Q.ただでさえ【ワン・フォー・オール】の制御が拙いのに緑谷に【バイキルト】とか使って大丈夫なの?
A.【ワン・フォー・オール】そのものを強化してるわけじゃないから問題なし。なのでやろうと思えばこの時点で擬似100%ができなくもない。
Q.切島の許容量ってどのくらい凄いの?
A.他のA組メンバーと比較すると【魔法】二個分くらい多い。他が四回の重ねがけが限界のところをもう二回分多く強化を受け取れる。
Q.【魔法】かけすぎると吐くの?
A.【魔法】による。【バイキルト】や【スカラ】を使い過ぎると筋肉や骨に響くし、複数の場合はそこに吐き気やら頭痛やらも出てくる。
脳無。敵連合がUSJを襲撃した際、対オールマイト用にと連れられていた改造人間。
実態は敵連合の背後にいた魔王、オール・フォー・ワンと彼の部下であるドクターによって生み出された元人間。
その共通点は脳が剥き出しである事ともう一つ、複数の個性を宿していること。
「……それで言うとアレは失敗作か。一つ足したらもうパンパンになりよった」
薄暗い研究室の中、液晶の向こう側を食い入るように見つめながらドクターは呟いた。
映像の中では氷の塊を放つ脳無とそれを防ぐヒーローが交戦しており、段々と脳無が押し込まれていっている。
「所詮はこんなものか。試作品としては十分と言ったところかの」
やがて氷の装填すら間に合わなくなり、懐まで踏み込んだ緑谷出久のアッパーによって倒される。地に伏せた脳無に立ち上がる様子はなく、完全にノックアウトされてしまっている。
ドクターは興味を失ったように視線をモニターから動かし、一つの培養カプセルへと向き直った。
そこに入っていたのは──
「あの時念の為に回収させておいて正解だった! 死柄木弔や黒霧は惜しいが、それを差し引いてもあまりある収穫じゃ!」
「
──液体の中に浮かぶ持ち主から離れた腕。Mr.コンプレスによって切り離された森岸詠士の片腕だった。
ドクターやオール・フォー・ワンにとって、個性などあればあるだけいい。効果が判明していないのであれば回収してから確かめればいい……程度のものでしかない。
その中の一つが森岸の【魔法】だった。天下の雄英生の個性ならば何かしら有用だろうと回収できればいいな、程度の気持ちで黒霧に回収させていた。
そして研究する間もなく神野の決戦が勃発。仕方の無いこととはいえオール・フォー・ワンが投獄されたのはあまりにも惜しかった。
「もう少し早くコレの真価が分かっていれば……! ああ口惜しい!」
【魔法】の研究が進んだのはオール・フォー・ワンが投獄された二日後だった。
通常、オール・フォー・ワンであっても切り離された身体の一部から個性因子を獲得することはほぼ不可能だった。
というのも個性因子とは全身に均等に存在するものではなく、個性が発動する部位によって異なっている。
例えば手のひらで【爆破】を使用する爆豪ならば腕周辺に因子が集中し、それ以外の部位には平均的な量の因子しか存在していない。
故に森岸の腕を回収しても【魔法】を得られるかは望み薄だった為に研究を後回しにしていた。
「まさか腕だけであれ程の個性因子が宿っているとは……! 腕一本で並のヒーローと同じ量の因子とは思わなんだ!」
だからこそ気づけなかった。森岸の個性がどれほど有用なものなのか。
気づいた時には遅かった。オール・フォー・ワンは檻の中、研究しようにもオール・フォー・ワン抜きではどうしたって限界が訪れる。
それでもこの可能性の塊を諦めきれないドクターは手当り次第に様々な個性との組み合わせを試していった。
「炎熱系と混ぜれば火球を、氷結系と混ぜればあの通り……万能素材のような因子! それだけにオール・フォー・ワンがいないのが悔やまれる……!」
そうして生まれたうちの一体が死穢八斎會に貸し出された脳無。無数の機器を持ってして尚、計測不可能な謎のエネルギーを使って氷結系個性のような現象を引き起こす異能。
貧弱な氷結系でさえアレなのだ、より強い個性と混ぜたらどうなる? 例えばの話だがエンデヴァーの【ヘルフレイム】と混ぜたら? 次から次へと可能性が湧いてくる。
「しばらくは遊ばせてもらおうかの……」
誰も知らない、誰も辿り着かない研究室の中でドクターは一人笑う。新しい玩具を見つけた子供のような、或いは欲望を抑えきれない破綻者のように目をギラつかせて。
◇
森岸と分断された直後、ミリオはすぐに走り出していた。
間近で見ていたからこそ分かっていた。森岸ならばまず死ぬことはないだろう、と。
何よりその前にもナイトアイ達から同じように託されている。ここで立ち止まる方が彼らの信頼に背く行為だと分かっていたミリオは全速力でオーバーホールの元へと向かっていた。
そして現在、
「何なんだ……お前はァ!!」
「っ……! ぁ……」
「もう大丈夫だからね……!」
逃亡準備をしていたオーバーホールに追いついた直後、周囲にいた幹部三名を即座に無力化。【透過】と【魔法】による強化が合わさったルミリオンの速度に反応することもできず、数秒もせずにエリを保護することに成功していた。
想定外だったのはオーバーホール。単なる学生だと思っていたルミリオンが想像よりもずっと速く、強かった為に手段を選ばなくなった。
地面に手を当てて個性を使用し地面を破壊し、再形成。ルミリオンを完全に殺す気で無数の棘へと作り直し殺到させた。
しかしそれすら【透過】の前には無意味。抱えていたエリに当たらぬようにこそしたものの、ルミリオンには傷一つついちゃいなかった。
「もう指一本触れさせない! エリちゃんは俺が守る!! お前の負けだ
「気安く呼ぶな……! その名は、捨てた!!」
そこからは一方的。纏っていたマントでエリを優しく包んでおくと、ルミリオンはオーバーホールの攻撃を気にも留めず何度も拳を叩き込んだ。
【バイキルト】二回と【スカラ】三回。万が一【透過】で対応できなくとも銃弾すら通さぬ強度。加えてガードの上からですら痛打となるパワー。オーバーホールに勝ち目などなかった。
だが、そこで終われるならばオーバーホールという敵は生まれていない。
「こんな所で終われるか!!」
「!? 何を……!」
味方を回復させる気か、と思った次の瞬間。オーバーホールの身体が
そして一瞬で再生……否、再構築された。
「最低の気分だが……さっきよりはいくらかマシだな」
「部下と融合した……!?」
自分と部下を破壊しての再構築。それはあまりにも歪な変化。まるで血が染み付いたように変色した本来の腕と、部下の体を変化させた一対の黒い腕。
手で触れることで発動する【オーバーホール】の手数が単純計算で二倍となった瞬間、初撃の棘よりも速く大規模な攻撃がルミリオン──ではなく、エリへと殺到した。
「くっ!?」
「お前のせいでまた死ぬぞ! これが望みなのか!?
ヒーローであるが故の弱点。他人を護らなければならないからこそ、ルミリオンは無敵でいられない。
手数が増えたことにより【オーバーホール】の速度も規模も増しており、ルミリオンの移動速度ですら振り切れない。この状態での継戦は不可能と判断し、エリを抱えたままルミリオンは走り出す。
「だ、ダメ……! 殺されちゃう……!」
「大丈夫! 今ちょっとヤバそうに見えるかもしれないけど平気なんだよね!」
「戯言を……! お前も、ヒーローも皆死ぬ! 脳無も、フレクト・ターンもいる! それでもまだ救けられると!?」
オーバーホールにはまだ勝算があった。オール・フォー・ワンの残党から寄越された脳無とヒューマライズのフレクト・ターンがいればどうとでもなると、そう思っていた。
そのフレクト・ターンが瀕死で吹き飛ばされて来るまでは。
「っ……何だ!?」
「あれは……ヒューマライズの……!」
どこから飛んできたのか、壁を何枚もぶち破りながら白目を剥いて現れたフレクト・ターン。彼の全身は痛々しい程に打ちのめされており、とてもじゃないが戦えるような状態ではなかった。
「馬鹿な……!? 奴の個性をどうやって……!」
「やっっっべぇやり過ぎた!! オッサン生きてるよな!? な!?」
「……! レックス!!」
一体誰にやられた、という疑問は一瞬で氷解した。フレクト・ターンが吹き飛んできた方角からヒーローの格好をした男が出てくれば否が応でも理解させられる。
「生きてる……生きてるから揺するな……」
「マジで!? よかったぁ……殺しちまったかと……」
「レックス! 無事だったんだよね!」
「ん? あ、ルミリオン先輩。その子が?」
「そう!」
あの男だ。レックスと呼ばれた男がフレクト・ターンを倒したのだ。オーバーホールでさえ届かなかった【リフレクト】の壁を超えて、ここまで吹き飛ばしたのだ。
僅かに傾いた天秤が再び傾いた。それも覆しようのない程絶望的なまでに。
だがオーバーホールには分からない。受け入れられない。もしかしたらたまたま偶然フレクト・ターンと相性が良かっただけかもしれない。或いはイレイザーヘッドと共闘してコイツだけが先に来ただけかもしれない。
半ば現実逃避のような思考を回しながら、オーバーホールは攻撃の手を止めなかった。
「一人増えた程度で勝てるとでも!?」
「おわっ!? また地形攻撃かよ!」
地面や床を隆起させての棘による刺突。咄嗟にルミリオンは飛び退き、レックスと呼ばれた男は増強型なのか力任せに棘を殴り砕いた。
「レックス! 俺はエリちゃんを安全な場所に連れていくから任せていい!?」
「どうぞどうぞ。まだ全然
「殺す……!」
完全に舐められている。元々ヤクザ者の復権を目標としている男だ、舐められたり軽んじられる事を堪えられるはずもなかった。
打ち砕かれるのならば砕き切れない物量で押し切ればいい。そう考えたオーバーホールは手を地面にあてると周囲全てを分解、再構築し殺意に歪んだ棘をレックスへと差し向け───
「【バイキルト】四回……【ウイングブロウ】ッ!!」
「───は?」
──尽くを粉砕された。
ルミリオンの比じゃないパワー。これが全身全霊の一発しか撃てない大技とかならまだ納得もできた。
しかしどうだろう。レックスの態度はどう見ても『何か飛んできたので打ち返しました』くらいの顔でしかなく、ボタンを押したら小パンが出ましたみたいな雰囲気だった。
思わず一瞬呆けてしまうほど理解し難い光景。すぐさま正気に戻ったオーバーホールは慌てて次の手を打った。
「っ……なら、これはどうだ!?」
「お?」
彼が取り出したのは通常とは異なる作りの拳銃。装填されているのはこの世の理を破壊する弾丸……個性消失弾。
ヒーローにとっての生命線であり、超常社会における人権に等しい個性。それを未来永劫消し去ってしまう悪魔の所業のような弾。
引き金が引かれ、注射器のような形状の弾丸が放たれる。一度あたればどんな強個性も無個性へと堕ちる凶弾が真っ直ぐにレックスへと飛来し──コキン、と軽い音がして真っ直ぐに跳ね返って来た。綺麗に銃の中に戻って行った。ナイスイン。
「…………冗談だろう?」
「今のが個性消失弾か? 危ねえな。念の為【アタカンタ】で対応して正解だったな」
ここまで絶望的だといっそ笑いすら込み上げてくる。地形攻撃も個性消失弾も通らない。この分だとそんなはずはないだろうが直接触れても死なないんじゃないだろうかとすら思える。
とうとう理解の許容範囲を突き抜けたのか、先程までの怒り狂った姿は何処へやら。オーバーホールは呆然とした様子でレックスを見つめるしかなかった。そして。
「がっ……!?」
「お、意外と硬ぇな」
オーバーホールは理不尽という言葉の意味を嫌という程教えられることになる。
・強化と回復を撒くレックス
・【透過】+【魔法】のルミリオン
・【再現】+【魔法】のサンイーター
・【OFA】+【魔法】のデク
・【抹消】+【魔法】のイレイザーヘッド
・【予知】+【魔法】のサー・ナイトアイ
・【施錠】+【魔法】のロックロック
・【脂肪吸着】+【魔法】のファットガム
・【硬化】+【魔法】の烈怒頼雄斗
・【ドラゴン】+【魔法】のリューキュウ
etc…
全員の討伐、もしくは逃亡で勝利!
味方に脳無とフレクト・ターンが追加されるぞ!
オバホ「何だこのクソゲー」
フレクト「やっぱり魔境やないかい」
脳無「頭にきますよホンマに」