魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.角が縮むのは何故?
 A.若干ネタバレになるけど森岸の回復魔法がエリちゃんの【巻き戻し】のエネルギーも消費してた。【ベホマ】の効果は度合いに関係なく完治させる効果だった為通常の【ベホマ】と効果が変わらなかった。

 Q.【ホイミ】あっても小二にはキツくない?
 A.本人的にはやりたいことをやってるだけという認識。楽しみながらやってた上に疲れもすぐ回復してたから努力が苦にならなかった。

 Q.エリちゃんの中で三人はどんな印象?
 A.以下の通り。


 緑谷……初めて死穢八斎會の大人とは違う優しい手を教えてくれた人。希望を持たせてくれた人。いつもちょっと申し訳なさそうにしてるから不思議に思っている。

 ミリオ……オーバーホールから救けてくれた強い人。どうにかして笑顔を思い出させようとしてくれる人。笑わせようとしてくれて嬉しいけど申し訳ないとも思ってる。

 森岸……もうずっと治らない、消えないと思っていた傷を治してくれた人。温かい手で撫でてくれる人。近くにいるととても安心するしポカポカする。





78.練習スタート!

 

 

 

 本日は土曜日。つまり休日。授業も訓練もない。ということは──……

 

 

「曲も決まったし、ウチらはひたすら殺る気で練習だね」

「だな。特に上鳴」

「分かってるから名指ししないで! よく考えたら俺以外経験者しかいねえの頭から抜けてたんだから!!」

 

 

 丸一日ひたすら練習できるという事。俺達バンド隊は難しいことは考えず繰り返し練習。それと合わせもしなければならない。

 

 特に練習が必要なのは立候補した上鳴とヤオモモ。ヤオモモが習っていたのはピアノだけど、バンドで使うのはシンセサイザーだから感覚が違うだろうな。上鳴は……まあ、頑張れ!

 

 残る爆豪に関しては習っていた時の感覚を取り戻しつつ基礎を覚えてから安定し始めたので心配するだけ無駄だろう。元々センスはいいしなアイツ。

 

 すると上鳴が顔を顰めつつ、不安そうに話しかけてきた。

 

 

「痛え……なあ森岸」

「ん? どうした?」

「あの【インテ】本当に効果あんの? 俺上手くなってんのか分かんねえんだけど……」

 

 

 あるよちゃんと。失礼だな。

 

 上鳴が尋ねてきたのは【インテ】がちゃんと機能しているのかについてだ。【インテ】には色々効果があるが、その中の一つに『学習、習熟速度が上がる』という効果があったりする。

 

 実際【インテ】を編み出してからは色んなものの習得が早くなった。【インテ】を使ってから響香のご両親に一から楽器を教わった事があったが、目に見えて上達していたという。

 

 今回は準備時間の制限も何もないのでA組全員に【インテ】を使用してから練習に臨んでいる。芦戸さんも『全然違うね!』と言っていた。

 

 

「大丈夫、上手くなってる。もうFコード克服できてるし大丈夫だよ」

「本当か? 皆の方が上手いからよく分かんねえんだけど……」

「ウチから見てもちゃんと上手くなってると思うから安心しなって。それに泣き言言ってる暇があるなら練習!」

「うぇーい……」

 

 

 不安なら【インテ】重ねがけさせてもいいんだけど……【インテ】は特に重ねがけの負荷が凄いからなあ。下手すると放電もしてないのにウェイウェイ言い出しそうだし。

 

 これでも多少のズルはしてるんだから我慢して頑張ってくれ。どうしても不安なら夜も付き合うから。

 

 とはいえ今日も練習を始めてからそこそこ経ってるし、そろそろ休憩を入れた方がいいのかもしれない。集中が切れかかっているみたいだし。

 

 

「おーい! 森岸! 今大丈夫か!?」

「ん? どしたー?」

 

 

 おっと、丁度いいところに切島が来た。キリもいいしやっぱり一度休憩を───

 

 

「お前に客! 来てるぜ!」

「……客?」

 

 

 俺に?

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

「あ……レックスさん」

「おや、エリちゃん。可愛いお洋服で来てくれたんだね。こんにちは」

「こんにちは……」

 

 

 切島に呼ばれた森岸が出てきてみると、寮の外で待っていたのはエリちゃんだった。それも入院着ではなく可愛らしく着飾っており、相澤とミリオに連れられて来ていた。

 

 しかし文化祭の日に来るという話では? と視線を投げかけると、相澤は簡潔に答えた。

 

 エリちゃんが文化祭に来ることに関しての許可は下りたものの、校長はしかし、と切り出したらしい。

 

 オーバーホールの監視下で社会から切り離されてしまっており、個性の暴走が懸念される子供だ。そんな状態で突然お祭り騒ぎの環境に連れ出してしまえばどうなるかなど、簡単に想像できてしまう。

 

 

「びっくりしてパニック起こさないよう、一度来て慣れておこうって事だ」

「そういう事でしたか」

「というわけでこれから俺、エリちゃんと雄英内を回ろうと思ってたんだ。緑谷くんと森岸くんもどうだい?」

「もちろん行きます!」

「俺も行きます。今日はよろしくねエリちゃん」

「うん」

 

 

 そういう事で練習は一旦休憩。A組の皆に許可を取って校内探検に出ることにした。

 

 

 

 本当ならば今日は土曜日、即ち休日の為本来ならば人も少ない。しかし全寮制になった今は文化祭の準備を進めたい生徒達が学校の中で作業を進めていた。

 

 学年学科を問わず生徒達が駆け回り、そこら中からトントンカンカンと何かしらを作っている音が聞こえてきている。

 

 

「まだ一ヶ月前なのに慌ただしいんですね……」

「皆去年よりも凄いものを……Plus ultra(更に向こうへ)で臨んでるんだよね」

「大丈夫だとは思うけど釘とか落ちてるかもしれないから気をつけてね」

「ん……」

 

 

 テントや出店、看板に像まで。動き回りながらも誰もが楽しそうにしている。ヒーロー科に思うところがある者もいるだろうが、それはそれ。イベントなのだから全力で楽しみたいのだろう。

 

 エリちゃんは勿論のこと、雄英の文化祭初体験の緑谷と森岸も珍しそうに周囲を見回しながら歩いていた。

 

 すると前方からやけに迫力のあるドラゴンのようなものの頭が迫って来ていた。

 

 

「うわぁ!?」

「やっべ、すンません……って、A組の緑谷じゃねえか!!」

 

 

 あまりの迫力におもわず声を上げて驚く緑谷。しかしドラゴンの頭はピタリと止まり、その横から見覚えのある人物……B組の鉄哲徹鐵が出てきた。

 

 

「鉄哲? てことはこれB組のか?」

「アレアレアレー!? こんなところで油売ってるなんて余裕ですかあァア!!?」

「そして物間くんもいると……」

 

 

 相変わらず絡んでくる物間が言うにはこの頭はB組の出し物で使うものだという。

 

 その出し物のタイトルは『ロミオとジュリエットとアズカバンの囚人〜王の帰還〜』だ。B組の完全オリジナル脚本超スペクタクルファンタジー演劇だとか。タイトルからもうパクリのツギハギパッチワークなんですがそれは。

 

 

「準備しといた方がいいよ! B組(ボクら)に喰われて涙するその時の為のハンカチを──でっ!!?」

「あ、痛いヤツだ」

 

 

 水を得た魚のように口が回る物間。そのまま高笑いまでいこうとしたところを後ろから泡瀬が木材でどついた。鈍い音がしたけど大丈夫なのだろうか。

 

 それを見てふと森岸は疑問が浮かぶ。暴走する前にいつも拳藤が首トンで黙らせていたような気がするがいないのだろうかと。

 

 

「ごめんよA組。拳藤(とめる役)がいねえから歯止めがきかねえんだ」

物間(コイツ)のブレーキ役的な意味でセットだと思ってたけど、違うのか?」

「今回は別! あいつはミスコン出るんだよ。無理やりエントリーさせられてな」

「ミスコン!?」

 

 

 そんなのあるの? と緑谷。呆然としたまま視線をミリオに向けるとこちらもキョトンとした顔で「あるよ? 知らなかったの?」とでも言いたげだった。

 

 

 気絶させられた物間とドラゴンの頭を運んでいくB組を見送ると、ミスコンの話題でとある事を思い出したミリオは三人を備品室へと案内し始めた。

 

 

「ミスコンといえばね、あの人も今年は気合い入ってるよ!」

「あの人?」

「去年の準グランプリ! 波動ねじれさんだよね!!」

 

 

 そう言って連れられた先にいたのはフワフワと空に浮かんでいる妖艶な姿のねじれだった。

 

 宣材写真的なものを撮っていたのか、普段の天真爛漫さは鳴りを潜めてミステリアスな雰囲気を纏っていたものの、エリちゃんの存在に気づくとパッと顔を綻ばせて近くへと飛んできた。

 

 

「ねぇねぇ何でエリちゃんいるの? フシギ! 何で何で!? 楽しいね!」

「文化祭に来る前の慣らしなんだよね!」

「滅茶苦茶綺麗じゃないですか。これで準なんですか?」

 

 

 隣の友人がサラッと女子を褒めた事にも驚きつつ、緑谷も同意見だった。

 

 何か作画担当から違うんじゃないかというくらい整った顔だちとプロポーション。これで準グランプリということはねじれより上がいるの? と。

 

 その人物の名は絢爛崎(けんらんざき)美々美(びびみ)。三年G組サポート科の名前の時点で何かもう凄いミスコンの覇者がいるという。

 

 それに加えて、とカメラを担当していた天喰が続ける。

 

 

「今年はCM出演で隠れファンが急増しつつある拳藤さんも出るからね。波動さんも気合いが入ってる」

「拳藤さんそんな事になってたんだ」

「八百万さんとCM出たって言ってたね……」

 

 

 それから自分の事のように不安を語り始めた天喰は胃痛を訴えて蹲りだし、森岸からそっと【ホイミ】をかけられて救世主でも見つけたような顔をしていた。何してんだ三年生。

 

 

「最初は有弓に言われるまま出てみただけなんだけど……何だかんだ楽しいし悔しいよ。だから今年は絶対優勝するの! 最後だもん」

「───! できるさ!」

 

 

 大輪の花のような笑みを浮かべて意気込むねじれにミリオはそう答えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 あれからサポート科や普通科を見て回り、歩き疲れただろうエリちゃんの事も考えて一度食堂へ向かった。

 

 幸いランチラッシュがいらっしゃったのでリンゴジュースを頼んだところ、快く引き受けてくださった。「ご飯で笑顔を取り戻してあげたいね!」って。めっちゃ良い人。

 

 ランチラッシュお手製のリンゴジュースをエリちゃんに持って行ってみると、やはり歩き疲れていたみたいでチウチウと凄い勢いで飲み出した。あら可愛い。

 

 それで一通り回ってみたがどうだっただろうか。慣れた、というか楽しみになってくれただろうか。

 

 

「……よく……わからない……」

「そっか……」

「……けど」

「?」

 

「たくさん、いろんな人ががんばってるから……どんなふうになるのかなって……」

 

 

 ……これは手応えアリでは?

 

 その感情の種類や名前が分かっていないだけで、少しずつ良くなって来てるんじゃないか?

 

 チラと他の二人に視線を向けてみると同じことを思ったらしく、嬉しそうに微笑んでいた。やっぱりそうだよね!?

 

 

 

「それを人はワクワクさんと呼ぶのさ!」

「!?」

「有意義だったようね」

 

 

 うわびっくりした。校長先生とミッドナイト先生でしたか。校長先生物凄い勢いでチーズ齧ってますけど何かありました?

 

 何故ここに、という疑問もあるが校長先生も文化祭は楽しみらしい。お疲れみたいですしいるなら【ホイミ】使いましょうか? いる? じゃあ、どうぞ。

 

 

「んっ……♡……ケーサツからも色々ありましたからね」

「ちょっと香山くん……じゃ! 私は先に行ってるよ。文化祭、存分に楽しんでくれたまえ」

 

 

 ……? 警察? 何でだ?

 

 と思ったらミッドナイト先生が少しだけ教えてくれた。何でも警察庁長官が直々に出てきたのだとか。

 

 上としては敵が増長する可能性を考え、文化祭を自粛させるつもりでいたらしい。それに対し校長先生は真っ向から反対してくださったそうだ。

 

 その結果、セキュリティの更なる強化を行い、万が一警報が鳴ればそれが誤報であっても即座に中止し避難を行う……というのが文化祭を開く条件になった、と。

 

 

 ……大人には大人の事情があるんだろうが、敵活性化のきっかけを作ってしまったのはその上の人達だろうに。その皺寄せを何故俺達が受けなきゃならないんだよ。

 

 そんなんだから公安委員会とかも嫌いなんだよ。ああいう大人はいつも『仕方ないから』とか『そうするしかないから』で平気な顔して子供に色々押っ被せやがる。

 

 

「そうそう! A組の出し物職員室でも話題になってたわ。青春頑張ってね」

「はい!」

 

 

 っと、思考が変な方向に飛んでた。エリちゃんの前で考えることじゃないな。うん。

 

 てか職員室で話題になってるってマジですかミッドナイト先生。相澤先生が話した? いやそういう事する人じゃないだろうし……シンプルに興味をひいてるだけなんかな。

 

 

「レックスさんとデクさんは何するの?」

「僕たちはダンスと音楽! 僕は踊るんだ!」

「俺は音楽。楽器を弾いたり歌を歌ったりするよ」

 

 

 エリちゃんにも楽しんでもらえるように頑張らなきゃな。そろそろ爆豪あたりがキレてそうだし戻らないと。

 

 

「また来てね。今度は文化祭……俺達頑張るから」

「うん……!」

 

 

 さて、そうと決まればまた練習頑張らなきゃ。差し当たっては上鳴に禁断の【インテ】二度がけを……

 

 

 

 






森岸「いくらでも【魔法】使ってやっから頑張れ頑張れ。指ちぎれてもくっ付けてやるから安心しろ」
上鳴「コイツ爆豪より怖えんだけど!?」
耳郎「本人がそのくらいの勢いでやってたしねえ……」
上鳴「えっ」
森岸「本当にちぎれてはないぞ?」
上鳴「微塵も安心できねえわ!?」


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