魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.〇〇ならエリちゃん治せたりしない?
 A.森岸の【魔法】は基本的に肉体に作用するものばかりで精神に作用するものはなく、あったとしても治療効果ではないのでエリちゃんを治すことはできない。

 Q.アイツらヤったんか!?
 A.ヤってない。性欲よりも安心感が勝るので先にそういう雰囲気にでもなってない限り大体寝落ちする。



 Q.耳郎との子だったらどんな個性になるの?
 A.『ゴスペル』って言う度に音の衝撃波を飛ばしたり『ルギオ』って言って音の残滓を一斉に炸裂させたりする才禍の怪物みたいなのになるよ。ついでに鼓動が大きくなって臨戦態勢になると『ドッドッドッ……』って聞こえるようになるよ。






76.アオハル代表みたいなイベント

 

 

 

 10月。残暑もなくなり日々の寒暖差が激しくなりだす頃。

 

 ……え? あの寝落ちから響香と何かなかったのかって? あったら除籍されるからあっちゃいけないんだよ。OK?

 

 

 死穢八斎會の事件から数日。何がキッカケになったのか青山が緑谷に絡むようになり、周囲もそれを生暖かい目で見守るようになっていた。

 

 思えば青山は妙に正体が分からないというか、どういう奴か測りかねていたからこれはちょっと意外だった。なんなら緑谷のこと避けてるとすら思ってたし。

 

 

 ああそうそう、相澤先生……イレイザーヘッドの下でのインターンは死穢八斎會の一件で一区切りになった。

 

 オーバーホールやエリちゃんについてもそうだが、フレクト・ターンがいた場合に確実に捕まえておきたかったから呼ばれていた。それが終わったからインターンも自動的に終了した。

 

 そんで今は普通に授業や訓練を受ける日々。時々放課後に心操や緑谷と組手だったり模擬戦だったりをするくらいで平穏に過ごしていたのだが。

 

 学校ならではのイベントが迫っていることをすっかり忘れていた。

 

 

 

「文化祭があります」

 

「「「ガッポォオォイ!!」」」*1

 

 

 

 あったなー……雄英は体育祭ばっかり見てたから文化祭の事すっかり忘れてた。雄英も普通に高校ではあるんだからそりゃあるよな。

 

 文化祭となれば出し物をしなければならない。何をするか決めよう! と誰かが声を上げた時に切島が立ち上がりながら質問した。

 

 

「いいんですか!? この時世にお気楽じゃ!?」

「切島……変わっちまったな……」

「でもそうだろ! 敵隆盛のこの時期に!」

 

 

 言いたいことは分かる。ただでさえ今年度の頭に敵連合が襲撃してきて、オール・フォー・ワンの残党やら何やらが問題になっているこのご時世に文化祭なんか開いて大丈夫なのか? と。

 

 相澤先生もそれには同意しているようだが、しかし……と前置きした上でこう続けた。

 

 

「体育祭がヒーロー科の晴れ舞台だとしたら文化祭は他科(・・)が主役。注目度は比にならんが彼らにとって楽しみな催しなんだ」

「サポート科と普通科と経済……じゃないや。経営科だっけ?」

「そうだ。そして現状、寮制を始めとしたヒーロー科主体の動きにストレスを感じている者も少なからずいる」

 

 

 それはまあ、確かに。体育祭の時が一番顕著だったが、やはり雄英はヒーロー科が最も目立つ学校だ。設備もヒーロー科の授業で使う為のものがほとんどだし。

 

 他の学科からしたら面白くない部分もあるだろうが……それも承知の上で入学してきたのでは? ぶっちゃけ雄英がヒーロー科偏重な事なんて外から見てても分かりきってたし。本人らの目の前では絶対言わないけども。

 

 まあ雄英としては生徒に対してはなるべく公平になるようにしてあげたいのだろう。だから尚更文化祭を中止にするわけにはいかないんだろうな。

 

 それはそれとして何の対策もなく例年通りにとはいかないようで、今年の文化祭はごく一部の関係者以外の入場を規制し、身内での開催になるそうだ。

 

 で、今度こそ文化祭の出し物を決めようかという話になり、飯田とヤオモモを司会進行に話し合いが始まった。

 

 

「メイド喫茶にしようぜ!」

「メイド……奉仕か! 悪くない!」

「ぬるいわ上鳴! オッパb──」

 

 

 初手から欲望丸出しの上鳴と峰田。上鳴はともかく峰田お前……ライン越えたせいで梅雨ちゃんに吊るされてんじゃねえか。つか速かったな梅雨ちゃん。見えなかったんだが。

 

 流れで一人一つずつ提案することになり、お餅屋さんや腕相撲大会にビックリハウスと店形態にイベントによく分からないものが続々と挙がる。俺? 俺はこれといって思い浮かばなかったから男装&女装喫茶にしといた。よくあるやつ。

 

 それから一通り意見が出揃ったんだが……こうして見ると見事にバラけてるな。ちょいちょい個人の願望に塗れてるし。

 

 

「不適切、実現不可、よく分からないものは消しておきます」

「あっ」

「無慈悲……」

「は?」

「ハナから聞くんじゃねえよ」

 

 

 あ、消された。峰田の案は勿論だけど、常闇の『暗黒学徒の宴』とか青山の『僕のキラメキショー』もよく分からんしな。爆豪の『殺し合い(デスマッチ)』は峰田と違うベクトルだが当然だろう。文化祭だって言ってんだろ。それ体育祭でやったよ。

 

 それから一つずつ意見を消していって消去法で選ぼうとしたが、やはりというか自分の意見を通したいもので。とうとう終業のチャイムが鳴ってしまった。

 

 

「まとまりませんでしたわね……」

「実に非合理的な会だったな……明日朝までに決めておけ。決まらなかった場合……公開座学にする」

 

 

 いや流石にそれはちょっと。中学生とか入れるならともかく雄英生同士でそんなもの見せられても楽しくないでしょ先生。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 流石に公開座学はヤバい。それだけはA組全体で一致していたらしく、帰寮してからも話し合いが行われていた。

 

 残念ながら森岸や緑谷といったインターンに参加していた者は公欠分の補習授業を受ける必要がある為この場にはいない。

 

 人数が減って落ち着きを取り戻したのか、もう一度全員の案を見直しながら飯田はこう述べた。

 

 

「考え直してみたんだが……先生の仰っていた他科のストレス。俺達は発散の一助となる企画を出すべきだと思うんだ」

「そうですわね……ヒーローを志す者がご迷惑をおかけしたままではいけませんもの」

 

 

 文化祭は他科が主役。自分達ヒーロー科だけが楽しいだけではダメなんじゃないかと飯田は語った。

 

 そうなると真っ先にボツになるのは飲食系。雄英生は普段からランチラッシュの学食を食べている為、比較対象がプロの料理になってしまう。それではどう足掻いても満足させられるものを提供できないだろうとの事。

 

 となれば体験系の出し物一択。A組の案の中で該当するものは触れ合い動物園やビックリハウス等になる。

 

 

「動物園は衛生上厳しそうじゃね?」

「コントとかは駄目かな?」

「素人芸程ストレス与えるもんはねーよ」

 

 

 一つ、また一つと案が消えていく。全体にどうしよう、という空気が漂い始めた頃、芦戸がポツリと呟いた。

 

 

「みんなで踊ると楽しいよー……」

「ダンスか。一理あるな」

「あれ、乗り気?」

 

 

 偶然にも会話が止んだタイミングで差し込まれた一言は飯田の耳に届いていた。顎に手をやりながら芦戸の意見を肯定し、呟いた本人の方が驚いているくらいだ。

 

 まさかあのお硬い委員長が肯定するとは、と目を丸くしていると飯田は理由を語った。

 

 

「これまでの話で候補を削っていたんだが……残ったものの中だとコントかダンスのどちらかになりそうでな」

「飲食系が軒並み取り下げられるとそうなるよなあ。あと、なるべくA組全員が何かしら役割を持てるってなると自ずと限られてくるし」

「ああ、そういう……」

 

 

 要は消去法。他科のストレス発散の一助になりそうで飲食系ではなく、A組全員が何かしらの役割を持てそうな案がダンスだったということだ。

 

 しかしそうなると不安になってくるのはダンスのクオリティについて。少なくとも雄英の授業でダンスを取り扱っていたことはない。

 

 

「でもよ、もう一回言うけど素人芸程ストレスなもんはねえぞ? 大丈夫か?」

「それなら私教えられるよ!!」

「あ、そうじゃん。芦戸の指導で青山ステップ踏めるようになってた」

 

 

 が、これもクリア。ダンスを趣味としている芦戸が教えれば素人だった青山でもそれなりに様になるステップが踏めるようになっている。

 

 ダンスの案が現実味を帯びてきたところで最後の関門。ダンスをするならばリズムが、即ち音楽が必要不可欠。ただの音源を流すだけでもいいだろうがそれだけでは何か物足りない。

 

 音楽といえば……と、その瞬間全員の視線が一人に集まった。

 

 

 

「……え、ウチ?」

「耳郎ちゃんの楽器で生演奏だ!!」

 

 

 白羽の矢が立ったのは耳郎響香。自室にエレキギターやドラムセットすら完備しているので当然と言えば当然の事だった。

 

 当の本人はダンスからいきなり自分に話題が飛躍したものだからキョトンとしている。

 

 

「今いないけど森岸くんも弾けるんでしょ!? やろうよバンド!!」

「いやそれは別にいいんだけど……ウチと詠士以外に楽器弾ける人いる? 流石に二人だけだとキツいよ?」

 

 

 断られると思ったのか葉隠が慌てて説得にかかるが、耳郎に断るつもりはない様子。むしろする分には構わないと言う。

 

 だが流石に自分と森岸の二人だけではどうしても寂しくなってしまう、と耳郎は答えた。

 

 それに耳郎も森岸もギターメイン。多少はやれなくもないが未だ練習中である為担当するには不安が残る。

 

 思わぬ反論に葉隠が言葉に詰まっていると、上鳴がそういえば、と口を開いた。

 

 

「爆豪さ、昔音楽教室行かされてたって言ってなかったっけ?」

「……あ?」

「え、意外」

 

 

 今度は爆豪に視線が集中する。完全に会話から外れていたところに自分の名前が呼ばれ、不機嫌そうに反応を返している。

 

 何の話だ、と視線だけで尋ねる爆豪にここまでの話を説明しつつ、その間に耳郎の部屋からドラムセット一式を持ってくる。

 

 訝しげな顔をしている爆豪を『まあまあまあ』となだめすかしてドラムスティックを持たせてみると──

 

 

「か……完璧……!」

「凄え! 才能マンキタコレ!」

「爆豪ドラム決定だな!」

「あ?」

 

 

 よく分からなくてもとりあえずプライドは刺激されたらしい。普段の態度からは想像もつかないというか、ある意味雰囲気通りというか荒々しくも正確な演奏に耳郎すら目を剥いて驚いていた。

 

 しかし爆豪はずっと眉間に皺を寄せて不機嫌そうにしており、少し黙った後に面倒くさそうに口を開いた。

 

 

「……アホか。そんな下らねえことやんねえよ俺ァ」

「そこをなんとか!」

「何でこっちが顔色伺わなきゃなんねェんだよ。全寮制になったのも敵が活性化してんのも俺にゃ関係ねえだろうが」

 

 

 そもそも爆豪は方針そのものに不満があった。他科がストレスを貯めているのは理解しよう。だが、自分達ヒーロー科に落ち度があったかと言われるとそうではないだろう、と。

 

 何も悪いことをしていないのに、何故自ら謙って他科の顔色を伺うような真似をしなければならないのか。自分達だって好きで敵に良いように転がされていたわけではないのに。

 

 普段とは異なりどこか冷静な爆豪からの意見に誰も反論する事はできず、それどころか納得さえしてしまう。言われてみれば……という空気さえ漂いつつあった。

 

 

「……ストレスの原因がストレス発散の一助になれるはずがない、か」

「委員長……」

「ご機嫌取りのつもりならやめちまえ。殴るんだよ……!」

「……爆豪?」

 

 

 一通り語った後、爆豪の雰囲気が変わる。不機嫌さから一転、いつものように荒々しい怒気を滲ませながら言葉を続けた。

 

 

 

「馴れ合うんじゃねえ、殴り合い……やるならガチだ! 雄英全員音で殺るぞ!」

「爆豪!!」

「バァクゴォオオ!!」

 

 

 ご機嫌とりでは半端に終わるだけ。殺るべき……否、やるべきは本気をぶつける事。顔色を伺って旗色を変えるのではなく、自分達の意志を思い切り主張するべきだと爆豪は言う。

 

 まさかの乗り気、というか一番ガチな雰囲気。やるなら最高のものにしたいというのは爆豪も同じなのかもしれない。

 

 1年A組の出し物は生演奏とダンスに決定。騒がしく楽しそうに話し合いが続けられた。

 

 

 

 

 

*1
学校っぽいの略。






葉隠「耳郎ちゃんと森岸くんってどこまで弾けるの?」
耳郎「ウチはギターメインってだけで一応部屋にある楽器は一通り弾ける。詠士もウチと同じ」
上鳴「凄ェ」
耳郎「……親が教えてるうちに楽しくなっちゃったらしくて、何かウチより厳しく指導されてたから楽器によっては詠士のが上手いよ」
葉隠「ええ……?」
上鳴「耳郎より!?」
耳郎「ギターは負けてないし。ウチのが上手いし」
葉隠「ま、負けず嫌い……」
上鳴「爆豪みてえ」


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