Q.耳郎に事情説明したの?
A.燈矢周りを暈して説明したら宇宙猫になった。何をどうしたらそうなるの? という感じになってた。
Q.怒った?
A.怒ってないよ。断ってたしちゃんと報告してくれてたから無罪判決だった。黙ってたら有罪……とまではいかなくてもちょっと拗ねる。
Q.轟に彼女バレしたけど轟の反応は?
A.特に何もない。仲良かったもんな、くらい。
やあ。初日でインターンが中止になって困惑していた森岸だよ。相澤先生も頭抱えてたんだけどどうしてくれるんですかエンデヴァー。何してくれてんだ燈矢。
やはりというかインターン中止から二日後、念の為に口座を確認したら贈与税に引っかからないギリギリの金額が振り込まれていた。やりやがったなエンデヴァー。
これ色々と大丈夫ですかね? と相澤先生に相談したところ物凄く困惑した様子で『ええ……?』と声を漏らしていた。そりゃそうなりますよ。
一応轟の方にも話しておいたが、把握していなかったのか『何してんだクソ親父……』とこちらも困惑していた。独断でやったのかエンデヴァー。
どう対応したらいいのかも分からないからひとまず放置するとして、一回エンデヴァーに苦情いれた方がいいんだろうか。これ下手すると二回目三回目が贈られて来そうで怖いんだけど。
それはさておき、エンデヴァー事務所のインターンが中止したこともあって現在はまたインターン先を考えている所だ。
一番最初にエンデヴァー事務所に行ったせいか、ハードルが上がって中々これという事務所が見当たらない。他の人からしたら贅沢な悩みだ。
真っ先に候補に上がったホークスは『今からちょっと忙しくなるんで無理』と断られたし、ナガンさんの所はインターン受け入れ実績が少ないから無理。ツテが二つともダメになるとは……
「あ、森岸くん! いいところに!」
「はいはい森岸だよ。どした? また怪我した?」
考え事をしていると緑谷に声をかけられた。緑谷すぐ怪我するからよく話しかけられるんだよね。今度はどこを怪我したんだ?
「いや怪我じゃなくて……用事があるのも僕じゃないっていうか……」
「? じゃあどうしたんだ?」
「その……サー・ナイトアイが一度君に会いたいって……」
…………はい?
サー・ナイトアイ。よくは知らないが確かオールマイトのサイドキックをやっていた事があるというヒーロー。
個性も戦闘スタイルも不明でサイドキックの事も知らない。つまり何一つ知らないヒーロー事務所。
「君が森岸詠士か」
「はい。よろしくお願いします……?」
スカウトも来てなかったくらいには関わりのないヒーローが何で俺と会いたがっていたのかさっぱり分からない。
こうして目の前まで来ても表情が変わらないからよく分からん。喜怒哀楽のどの感情で呼んだのかくらい教えてくれてもいいと思うんですが。
握手を求められたのでとりあえず握り返してみたが……この人滅茶苦茶鍛えてるな。スーツで分かりにくいけど手がガッシリしてるし力も強い。その見た目で武闘派か。
すると突然ナイトアイが目を見開いた。え、なになになに? 俺何かやった?
「……やはり貴様か。私の【予知】が歪んだ原因は」
「へ?」
【予知】? 何それ?
「私の個性だ。名前の通り対象の未来を見ることができる能力を持っている」
「はあ……それが歪んだ? のは俺が原因だと……?」
「ああ。疑念が確信に変わった。今貴様に【予知】を使ってハッキリした」
いつの間に!? 発動条件とかどうなってんだ……? まったく気が付かなかったんだが。
ナイトアイの話によると、六年前にオールマイトを見てからというもの、たまに【予知】で見た光景から結果がズレる事が起きるようになったという。今年にも一度【予知】がズレたのだとか。
俺としては【予知】で見たとはいえ行動次第で変わるもんなんじゃないの? と思うのだが、ナイトアイはそれを否定した。
「何度も試したが結局は無意味だった。多少先送りにする事はできてもその後必ず帳尻合わせが来る」
「……ならますます分からないんですけど。俺が何をしたら【予知】がズレたって言うんです?」
「それを知る為に呼ばせてもらった」
というか何で俺の【予知】を見て俺が原因だと分かったんだよ。俺の未来がとんでもない事になっていたとかか?
そう尋ねてみると答えは否。未来がどうこうではなく
「見えない……?」
「こんな事は初めてだ。【予知】の中でその人物が死ぬ未来を見た事もあったが……それでも死ぬまでの過程を見ることはできた」
「じゃあ次の瞬間に死んでるとかでもないのか……見えないというのはどんな感じなんです?」
「なんと言い表せば良いものか……映画のフィルムで例えるならば、全てのコマが真っ黒になっているような感覚だな」
なにそれ怖い。
夜の暗さとかそういうものではないらしく、本当にどこまで見ても全部真っ黒なんだとか。今見ている未来がいつの部分なのかもハッキリとしていないそうだ。
ナイトアイもこんな状況は初めてだから原因が分かっていないらしく、俺に何か心当たりはないかと尋ねられる。そんな事言われましても。
……あ。もしかしてアレか? というかアレくらいしか心当たりがないんだが。
「もしかして【パルプンテ】か……?」
「パル……何? なんだそれは」
「何が起こるか分からない【魔法】です」
「……それは意味があるのか?」
何かできちゃった【魔法】なんだからしょうがないでしょ。
【パルプンテ】は使用者である俺にすら何が起こるかまったく分からない【魔法】だ。おそらく【予知】ですら何が起こるのか分からないんじゃないだろうか。
それに合宿中に襲撃された時にも出てきたが、オール・フォー・ワンすら歯牙にもかけない化け物……アレのせいという可能性もある。アレが出てくる可能性があるから【予知】が機能しなくなっているんじゃないか?
「ふむ……一度試してみるか」
「へ?」
「他のヒーローに【予知】を使ってからその【パルプンテ】を使ってくれ。それで未来が変わればハッキリする」
いや……【パルプンテ】使うなら何があっても大丈夫な広い場所でやらないと危ないですよ? 事務所の中で使ってヤバい効果が出たら事務所吹き飛びますよ?
と思ったら今日はしないらしい。【予知】の発動には24時間のインターバルが必要なんだとか。
というわけで実験は明日。つまりまた明日もここに来てくださいという事ですね分かります。
「…………何が起こった?」
「……大爆発……しましたね」
「ええ……?」
雄英のグラウンドでやってよかった本当に。こんなもん街中でぶっぱなしたら神野くらいの被害出てただろ。
◇
ナイトアイとのアレコレはあったものの、インターンというわけではなかった為森岸は授業を受ける通常運転に戻った。
【予知】の実験に【パルプンテ】を使った事もあって相澤からジト目を向けられてはいるものの、インターンがなければいつも通り……とはいかないらしい。
「あ痛っ!?」
「あ、すまん。やり過ぎた」
「ええ……今何が起こった……? いきなり緑谷が吹っ飛んだんだが……」
インターンでガッツリ強くなるつもりだった森岸。それが叶わないとなれば代わりのトレーニングをするくらいにはストイックだった。
そこにどうせならと相澤に頼まれて心操のトレーニング相手になり、たまたまそれを聞いていた緑谷も交えて個性抜きの組手を行っていた。
増強型にありがちな問題として、戦闘技能が身体能力任せになりやすいというものがある。
強みを押し付けるという意味では間違っていない。しかし身体能力任せでは自分を上回る者が現れた時に打つ手が無くなってしまう。
そうした場合の事を考え、増強型には二つの選択肢が与えられる。一つは能力を伸ばし続けて強引に克服しようとする。そしてもう一つは……
「ヒーローの技と言われると必殺技を思い浮かべがちだが、実際の技というものは想像しているよりもずっと地味なものだ」
「相澤先生の捕縛布とかもそうですよね」
「そうだ。これを操る事も立派な技の一つだ。何も派手で見栄えが良いものだけが技じゃない」
技、もっと言えば技術を磨く。自分よりも格上の相手に勝つ為に選択肢を増やす方法として挙げられる。
A組で例えるならば爆豪が分かりやすいだろう。
【爆破】は攻撃力の高さが強みであり、実際A組の中で彼の猛攻を凌ぎきれる者はほとんどいない。耐久自慢の切島ですら押し切られる程だ。
その根底にあるのは確かなセンスと技量。両手の【爆破】を繊細にコントロールする事で目眩しやフェイントなど、強みを活かすための武器を複数持っている。
「緑谷は小技少ないよなあ。もうちょい足払いとか崩す為の技持っててもいいと思うぞ」
「どうしても強い一撃に意識を持っていっちゃう……崩す、かあ」
「森岸とは個性抜きでも戦いたくないんだよなあ……打たれ強いから中々倒れないし、滅茶苦茶やりにくい」
「だろうな。俺ですら捕縛布を逆に利用された事がある」
その点森岸はたちが悪いくらいに選択肢が多い。
本人の打たれ強さもあって強引にカウンターを捩じ込んでくるし、隙を見せればあっという間に押し切られてしまう。
ならばと心操が捕縛布を使えば逆に引っ張られてこちらが体勢を崩してしまうし、逆に自分から引っ張られた勢いのまま飛びかかってきたりもする。
「本当はこんな駆け引きすらいらないスピードとパワーがあれば早いんですがね。あって困るもんじゃないですし」
「……まあお前と緑谷はそうなれるかもしれんが、心操は別だ。特にお前が磨くべき技能だぞ」
「はいっ……!」
しかしこれは戦闘向きではない個性にこそ必要となる技能。緑谷よりも心操に求められている。
オールマイトやエンデヴァーのように突き抜けたパワーがあればその駆け引きすら吹っ飛ばして一方的に勝つことだってできる。それが無いからこその技であり、駆け引きだ。
じゃあ何でこの【魔法】ゴリラがそんなもん習得してんだよという疑問もあるけれども。
「昔っからホークスとかに絡まれててウザったくて、いつの間にかこういう事考えるようになりましたね」
「おい待て何でホークスに絡まれてる」
「公安に来ない? ってスカウトされてたからですけど?」
「お前そういうのは早く……いや、いい」
テメェかホークス。なんてことしてくれてんだあのアホウドリ。
そして公安という言葉を口にしてある事を思い出した相澤は森岸にこう尋ねた。
「そういえば森岸」
「はい?」
「近いうちにお前の力を借りたいという話があるんだが……インターン、来てみるか?」
アングラヒーロー・イレイザーヘッドからのインターンの提案を口にした。
根津「あのさあ……」
森岸「すみませんでした」
サー「まさかあんな事になるとは……」
相澤「頼むから二度と使わないでくれ」
森岸「俺も使いたくないですよ」