魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.個性因子多すぎない?
 A.何回も覚醒してるようなイカレポンチなので妥当。昔から一人だけ独学で個性伸ばししてたようなものだから多少はね?

 Q.個性婚でも最高の素材だったりする?
 A.『28.自意識改善中の化け物』の前書きにも書いた通り個性婚でもトップクラスの素材。とち狂った鍛錬のせいで個人で氷叢家並みの因子強度があると思えば。

 Q.森岸との個性婚で産まれる子供の個性ってどんな風に変化するの?
 A.デメリットとなる消費が全部MPに変わって肉体への負荷がなくなる。あと色んな制限が緩くなったり消えたりする。

 Q.個性婚する場合一番強くなるのは誰?
 A.個性の強さならエリちゃん。時間操作系の個性になるので多分誰も勝てない。それかアメリカのNo.1ヒーロー。





74.超常バトルの後始末

 

 

 

 理解できない。理解したくない。

 

 最初から英雄気取りの病人など理解する気もないけれど、この化け物に限っては違う。

 

 

「何なんだ……」

 

 

 地形を破壊、再構築させる。あたれば致命傷になるサイズの棘をたった一人へと殺到させる。

 

 こちらから姿が見えなくなる程の密度で放った攻撃が、握った拳の一振で容易く跳ね除けられる。

 

 

「何なんだ……!」

 

 

 棘で視界を埋めつくした一瞬の隙を狙い、近づいて直接【オーバーホール】を使おうと試みる。

 

 部下を使ってまで増やした四本の腕が尽く捌かれる。目にも止まらぬ速さでガキの腕が動き出し、全ての腕がほぼ同時に叩き折られる。

 

 

「何なんだお前はァ!!?」

 

「ヒーロー志望のインターン生だよ」

 

 

 何なんだコイツは!? ルミリオンに比べればまだ付け入る隙はあるはずなのに! 手で触れることさえ叶わない!

 

 有り得ないだろう!? 乱波ですら反応できないんだぞ!? 触れることさえできればそれだけで殺せるんだぞ!? なのに……! なのに!

 

 

「何故勝てない!? 何故殺せない!?」

「そら触られないように訓練してっからだよ。敵連合の話知らねえわけじゃねえだろ?」

 

 

 このガキの言うことには『触れられた時点で負け、もしくは致命的なダメージになる個性を仮想敵とした訓練を積んでいた』と。それだけでここまでの動きができると? 冗談だろう?

 

 

「合宿ん時に一度不覚を取ったんでね。反省を活かした結果がこれさ」

「俺をそこらの敵と一緒にするな!!」

「まあ攻撃力が高いのはお前の方だわな。でもな……」

 

 

 増やした方の腕で挟み込むように掴みかかるも、手のひらが触れる前にバックステップで避けられる。バチン! と音が鳴った時にはガキが目の前に戻って来ていた。

 

 ガキの爪先が俺の顎を、そのまま顔のパーツを削り取るつもりのような威力で蹴り上げた。

 

 

「ごっ……!?」

「『触れれば勝ち』って意識が強すぎて却って読みやすいんだよ。手のひらさえ警戒してりゃこの距離でもそこまで怖くねえ」

 

 

 何を言っているんだコイツは!? 有り得ないだろう! たとえ先読みができても回避できるかは別物だ! ましてや俺は腕を増やして四本なんだぞ!?

 

 コイツは何を想定している!? 何の為にそこまでの力をつけている!? 分からない! コイツの事が何一つ理解できない!

 

 

「個性消失弾なんてもんを作ったから個性に頼らないタイプだと思ってたんだが……まさかその黒幕が個性頼りとは。何ともまあ情けないな」

「…………!!」

「フレクト・ターンもそうだった。ごちゃごちゃと屁理屈を並べてはいるが、結局戦いになると個性頼り。ダッッッッサ!!」

 

 

 嘲るように言いながら、ガキの姿がブレた。違う、俺の目で追えないほどのスピードになったんだ。

 

 どこに行った、なんて言う暇すらなかった。俺が目を見開いた時には腹と背中に強烈な痛みが叩きつけられていた。

 

 

「ごぇ゙っ……!?」

「歯ぁ食いしばっとけよ。も一発いくぞ」

「ぐ……!?」

 

 

 重い。ルミリオンの打撃の何倍も、コイツの拳は重く鋭い。そして何より強い。

 

 奴と違ってコイツの打撃には耐えられない。一発一発に意識が飛びそうになる。今だって肺の空気を無理やりに押し出されて酸素を求める苦しみに苛まれている。

 

 霞む視界の中、俺の目に飛び込んで来たのは硬く握り締められていた拳だった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

「……随分と派手にやったな」

「地形を作り替えて攻撃したのは向こうですよ。それを迎撃してりゃこうもなります」

 

 

 やあ。フレクト・ターンの後にオーバーホールと一人だけボスラッシュしていた森岸だよ。何で大物二人連続して相手する事になったんだ俺。

 

 

 ルミリオンにエリちゃんを任せてオーバーホールの相手を代わったはいいものの、どうやらルミリオンだけでも相当タコ殴りにしていたらしく数回殴ったらアッサリと意識を手放してしまった。

 

 その後ナイトアイ達が合流し、オーバーホールを見て驚いていたから何事かと尋ねると部下を分解して自分に融合させていたらしい。こっわ。

 

 元に戻せないか? と尋ねられたので試しに【ベホマ】を使ってみたところ、本当に二人に分離してビックリした。

 

 ちなみにそれで起き上がったのでもう一回殴り倒しておいた。お前合体してないと死ぬほど打たれ弱いのな。軽めにしたのに白目剥いて気絶しよった。

 

 

 そして現在は諸々の後始末中。俺を筆頭に【魔法】で強化した状態で地下空間で暴れたものだから、割と死穢八斎會周辺が危ないことになっていた。

 

 俺のラッシュもそうだが、緑谷が脳無を倒した時に真上に吹っ飛ばしたものだから穴が空いてしまっているらしい。何してんのお前。

 

 

「なるほどねえ……イレイザーヘッドが言うわけね」

「強化に回復……エラい便利やなほんま。そら俺達より強い言うわ」

「恐縮です」

「謙虚ね。もう少し胸を張りなさい? 死傷者ゼロで済んだのは間違いなく貴方の功績が大きいんだから」

「うっす」

 

 

 そうそう、今リューキュウが言った通り死傷者はゼロ。だって全部終わったら俺が回復させられたし。

 

 死穢八斎會……というよりはオーバーホールと幹部八名の捕縛が完了。それ以外はオーバーホールに無理やり従わされていた組長派の構成員だったらしい。後はヒューマライズのフレクト・ターンもか。

 

 

 問題はエリちゃん。どうも助かった実感が薄いのか不安そうにしており、誰の近くにいても落ち着かなさそうに視線を彷徨わせていた。今は個性が暴走した時に備え、相澤先生の側にいる。

 

 何となくあの子の事が気になって見ていたのだが、今気づいた。あの子手足に包帯巻いてるってことは怪我してるんじゃないか?

 

 エリちゃんの個性は【巻き戻し】というらしく、文字通り対象の時を巻き戻すような現象を引き起こすらしい。

 その割には自分の傷が残ってるあたり、自分は対象外なのかもしれない。

 

 

「今は大丈夫ですか?」

「ん……ああ。少し顔色は悪いが……この場ですぐに解決できることではないだろうな」

「ぁ……」

「初めまして。俺、レックス。君は?」

「ぇ……エリ……」

「エリちゃんか。よろしくね」

 

 

 ちっちゃい子からしたら俺なんてデカくて怖いだろうからね。ちゃんとしゃがんで目線合わせないと会話もできない。

 

 ビクビクはしてるけど話せないというわけじゃなさそうだし、時間がある程度は解決してくれそうだ。じゃあ時間じゃなくても解決できるものは解決しておいてもいいだろう。

 

 

「この手、痛い?」

「…………」

「だよね。じゃあ治しちゃおうか」

「え……?」

「俺、魔法使いだから怪我とかパパっと治せちゃうんだ。いくよ?」

 

 

 とは言っても一言【ベホマ】って言えば終わりなんですけどね。それらしい大袈裟な振りを付け加えて「痛いの痛いの飛んでいけー」ってやると物凄く不思議そうな顔をされた。やめて。ちょっと恥ずかしくなるから。

 

 相澤先生にも確認を取りつつ、エリちゃんと一緒に包帯を取ってみるとあら不思議。どんな傷があったのか知らないが傷跡ひとつないお肌に。

 

 どうよ。子供向けに考えた俺なりの癒しの手品は。

 

 

「なおっ、た……?」

「痛いのはエリちゃんを虐めてた大人に飛んで行ったから大丈夫だよ」

「…………!」

 

 

 あ、あの。何かしら反応をくれませんか。目を見開いてジッと見つめられても何を言いたいのかお兄さんには分からないの。相澤先生も笑い堪えてないで助けて。そんなに俺の「痛いの痛いの飛んでいけ」が面白かったんですかちくしょう。

 

 と思ったらジワッと泣き始めた。今度は何!? 俺なんかやっちゃいました!?

 

 

「だだだ、大丈夫!? まだどっか痛い!?」

「ち、ちがっ……」

「あー……森岸。お前多分エリちゃんの痛み全部治したんだろ」

「へ? 傷じゃなくて、痛み?」

 

 

 相澤先生が構成員から聞き出した話によると、オーバーホールは敢えてエリちゃんを完全には治療しないようにしていたらしい。

 

 逃げられてしまうと困るからという理由で足を重点的に傷を残しており、歩くだけでも痺れるような痛みが走るようにしていたのだとか。

 

 ははーん、アイツさては俺が思ってたよりもずっとクズだな? 今からもう二、三回殴ってきてもいいですかね。ダメ? そっかあ。

 

 で、オーバーホールが意図的に残していた身体の歪みやら傷やらをまとめて全部俺が治しちゃったと。

 

 

「正直お前にそれができるか分からなかったんだが……杞憂だったようだな」

「まあ、ある意味俺の【魔法(コレ)】もこの子の個性と似たようなものなので。意図したことじゃないですけど」

 

 

 そりゃあボロボロ泣き出しもしますわ。エリちゃん今ボロボロ泣きながら俺の腕に縋りついてるもん。なんならちょっと痛、痛たたたた。あんまり強く掴まないで。爪刺さる。

 

 試しにヒョイと抱えあげてみると何ともまあ軽い。よく分からないがこれは標準体重よりそこそこ軽いんじゃなかろうか。

 

 抱えて見て分かったけどこの子滅茶苦茶細い。子供ってもうちょっとプニプニしてるもののはずなんだけど、エリちゃんは細すぎる。

 

 

「もう大丈夫だからね。何か美味しいもの食べたりしたいね」

「おいしい……もの?」

「うん。エリちゃんは何が好き?」

「……リンゴ……」

「リンゴかあ。甘くて美味しいよね」

 

 

 相澤先生今すぐ近隣のリンゴ買い占めてきてくだ……いや量より質か? やっぱ一番高いリンゴを……あ、ダメですか。ですよね。

 

 エリちゃんはこの後一度検査入院するらしい。個性の暴走にも備えなければならない為、相澤先生が関わることになるとか。

 

 その時にエリちゃん次第ではあるが俺や緑谷、通形先輩も会いに来ることになるだろう……と、相澤先生は言っていた。

 

 

「……にしてもお前、小さい子の対応にやけに慣れてるな?」

「響香のご両親が音楽教室やってて、歳下と会うこと多かったんです」

「それでか。ということは耳郎も?」

「一回【イヤホンジャック】にちょっかい出されてから遠巻きでした」

「……そうか」

 

 

 あん時はびっくりした。いきなり響香が悲鳴あげたから何事かと思ったらちっちゃい子に耳のプラグ部分咥えられてたんだもの。そりゃ悲鳴も出るよね。

 

 

 何にせよこれで今回の作戦は完了。目標のネームド敵は全員逮捕できてエリちゃんも保護できた。死傷者ゼロと完全勝利と言っていいだろう。

 

 後はぶっ壊れた地下空間やら道路やらの対応だけど……それについては俺達が手を出せることはほとんどないので一旦お終い。

 

 こうして初……初じゃねえな。二回目か。とにかく、俺のインターンはここで一度終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある山間部。ナイトアイ達が死穢八斎會との交戦中、別行動をしていたグラントリノもまた脳無と戦っていた。

 

 

「何なんだコイツらは……喋る割には意味のわからんことしか喋らねえし、変なもん飛ばしてきやがって」

「が……!」

 

 

 こちらにいた脳無もまた特異個体。これまでの脳無とは異なり特定の単語をずっと繰り返し唱えていた。

 

 何より恐ろしいのは脳無が複数体(・・・)いること。目撃情報が多いエリアに来てから既に三体と交戦していた。明らかに何かある。

 

 

「何があるってんだここに…………っ!?」

 

 

 グラントリノが愚痴るように零した言葉に応えるように、地面が大きく揺れた。

 

 鳥が慌てて逃げ出すように飛び立ち、周囲の木々は不安を煽るかの如くざわめきだす。二度、三度と大きな揺れが続き、バキバキと音を立てて大木が薙ぎ倒される。

 

 

「何っ……だコイツは!?」

「あの野郎……とんだ隠し球を持ってやがったな……!」

 

 

 木々を文字通り掻き分け、その巨体が姿を現した。

 

 

 

「主の……敵……」

 

「っ、ここは退くぞ!!」

 

 

 名をギガントマキア。オール・フォー・ワンの忠実なる僕が動き出していた。

 

 

 

 






 以下、森岸の戦果。

・ヒューマライズ最高指導者フレクト・ターン討伐
・死穢八斎會若頭オーバーホール討伐
・幹部討伐のサポート
・エリちゃんの治療
・味方全員の治療


リューキュウ「うちに欲しいわね……」
ファットガム「わかる。大坂来んか?」
ナイトアイ「うちも歓迎するぞ」
森岸「プロのスカウトが凄い」
相澤「やめてくれませんか。コイツまだ一年生ですよ」
リューキュウ「そういえばそうか……!」
ファットガム「言われて思い出したわ」


緑谷「僕の出番は……?」
切島「お前は次でひと仕事あるじゃん」



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