魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.轟の新技って……まさか?
 A.そのうち出るのでお楽しみに。

 Q.エンデヴァーのスカウト内容について詳しく!
 A.ざっくり言うと他のサイドキック達よりも超好待遇。トップとまではいかないが上位層のプロヒーローの稼ぎくらいの金額を提示された。

 Q.燈矢は轟家どうなってると思ってたの?
 A.八年も経ってるから流石に吹っ切れて前を向いて皆で頑張ってると思ってた。あれから更に悪化してるなんて思ってなかった。






63.(色んな意味で)地獄の轟家の親子事情

 

 

 

 良く言えばオールマイトに継ぐ実力者。悪く言えば万年No.2のヒーロー。それがエンデヴァーだ。

 

 オールマイトのように愛嬌があるわけでもなく、進んでメディアに出るようなこともしない。ただ淡々と己のやるべき事をやる質実剛健なヒーロー……というのが俺の感想だった。

 

 

「侮っていたつもりはなかったんだが……改めて見るとやっぱ凄いなあの人……!」

「いや君も十分凄いからね?」

 

 

 面談が終わった後、エンデヴァーはパトロールに出るからついてこいと言い街へと繰り出した。

 

 俺に与えられた課題……"エンデヴァーより早く敵を退治する"事はどうにか達成できた……が、多分あれは達成したうちに入らない気がする。

 

 エンデヴァーが気づいた事件を【魔法】の強化で強引に横取りしていただけだった。最初の一回目は素直に喜べたんだが、二回目からこれ何か違うなと思うようになってやめた。

 俺が自覚していると分かってるからかエンデヴァーは特に何も言わなかったけれど、最初にやった時は『違う、そうじゃない』みたいな顔してたもんな。

 

 

「いやおかしいから。むしろあの脇臭に出遅れてから追い抜く方が難しいから」

「それはエンデヴァーにも言われました。すんごい顔で」

「言われてたんかい! どんな顔してた?」

「苦虫を噛み潰した顔の例え方を教える時に使えそうな顔してましたよ」

「つまり苦虫を噛み潰したような顔って事ね!」

 

 

 今はパトロールから戻ってきてサイドキックの方々から話を伺っている所。俺の目指す所に行きたいのなら話を聞いておけ、とエンデヴァーから言われている。

 その間エンデヴァーは何やら連絡しなければならない事があるとかでどこかへ行ってしまった。

 

 それで今はバーニンさん、ライムグリーンの【燃髪】が特徴的な女性ヒーローと話していた。

 

 補佐する側の感覚とか他のサイドキックとの連携についての質問をしたかったんだが、段々と話が逸れていって今はほぼ雑談中。ある程度聞きたいことは聞けたからいいんだけども。

 

 

「いやー……エンデヴァーも面白い子連れてきたね! 学生なら大なり小なり緊張とか遠慮が見えるんだけど、君そういうの全然ないじゃん!」

「そりゃあそうですよ。No.1ヒーローの事務所に直接教えを乞いに来てるんですから。そんな事してたら勿体ない」

「アッハハ! いいね、そういうの嫌いじゃないよ!」

 

 

 それはそれとしてやたらバーニンから気にいられてるっぽい。どうもエンデヴァーを追い抜いたりして張り合おうとしてる所を気にいられた……のかな?

 

 あとはアレ、エンデヴァーが割と本気で俺をスカウトしようとしたのが伝わっていたらしく、そこから興味を持ったんだとか。

 

 

「あの【魔法】一つであそこまで態度が変わると思いませんよ普通」

「他の事務所だったらそうかも。うちの場合はちょっと話が変わってくるからね!」

「まあ、はい」

 

 

 バーニンが言ってるのは多分エンデヴァーの個性が個性だからだろう。炎熱系個性のヒーローにとってはよくある悩みのタネらしいし。

 

 でも学生を札束で殴るようなスカウトをかけるのはどうかと思う。どんだけ欲しいんだ。

 

 

 

 それからキドウ、オニマーと有名なサイドキックの方々からも話を聞きながらエンデヴァーの帰りを待っていると、何やら入り口の方が騒がしくなっていた。

 

 何事? とバーニン達と入り口の方に向かうとなんか見覚えのあるシルエットが二つ。片や背中からデカい翼を生やした男、片や目が据わってるヤベー面構えの男。

 

 

「ホークスと、オブセス?」

「うえ、No.2がサイドキック連れて何しに来たんだ?」

 

 

 オブセス……燈矢の生存については黙っておいてくれと言われていたのに何故ご本人がエンデヴァーの所に?

 

 つか燈矢が人でも殺しそうなケツイに満ちた顔してんのは何があった。まさかエンデヴァー殺しに……はないか。燈矢からあの人を憎んでる的な話は聞いたことないし。

 

 入り口で騒いでいたのはアポを取らずに事務所に来たかららしく、いくらNo.2であっても緊急の用件でないのなら困る、と受付の人に止められていたからっぽい。

 

 あ、こっちに気づきやがった。仕方ない、行ってくるか。

 

 

「……何してんの?」

「森岸君! ちょうど良かった! 今エンデヴァーいないよね!? いないって言ってくれ!」

「? 居るけど? どっかに連絡しなきゃって部屋に行ってそれっきり──」

 

 

 俺がそう言った瞬間、燈矢が駆け出した。

 

 

「ちょっ……オブセス!?」

「な……サイドキックの手綱くらいちゃんと握っとけホークス!」

「アイツ何してんの!?」

 

 

 いや本当に何してんだアイツ! 今の挙動はどっからどう見てもエンデヴァーの首取りに来た敵じゃねえか!?

 

 しかし燈矢の個性に機動力や身体能力を上げる能力はない。ホークスの【剛翼】か【ピオラ】をかけた俺ならまだ間に合う!

 

 何のつもりか知らんが今のアイツをエンデヴァーに会わせるとろくな事が起きない気がす──

 

 

 

「騒がしいから来てみれば……何事だ?」

「タイミング悪いなあの人!? エンデヴァー逃げろ! よくわからんけど何かヤバい!」

 

 

 何で出てきちゃうかなあ!? ヒーローだから騒ぎがあったら出てくるよね! そりゃそうだ! でも今だけは出てきて欲しくなかったなぁ!

 

 

 

 

「む? 貴様はホークスのサイドキックの……一体何ご───」

 

 

 

「歯ァ食いしばれやクソ親父ィィイイイ!!!」

 

 

「があああAAaaaaAaaアアぁぁぁぁア!!?」

 

 

 

 や……やりやがった! マジかよあの野郎ッ、やりやがったッ!!

 

 ダッシュの勢いを殺すことなく! 全てのスピードを攻撃力に変えてエンデヴァーの股間に一撃入れやがった!?

 

 いくらエンデヴァーでも、いや多分オールマイトでもソコを狙われたら一溜りもない! あまりにも悲痛で切ない悲鳴が響き渡ってるじゃん!

 

 

「え…………エンデヴァー!?」

「痛い! あれ絶対痛い!」

「何してんだテメェ!?」

 

 

 ほらサイドキックの方々も動揺して止めに行けてないし! あ、バーニンだけ止めに行ってた。

 

 でも燈矢は攻撃の手を止めない。股間を抑えて蹲るエンデヴァーの背中にドカドカとストンピングの追撃を入れている。

 

 

「このっ、この! テメェ俺の一件で反省しとけよ! 俺が言うのもなんだがちゃんと周り見ろ! テメェの家族だろうが!」

「ぐ、うぅうぅぅ……ッ……!? ぉ、っぐ……!」

「ステイ! オブセスステイ! エンデヴァーの顔が青通り越して白くなってるから!!」

 

 

 って、俺も立ち止まってちゃダメだろ。何ぼんやり眺めてんだ俺。まず燈矢を止めてエンデヴァーを回復させなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 ホークスとバーニンが燈矢を止めつつ、森岸がエンデヴァーを治療。突如起こったあまりにも痛ましい事件はひとまず落ち着きを見せた。

 

 幸い森岸の【魔法】はエンデヴァーのエンデヴァーも治す事ができたらしく、本人が確認したところ大丈夫との事。これからもPlus ultraできそうでなにより。

 

 一方燈矢はキドウのサポートアイテム兼捕縛用でもある帯で拘束済。一頻り痛めつけてスッキリしたのか暴れる様子はなく、ただただジトっとした目でエンデヴァーを睨みつけていた。

 

 

「まったく……ホークス! 貴様とんだサイドキックを連れているな!」

「あのマジで色々ごめんなさいなんですけど、それとは別にあんまりそういうこと言わないでやってください。ホント、マジで」

「ああ……そういう……」

 

 

 エンデヴァーからすれば先日の敵連合の一件が初対面のサイドキックにいきなり攻撃をされただけ。

 

 しかし全てを知っているホークスとしては『貴方の身から出た錆ですよ!』と半ギレしつつエンデヴァーが余計なことを言わないよう宥めるのに必死。

 

 そして薄らと事情を理解した森岸は三人を憐れむような目で見つめていた。まあお前に関してはマジで他人事だもんな。

 

 口の辺りから上半身をぐるぐる巻きにされた燈矢は反抗的な目でエンデヴァーを睨み、それを見たエンデヴァーはますます不機嫌そうに鼻を鳴らし、口を開放させた。

 

 

「それで? 貴様、何故あのような事をした」

「……ここまで間近で見てもまだ分からねえか?」

「何?」

 

 

 エンデヴァーの詰問に対し、燈矢は呆れを滲ませながら質問で返す。それでも尚訝しむエンデヴァーに我慢できなかったのか、再び声を荒らげた。

 

 

「俺の顔に見覚えはないかって聞いてんだよ轟炎司ィ!!」

「何を言って…………!?」

 

 

 何を言っているのか分からない、とでも言いたげだった顔が突然固まった。眉間に皺を寄せて睨んでいた表情が一転、信じ難いものを見るような顔になった。

 

 あの時敵を装う為にしていた特殊メイクはなく、そこにあるのは時が経ち森岸によって治った燈矢本人の顔。

 エンデヴァーは愕然としながら震えた声で彼に尋ねた。

 

 

「……燈矢……なの、か…………?」

「そうだよ! 瀬古杜岳で身勝手な理由で山火事起こして死んだ事になってたクソガキ! 轟燈矢だよ!」

 

 

 今にも拘束を引きちぎって飛びかかりそうな勢いで燈矢は答えた。

 

 

「そんな、はずは……だって燈矢は……」

「……下顎の骨とか色々見つかったんだろ? 全部治してもらったんだよ。そこのインターンやってる学生……当時は中学生だったか」

 

 

 それから燈矢はこれまでの事を全て語った。

 山火事から八年間眠り続けていた事。目を覚ました時には記憶喪失だった事。不穏な孤児院から逃げ出して来た事。その後にホークスと森岸に助けられた事を。

 

 エンデヴァーが疑問を挟む余地を与えない、山火事の日から今日ここに至るまで。燈矢が生きてきた足跡を話した。

 

 それでもたった一つ。これだけはどうしても聞かなければならない。

 

 

「では何故……何故家に帰ってこなかった……?」

 

 

 それは轟家に帰ってこなかった理由。燈矢がエンデヴァーではなくホークスを、家族以外の人間を頼った理由だけは聞かされていない。聞かなければならない。

 

 たとえそれが自分にとどめを刺す言葉になろうとも、それだけは知っておきたかった。

 

 

「……八年だぜ、八年。小学生になった子どもが中学二年生になるまでの時間が経ってたんだ。俺なんてとっくに過去になってると思ってたんだよ」

「そんなことは……」

「それに、今のお父さんみたいに信じてくれないと分かってた。死んだはずの人間が実は生きてた、なんてリアルじゃ信じてくれない人の方がほとんどだろ」

 

 

 エンデヴァーは何も言い返せなかった。事実として轟家において燈矢のことは"触れてはいけない過去"と、"忘れてはならない過去"になっていた。

 

 燈矢が、ホークスが、森岸が。三人の話と公安が調べた証拠があってようやく燈矢が生きていることを認識した。

 

 燈矢が家に帰ってこなかったのは……帰ってこられなくしていたのは自分だと、理解してしまった。

 

 

「そう、か……俺が……俺の、せいか……」

 

 

 八年前の火の不始末が今になって轟炎司を焼いていた。その火種は他でもない自分、No.1を渇望していたエンデヴァーのものだ。

 

 どれほど自分を責めても責め足りない。死なせてしまった我が子をその後も苦しめていたなどと聞かされて平気でいられるはずもなかった。

 

 

 

「っ〜〜〜ああもう、そうじゃねえから!!」

「……何がだ」

「お父さんを責めたくて戻ってきたわけ……でもあるけども! それよりも言いたいことがあったから会いに来たんだよ!」

 

 

 だがそうではない。燈矢が望んでいたのはそんな姿じゃない。

 

 拘束を解かれた燈矢はガシガシと頭を掻き毟り、未だ複雑な胸中をそのまま乱暴に吐き出した。

 

 

「俺のことはいいよ! 死んでたと思ってたんだし、アレは俺が悪いよ! でもさあ! 生きてる家族は大切にしろよ!」

「あ…………」

 

 

 自分の事はこの際どうでもよかった。あれは自分が悪い部分が大きいし、言っても聞かなかったのだから。

 

 でも、他の家族は違うだろうと、燈矢は詰め寄る。

 

 

「その力は何のための力だエンデヴァー! 思い通りにならない家族を黙らせる為の力か!?」

「…………俺は」

「俺も人の事言えねえけどちったぁ反省しろクソ親父ィ!!」

 

「があああAAaaaaAaaアアぁぁぁぁぁあア!!?」

 

 

 

 そして本日二度目のナッツクラッカー(意味深)が炸裂した。気のせいかプチンって音がした。

 

 

 

 

 






ホークス「ヒエッ」
森岸「ヒエッ」
キドウ「ヒエッ」
バーニン「何やってんだお前ェ!!」
オニマー「ヒエッ」

燈矢「嫌な感触だった……」
エンデヴァー「」


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