Q.あの戦いで周辺吹き飛んでない?
Q.フレクト・ターン死んでない?大丈夫?
A.反射合戦してるうちに威力減衰してたからセーフ。森岸視点だと200発全部叩き込んだように見えてたけど実際はもっと減ってる。
Q.【アタカンタ】切れたら負けてた?
A.森岸は【アタカンタ】切れても普通に耐えて回復してまた殴ってくるのでそもそもフレクト・ターンに勝ち目がなかった。やっぱコイツズルいな?
Q.他にも勝つ方法あったりする?
A.一時的に無力化する方法なら沢山あった。行動不能にしておきたかったからゴリ押しただけ。
少し時は遡り落とされたナイトアイ達に視点を移そう。
森岸がそうされたようにナイトアイ達も下の空間へと落とされており、即死の罠などはなく敵が待ち受けていた。
門を破壊して現れた男と同じようなペストマスクを着けた男が二人と、目出し帽のような物を被った男が一人。投降する意志は見られずヒーローと警察を睨みつけて襲いかかってきた。
「こんな時間稼ぎ要員、俺一人で完封できる……!」
「あ゙!?」
「だから皆さん、先へ!」
それにいち早く動いたのは自信なさげだったはずの
僅かに躊躇したものの、サンイーターの実力を考慮したファットガムの言葉もありナイトアイ達は部屋を出て再びオーバーホールを目指して移動を再開した。
「……妙だ」
「……!」
落とされた分、まずは上に戻ろうと階段へ向かっている最中イレイザーヘッドはそう呟いた。
彼が気にしているのは自分達を階下に落とした個性の持ち主、入中。先程まではあの三人の邪魔をしない為という名目があったからか邪魔はなかった。
しかし今の自分達は障害らしい障害はなくただ移動しているだけ。何の妨害もされていない。あれだけの規模で地下の壁や天井を操っていたのに、今はまるで嘘のように静かだ。
「地下全体を正確に把握し動かせるというわけでもないらしい」
「把握できる範囲は限定されていると?」
「あくまで予測です」
考えられるのは入中の個性の限界。資料に記されていた【擬態】は"入り込んで操っている"だけで、決して"同化している"というわけではない。
入中は地下空間全体を支配しているのではなく、壁や天井の中を動き回って自分の目や耳で確認しているとしたら──
「イレイザー!!」
「ファット!! すまない……!」
「気にすんな!」
──現状最も驚異となるのは見られることで個性を【抹消】されること。走る集団の中からピンポイントでイレイザーヘッドを狙った妨害が入った。
壁から柱のようなものが突き出し、その先に待ち構えるように穴が開く。とにかくイレイザーヘッドを排除したいが為の動きだろう。
咄嗟に反応したファットガムがイレイザーヘッドを突き飛ばし庇うも勢いは止まらない。イレイザーヘッドの代わりにファットガムが穴の向こう側へと押し出され、分断されてしまった。
「っ、イレイザー! ガキが一人いねぇぞ!?」
「何……!?」
「き、切島君も先生を庇おうと飛び出して、ファットガムと一緒に……!」
「チッ……ファットガムが一緒ならまだ問題ない」
自分が狙われておきながら生徒を危険に晒してしまった事を悔やみながらも、切島とファットガムならば問題ないとイレイザーヘッドは思考を切り替えた。
「いいのか!?」
「大丈夫です。落ちる前に森岸が【魔法】を使ってましたから」
「は? あの一瞬で何を……」
何故ならイレイザーヘッドは見ていた。落ちる瞬間に自分達を視界に入れながら何かを唱える森岸の姿を。
実際、あの時下に落とされたメンバーは森岸によって咄嗟に強化されていた。使われた【魔法】は二種類。【スピオキルト】と【リベホイミ】の最低限。
切島や緑谷が心配していたサンイーターも例外ではなく、ナイトアイ達を先行させた後は難なく三人をノックアウトしていた。
「切島は森岸の【魔法】と相性がいい。特に強化された状態の防御力はオールマイトの一撃にも余裕で耐えます」
「……それは心強い」
「そこにファットガムもいます。少なくともまず死ぬことはないでしょう」
それに、とイレイザーヘッドは続ける。
「どちらかと言えば危ないのは俺達の方です! また壁が来ます!」
「クソ、またかよ……!」
「させない!」
ファットガムに庇われておいて言えることではないが、一度凌いだ程度で安心はできない。入中は未だ健在なのだ。
ロックロックが個性を使おうとして、その前に緑谷が動いた。森岸がやれたのなら自分にだってできるはずだ、と個性のエネルギーをスパークさせながら拳を振り抜いた。
【スピオキルト】+【ワン・フォー・オール:フルカウル】。それは正に森岸がした事の焼き直し。迫り来る壁や天井を力ずくで打ち砕き道を切り拓く、入中にとって【抹消】の次に困る対応。
「緑谷、お前……!」
「いけます! このまま進みましょう!」
「……進みましょう。先行したルミリオンとレックスも心配です」
どの道立ち止まるわけにはいかない。こうしている間にもオーバーホールは逃げる準備を終えようとしているかもしれない。
何度来ても打ち砕く。そう意気込んだ瞬間、壁紙や天井が一斉に引いていった。
「え……?」
「クスリが切れたか……?」
あまりにもアッサリとした決着。あれだけ殺意を滲ませていた壁は突如ピクリともしなくなり、何事もなかったかのように静まり返った。
警察の一人がクスリによる個性ブーストの時間制限かと口にするが、それならば変化していた地形がそのまま残るはずだ。
一体何が。そう思った時、目の前に
「ひゃ、ヒや、ひ【
「っ、退がれ!!」
巨大な氷柱を放つ異形の怪物。ここにいるはずのない存在。
改造人間脳無が、そこに立っていた。
◇
押し出された先の空間は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。
「すんません、余計な真似しました!」
「いやええて。しゃーないやろ。今はとにかく気ィ張っとき」
咄嗟にイレイザーヘッドを庇おうと飛び出していたのはファットガムともう一人、
ファットガムの個性【脂肪吸着】により、彼のふくよかなお腹に沈みこんだまま一緒にここまで転がされてしまっていた。
とはいえ二人にダメージらしいダメージはなく、本当にただイレイザーヘッドをどこかへ除け者にしておきたかっただけのようだった。
分断されてしまったものは仕方ない。今自分達にできることは一刻も早く合流する事。その為にはどこから仕掛けられても問題ないように警戒を怠たるなと釘を刺すファットガム。
そして警戒は実を結ぶ。
「っ、来た!」
ペストマスクの偉丈夫。拳を握りしめながら現れた男を前に切島は全身を強く硬める【
次の瞬間に起こったのは横殴りの雨のようなラッシュ。一発一発が強烈なパンチをこの一瞬で複数回叩き込まれた。
「ぐ……!」
「俺は思うんだ。ケンカに銃や刃物は不粋だって。持ってたら誰でも勝てる……そういうのはケンカじゃない」
「コイツ、強ェ……!?」
ダメージは、ない。しかしガードの上から押し込まれかけた。踏ん張っていた足は数歩分退がらされ、あのまま続けられていたらどうなったか分からない。
何より切島を戦慄させたのはその威力。分かってしまった。森岸の【魔法】がなければ吹っ飛ばされていたと、自身の強度だけでは防御を抜かれていた可能性があった。
「ンの……!? 何やコレ!? バリアか!?」
「ファットガムと……身体を【硬化】させる少年……二人とも防御が得意な個性だ。乱波よ、残念だったな」
ゾッとしている切島を心配しつつもファットガムが反撃する。同じく拳を握り締めて真っ直ぐに殴りつけようとし、半透明な壁に阻まれた。
乱波、と呼ばれた男の後ろからもう一人、ペストマスクの男が現れる。どうやらバリアを張ったのはその男らしい。
しかしバリアに驚いている暇もない。個性を推測しようとした瞬間、再び乱波のラッシュがファットガム達を襲った。
「ぐおっ!」
「防御が得意か! 確かに硬いぞ!」
「な……めんなァッ!!」
まるで弾丸のような拳。それを受けながら切島が殴り返すが、一発殴り返す間にも数発が返される。
殴り合いとしては圧倒的に不利。敵が明確に攻撃と防御を役割分担しているのに対し、こちらはどちらも防御が強みの二人。攻勢にでるには賭けになる。
「
「っ、オッス!」
「我々に勝つつもりだ。良かったな乱波」
「分かってくれたか! 良い奴らだ!」
ならば賭けるにしても勝ち目のある勝負にしなければならない。ファットガムの言葉に切島は覚悟を決めると、バリアの男へ向けて走り出した。
乱波も意志を汲み取ったのか、切島を無視してファットガムへと駆け出す。
「勝負してみようや!! 乱波くん!!」
「やっぱりお前は良いデブだ!!」
天蓋、とバリアの男にバリアを出さぬよう釘を刺しながら乱波のラッシュが始まる。最早雨を通り越して滝。工事現場のような轟音が響いた。
「テメェの相手は、俺だァ!!」
「無意味だ。我が防壁を破ることなどできん」
その間に天蓋を相手取るのは切島。鉄の壁のような強度のバリアをノーモーションで張れる相手をどう倒すというのか、と天蓋は憐れむように言う。
故に、その一撃は予想外だった。
「【烈怒頑斗裂屠】ッ……!!」
「何……!?」
強く硬めた拳による一撃がバリアへと突き刺さり、亀裂を走らせてガラスのように打ち砕いた。
天蓋は見誤っていた。プロヒーローであるファットガムを警戒し過ぎた結果、切島を軽く見すぎていた。
「俺ァ頑丈だからよ……! 森岸の【魔法】も人より許容量がデケェんだよ!!」
「ぐ……最大最硬防御……!!」
【スピオキルト】+【バイキルト】+【安無嶺過武瑠】による超硬度超パワーがバリアごと天蓋を叩き、殴り飛ばした。
「っ……烈怒がやってくれたか……!」
「引きこもりが負けたか! アイツもやるな!!」
その頃、乱波のラッシュは続いていた。
矛を切島に任せた以上、自分は盾に徹すればいい。後は切島が戻ってくるまで耐えていれば切島が倒してくれる。
(そう思うとったけど無理や……! コイツドンドン調子上げてきとる! コレ受けながら殴り返すんは切島くんでも厳しい……!)
だが、それは無理だと判断していた。
確かに切島の攻撃力は乱波にも負けないだろう。しかし圧倒的な手数の差がある。切島が一発殴り返すまでに数発を叩き込まれ、押し返されてしまう。
ならば自分で殴り返すしかない。それも一撃でノックアウトできるほどのパワーで。
「まだ行けるよな!?」
「あ……たりまえやろ!」
ファットガムの狙いはカウンター。乱波のラッシュの衝撃を全て脂肪で【吸着】し、沈めて抑え込んでいた。
問題は消耗。衝撃はラッシュの数だけ強く多くなり、抑え込むのに大量のエネルギーを使う為防御用の脂肪がとてつもない速度で消費されている。
そしてもう一つ。既に充分な衝撃が貯められているが、それを放つ為の溜めを作る余裕がない。
このままでは押し切られる。限界が見えたその時。
「ファットぉぉおおおお!!」
「ぬ!?」
「! 烈怒……」
天蓋を倒した切島が割り込んできた。
先程までは押し込まれてしまっていた切島の身体が、今度は退がらない。何発、何十発と受けて尚揺らがない。
「お前!! いいな!!!」
「ファットは、やらせねええええ!!」
そして一撃、乱波を殴り返した。殴られながら放ったパンチは乱波の胸板を微かに揺らす程しかなかったが、その一瞬が生み出されていた。
「まさか逆に守られるとは……なんて言うんは失礼やな……!」
「……!」
「おおきに!! ええ矛になったわ!!」
何度も何度も叩き込まれたラッシュの衝撃全て。膨れた風船のような身体が標準体型に戻るまで溜め込まれた衝撃が攻撃へと転化する。
「ホコタテ勝負、こっちの勝ちや!!」
乱波のラッシュすら比べ物にならない轟音が響いた。地面をも抉り壁に巨大なクレーターを作る程のパワーが炸裂し、乱波を吹き飛ばした。
仮に天蓋のバリアが生きていようが無意味であろう威力。壁に叩きつけられた乱波と天蓋に起き上がる気配はなく、しかし乱波は口を開いていた。
「っは……お前ら……滅茶苦茶良かった……また……次、は俺が……」
「……まだ意識あるんかい。凄いな自分」
矛と盾の対決……勝者、ファットガム&烈怒頼雄斗。
森岸「切島【魔法】の許容量デケェな」
切島「マジで?」
森岸「普通ならそろそろ吐きそうになってるのに」
切島「ちょっと待てや」
瀬呂「あれマジでキツいよな」
上鳴「わかる」
切島「体験済みの奴もいるのかよ!?」
森岸「こうなりゃ限界まで試すか」
切島「やめろぉ!?」