魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.森岸は何をしてたら目が潰れたの?
 A.訓練中の事故なので意図的じゃない。山道走っててコケた時に石が刺さったのとミルコの蹴りを顔面に食らった時に潰れた。勿論その場ですぐに治した。

 Q.死ななきゃ安いとか思ってない?
 A.【ベホマ】習得以降は若干その傾向がある。あと普通に感覚が麻痺してるのもある。

 Q.他にもやらかしてることない?
 A.沢山ある。本人にやらかしてる自覚がないから聞かないと出てこない。



 前回の前書きにちょっとだけ文章隠してます。本編にはあんまり関係ないので気になる方は確認してみてね。思ったより気づかれてなくて慌ててバラしたわけじゃないからね。





61.接触不良

 

 

 

 死穢八斎會(しえはっさいかい)かつて(・・・)裏社会を取り仕切っていた力を持つ組織……所謂極道と呼ばれる人種。

 

 それも今となっては過去の話。ヒーローの隆盛に伴い摘発・解体が進み、オールマイトの登場がトドメとなって立場が一変した。

 

 悪の代表とされていた時代は過ぎ去り、その座は敵にとって変わられた。どうにか生き延びた者達は指定敵団体……敵予備軍という扱いを受けて監視されながら細々と生きながらえているものがほとんど。

 

 人によっては時代遅れの化石とすら評する。それが死穢八斎會でありオーバーホールが所属する組織だ。

 

 

 オーバーホールとドクターの接触は偶然だった。

 

 死穢八斎會の力を取り戻す為、一時とはいえ世間を騒がせた敵連合を傘下に収めようと動いていたオーバーホールがドクターの監視網にひっかかったのだ。

 

 敵連合のメンバーを探す彼らの前に現れたのは通信機と思われるものを持った異形の怪物、脳無。即座に戦闘態勢に入る彼らにドクターはこう告げた。

 

 

 

 ──手を組まんか? と。

 

 

 

 

 

 錆と埃。年単位で人の出入りがなかった廃工場を澱んだ空気が満たす装飾どころか手入れ一つされていない、人から忘れ去られたような空間。

 

 そこに3人と1体、人の世を脅かす無法者が向かい合っていた。

 

 片やペストマスクという共通点のある人間。片やスピーカーを首にかけて脳を剥き出しにした怪物。まるでこれから怪物退治が始まるような光景だ。

 

 

「……それで? 話を聞かせてもらおうか……ドクター」

 

 

 しかし戦いはない。ペストマスクの集団のリーダー、オーバーホールは怪物……の首にあるスピーカーの向こう側へと問いかけた。

 

 

『そう焦るな死穢八斎會(オーバーホール)。ワシと先生の傑作……脳無についての話じゃ』

 

 

 数秒のラグもなく、チープなノイズ混じりの声が返ってくる。機械越しの老人、ドクターは僅かに喜色を滲ませて話を続けた。

 

 

『結論から言うと……期待には応えられんのう』

「……そうか」

『傑作とは言うたが脳無にも限界はある。先生が健在ならともかく、望み通りの個性を生み出せるわけではないぞ』

 

 

 オーバーホールからドクターに出した条件は二つ。その一つが脳無に関わるものだった。

 

 彼が要求したのは『物品の複製、増産を可能とする個性を持った脳無』の貸出。何に使うのか、とドクターが尋ねても返答はなかった。

 

 それから『もしそれが不可能ならば単純に戦力になる脳無』を貸せとも。こちらはドクターにとって朝飯前の要求。調整中だったうちの一体を引っ張り出せばそれで事足りた。

 

 

『それともう一つの個性培養(・・・・)についてじゃが……こちらも無理じゃの』

「無理な事ばかりだな」

『吐かせ小僧! そもそもワシの所の設備がなければ土台不可能じゃ! それとも貴様にオール・フォー・ワンが用意したものと同等の設備があるのか!?』

「他人の成果をよくもまあ誇らしく語れるものだな……」

 

 

 しかし対価とするには不十分。二つ挙げた条件のうち一つ、それも譲歩したものしか達成していないのに何を威張り散らしているのか。

 

 なるほど、オール・フォー・ワンが飼っていただけあって脳無については賞賛せざるを得ない。だがそれ以外は倫理観をドブに捨てただけのマッドサイエンティストでしかない。

 

 首輪と鎖を自慢してくる犬を見て誰が羨ましいと思うのか。何の目的もなく、何の理由もなく多くを持っただけの人間……それがオーバーホールから見たドクターだ。

 

 対するドクターは憤慨こそすれ己が格下などとは微塵も思っていない。一通り喚き散らした後、今度はドクターの方から詰めるように話が切り出された。

 

 

『そういう貴様はどうなんじゃ!? こちらの条件──あの脳無は完璧に調整できたんじゃろうな!』

「……思い出させるなあんなもの。必要経費として借りた脳無すら見るのも悍ましいというのに……」

『フン、やはり見る目はないな。アレこそワシと先生の最高傑作だと言うに……』

 

 

 ドクターがオーバーホールに提示した条件。それは『とある脳無の肉体を設計図通りに作り替える』事だ。

 

 どこで知ったのかオーバーホールの個性を知るドクターはオーバーホールの個性ならば可能である条件を提示し、それさえ叶えば多少譲歩するとさえ言っていた。

 

 オーバーホールの返答は「二度と見たくない」だった。

 

 

「部下の車に待機させている。ここに呼べばいいのか?」

『ああ、それには及ばんよ』

 

 

 ドクターがそう言った次の瞬間。廃工場の外に停めていた車から部下の悲鳴が上がった。

 

 何が起きた。オーバーホールが慌てて外へ飛び出すと、脳無は異臭を撒き散らす黒いヘドロを吐き出しやがてヘドロへと飲み込まれて姿を消していた。

 

 

『回収の手段はあるんでな』

「……クリーニング代を請求したいんだが」

『安心せい。匂いは一時的なものじゃ』

「そういう問題じゃないんだが」

 

 

 腐ったドブのような匂いがする車に顔を顰めながらオーバーホールはそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 喧嘩した二人の謹慎開始から四日後。爆豪より一足先に緑谷出久が謹慎から解放された。

 

 

「ご迷惑お掛けしました!!」

「何かエラい気ぃ張ってんな」

「出遅れたってずっと言ってたからなあ……」

 

 

 普段は遠慮しがちな部分のある緑谷も今日ばかりは鼻息荒く明らさまに張り切っている。

 

 それもそのはずで、謹慎とは言っても現在の雄英は全寮制となっているので寮での謹慎となる。すると普通に授業や訓練を受けてきた同級生達と顔を合わせることになる。

 

 加えて彼らの会話には高確率でその日の授業や訓練についての話題が出てくる。その端々だけでも緑谷を焦らせるには十分過ぎた。

 

 そして最後にインターン関連の話。インターンについての説明は勿論のこと、雄英ビッグ3とかいう学ぶべき所しかない相手との戦闘もあったと言うではないか。

 

 

「この四日間でついた差を取り戻すんだ……!!」

「お、おお……俺ァそういうの嫌いじゃないぜ」

「……張り切ってる所悪いが、残念なお知らせだ」

 

 

 置いていかれてなるものかと決意表明をした所へ丁度よく相澤が教室へと入ってくると、開口一番にネガティブに切り出した。

 

 

「一年生のヒーローインターンだが昨日協議した結果、校長をはじめ多くの先生が『やめとけ』という意見だった」

「えー!? あんな説明会までして!?」

「全寮制になった経緯を考えりゃそりゃそうだけど……」

「話は最後まで聞け」

 

 

 そんなあ、が半分。だよね、が半分。分かっていても行きたいけれどその理由を理解しているし納得しているからこそ強く反発もできない。

 

 落胆する生徒達だったが相澤の話はまだ終わっていない。だが、と相澤は語る。

 

 

「今の保護下方針では強いヒーローは育たないという意見もあり、方針として『インターン受け入れ実績が多い事務所に限り一年生の実施を許可する』という結論に至った」

 

 

 無意味とまでは言わずともやはり訓練と実戦では得られるものが違いすぎる。先日ミリオが話したように"経験"というものはそれだけ人を成長させるのだ。

 

 故の折衷案。インターンの受け入れ実績が多い信頼のある事務所でのみインターンの実施を許可する、と。

 

 生徒としては実施不可能ではなくなっただけでも喜ばしい事ではあるが、そうなると今度は職場体験で行った事務所はその中に入っているのかが気になる。

 

 

「ガンヘッドさんとこはどうなんやろ……」

「セルキーさんに連絡してみようかしら」

「ミルコ……は多分無理だろうな」

 

 

 上から順に麗日、梅雨ちゃん、森岸。森岸だけは『まあ無理だろうな』と諦観中。ミルコはサイドキック自体いないから仕方がない。

 

 インターン受け入れ実績については先生に確認を取るように、と告げると相澤はホームルームを終えて授業へと移行した。

 

 

 

 

 

 

「……で、サー・ナイトアイにインターンの紹介をしてもらえないかって?」

「はい! オールマイトの下で働いたという数少ないヒーローの一人!!」

 

 

 その日の昼休み。緑谷はオールマイトに直談判をしていた。

 

 サー・ナイトアイとはかつてオールマイトのサイドキックを務めていたヒーローである。

 

 謹慎中にインターンの話を聞いていても立ってもいられずこっそりとフライング気味にグラントリノに相談を持ちかけていたのだが、どうも別件で動いている為に世話ができないと返されてしまった。

 

 そうなるとグラントリノ以外のスカウトを貰っていない緑谷は実質インターン参加不可となってしまう。

 

 そこで挙がったのがサー・ナイトアイだ。

 オールマイトの事情を、【ワン・フォー・オール】の事情を把握している事もあって今の緑谷にはピッタリだろうと。

 

 

「お願いします!」

「断ります」

 

 

 ガバッと勢いよく頭を下げる緑谷に対する返答はアッサリとしたNOだった。

 

 どうして、という言葉が出る前にオールマイトが言葉を続けた。

 

 

「意地悪で言ってるんじゃないぞ。理由は3つある」

 

 

 1つ目。まず相澤が言っていた昨日の協議においてオールマイトは反対派。敵の活性化も考慮すると()じゃなくてもいいのでは? と考えている。

 

 2つ目。パンチに拘らなくなった事で習得した蹴り技重視のシュートスタイルをもう少し強化すべきという判断。

 

 そして3つ目。

 

 

「……私、どうもサー・ナイトアイに避けられてるみたいで連絡が取れないんだよね」

「えっ?」

「だから紹介したくともできないし、紹介する気もないって所かな」

 

 

 今度こそ緑谷の口から『何故?』が飛び出した。

 

 ヒーロー事務所でサイドキックとの仲違い自体はそう珍しいものではない。スキャンダラスな理由の場合もあるが、大抵は方向性の違いだったり個性の相性が悪かったりというもの。

 

 ではオールマイトの場合はというと、そのどれにも当てはまらない。

 

 曰く、ある日を境にサー・ナイトアイの様子がおかしくなり、かつてのオール・フォー・ワンとの決戦の後『とある事情』で一年ほどヒーロー活動を休止したのだとか。

 

 それ以来復帰してからもサー・ナイトアイはオールマイトと関わることはなく、オールマイト自身もサー・ナイトアイの名を聞いたのは久しぶりだった。

 

 

「だから……申し訳ないが紹介はできないね」

「そんな……!」

 

 

 しかしそれで引き下がれるのならば直談判などしていない。

 

 爆豪と初めて喧嘩をしたあの日の事を……爆豪から言われた言葉が突き刺さり焦燥感に駆られている。

 

 

「かっちゃんに『レール敷いてもらっといて敗けんな』って言われたんです……僕は他の人の何倍も強くならなきゃいけないんです!」

「……そういうのは嫌いじゃないが、やはり紹介はできないな」

 

 

 

私からは(・・・・)ね」

 

 

 

 






オバホ「くっさ……」
ドクター「ファ〇リーズで消えるぞ」
オバホ「……ホントだ」
ドクター「残るようなら重曹を水で溶いてじゃな」
オバホ「あのヘドロなんなんだよマジで」


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