魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.【パルプンテ】の何が悪さしてるの?
 A.全部。強いて言うなら合宿の時に出てきたアレが原因。アレが出ると未来が一旦リセットされてどうなるか分からなくなるから。本編に関わる要素じゃないから気にしなくていいヤツ。

 Q.今の森岸ってどのくらい強いの?
 A.【魔法】使用後だとエンデヴァーくらい突き抜けた攻撃力がないとまず勝てない。使用前の不意打ち等がありならエッジショットやホークスでも意識を刈り取る事は可能。

 Q.つまり?
 A.戦闘力単体で見てもトッププロ並み。なんだこの化け物。

 Q.フレクト・ターン何で日本にいるの?
 A.そこに暗躍してるドクターがおるじゃろ?






70.力ずく

 

 

 

 会議から三日後。再びヒーロー達はナイトアイ事務所に集められていた。

 

 結論から言うとエリは死穢八斎會の本拠地にいることが判明した。

 

 その方法は死穢八斎會の構成員との接触。近くのデパートにて女児向けの玩具を購入していた場面を発見し、構成員に対して【予知】を使用した。

 

 すると【予知】で見えた未来の中でエリを懐柔しようとする瞬間が見えたという。

 

 【予知】は機能しないのでは? と疑問の声も上がったが、ナイトアイはどこか恥ずかしそうに答えた。

 

 

 ──これは完全に私が忘れていたのですが……彼が関わらない未来に限っては【予知】を使っても特に問題はありませんでした。

 

 

 ……まあ、つまるところそういう事だ。その構成員がエリの元に向かったのは昨日であり、森岸が関わるタイミングはどこにもない。そういった場合ならば【予知】が機能する事を忘れていたようだ。

 

 敵を騙すには味方からとかそういう話でもなく、単純にその事が頭からすっぽ抜けていたらしい。構成員を発見した時に思い出したのだとか。

 

 

 ナイトアイが構成員のその後を見ると、死穢八斎會の本拠地には届出のない入り組んだ地下施設があることが発覚。エリはその中の一室に匿われていた。

 

 その構成員は地下の入口からエリの部屋まで一切寄り道をすることはなく、把握できたのはその部屋までの最短ルートのみ。

 

 だがそれはむしろ好都合。エリの保護を最優先とするヒーロー達にとっては値千金の情報だ。

 

 

「隠蔽の時間を与えぬ為にも全構成員の確認、捕捉等……可能な限り迅速に行いたい」

 

 

 招集を受けていたプロヒーローと大量の警官、及び機動隊。物々しい空気の中、誰もが決意を漲らせている。

 

 しかし緑谷はある事に気づき、そのまま疑問を口に出した。

 

 

「……? グラントリノは……?」

「あの人は来れなくなったそうだ」

「えっ……」

「塚内が行ってる方のオール・フォー・ワン残党に大きな動きがあったみたいでな……悔しそうだったよ」

 

 

 オールマイトの師匠グラントリノの不在。その理由は別の地域にてオール・フォー・ワン残党の動きが確認されたからだと警察は語った。

 

 自身の成長を見てもらいたかったのか緑谷は少し寂しそうにしており、ならば結果で示そうと再び気合いを入れ直した。

 

 

 

 時刻は8時半。死穢八斎會本拠地の門の前にヒーローと警察が揃った。

 

 

「令状読み上げたらダーッと行くんで! 速やかによろしくお願いします」

「しつこいな。信用されてねえのか」

「そういう意味やないやろ。意地悪やな」

 

 

 相手がクロと分かっていてもそれが公になっていない以上、正しい手順を踏む必要はある。警察の言葉に対しまどろこっしさを感じたのかロックロックが嫌味で返す。

 

 どこか余裕そうな面持ちのロックロックはファットガムの窘めも気にせず憎まれ口を叩いた。何せ相手は衰退の一途を辿るヤクザ者。ここまで慎重を期す理由が分からない。

 

 

「ヤクザ者なんてコソコソ生きる日陰者だ。ヒーローや警察見て案外──」

 

 

 縮こまっちまったりしてな、という言葉は次の瞬間に掻き消された。

 

 

 

 

「何なんですかァ」

 

 

 

 

 ロックロックの嫌味も警察が鳴らしたインターホンさえも掻き消す轟音と共に門がぶち破られる。まるで紙屑のように引き戸を跳ね飛ばし、その先にいた警官三名を殴り飛ばしていた。

 

 

「なっ!?」

「朝から大人数でぇ……」

 

 

 現れたのは2メートルを越す巨躯のペストマスク。怪しい素振りや反抗の意志どころではない。あまりにもあからさまな徹底抗戦の構え。

 

 緑谷とイレイザーヘッドが警官の救助に回っている間にもペストマスクの男は暴れ回る。人一人を包んでしまえそうな手で拳を握り、叩きつけるように振り下ろしている。

 

 

「何の、用ですかァ!!」

「──レックス!」

 

 

 手当たり次第といった様子で近くの警官に狙いを定めた瞬間、イレイザーの声に反応した森岸が動いた。

 

 

「…………ん!?」

「の、ノーダメかよ!?」

 

 

 振り下ろされた拳を防御──ではなく、棒立ちのまま額で受け止めていた。あまりにも硬い手応えにペストマスクの男も間の抜けた声を漏らしていた。

 

 森岸は拳を受け止めたままニヤリと笑い、同じく拳を握りしめる。

 

 

「後で治すからさ……今は寝とけデカブツ!」

「ゴェッ!?」

 

 

 驚愕に固まる男の顎を思い切りかち上げた。ドゴン! と、鈍重な音と共に巨躯が跳ね上げられ、地に崩れ落ちた。

 

 まだ意識はあるようだがダメージが大きいらしく、立ち上がってもその足はガクガクと震えていた。

 

 

「ぐ……!?」

「っ、よくやったわレックス! 後は私達に任せて先へ!」

「は、はい! 今の内に!」

 

 

 今の一撃でこの男は既に虫の息。後はリューキュウ一人でも余裕で対処ができる。ならばここに大勢を留めておく理由はない。

 

 ここは請け負うとリューキュウが宣言し、他の者達は雪崩込むように門の奥へと駆け出した。

 

 門の向こう側には既に騒ぎを聞きつけた構成員が待ち構えており、武器や個性を用いて抵抗を試みていた。

 

 

「怪しいなんてもんやないなこれは……!」

「俺ァ不安になってきたぜ! 始まったらもう進むしかねえがよ!」

 

 

 気になるのはその数と早さ。明らかに身を挺しての時間稼ぎに構成員の誰もが躊躇していない。最初からそうするつもりだったように。

 

 おそらくは普段から意志の統率が取られている。何かあった時は上の人間を逃がすようにと。

 

 この騒ぎはオーバーホールにも伝わっているはず。ならば今頃は見られて不都合なものの隠蔽やオーバーホールの逃走の準備がなされているだろう。

 

 故にこそスピード勝負。ここでオーバーホールを取り逃せばどこに逃げるか分からない。今日この時をもって死穢八斎會にケリをつけなければならない。

 

 

「ここだ! この下に隠し通路を開く仕掛けがある!」

「忍者屋敷かっての! ですね!」

「……! バブルガール!」

 

 

 【予知】で見た光景通りの手順で板を押さえた途端、壁から駆動音と地鳴りのような音が鳴り始める。典型的な隠し通路の仕掛けだ。

 

 ゆっくりと動く壁。やがて隙間が生まれ、向こう側にある薄暗い空間が顔を覗かせる。

 

 通路が開ききったその時、ナイトアイのサイドキックが何かを察知していた。

 

 

「なァァァんじゃテメェらァァァ!!」

「一人頼む!」

 

 

 飛び出してきたのは必死の形相の構成員。個性や武器を構えて出てきた──が、サイドキック二人によって瞬時に制圧された。

 

 あまりの手早さに驚かされながらも足は止めない。彼らの対応はサイドキックに任せてナイトアイを先頭に主力のヒーロー達が地下空間へと踏み入っていく。

 

 パイプや配線が剥き出しとなった閉鎖空間に大勢の足音が反響する。ここまで踏み込めたのならば距離としてはもうすぐそこ。

 

 

「って、行き止まりじゃねえか!?」

「道合ってんだよな!?」

 

 

 だというのに目の前に現れたのは行き止まりの壁。先程のように何か仕掛けがあるようにも見えず、ドアもついていない。

 

 これはどういう事だとナイトアイに視線が集まり、しかしナイトアイが答えるよりも早くミリオが動いていた。

 

 【透過】を使い壁の向こう側を覗いてみれば、その先にも【予知】で見たという通路が続いていた。【オーバーホール】による隠蔽と見ていいだろう。

 

 

 だが相手が悪かった。

 

 

「来られたら困るって言ってるようなもんだ!」

「そだな! 妨害できてるつもりならめでたい奴らだ!」

「【バイキルト】やる! ぶち抜け!」

 

 

 

「【フルカウル:シュートスタイル】!!」

「【烈怒頑斗裂屠(レッドガントレット)】ォ!!」

 

 

 

 継承された力による蹴りと圧縮硬化した拳。それを【バイキルト】により後押しされ分厚い壁は容易く砕かれた。

 

 どこか皮肉気なロックロックですら認めざるを得ない超パワーに、子供ながら彼らの背に頼もしさを感じさせられた。

 

 だがこれはまだ入口。門での奇襲を除けばオーバーホールどころか幹部の一人もまだ姿を見せていない。喜ぶにはまだ早い。

 

 

「!? 道が……!」

「道がうねって変わってく!?」

 

 

 まるで見ていたかのようなタイミング。壁が破壊された直後、壁、床、天井……地下通路そのものが波打ち変化していく。

 

 【オーバーホール】……ではない。姿形を見せずに遠隔操作で発動できていい規模ではない。だとすれば幹部の個性【擬態】。

 

 

「考えられるとしたら……本部長の入中!」

「規模が大きすぎないか!? 奴の個性ではせいぜい冷蔵庫程の大きさが限界だと……!」

「クスリでブーストしてんねや! それもかなりキツめに!」

 

 

 本部長入中。その個性は物質に入り込み自由自在に操れる能力。しかし事前情報ではこの規模で操れるなどとは聞いていなかった。

 

 考えられるのは個性の効果を増幅させるクスリ。裏社会に流れていた個性消失弾と同じ違法アイテムだろう。

 本来は家電程度が限界だったはずの規模感がこの空間を形成するコンクリートへと入り込み、動く迷宮と化している。

 

 加えてヒーロー側にこれを防ぐ術がない。イレイザーヘッドの【抹消】は本体を直接視認する必要があり、どこに潜んでいるかも分からぬ入中の【擬態】を止めることは不可能。

 

 

「だったら……強引にぶち抜きます!」

「! レックス!?」

「っ、下がれ皆!」

 

 

 ならば止めなければいい。森岸は自身に【バイキルト】を四回(・・)使用し、溢れんばかりの超パワーを振り抜いた。

 

 対症療法でしかなくとも道は拓ける。うねり収束していたコンクリートを力ずくで吹き飛ばし、あまりにも強引な手法で時間稼ぎを跳ね除けた。

 

 

「力業過ぎるやろ!?」

「スピード勝負だ。押し通れるならば押し通るべきだろう」

「何にせよこれで進める!」

 

 

 レックスに続け、という言葉は出なかった。

 

 

「へっ!?」

「!!」

「足場が……!」

 

 

 うねるコンクリートを破壊する為に前にいた森岸と【透過】で【擬態】を無視できた為に前にいたミリオ以外の足元が突如変化した。

 

 避けさせる気のないタチの悪いトラップのような落とし穴。何かに捕まって耐えるということさえ許さずナイトアイ達を通路の下へと引きずり下ろした。

 

 

「サー!」

「先に行け! お前達ならば───!」

 

 

 自分達に構うな、というナイトアイの指示に歯噛みしながらも信じるしかない。森岸とミリオはほんの一瞬躊躇した後、背を向けて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……言いたかないですが、八斎會は終わりですね」

「組長と俺さえいれば八斎會は死なない。ほとんどの子分は組長派で俺の考えに着いて来やしない……俺こそが誰よりも組長の意志を尊重しているのにな」

 

 

 

「そういう訳で、頼んだぞ」

「勿論だ……同胞よ」

 

 

 

「我が忌まわしき力の前に沈むがいい、ヒーロー」

 

 

 

 

 






 ──もし最速クリアを目指すなら?


森岸「通形先輩にありったけの強化を付与して全員ぶちのめしてもらいます。不安なら俺も着いていきます」
ナイトアイ「後は消化試合です。幹部も全員叩きのめしてエリちゃんを保護して死穢八斎會終了です」
オーバーホール「ちょ、待てよ」


 ──多分これがいちばん早いと思います。何でそうしなかったのかって? インターン生二人に丸投げするプロヒーローとかいるわけないだろと思ったからですね。




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