魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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8.インスタント超人

 

 

 

 ヒーローとは、国から正式に認められたライセンスを手にして特別に個性の使用が許可された公務員。

 

 対するヴィランとは、個性を無許可で使用し犯罪行為をした者達を指す言葉。

 

 

「ヴィラン!? バカだろ!? ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホ過ぎるぞ!」

「同感だ……! それも寄りにも寄ってオールマイトがいる場所にピンポイントで来るとはな!」

 

 

 相澤は首に巻いた捕縛布の中からゴーグルを引き出し、突如現れたヴィラン達から目を離さない。

 

 何より相澤の目を引くのはリーダー格と思われる人物。先日のマスコミ侵入事件の際に森岸から提供された写真の中にいた男。

 

 

「アレを壊したのはアイツか……!」

「先生! 対侵入者用センサーは……」

「もちろんありますが……状況を見るに対策されていますね」

 

 

 ようやく合点がいった、とでもいう風に相澤は零す。明らかに何らかの個性でなければありえない壊れ方をしていた雄英バリアーだったが、その下手人は記者ではなくヴィランだった。

 

 

「13号に……イレイザーヘッド、ですか……厄介ですね」

「ハッ、どうでもいいだろ……どうせオールマイトより雑魚なんだからよ……」

 

 

 紙やすりで削られるような不快感。粘ついた殺意を隠そうともしない男の声はやけにはっきりと聞こえた気がした。

 

 黒いモヤのような身体のヴィランと、全身を無数の手に掴ませているヴィラン。残りを有象無象のチンピラとするならば、その二人こそが真にヴィラン足りうる悪意を滲ませている。

 

 

「よォヒーロー。社会のゴミ共」

「自己紹介か? 吠えるなクズ共」

「ははっ、それがヒーローの言葉遣いかよ? まあそんな事はどうだっていいんだ……俺達は──」

 

 

 

 

 

「オールマイトを殺しに来たんだからな」

 

 

 

 

「な───」

 

 

 

 ヴィランが──死柄木弔がそう告げた瞬間、黒いモヤが突如として生徒達の背後に現れた。

 

 避けろ、という相澤の指示が間に合うはずもなく。生徒達の半数以上が黒いモヤへと呑み込まれた。

 

 

 同時に死柄木弔の近くに立っていた黒い巨体が動き出す。脳を丸出しにしたような不気味な見た目のソレは他に目もくれずオールマイトへと殴りかかった。

 

 

「ぐっ……強いね! 君!」

「…………」

「黙りか!」

 

 

 咄嗟に殴り返すも、どうにも感触が鈍い。それに効いた様子も見られない。

 

 返事をする気もないらしい大男の無言のパンチを掴み、遠くへと放り投げる。この場で戦えば生徒達が危ないと判断したらしい。

 

 おそらく敵連合とやらの主力と思われる大男をオールマイトが請け負い、その場には死柄木弔と全身がモヤに包まれたヴィランが残された。

 

 

 悔恨を挟む余地もない。生徒を呑み込んだモヤが再び動き出したかと思えば収束していく。やがて黒いモヤが人の形を取り始めると、そこには全身の輪郭すら不確かな何者かが立っていた。

 

 

「初めまして……我々は(ヴィラン)連合……」

「そうか。黙ってろ」

「おっと……自己紹介する余地もありませんね……」

 

 

 敵連合。そう名乗ったヴィランへ捕縛布を伸ばすも、何も掴むことなくすり抜ける。

 

 そうしている間にもチンピラ崩れの連中がこちらに向かって来ている。相澤はともかく13号は戦闘向きとは言い難い。ヴィラン側の増援が来てしまえば苦しくなる。

 

 故に、相澤は決断した。多少のリスクを飲むべきだと。

 

 

 

「森岸! 俺に()寄越せ!」

「あ、はい! とりあえず全部ですね!」

「待て森岸普通の強化だけで──」

「……? 何を……」

 

 

 

 そして、この時点で敵連合に勝ち目は無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

「──がっ!?」

 

 

 余裕を見せていた死柄木弔の腹部に突き刺さる蹴り。一体どこから、なんて思考が間に合うはずもなく、あらゆる抵抗も叶わぬまま吹き飛ばされた。

 

 それとほぼ同時。ほんの一秒早く名も無きヴィラン達が崩れ落ち、黒いモヤのヴィランも殴り飛ばされていた。

 

 

「……これは、想像以上だな」

「何が、起きたっ……!?」

 

 

 まさかオールマイトがもうアレを片付けてきたのか、と顔を上げてみればそこに立っていたのはオールマイトなどではなかった。

 

 情報こそ得ていたけれど、特に脅威と認識していなかった教師のうちの一人でしかないはずの男。イレイザーヘッドが鋭い眼光を宿して睨みつけていた。

 

 

 森岸がイレイザーヘッドに使った【魔法】は普段から使っているものばかり。【バイキルト】に【ピオラ】、【スカラ】に【インテ】と基本的な能力を底上げする効果のみ。

 

 本当はこれに色々付け足すつもりだったが、当の本人から拒否されてしまった。お前はイレイザーヘッドをどうしたいんだ。

 

 なので、森岸はそれらの【魔法】を重ねがけ(・・・・)した。

 

 森岸の個性による強化は対象人物の元の能力を乗算の形で上乗せする。仮に一度の強化が二倍だったとして、それを二度……つまり今のイレイザーヘッドは通常の四倍の強さになっている。

 

 

「これでもオールマイトには遠く及ばないだろうが……まあ、どちらにせよお前達が捕まるのは同じだろう」

「っ……もう勝った気か!? そのオールマイトが手こずる脳無がいる!」

「アイツは脳無というのか。随分趣味の悪い名前だな」

 

 

 それでも所詮は一般ヒーロー。四倍したところでトップヒーローと同じだけの働きができるかと言われればNoだ。

 

 

 

 

 では、トップヒーローが四倍になったら(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

「ちょっとやり過ぎちゃったかな……?」

「は……?」

 

 

 先程大男を投げ飛ばした方角から脳無と呼ばれた者を引き摺りながら、怪我ひとつないオールマイトが姿を表した。

 

 彼の右手にはピクリとも動かない脳無が捕まれており、有り体に言うならばボッコボコに殴られたであろう満身創痍の状態と見て取れる。あの、死んでません? それ。

 

 

「それ生きてます?」

「多分……10回くらい殴ってようやく大人しくなったし」

「じっ……!? …………!!?」

 

 

 とうとうヴィランはどこから手をつければいいのか分からくなってしまった。今君の前にいるのはぐっすり寝て沢山食べて元気いっぱいのオールマイトだもんね。そりゃ怖い。

 

 

 これはオールマイトもイレイザーヘッドも知る由もない話だが、今しがたオールマイトがボロ雑巾になるまで叩きのめした大男は脳無と名付けられた改造人間である。

 

 とある人物によって対オールマイト用の個性として【ショック吸収】【超再生】を持たされていた。

 

 この組み合わせから分かる通り、脳無の役割は『真正面から殴り勝つ』事だった。

 

 そう、だった(・・・)。それはもう叶わない。

 

 オールマイトと同等に誂えたはずのパワーはどういうわけかオールマイトを下回っており、ならば自慢の耐久力はと殴ろうとすれば10発ちょっとであっさりとノックアウト。あっさり……あっさり?

 

 

 オールマイトからすれば拍子抜けもいいところ。自信満々で出てきて、見た目といい一言も喋らない態度といい初見の不気味さはどこへやら。今は白目を向いて引き摺られるがままである。

 

 

「おいどうなってんだ!? オールマイトは弱ってたんじゃないのか!? アイツ俺に嘘を……っ!? 不良品まで掴ませやがって!!」

「……どうやらお前のバックに誰かがいるらしいな? さっさと吐いてもらおうか」

 

 

 さしもの死柄木弔も動揺を隠せない。隠す気もないのかもしれない。

 

 雑魚だと思っていたイレイザーヘッドが強かった。虎の子の脳無もボロ雑巾にされた。平和の象徴は依然健在だった。

 最早彼にできることは壊れたラジオのように「聞いてた話と違う」と「騙しやがったな」と繰り返すことだけ。

 

 これ以上子供の癇癪のような悪意に付き合う理由もない。イレイザーヘッドは捕縛布に手をかけ、慣れた手つきで死柄木弔へと放り投げた。

 

 

「死柄木弔!」

「っ、黒いモヤの……まだ意識があったか」

「黒霧……!」

 

 

 捕縛布が死柄木弔を捕える直前。間に割り込んだ黒いモヤ──黒霧によって阻まれる。捕縛布は先程同様にスルリと抜けてしまい、死柄木弔も黒霧も捕まえられずに終わった。

 

 警戒するオールマイトとイレイザーヘッドに対し、黒霧は至って冷静に死柄木弔へと語りかける。

 

 

「ここは退きましょう……何も成せぬまま終わるわけにもいかないでしょう?」

「っ……次は殺すぞ、オールマイトォ!!」

「待て!」

 

 

 咄嗟にイレイザーヘッドが【抹消】を試みるも、間に合わない。広がりきったモヤはどこまでが身体なのかも分からず、鎮まる気配はなかった。

 

 やがてモヤが収束し消え去った時には、もう誰も残ってはいなかった。

 

 

「……逃げられたか」

「先輩! 何か凄かったですね!?」

「13号君! 生徒達は!?」

「無事……とはまだ言えませんが、少なくとも全員USJ内にいるみたいです! カメラが復旧したのでそちらで確認しました!」

 

 

 ヴィランの最高戦力と指揮官らしき人物は撃退した。しかしまだやるべき事が残っている。

 

 黒いモヤに呑まれなかった生徒達は13号の引率で避難させ、各エリアへと散らされてしまった生徒達を救出しなければならない。

 

 こういう時こそ人手が欲しくなるのだがどれだけ早く見積もっても援軍の到着に数分はかかる。その間に生徒が皆無事である保証はない。

 

 

 やむを得ない。そう判断した相澤は再び森岸に声をかけた。

 

 

「……! おい、森岸!」

「今度は何です!?」

「お前、何人まで配れる(・・・・・・・)!?」

「え……さあ?」

「分からないのか?」

「一番多い時、中学の同級生に頼んで50人くらいにやってみたことがあるんですけど特に限界とかなかったんで……」

「………………残った生徒達にも強化をかけて一番近くの暴風ゾーンの救出に向かってくれ! 一箇所でいい、他は俺とオールマイトさんでやる!」

 

 

 ギリギリ緊急事態だったから耐えられた。緊急事態じゃなかったら寝袋に包まって不貞寝してた。何はともあれ解決策が出てきたのはいい事だ。いいことのはずだ。

 

 ともかく、入り口から最も近いエリアに飛ばされた常闇と口田の救出のみを任せ、オールマイトとイレイザーヘッドは『ボッ!!』と爆発の如き足音を響かせて駆け出して行った。

 

 

 

「相澤君何か速くない!?」

「今更ですか……!? というか貴方も森岸から強化もらったはずでしょう?」

「確か【バイキルト】? ってやつを二回もらったよ」

「……それだけですか?」

 

 

 それ以外は素かよ。

 

 

 






 Q.森岸以外の生徒何してたん?
 A.USJから避難しようとしたけど、大暴れする相澤とオールマイトを見てあの二人の目が届く所にいた方が安全では? と判断して留まってました。決して書くのが面倒だったわけではない。ないったらない。

 Q.強化された相澤先生ってどのくらい強いの?
 A.スピード以外はミルコ以上。スピードだけ負ける。

 Q.オールマイト強くね?
 A.【OFA】が残り火なのは変わってないが、身体が万全になったお陰で余裕ができたので避けながら一方的にタコ殴りにしていた。避けなかったらもっと少ない攻撃数で終わってた。

 Q.これオールマイト更に強化したら全盛期クラスになる?
 A.かける強化によっては超える。


相澤「絶対するなよ」
森岸「何が!?」
相澤「フリじゃないからな。絶対にするなよ」
森岸「だから何が!?」

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