魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.轟の精神状態大丈夫?
 A.滅茶苦茶動揺してるし困惑はしてるけどそれだけ。情報が足りてないからそれ以上にならない。

 Q.連絡入れたのエンデヴァー?ホークス?
 A.エンデヴァー。入院中の冷さん以外に自分から連絡した。冷さんはまだ何も聞かされていない。

 Q.バブルガールのアレを森岸が見たらどうなる?
 A.そこまで好みではないけどエッチだとは思う。



森岸「くすぐりの何がいいってどんな無表情な人でも頬を紅潮させながら大声で笑ってるのがいいよね。長くくすぐられて息ができないのに笑いを止められなくて若干苦しそうにし始めたあたりとか滅茶苦茶イイ。笑い声の合間に嫌がる言葉とか入ってたりすると尚イイ。後くすぐり終わった後に笑い疲れて汗だくで赤面したままグッタリしてる所が最高。あの瞬間のためにくすぐり癖はあると言っていいくらいだと思う」
耳郎「うお」
森岸「……くすぐってみても?」
耳郎「やめろ」







65.(色んな意味で)地獄の轟家の家族会議

 

 

 

 ファントークというにはちょっと濃いめの会話を数分。緑谷が本来の目的を思い出すのとサー・ナイトアイが我に返るのは同時だった。

 

 ジト目のバブルガールとニッコニコのミリオを強めの咳払いで振り払い、真面目な雰囲気を取り戻し席につくナイトアイ。緑谷も慌ててデスクの前で気を付けの姿勢を取った。

 

 

「……今よりも強くなる為、私の下でインターンがしたいと」

「はい! お願いします!」

 

 

 気張る緑谷を見てナイトアイは目を細め、忠告のように語る。

 

 ヒーローインターンは一般企業に見られる一日から一週間程度の気軽な就業体験(インターンシップ)とはわけが違う。余程のトラブル(轟家の親子喧嘩)でもなければ最低一ヶ月の就労となり、給料も発生する。

 

 また、授業が多い一年生でのインターンは公欠が増える為、同級生達と足並みを揃えて進むことはできなくなる。

 

 彼はそれを聞いた上で学校の契約書を取り出した。

 

 

「皆と歩みを合わせていては、トップにはなれない……!」

「…………」

 

 

 何故ならば彼には使命がある。立ち止まっていられない、挫折できない理由がある。

 

 本来であればインターンどころか雄英……否、ヒーロー科でヒーローを目指すことさえ不可能だった"無個性"が受け取った。平和の象徴の力を受け継いだのだ。

 

 力不足も経験不足も年齢も。かつてのNo.1ヒーローに選ばれたからには何もかも言い訳にならない。それだけの事を託されたのだから。

 

 ナイトアイは緑谷の決意を聞き届け、承認印を契約書──の、真横に落とした。

 

 

「…………あの、外しましたよ?」

「押す気がないからな」

「ええ!?」

 

 

 緑谷の決意は理解した。だがナイトアイがそれに応える義理はない。所詮はこの場が初対面の学生でしかない。

 

 緑谷にとってサー・ナイトアイ事務所でのインターンは強くなる為に必要なプロセスだろう。しかしナイトアイにとって緑谷の存在は必要かと問われると全くもってそんな事はない。

 

 サイドキック二名にインターン生一名。それで滞りなく業務が回せている事務所に不要な人員を受け入れるだけのメリットが何一つ提示されていない。

 

 

「社会に対し自分はどう貢献できるのか、他者に対し自分がどう有益であるか。認めてもらう為にはそれを示さねばならない」

「社会にどう、役立てるのか……」

「オールマイトはパワーとユーモアを用いて示した。犯罪に脅える人々に希望を与えた……だから人々は彼を受け入れた」

 

 

 そこまで語るとナイトアイは席を立ち、印鑑を持ち上げてこう続けた。

 

 

「3分。3分以内に私から印鑑を奪ってみよ」

「えっ……え!!?」

「私の下でヒーロー活動を行いたいのなら、貴様が自分で判を押せ。ユーモアではセンスの欠片もない貴様にチャンスをやろうというのだ」

 

 

 つまるところ実力行使してみせろ、というナイトアイの試練。想定していなかった展開に緑谷も困惑が隠せていない。

 

 ミリオとバブルガールに退室を促し、部屋の中にはナイトアイと緑谷だけが残される。

 

 

「私からは一切手は出さないし、私にどんな攻撃を仕掛けても構わん。この室内がどうなってもいい、奪ってみよ」

「…………いきます!」

 

 

 全身に【フルカウル】のエネルギーを纏い、緑谷がナイトアイへと突撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと、緑谷はナイトアイからの印鑑の奪取に成功した。開始から2分38秒、ナイトアイの反応速度を上回る【フルカウル】の30%(・・)によって。

 

 しかしナイトアイの顔に驚きはなく、まあこんなものかとでも言いたげにため息を吐いていた。

 

 

「や、やった……っ……!」

「…………ふむ」

 

 

 そこから今度は契約書の方を奪われるんじゃないかと警戒していた緑谷だったが、ナイトアイもそこまでするつもりはないのか判が押されるのを黙って見届けていた。

 

 そしてポツリとどこか自虐的に呟いた。

 

 

「今回は【予知】が機能したか……」

「……? よ、予知……?」

「私の個性だ。条件も詳細も社外秘だ」

 

 

 ナイトアイの個性【予知】はその名の通り未来を予知する能力。その発動条件を知る者はほとんどおらず詳細も不明となっている。

 

 しかし名前からある程度能力を察することはできる。緑谷は自分がどれ程難易度の高い試練を出されていたのか今になって理解させられた。

 

 

「それでもやはり想像の範疇を出ない。そこらの増強型よりはマシ程度の出力が限界か」

「う……」

 

 

 

「やはり【ワン・フォー・オール】はミリオに継がせるべきだった」

 

 

 

「え…………?」

 

 

 ほんの一瞬、脳が理解を拒んだ。

 

 オールマイトと後継者の自分、そして限られた人物しか知らされていない【ワン・フォー・オール】の名前が出て、自分の知らない言葉が続いた。

 

 だって緑谷出久は何も知らない、聞かされていない。【ワン・フォー・オール】は自分に託された力で、自分以外の後継者候補がいたなど聞いていない。オールマイトからもミリオからもそんな話はなかった。

 

 次いで湧くのはオールマイトへの疑念。何故そんな重要なことを教えてくれなかったのか、ナイトアイから話されると分かってて黙っていたのか。

 

 今になって自覚させられる。自分はただ後継者として託された以外の情報をほとんど持っていない事を。オールマイトから全てを教えてもらっていない事を。

 

 

「条件を達成した事は事実。少なくとも貴様が何もできない足手まといではないこともわかった」

「っ……!」

「だが、認めたわけではない。誰がその力に相応しいか……プロの現場で痛感してもらう」

 

 

 まだまだ聞きたいことはある。何故という言葉は山のようにある。

 

 それでもひとまずインターンのスタートラインに立つことはできた。強くなる為のもう一歩を踏み出すことができた。

 

 今日この時より緑谷出久のインターンが始まった。

 

 

 

 

 

「緑谷出久でもない、か……ならば一体誰が、何が原因だ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 森岸と緑谷のインターン面接の翌日。本日は日曜日。二日目の休日に喜びながらも明日に待ち構える月曜という壁に阻まれそうな日。

 

 

 森岸は轟家に来ていた。

 

 

 

「……昨日の今日でかよ」

「悪いな朝早くから」

「昼までには終わりますように……」

 

 

 もうお分かりだろうが、エンデヴァーが言っていた『ちゃんとしたお礼』の件で呼ばれている。

 それとは別に燈矢が生きていた事についての家族会議もある為、事情を聞きたいという轟と轟の兄弟からも呼ばれている。

 

 ちなみに現在時刻は朝の6時半。移動やら準備やらのことも考えた轟によって森岸は朝5時半に叩き起されている。可哀想。

 

 森岸は昨日のインターン中止もあってテンションダダ下がり中。そこにこの早起きもあって見るからに不機嫌そうにしている。

 

 それでも他所様にあたるなんて真似はできないのか、轟家に着くなり自身に【ザメハ】と【ベホマ】を使って無理やりに体裁を整えていた。

 

 

「にしても……轟ん家デケェな」

「……そうなのか?」

「そうだろ。やっぱトッププロだけあって稼いでるんだろうな」

 

 

 で、その轟家だが滅茶苦茶デカい。和風建築の豪邸である。

 

 少なくとも森岸の家は家と庭の周りを笠塀が囲ってたりはしないし、門もない。ましてや玄関までに整えられた草木だの飛び石だの灯篭だのなんて置く場所もない。

 

 自分一人ならインターホン押すのにどれだけの覚悟がいることやら。口には出さないがそんな事を思いながら整えと共に玄関を潜った。

 

 

「ただいま」

「あ! お帰り! そちらが……」

「どうも。とど……焦凍君の友達やらせてもらってます、森岸詠士です」

「まあ! 突然来ていただいてありがとうございます! いつも焦凍がお世話になって……私、姉の冬美です!」

 

 

 出迎えたのは雪のような白髪に所々火のような赤が混じった姉、轟冬美だった。眼鏡の向こう側で目を細めてニコニコと笑いながら森岸を歓迎した。

 

 朝早いのに元気そうだなーとどこか他人事のように思っていると、奥の方からノシノシと足音を立ててもう一人が出迎えに来た。

 

 

「あ、エンデヴァー。おはようございます」

「……よく来てくれた」

「その……大丈夫でした?」

「………………まあ、な」

 

 

 轟家騒動の元凶にして責任者。本日はエンデヴァーではなく轟炎司として姿を見せた。

 

 森岸の視線は炎が消えた顔……ではなく、下半身。どことは言わないが粉砕☆玉砕☆大喝采☆された箇所を憐れむように見つめていた。

 

 立ち話する内容でもない為、話もそこそこに案内されるまま廊下を進んで部屋の中へ。そこにはもう一人の兄である轟夏雄と……今回の当事者である燈矢が既に待っていた。

 

 

「……すまん森岸。変なことに巻き込んだ」

「まあ今更でしょ。強いて言うならよくもインターン中止にしてくれやがったなってくらいか?」

「それは本当にごめん!……それと、皆にも謝りたい」

 

 

 森岸に一度頭を下げた後、再び顔を上げて家族全員へと頭を下げ直した。

 

 

「俺……自分の事しか考えてなくて、皆に酷い事言った。俺なんか居なくてもって勝手に決めつけて、皆から逃げてた。本当にごめん……なさい……」

 

 

 事の発端は何だったのか。根本的な問題は誰にあったのかを考えた時、火種を作ったのは炎司だった。

 

 だが、その火種を抱えて燃やし続け、家族に大火傷を残していったのは燈矢だ。

 

 それを無自覚なまま目を逸らし続けていた。もうあの家に自分の居場所はないと決めつけ、地獄の外でたった一人新たな人生を歩もうとしていた。

 

 火の不始末を起こしておきながらあまりにも自分勝手。だからこそ向き合うと決めた以上、燈矢は何としても謝らなければならないと思っていた。

 

 

「……昨日はあんなことしたけど、お父さんが全部悪いなんて言えるはずがない。夏くんや冬美ちゃんを苦しめていた原因は……俺にもある、から」

「燈矢兄……」

 

 

 火種が消えてようやく目が覚めた。自分は何をしていたのか。あの地獄を作り上げておきながら何故自分の事しか考えていられなかったのか。

 

 道を誤れば偏執狂の死の炎にさえなりかねなかった熱が冷めた今、自分に何かを言う権利などない。燈矢は今日、裁かれるつもりでこの場に来ている。

 

 

「だから……夏くんや冬美ちゃんが嫌なら俺は──」

「っ、嫌だ!」

「冬美!?」

 

 

 もう二度と関わらない。そう口にしようとして冬美に割り込まれた。

 

 

「嫌だ……二度と居なくならないで……! もう、誰も居なくなって欲しくないの……!」

「…………でも」

「でもじゃねえよ……クソ兄貴……」

「夏くん……?」

 

 

 夏雄も同じ。燈矢が何かを言う前に口を開く。

 

 

「あれだけ迷惑かけといて『もう関わりません』なんて許さねえよ……!」

「っ、ぐ……!」

「もう逃がさねえよ! 謝りたいってんなら、親父と一緒に最後までちゃんと償え!」

「…………!」

 

 

 二人の答えは同じだった。方向性は違えど、結論は同じ。もうどこにも行くなと、行かないでくれと告げていた。

 

 ただ家族で仲良く過ごしたかっただけなのに、平穏に過ごしていたかっただけなのに。それを奪ったのは父親であり兄。ならばそれを返してもらうまで逃げるな。胸ぐらを掴んだ夏雄に突きつけられた。

 

 

「っ、ごめんなさいね森岸くん……見苦しい所を……」

「いえ、俺は部外者なんで。正直なんでここにいるのか分かってないくらいで……」

「……それはねえよ。俺が生きてるのはお前のお陰でもあるんだから」

「えっ……?」

 

 

 それから燈矢は改めて二人にも語った。あの山火事の後の事を。何故今ここに生きているのかを。

 

 後になってわかったことだが、あの時の燈矢は半ば死体が動いているようなものだった。

 

 あの時森岸が使えた回復魔法は【ベホイミ】が限界。しかしその【ベホイミ】であっても一度で単純な骨折程度ならば治してしまえる程の効力があった。

 

 その【ベホイミ】を数十回。衰弱死寸前のような生命の灯火が消えかけているレベルでもなければ使うことの無い数だった。

 

 

「はー……あの時そんなにヤバかったのか……」

「今思うとよく治せたなって感じなんだが……まあ、そういう事だよ。お前は俺の命の恩人で、償うチャンスをくれたんだ」

「ど、どういたしまして……?」

 

 

 もっと言えばあの状態の燈矢を治せる個性など極僅か。あの場においては森岸以外存在していなかった。

 

 轟家としては感謝してもしきれない命の恩人。無関係どころか何としても御礼をしなければならない存在だ。だが……

 

 

「……恥ずかしい話、この恩をどうやって返せばいいのか想像もつかん。何をどうすれば君への礼になるのかも分からない」

「い、いやいやいや! そんな事言われましても……そんなつもりでやったわけじゃないというか……」

 

 

 炎司は、轟家は恩返しの仕方が分からない。この途方もなく大きい恩にどうやったら報いることができるのか想像もつかない。

 

 死にそうだった家族を助けて貰って、やり直す機会を与えてもらった。これに匹敵するだけのものを森岸に返す方法が見当たらなくて困っている。

 

 困っているのは森岸もそう。何か凄いことをしていたという自覚はあれど、だからといってそれを笠に着て何かを要求できるほど図太くはない。

 それにヒーローを目指している以上人助けは当たり前だとも思っている為、尚更他人から何かを受け取ろうなどと考えていないのだ。

 

 じゃあ何をどうやって返せばいいのか。すると炎司は懐からあるものを取り出し、机の上に置いた。

 

 

「俺が差し出せるものは金くらいしか……」

「何桁万円渡す気だアンタ!?」

 

 

 そこにあったのは黒いカードと通帳。好きなだけ持っていけと言わんばかりの態度に思わず声を荒らげてツッコミを入れる。

 

 だって開いた所に数えなきゃいけないくらいのゼロが並んでるんだもん。そりゃ驚きもするよ。それを全部差し出そうとしてるんだから。

 

 すると今度は冬美が手を挙げ、顔を赤らめながら続いた。

 

 

「え、えっと……私の体とか……?!」

「やめて!? 俺彼女いるんで!」

 

 

 森岸は理解した。轟家は全体的にポンでコツなのだと。誰かツッコミ役とブレーキ役になってくれよ。アクセルとエンジンしかいねえぞここ。もしくはガソリン。

 

 

(助けて響香! 轟家ヤベェ!?)

 

 

 グルグルお目目で服を脱ごうとする冬美を止めながら森岸はそんな事を考えていた。

 

 

 

 







燈矢「何でだよ冬美ちゃん美人だろ!」
森岸「見りゃ分かるよ! そういう理由じゃねえよ!?」
燈矢「スタイルだっていいじゃんか!」
森岸「見りゃ分かるよ!? だからそうじゃねえって!」
燈矢「何が文句あるって言うんだ!」
森岸「話聞けやアホンダラ!?」


冬美「あ、あわわ……今、褒められ……」
夏雄「スゲーな、サラッと異性の容姿褒められるって……それも友人の姉相手に」
焦凍「森岸、姉さんはいい人だぞ」
夏雄「いや焦凍。多分そういう話じゃないから」
炎司「それは許さんぞ冬美ィ!」
夏雄「親父も落ち着け!?」



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