。それでよく轟にあんな事が言えたものだと自嘲する。

 

 何が冷たい目だ、何がこちらを見ていない、だ。自分こそ一方的に決めつけたまま轟という人間を見ていなかったクセに。

 

 

「っ……行くぞぉぉおおッ!!」

 

 

 謝るべきは自分だった。目を曇らせていたのは自分だった。そう自覚したからには立ち止まってはいられない。

 

 これが終わったら謝ろう。そして今度こそ友達になりたい。イナサは決意を風として漲らせ、ギャングオルカへと暴風を叩きつけた。

 

 高い出力と精密さを両立させた【旋風】はサイドキックの弾幕をも巻き込み、ギャングオルカの超音波でもなければ突破は不可能。更に他の受験生の個性を絡め取りより威力は増大していく。

 

 

「っ……中々やるな……!」

「これで1年かよ! 最近の子供怖っわ!」

 

 

 この時イナサが選んだのはギャングオルカ達の撃破ではなく足止め。轟の氷結と真堂の攻撃で足場が不安定となった彼らを攻撃するのではなく、竜巻の壁を生み出すことでその場に留まらせる事を選んだ。

 

 だが、ギャングオルカの超音波があればいつか突破される。トッププロの全力を防げるほどの自信はない。

 

 

 だからこそ彼らを足止めすることにしたのだ。

 

 

「【バイキルト】2回分持っていけ爆豪! 緑谷!」

「ありがとう!」

「指図してんじゃねえ魔法野郎!」

 

 

 ここにいるのは自分一人ではない。頼もしい味方がいる。

 

 森岸の強化を受け取った緑谷と爆豪が大技を構えているのを確認し、全員が時間稼ぎへと舵を切っていた。

 

 ギャングオルカの超音波が竜巻の壁を跳ね除けた先。敵として立ちはだかる彼らにヒーロー候補生の拳と手のひらが迫っていた。

 

 

 

「【榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)】ォ!!」

 

「【デトロイト・スマッシュ】!!」

 

 

「ぐおおおっ!?」

 

「シャチョー!?」

「何だ今のパワー!? 聞いてたより強えー!」

 

 

 【バイキルト】2回分……即ちパワー9倍の必殺技が2つ。さしものトッププロであってもまともに食らって無事であるはずがない。防御に加え超音波での相殺を試みて尚、その上から吹き飛ばされた。

 

 サイドキックや公安委員会としても完全に想定外。ギャングオルカがノックアウトされるなど考えてもいなかった。

 

 その動揺の隙も見逃さない。サイドキックの警戒が薄れた瞬間、轟の炎をイナサの風がすくい上げて巨大な火炎旋風が巻き起こる。ギャングオルカの超音波が来ない今、火炎旋風への対抗手段が失われたサイドキックに勝ち目はなかった。

 

 

 

 

『配置された全てのHUCが危険区域より救助されました』

 

『まことに勝手ではございますが、これにて仮免試験全行程終了となります!!』

 

 

 

 そうして仮免試験は終わりを迎えた。

 

 

 






 【原作からの強化要素】
 ・拘束用プロテクターを着ていない
 ・サイドキックの個性解禁
 ・サポートアイテムフル装備
 ・襲撃開始時間の短縮

 ※ちなみにサイドキックの個性描写については完全に捏造です。調べても情報全然出てこなかった……。


公安A「ここまでやってもダメなの……?」
公安B「やっぱあの個性無法過ぎるって」
公安C「ギャングオルカ倒されたってマ?」

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