魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.索敵能力持ち超パワーなんておらんやろ!
 A.前作オリ主「せやな」

 Q.これジェントルヤバいのでは?
 A.ヤバい。






80.デクVSジェントル

 

 

 

 文化祭当日──AM8:30

 

 

「コンビニに売ってると思ってたけど……意外と置いてないとこもあるんだな。時間くっちゃった……急がなきゃ!」

 

 

 森岸から【ピオラ】をかけてもらい、朝練中に発目からサポートアイテムを受け取った緑谷は目的の物を買い終えて戻ろうとしていた。

 

 【ピオラ】があるからと調子に乗って長く練習し過ぎた事もあり時間にそこまで余裕はない。早いところ戻って確認や準備を済ませておかなければ、と駆け足中。

 

 空き地の前を通り抜けようとして──

 

 

「おっと! 気をつけたまえよ」

「あっ……すみません!」

 

 

 ──如何にも怪しい着込みまくった男女の二人組みとぶつかりそうになった。

 

 すっかり秋になったとはいえ流石に異常な着込み具合。派手に襟を立たせた服の上から更にトレンチコートを着込み、手袋にマスクにサングラス、帽子と少しでも肌を見せまいとする格好だ。

 

 とはいえここは総人口の約八割が何かしらの異能を持つ世界。緑谷は少しだけ気にしつつも特に何かしたわけでもない通りすがりを警戒することはなく、普通に謝っていた。

 

 

(ビックリしたあああああ!!)ゴールドティップスインペリアルの余韻が損なわれるところだったじゃあないか」

「ゴールド……」

 

 

 ちなみに言うまでもなく厚着した不審者はジェントル・クリミナルとラブラバ。完璧な侵入計画が通りすがりの少年との衝突で台無しになりかけて心臓バックバクである。

 

 人との接触をなるべく避けたいジェントルとしてはこれ以上関わりたくない。そそくさとラブラバの背を押すようにその場を立ち去ろうとしていたが、緑谷の一言に思わず足を止めた。

 

 

「あの家喫茶店かなんかなのかな……わかんないな……」

「!?」

 

 

 ゴールドティップスインペリアル。それが何なのかを知らなければ喫茶店という言葉は出てこない。まさか同好の士かと思い、立ち止まるどころか盛大に振り返ってしまっていた。

 

 ラブラバがギョッとしながら停めようとするがもう遅い。こだわりのある人間というものは話が分かる人間を見つけると話したくなってしまうものだ。

 

 

「君、わかる人間かね!? 幼いのに素晴らしい!」

「あ、あの……僕はそんなに……友達が淹れてくれたから知ってただけ、で……」

「ほほう、そんな高貴な友、が……」

 

 

 故に、お互い気づいた。気づいて、しまった。

 

 

 幻の紅茶ともされる銘柄をよく知る高貴な友……即ちエリート学生。目の前の少年の見た目からして高校生。この近辺で有名なエリート校などひとつしかない。

 

 聞き覚えのある声。やけに紅茶に詳しくこだわりを見せる男。つい先日誤タップした動画が頭を過ぎる。仕事の大きさによってブランドを選ぶ義賊気取りの敵。

 

 

「ルーティーン……って、やつですか……?」

「……ラブラバ。カメラを回せ」

 

 

 分かってしまった以上、緑谷に無視という選択肢はなかった。ジェントルから誤魔化すという手段は消え失せた。

 

 束の間の和やかな空気はとうに書き換えられた。張り詰めた緊張感が漂う、開戦秒読みへと。

 

 

雄英(うち)に手ェ出すな……!」

「察しの良い少年だ……ラブラバ!! 予定変更だ!! これより、何があろうともカメラを止めるな!」

「もちろんよジェントル!」

 

 

 外套に手をかけ、円を描くような軌道で腕を振り抜き脱ぎ捨てる。その下から現れたのは動画で見た姿……敵、ジェントル・クリミナルの姿がそこにあった。

 

 

諸君(リスナー)!! これより始まる怪傑浪漫!! 目眩からず見届けよ!! 私は救世たる義賊の紳士ジェントル・クリミナル!!」

「……!」

「手短に行こう! 今回は『雄英!! 入ってみた!!』

「俗っぽ!! そんな事、させない───!?」

 

 

 茶番に付き合う必要はない。先手必勝とばかりに【フルカウル】を発動し殴りかかり──透明な膜のようなものに阻まれた。

 

 まるで強靭なラップ。痛みはないものの弾力のある透明な壁に阻まれ、ジェントルまで1メートルもないところで止められてしまう。

 

 

「外套脱衣のついでに張らせて(・・・・)もらった。リスナーなら承知のはずだが?」

「───!」

「私の個性は弾性(エラスティシティ)! 触れた物に【弾性】を付与する……たとえそれが空気だろうと!」

 

 

 引っ張った輪ゴムが元に戻るように、透明な空気の壁が戻っていく。【フルカウル】に【ピオラ】を上乗せしたパワーとスピードによる突撃が全て跳ね返る。

 

 

【ジェントリーリバウンド】……暴力的解決は好みじゃない……んだけど何その威力……?」

 

 

 それはジェントルにとっても想定外。【弾性】を付与された空気の壁は緑谷の身体を30メートル程吹っ飛ばした。砲弾かな?

 

 ジェントルとしては跳ね返して転ばせるくらいを想定していたのだが、まさか弾丸のようにカッ飛んでいくとは思ってもみなかった。これにはラブラバもドン引きである。

 

 だがそれは裏を返せば緑谷にそれだけのパワーとスピードがあるということ。背筋を冷たいものが伝い、ジェントルとラブラバは一目散に駆け出した。

 

 

「見かけによらず恐ろしい! 申し訳ない少年! 私は征く!」

「っ、謝るなら学校に手を出さないでよ!」

「そいつはできぬ相談! 【ジェントリートランポリ──……!?」

 

 

 しかし起き上がってくる。そう予想していたジェントルは逃げるふりを見せて地面に【弾性】を付与。空中に飛ばして身動きの取れないうちに今度こそ逃げようとした。

 

 が、遅い。

 

 立ち上がった緑谷は既に目の前まで迫っていた。

 

 

「デトロイト……!」

「速───!?」

「スマッシュ!!」

 

 

 【ワン・フォー・オール:フルカウル】の30%に【ピオラ】のスピード強化。並大抵どころかヒーローの上澄みでなければ防御さえ間に合わない。

 

 今度はジェントルが吹き飛ばされる番。振りかぶられた拳がジェントルの左頬を真っ直ぐに打ち抜き、10メートルほど先のコンクリートにゴロゴロと不格好に転がった。

 

 

「ぐ、おおおお!?」

「ジェントルー!?」

 

 

 何と皮肉だろうか。【弾性】を与えてあらゆるものを跳ねさせていたジェントルが吹き飛ばされ、地面を跳ねさせられている。

 

 顔への打撃とコンクリートでの不時着による鈍い痛みがジェントルを襲う。そして彼に無理やりに理解させた。

 

 

「ぐ……あの少年……これまで戦ってきたどのヒーローよりも強いか……!?」

「嘘!? 彼まだ子供よジェントル!」

「強さに年齢は無意味だラブラバ! 出し惜しみしているとまずいか……!?」

 

 

 アレは、今までと違う。自分が交戦してきたどのプロヒーローと比べてもアレが一番強い。

 

 スピードもパワーも圧倒的に自分を上回っている。逃げるにしても戦うにしても成功する光景が想像できない程の差が存在している。

 

 

「デラウェア・スマッシュ【エアフォース】!!」

「のわっ!? 空気砲!?」

「マンチェスター!!」

「く……!?」

 

 

 発目謹製のサポートアイテムによる補助で安定した風圧攻撃が放たれる。何かが来る、と粟立った背筋に従って横っ飛びしなければ悶絶していただろう。

 

 体勢が崩れた瞬間に緑谷が踏み込む。跳躍しながら接近し、かかと落としが振り抜かれる。辛うじて、ほんの数センチをジェントルが必死で避けた。

 

 

「怖いな君!? 頭かち割る気でやっただろう!?」

「大丈夫です! 死んでなければ治せる友達がいるので!」

「雄英はどんな教育をしてるんだね!?」

 

 

 勿論加減はしていたのであたったところで致命傷にはならないはず。多分。だが自分の顔の数センチ先を振り抜かれた靴を見れば誰だってゾッとする。

 

 やはり真っ向勝負をしてはいけない。そう判断したジェントルは逃げの一手を選んだ。

 

 

「っ、待て!」

「……! ジェントル、私思い出したわ! あの子緑谷出久くんよ。体育祭で手を壊しながら戦っていたクレイジーボーイだわ!」

「狂気! 本当に雄英は何を教えている!?」

 

 

 跳躍し、空気のトランポリンを生み出しながらの連続跳躍。空を跳ね回るように逃げながらラブラバは緑谷の正体を思い出していた。

 

 しかしラブラバが記憶する限りではもっと拙い戦い方をしていたはず。個性の反動なのか指をバキバキにへし折りながら衝撃波を放っていた。

 

 体育祭の様子を見れば分かる。アレは諦める気は毛頭ない。

 

 

「ジェントル……使いましょう。私の個性(・・・・)

「……できれば君の個性は退却の時まで取っておきたいが」

「でもでも、このままじゃ失敗濃厚……っ!?」

 

 

 追いつかれるまでに何か策を立てなければ、と思った時には遅かった。

 

 ジェントルとは違う一度の跳躍。一直線にジェントル目掛けて飛んできた緑谷出久がラブラバの視界に映っていた。

 

 

「ジェントル!」

「ぬうっ……!?」

「行かせるもんか!」

 

 

 殴るのではなく掴みかかる。風に揺れるコートを掴み、それ以上の跳躍を許さない。

 

 揉み合いになりながらもスピードは揺らがない。最後の跳躍と緑谷の衝突で加速しながら落下し、雄英近くの森へと到達する。

 

 

「ぐおっ……!」

「っ、もう諦めろ! 抵抗しないでくれ……!」

 

 

 力比べになれば勝ち目はない。ゴロゴロと転がることもなく、両腕を抑えられたまま地面へと捩じ伏せられるジェントル。

 

 ラブラバも同様。二人纏めて緑谷に組み伏せられ、ピクリとも動けなくされた。

 

 

 だが、口が動けばそれで十分だった。

 

 

「警察に引渡します。これからすぐに──」

 

「───愛してるわ」

「───ありがとう。ラブラバ」

 

 

 ラブラバがそう告げた瞬間、ジェントルの力が跳ね上がった。押さえ込んでいた腕が無理やり持ち上げられていく。

 

 

「何だ……!? 急に力が……」

「悪いな、 少年」

 

 

 ラブラバの個性【愛】。それは愛を囁くことで最も愛する者一人だけを短時間パワーアップさせられるという能力。

 

 愛が深まれば深まるほど与えられるパワーも大きくなるそれは、己の人生すらかけたラブラバの愛によって最大限の効果を発揮され、その倍率は何十倍にもなっていた。

 

 

「こういうところはいつもカットしているんだ」

「な……!」

 

 

 緑谷出久を跳ね除けてラブラバを助け出す余裕すらあるパワーとスピード。目の前の敵がこの瞬間に更なる脅威へと変じた事を理解させられた。

 

 名を【ラバーモード】。一日に一度しか使えない短時間のパワーアップ。緑谷との間にあった膨大な差を埋めるだけの変化。

 

 

 ……そう、あくまで差を埋めるだけ。上回るには至らない。

 

 

「ありえんぞ少年……!!」

「っ……!」

「最終手段だぞ……いつもこれで、この【ラバーモード】で切り抜けてきたのだぞ!?」

 

 

 これまで何人ものプロヒーローを返り討ちにしてきた切り札であっても緑谷出久を上回れない。

 

 空気の膜を幾層にも重ねて捩じ伏せようとするが、捕らえられない。強化されたジェントルでさえ緑谷のスピードに追いつけない。

 

 後ろに跳び退いた緑谷が木を蹴って加速する。まるでジェントルがそうしていたように、木を蹴りスーパーボールのように跳ね回る。

 

 

「セントルイス……!」

「させな───!?」

 

 

 くる。緑谷の声がした方へと反射的に拳を向けたジェントルの目が驚愕に見開かれた。

 

 いない。振り返った時にはもうそこにいなかった。

 

 

「スマッシュ!」

「ぐおおおおっ!!?」

「ジェントル!?」

 

 

 反応することさえできない速度で真一文字の蹴りがジェントルの腹へと叩き込まれた。

 

 

 






森岸「使わないとは思うけど【フルカウル】まで使うと滅茶苦茶速くなるから気をつけろよ。ミルコさんとか制御できなくて壁に激突してたし」
緑谷「……ちょっと試していい?」
森岸「いいよ」

 ──この後滅茶苦茶治療してもらった。

緑谷「……狭い室内でやる事じゃないね」
森岸「そうだよ?」



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