Q.【スカラ】使うと吹っ飛ばされなくなるの?
A.諸々引っ括めて防御力という判定なのでノックバック耐性とかもつく。
Q.後書き以外にも効率的なやり方とかないの?
A.ぶっちゃけると森岸と一番相性がいいのはミリオなのであれ以上はあんまりない。【透過】で無敵のミリオを強化して一方的に殴らせれば大体勝てるから仕方ないね。
それは突然起こった。
「っ、なんだ!?」
「レックス!」
咄嗟の事で【トベルーラ】を使うも間に合わず穴は閉じてしまった。真上にぶち抜けば崩落の恐れもある。どうやら本当に俺だけを狙った落とし穴のようだ。
でも何で俺の方を落としたんだ? 障害物を用意しても通り抜けてしまうルミリオンを優先して落とすべきじゃ──……!
「向こうは俺達の個性までは把握できていないのか……!」
思えばこの作戦に関わるヒーローは敵側の脅威度順に並べた場合、恐らくリューキュウとイレイザーヘッドのツートップになるはず。インターン中の学生なんざ警戒すらしていないんだ。
だからなのか、落とされた先も即死トラップなんかじゃなくただの空間になっていた。殺すも何もオーバーホールは時間稼ぎさえできれば勝利条件は達成できるのだから殺しに来拘る必要はない、と。
逆に一番困ることは時間を稼ぎきれずヒーローに追いつかれる事だろう。縦にぶち抜くと危ないが横なら、壁をぶち抜いて進む分にはまだ大丈夫だろう。
やることは決まった。何もかもぶち抜いて真っ直ぐに───
「おや……ここに来たのはたった一人か……」
「……マジか」
事前に配布された資料にいた男。青い肌に赤いマント、腰のベルトから伸びたレンズのようなものがついたアーム。
ヒューマライズ最高指導者、フレクト・ターン。それが俺の目の前に立っていた。
「……その様子だと私の存在は知られていたようだな」
「いいや? 可能性があるかもってだけで確証はなかった。それに、こんなガキ一人にこんな大物をあてがわれるとも思ってなかったよ」
フレクト・ターンは眉をひそめて忌々しそうに吐き捨てた。焦燥感……いや、単なる苛立ちだな。
コイツはコイツで捕まえなきゃならんが最優先事項はオーバーホールとエリという子供。頃合を見計らって離脱できればそれが一番だが……
「逃がしてくれそうにない、か」
「当然だ。我が同胞の元に行かせはせん」
「同胞……ああ、ヒューマライズの思想にゃ個性消失弾はピッタリだもんな」
ヒューマライズの掲げる思想は至ってシンプル。個性を持ってる奴は真に人間とは言えないというもの。
要は超常黎明期からある異形系個性への差別をもっと無差別にしたような思想。本来人間が持ちえないはずの能力を持っているのだから人間じゃない、という主張だ。
そこに個性を消す手段が現れた。ヒューマライズで言うところの"真の人間"とやらになれる手段が見つかってしまった。
カルト教団とは名ばかりの国際テロ組織だ。何かしらのコネクションから死穢八斎會に接触するなど造作もないことだろう。
フレクト・ターンは目を細め、俺の言葉を肯定した。
「そうだ。個性とは病気であり人間を侵すもの。アレさえあれば死人を出さぬまま個性を撲滅できる」
「はっ、病気ねえ……」
「……何がおかしい」
「そりゃおかしいだろうよ。人を掻き集めて国際テロ寸前までいって、根底にあるのは科学的に否定された陰謀論だろ? 笑うなって方が無理がある」
だが理解と納得は別だ。動機や思想を理解はしても納得して受け入れることはできない。
フレクト・ターンが言った『個性=病気』というクソみたいな推論。確かネズミだかコウモリだかが未知のウイルスを広げてしまったというもの。超常黎明期から何度も考察されてきた個性の推論の一つ。
しかしそこに明確な論拠はなく、面白半分に生み出された都市伝説のような扱いとなっていた。
「大の大人が雁首揃えて便所の落書きみたいな都市伝説を真に受けたってんだ。なあ? いい歳こいた大人の振る舞いじゃあねえだろ」
「貴様……」
「こちとら急いでるんでな。周回遅れの厨二病になんざ付き合ってられねえんだよ!」
国際的な指定敵組織のトップだからどれ程の大物かと思えばその程度。こんな奴に割いている時間がもったいない。
どんな個性か知らねえが使われる前に倒しちまえばいい。【バイキルト】三回分で───
「理解したかね? 私の病を」
「──は?」
何で、俺が吹っ飛ばされた?
「っ、痛ェ……!?」
冗談だろ……!? 突入前の時に【スカラ】二回かけてこれかよ!? 【ベホイム】一回分くらいのダメージがノーモーションかよ……!
「全てを跳ね返してしまう異能……【リフレクト】。忌まわしき我が病だ」
「跳ね返す……反射か!」
なるほど。あれはアイツの攻撃じゃなくて俺のパワーがそっくりそのまま跳ね返って来たからこうなったのか。【バイキルト】三回分に対して【スカラ】二回だとそりゃ負ける。
少し安心した。コイツは強いというより面倒なだけだ。万が一取り逃してもトッププロじゃなきゃ勝てないような強さじゃない。
だがこの場で倒しておいた方がいい事には変わりがない。強くはないが妨害という一点においてはあまりにも邪魔過ぎる。
「イレイザーヘッドがいたら話が早いんだが……仕方ないか」
「……まだ理解できないかね。貴様は私には勝てない。何をしたとしてもな」
「まだ分からねえだろ? こちとらまだ何も試してないんだからよ!」
ルミリオンには【魔法】を使っている。あの人ならオーバーホールをぶん殴ってエリちゃんを保護するくらい朝飯前だろう。
だったら俺はここでフレクト・ターンを倒す。下手をするとオーバーホールが倒れた後にコイツがエリちゃんを狙いかねない。
個性の性能を探らねえと話にならない。あの【リフレクト】とやらが俺の【アタカンタ】と同様に何かしらの制約を持っている可能性から考えろ。
まずは非生物。俺が直接殴るんじゃなく、瓦礫を投げつける!
「無駄だ」
「チッ」
重量、質量も無関係か。そこそこデカい瓦礫を投げたつもりだったが難なく跳ね返された。
だったら次は方向。例えば背後だったり死角だったり、見えていない方向からの攻撃はどうだ。
「それも無駄だ」
「マジか」
一歩も動かないまま全て反射される。瓦礫全てが当たる直前で跳ね返され、砂の一粒すらフレクト・ターンには届かない。
まさか常時発動型か? こっちのスピードを見切って反応したわけでもなく、見えてもいない攻撃すら跳ね返していたが……
それともう一つ分かった。アイツの【リフレクト】は反射する方向を弄れるというわけではないらしい。投げた通りにしか跳ね返ってこないから軌道自体は読みやすい。
「……面倒なくらい強個性だな」
「強個性だと……?」
「あ?」
なんだいきなり。ちょっと愚痴っただけなのに妙に苛立った?
「私の苦しみを知らぬ身で、適当な事を吐かすな!」
「うぉわっ!?」
急に加速しやがった!? って、反射を利用しての加速か! ただ突っ立ってるだけのオッサンかと思ったら滅茶苦茶肉体派じゃねえか!
「この病のせいで! 私は一度も両親から抱きしめられたことはなかった! 心すら反射させ、私の元から離れて行く!」
「っ、ぐ……!」
「挙句自ら死を選ぶことさえできない! コントロールできぬ個性は悲しみを産むだけだ!」
コイツ攻撃の軌道が滅茶苦茶過ぎる。避けたと思った蹴りが反射して戻ってきたりしやがる。スピードもパワーもそこまでないが、吹っ飛ばされちまう。
ダメージ自体は弱いのが幸いだが、まともに打ち合うとこっちが一方的に弾かれてしまう。これは時間稼ぎ要員としてこの上なく厄介だな。
「人間はいずれ進化する個性に押しつぶされる……! 故に! 滅ぶ前に、手遅れになる前に! 私達の手で救わねばならぬ!」
「っ……そりゃテメェの妄想だろうが!」
大体分かった。コイツが個性を嫌悪する理由も、コイツの個性の事も。
あの【リフレクト】は文字通り全てを反射している。俺の攻撃だけでなく時には光や音すらも。
近くで見てようやく分かった。コイツは身体に色んなものを埋め込んで反射しないようにしなきゃ見えもしないし聞こえもしない。ともすれば呼吸や食事さえままならない。
そりゃ
「知ったこっちゃねえよテメェの事情なんざ」
「何……!」
「自分が酷い目にあってきたからって他人に撒き散らすんじゃあ救いようがねえな」
だからといって他人を傷つけていい理由にはならない。同情しよう、哀れみもしよう。だがそれも自分の傷を他人を傷つける理由にした時点で消え失せた。
「あんまり時間もかけてられないんでな……お前は今から5秒で倒す」
「貴様如きに何ができる!」
「できるさ。ところでお前……」
「許容限界はどのくらいだろうな?」
【スピオキルト】四回。神野の時のオールマイトと同程度の身体能力まで引き上げる。そして──
「っ、何だ……!?」
「何も反射はテメェの専売特許じゃねえんだよ!」
【
5秒間、俺とフレクト・ターンの間で反射のラリーが起こる。その間にも打撃を叩き込み続けて
さあ我慢比べだ。5秒間耐え切られるか、それとも【リフレクト】の許容限界が来るのが先か。
「させるかァッ!?」
「トロいんだよ陰謀論者ァ!!」
マズいと思ったのか俺を引き剥がそうと殴り返してくるが鈍い。力を誇示する敵にありがちな個性任せ、典型的な能力頼りで基礎が弱いタイプだ。
空気が爆ぜる。【アタカンタ】が切れるまであと2秒。瓦礫を投げつけようが殴りかかろうが微塵も揺らがなかったフレクト・ターンの足が押し込まれていく。
「ぐ、うっ……!?」
来た!【リフレクト】の許容限界! フレクト・ターンの肌から青が消え始めた! 間違いなく限界が近い!
「馬鹿な……【リフレクト】が……!?」
「馬鹿はテメェだフレクト・ターン!」
あと1秒。青い肌はノイズが走ったように元の肌の色が見え始め、反射で浮いていた足も地面について押し込まれていく。
「病と宣っておきながら自身の個性に絶対の信頼を置いた、テメェの負けだァ!!」
「っ────!!」
0.5秒。とうとうフレクト・ターンの肌から青が完全に抜け落ちた。
そして衝撃のラリーに終わりが訪れる。
「
ざっと200発。【リフレクト】と【アタカンタ】の間で跳ね返され続けた衝撃全てがフレクト・ターンへと叩き込まれた。
「が────!?」
「安心しろよ。死なない程度には回復してやっからよ」
そして【アタカンタ】が切れた。吹っ飛んだフレクト・ターンは勢いのまま壁をもぶち破り、当初の予定通りオーバーホールを目指した方へと真っ直ぐに穴を空けていった。
……にしてもちょっと危なかった。アレが俺に来たところで死にはしないが痛いもんは痛いからな。
というかフレクト・ターンも死んでたりしないよな? 吹っ飛んだ瞬間に念の為【スカラ】と【ベホイミ】はかけてやったけど……向こう側でミンチより酷えことになってたりしないよな? 大丈夫だよな?
──攻撃に耐性のある敵が出たらどうします?
森岸「許容限界まで殴る」
オールマイト「ゴリ押しできるならそっちの方が早いし楽だから同じかなあ」
エンデヴァー「そんな奴見たことない」
脳筋's「「でしょうね」」
相澤「消して殴る」
心操「俺には関係ない」
フレクト「ジャパンは魔境かッ……!?」