2分遅刻しました。すんません。
Q.ケミィって先輩じゃなかったっけ?
A.先輩。タメ口でいいよと言われてタメ口きいてた。
Q.ギャングオルカ死んでない?
A.死んではいない。ただちょっと思いの外重傷になった。
Q.最後の一撃ってどのくらいの威力?
A.そのまま9倍になってる。
「まさかシャチョーまで吹っ飛ばされるとは……あ、ありがとね」
「最近の子供凄いなあ。そりゃ拘束用プロテクターとかないわけだよ」
「お褒め頂きどうも。他に怪我人いませんか?」
プロ相手だから結構必死だったんだが、向こうも割とヒヤヒヤしていたらしい。
今は試験終了後の待機時間で、せっかくだから個性伸ばしも兼ねて回復魔法を使わせて欲しいと提案した……のはいいんだが、まさか一番大怪我を負ったのがギャングオルカになるとは。
二次試験最後の爆豪と緑谷の一撃は想像以上の威力になっていたらしく、ギャングオルカは完全に気絶していた。その余波だけでサイドキックがそこそこ重傷だったと言えば伝わるだろうか。
ギャングオルカも命の危機とまではいかないがかなりの重傷になっており、彼に限っては慌てて【ベホマ】を使った。いや……その……腕があられもない方向にひん曲がっててヤバかったから……。
その他にも受験生やHUCの方々までしっかり回復し、流石に魔力量が心許なくなったところで全員分の回復が完了。見抜かれてたのか響香から軽くど突かれた。痛い。
「まったく……あんまり無茶しないでよ」
「いけると思ったんだって……魔力切れまではいってないからセーフセーフ」
「お疲れ様です森岸さん」
今度は展開しないであろう待機所に戻るとヤオモモが冷たい水をくれた。ありがてえ、キンキンに冷えてやがる。
皆やれる事はやったという自信はあるが、それでも不安は不安らしい。かくいう俺もそう。強化撒いた後はギャングオルカ達との戦闘に向かったから救助らしい救助ほとんどしてないんだよな。
「こういう時間一番ヤダ……」
「人事を尽くしたならきっと大丈夫ですわ」
「失敗らしい失敗はしてないから多分大丈夫……の、はず」
「分かってても怖いもんは怖いし……」
それな。でも終わったもんはもうどうしようもないし、後はヤオモモが言った通り祈るしかないか。
……それとずっと気になってたんだが轟は何かあったのか? すんごいボケーっとしてるってかまた何か吹っ切れたっていうか。
そういや二次試験前の時にあの夜嵐イナサ? ってやつを呼び止めて話してたっけ。あの人確か推薦入試1位だったっていうし因縁でもあったのかな。
その夜嵐って人もどこかバツが悪いって感じで轟に頭下げてるし。いや本当に何があったんだあの二人。
っと、どうやらもう集計が済んだらしい……いや、回復して回ってたから早く感じただけか。
ともかく合格発表の時間だ。
『皆さん長いことお疲れ様でした。これより発表を行いますが……その前に一言』
公安の眠そうな人はそう言って採点方式についての話を始めた。
二次試験においてはヒーロー公安委員会とHUCの方々による二重の減点方式で採点を行っていたという。
一人助けたからn点獲得、ではなく間違った行動や判断をする度に持ち点から引かれていた、と。
言われてみればそうか。救助活動ってのは成果とかじゃなく
『とりあえず合格点の方は五十音順で名前が載っています。今の言葉を踏まえた上でご確認ください』
あ、モニターに映し出されるのか。それで俺の名前は………………ッシャあったァ!!
自分の名前を探す途中で緑谷とか峰田の名前も見えた。チラと他の皆と見てみると特に落ち込んだ様子の奴はいなさそうだ。
「ね、詠士はどうだった?」
「勿論あった。響香は?」
「あった! よかったよほんと……」
まあ響香の名前先に見つけてたから知ってたんだけど……これ、自分の名前より先に見つけるってだいぶキモいか?
それからA組。なんとまさかの全員合格。1年生で仮免試験に臨むのも珍しいと聞いていたが、その更に上を行く1年生で全員仮免取得達成だ。やったぜ。
それから今度は採点内容が記されたプリントが配られた。最初の持ち点が100点でボーダーラインは50点だったらしい。名前を呼ばれた人から取りに行っている。
俺の点数は……90点か。かなり高い方じゃないかこれ。
曰く『冷静に自身の役割を認識して真っ先に行動した部分は良かった。強いて言うならば救助活動にあまり参加していなかった部分だけがマイナス』との事。
それともう一つ、最後の爆豪と緑谷の一撃があんなバ火力になったのが俺のせいだとバレていたようで、要は『流石にやりすぎ』だそうだ。否定できねえ。
「だそうです」
「いやいや十分高得点じゃん! すっご!」
「響香は何点だった?」
「……ヤオモモは94点だったよー」
「いや響香のを聞いてるんだけど」
あ、こら逃げんな。俺が思ったより高得点だからって尻込みするんじゃねえ。
その後は二次試験で不合格となった人達に向けての説明があったが俺達にはほとんど関係ない内容だった。
発表と説明が終わったら仮免試験は終了。仮免許を受け取って競技場を出た。
「あ、森岸」
「お、ケミィ先輩。合格した?」
「したー。森岸も受かったぽい?」
「ぽい」
「おー」
士傑高校も二次試験に進んだ人達は全員合格したらしい。一次試験で落ちた肉倉って人だけ落ちたとか。爆豪が倒した人だっけ? ケミィ先輩によると「最近メンブレしててガチ迷走中」だそうだ。
あ、そうだ。どうせなら今のうちに連絡先貰っとこう。プロヒーローになってからのコネは大事だと相澤先生やミッドナイト先生が言ってたし。
ケミィ先輩の連絡先くーださい……って、何でそんなキョトンとした顔するの? え? 彼女さんいるのにいいのって?
「命までは取られないはずだからセーフ」
「ウケる。ガチ愛されてんね」
「あとできれば他の士傑の方の連絡先も欲しいんだけど……まだいらっしゃる?」
「いるよー。呼んでくる」
よっしゃ将来有望な先輩方の連絡先ゲット。何かあった時遠慮なく頼らせてもらおう。
◇
少し時は遡り、仮免試験が始まったばかりの頃。オールマイトはとある場所を訪れていた。
あらゆる凶悪敵を地下深くへと収監し、幾層ものセキュリティを張り巡らせた監獄。僅かな身動ぎや個性発動の予兆すら見逃さない監視網により徹底的にイレギュラーが排除された牢獄。
世間はギリシャ神話にある奈落を表す神の名を借りてこう呼ぶ。
──タルタロス、と。
「そろそろ後期が始まっているんじゃないのかい? 教育に専念するものだと思っていたのだが……今更僕に何を求める?」
「……ケジメをつけるだけさ」
「オール・フォー・ワン」
ガラス一枚の向こう側。車輪のついた椅子に座らされ、全身余すことなく拘束されている魔王にそう告げた。
神野でオールマイトに敗れたオール・フォー・ワンはしばらくの間発狂寸前と言っていい程に錯乱していた。
あの日オール・フォー・ワンの企みのほとんどが潰えた。敵連合が何の意味もなく解散し、死柄木弔もまた彼にとって何の役にも立たない有象無象へと成り下がってしまった。
ただの敗北なら然程堪えもしなかったのだろうが、そうした暗躍や計画までを丸ごと叩き潰されてしまうとさしもの魔王であっても怒り狂う。
ここタルタロスに連れてこられたばかりの時はまるで無気力な老人のような雰囲気になっていた。
時間がオール・フォー・ワンを冷静な状態に引き戻し、面会ができるようになったのは今日。面会許可が降りたらいつでもいけるよう、オールマイトはタルタロスに話を通していた。
そして今、魔王と平和の象徴が面と向かって言葉を交わしている。
「ここは窮屈だよオールマイト……流石の僕もタルタロス……奈落の神への反逆となると一苦労するだろう」
「いいや、出られないんだよ」
「……そういう事にしておこう。それで? 君は僕に何を求めている?」
やはりというべきかオール・フォー・ワンに余裕はなく、隠しきれない苛立ちが言葉の端々から滲み出ていた。
あまり刺激すると面会を打ち切られるかもしれない。そう思ったオールマイトは尋ねたいことをそのまま切り出すことにした。
「…………貴様こそ何がしたい、何がしたかった」
「……?」
「人の理を超えその身を保ち生きながらえ……その全てを搾取や支配、人を弄ぶことに費やして……何を為そうとした」
「はあ……生産性のない話題だな。つまらない」
オールマイトはずっと分からなかった。長年魔王と対峙し続けて尚、オール・フォー・ワンが何の為にそんな事をしていたのか理解できなかった。
人の人生を踏み躙って弄んで、それを上から見下ろして愉悦の笑みを浮かべて。それの何が楽しいのか、何が嬉しいのかオールマイトにはさっぱり分からない。
質問に対しオール・フォー・ワンは呆れたように返す。どうせ聞いても納得できないのならば聞くだけ無駄だろう? と告げた後、こう続けた。
「同じさ。君と同じだよ。君が正義のヒーローに憧れたように、僕は悪の魔王に憧れた。シンプルだろう」
「…………」
「理想を抱き、体現できる力を持っていた。永遠に理想の中を生きられるのなら、その為の努力は惜しまない」
それは紛れもない魔王の、オール・フォー・ワンの本音だった。これまでの悲劇も殺戮も、全ては彼の理想の為の行いだと、そう語った。
オールマイトがその身を削ってでも人助けに邁進したように、オール・フォー・ワンはあらゆる手を尽くして他人を踏み躙る。それがしたくて生きている。
オール・フォー・ワンが告げた通りオールマイトとオール・フォー・ワンは根本的に分かり合えない。人の笑顔が好きなオールマイトと人の絶望を好むオール・フォー・ワンの間に相互理解など存在し得ない。
だが疑問が残る。オール・フォー・ワンは
死柄木弔がどれほどオール・フォー・ワンの意志を継ごうとも死柄木弔は死柄木弔でしかなく、オール・フォー・ワンそのものにはなれはしない。弟子が受け継いで嬉しいようなものでもない。
オールマイトが問うとオール・フォー・ワンは心底愉快そうに笑った。
「君がそれを聞くか! 君が全て奪ったからだろう!? この管があってようやく僕の生命を維持できるんだ。無限だった僕の理想は君のせいで有限となったんだよ」
オール・フォー・ワンは更に語る。終わりが見えた人間は誰かに託す事を考える。家屋やビルの建築、何気なく口にする食品の開発がそうであるように、人から人へと託されてきたものなどいくらでもある。
皆がやっている事を僕もやろうとしただけだ、とオール・フォー・ワンはつまらなそうに吐き捨てた。
何故ならばその後継者……死柄木弔はオール・フォー・ワンの手を離れ望まぬ方へといってしまった。
「それも君のお陰で台無しになったけどね。よくもまあ死柄木弔を腑抜けにしてくれたよ」
「……それは私の力によるものではないよ」
「何……?」
だが、それを成したのはオールマイトではない。彼にとって死柄木弔は神野事件の日まで数多く存在する敵の一人に過ぎなかった。
彼に疑問を与え、思考させたのは森岸詠士……オール・フォー・ワンにとっての有象無象の一人だ。
「貴様の考えなど想像はついている……ここで指を咥えて余生を過ごせ」
「…………フフ、余生……ね」
そうして再びタルタロスの檻が閉ざされる。もう二度と会うこともないだろうとそれだけを言い残して。
森岸「連絡先ゲットしてきた」
耳郎「ふーん?」
森岸「何か傑物学園高校からも貰った」
耳郎「うん?」
森岸「あとなんか先生方のも貰った」
耳郎「何で?」
森岸「俺が聞きたい」