Q.前作オリ主って?
A.要約すると『ワープと探知能力を併せ持ったオールマイトみたいな奴』です。
Q.ソイツと森岸どっちが強い?
A.文化祭時点だと引き分け。ソイツは森岸を倒しきれないし、森岸はソイツに攻撃が届くか怪しい。【アタカンタ】が決まればワンチャンあるくらい。
Q.緑谷は強化使いこなせるの?
A.【ピオラ】は一回分が限界。二回目になると開けた地形じゃないとキツい。
──夢はヒーローになって、教科書に載るくらいの偉大な男になることです。
何十年と前の事が脳裏を過ぎる。これが走馬灯というヤツだろうか。だとしたらあまりにも意地悪な走馬灯だ。わざわざ忘れるはずもない光景を思い出させるとは。
蹴り飛ばされた先を読んでいたように少年が足を振り上げている。咄嗟に【ジェントリーリバウンド】を張った……が、それすら読まれていたのかかかと落としは私には振り下ろされなかった。
私のすぐ真横。何も無い地面へと叩きつけられた超パワーが大地を砕き、土や草を巻き上げて余波と共に私の身体へと殺到する。
「頼むから……止まってくれよ!!」
「っぐ……この夢は最早私一人のものではない! 止めろと言われて止められる程軽くはない!!」
ああ、この少年は優しい。優しすぎる。そのパワーとスピードがあれば私とラブラバを黙らせる事など容易いだろうに、説得を諦めていない。
同時に怒りも感じる。当然だろう。自分達の学校に侵入しようとしている敵だ。なのに怒りに任せて私達を打倒しようとはしない。
──決してレベルの高くない我が校で落第点を取り続け留年……
──今回の仮免四回目も落ちた。
──正直こちらも自主退学を勧める他ない。
走馬灯……ではないのかもしれない。だとしたら何故今思い出しているのか。夢に見ては魘された過去を、何故。
跳ね起きる。既に次の攻撃が構えられていた。あの構えは空気砲……ならば今度こそ【ジェントリーリバウンド】で跳ね返せる。
真っ向から受け止めるように空気に【弾性】を付与し、反射を狙い──上空に残っていた【弾性】から跳ね返った空気砲が真上から私を叩いた。
まさか私が使っていた【ジェントリートランポリン】の位置を覚えていた? そうでなければあんなにも鮮やかに跳弾で私を狙えるはずがない。
「がっ……!?」
「何で……そこまでわかってて何で文化祭だ!! 何で雄英の想いを踏みにじれるんだ!!」
「それはもう、そういうもんだろう!!」
──私の個性ならクッションになると……そう判断したんです!
──落下した男性は全治六ヶ月の大怪我。結果として君はヒーローの救助を妨害した。
そういうものだ。そうであるはずだ。だからこそ夢に見切りをつけなければならなくなったあの時、あんなにも苦しかったんだ。
私でもヒーローになれるかもしれないと飛び出し、ただ邪魔になっただけだと切り捨てられた。公務執行妨害と罪すら背負った。
両親には泣かれ、怒られ、追い出された。学校もやめてただのフリーターとして生きていた。
「夢の為ならっ! 人の頑張りも!! そこに懸ける情熱も!! 笑い方を知らない女の子の笑顔も!! 奪えるのか!!」
「それが夢を叶えるという事だ!!」
夢などもう忘れていた。想いを馳せる余裕など──……
──あー……えーっと……誰でしたっけ……?
いや、まだだ。このまま貧しく哀れに老いていくだけなど受け入れられない。認めたくない。
「芯がないと嘲笑うがいい!! それでも結構!! 私は──」
「笑わないよ……ジェントル・クリミナル……!!」
最初から勝ち目などなかった。
ラブラバの【愛】はこれまで以上。出せる全力はとうに出している。相手が少年でなければ万能感に浸っていたかもしれない程の力が漲っている。
だが、押し返せない。手と手の押し合いで押し込むことができない。スピードを封じて尚、パワーですら私が上回ることができない。
「君は……何の為に、ヒーローを志す!!」
「っ〜! 同じだジェントル……!」
「僕だけの夢じゃない! 身の丈に合わない夢を! 心の底で諦めてしまってた夢を! 笑わないでくれた! 認めてくれた皆に応えたい!」
「辛い思いをしてきた人に明るい未来を示せる人間になりたい!!」
……そうだな、同じだ。
掴まれていた腕を起点に転がされるように投げられる。地面に【弾性】を付与する余裕さえない。
地面を抉り土に塗れて転がった先で立ち上がろうとして……手に力が入らない。どうにか起こされた身体も震えている。
元々私はそこまで打たれ強いわけではない。少年に何度も攻撃を叩き込まれてしまえばこんなものだ。
「ジェントル……?」
「…………私の負けだ」
ああ、ダメだ。身体から力が抜けていく。不甲斐ない私を許してくれラブラバ。私はもう戦えない。少年に勝つ術がない。
何より……少年になら負けてもいいと思ってしまった。ラブラバ、君のことを差し置いてだ。
「……これまで戦ってきた誰より、戦い辛かったよジェントル」
「嫌……やめてよ……邪魔しないでよ! ジェントルを捕まえないで!!」
ラブラバ……すまない。
「雄英。自首がしたい」
◇
緑谷とジェントルが森で交戦を再開した頃。雄英ではエクトプラズムにとある連絡が入っていた。
『こちら……グルルルドッグ! 現在C-16地点。E-4へ向かう。【分身】4、5人借りますヴヴ』
「了解。緊急カ?」
『そいつを確かめます……匂う……三人……』
警備を担当しているハウンドドッグからだった。
周辺の散歩コースから外れた森の近くに三人分の匂いを感じ取り、確認の為そこに向かう際にエクトプラズムの【分身】を借りていた。
ハウンドドッグの鼻が嗅ぎとった匂いによると激しく発汗した興奮状態。単なる迷子か怪我人か。或いは──……
『愚者か』
「……総員警戒態勢ヲ」
──
そう取り決めた上でハウンドドッグとエクトプラズムの【分身】が四人、ジェントルと緑谷の元へと駆けつけていた。
「……自首?」
「見タコトアルナ」
「逃ゲ足ダケハハヤイ敵。猪口才ナ動画投稿者ダ」
そこにいたのはボロボロになったジェントル・クリミナルとほぼ無傷のラブラバ、そして少し服が汚れているだけの緑谷出久。
ジェントルの胸ぐらと腕を掴み無理やりに立たせ、他に仲間はいないかと尋ねる。
「いない」
「その傷と抉れた地面は何だ」
「躓き転倒した……」
「…………そうか」
チラと視線を緑谷へと向ける。
同時に緑谷も理解した。ジェントルが何をしようとしているのか、どうして欲しいのか。
「……雄英にイタズラしようとしてるのがわかって、少し揉めました」
「戦ってはいないと?」
「はい……もう、大丈夫です」
嘘だ。ハウンドドッグの鼻と直感が嘘だと告げていた。それだけのはずがない。間違いなく戦っていたはずだ。
だが、そういう事なのだろう。ハウンドドッグは青筋を浮かべ眉間に皺を寄せながら黙っていた。
重苦しい空気の中、エクトプラズムの【分身】に通信が入った。声の主はスナイプ。雄英の教師でありプロヒーロー。
『報告をお願いします』
「…………傍迷惑な動画投稿者の出頭希望」
『何だそりゃ』
「俺も分かりません。とりあえず現時点で緊急性はない」
色々と言いたいことはある。本当ならばこの場で緑谷を叱りつけて敵を酷く罵ってやりたいという気持ちもある。
だがそうはしなかった。この場に雄英に害をなそうとした敵はおらず、緑谷出久にも何の危害も加えなかった。そういうことにしておいた。
引き続き警戒を続けると告げて通信を切ると、ハウンドドッグとエクトプラズムの【分身】達はジェントルとラブラバを連れていく。
「緑谷出久くん」
「!」
「私もかつてはヒーロー科にいた……ジェントル・クリミナルはヒーロー落伍者の成れの果てだ」
「…………」
「とても言えた義理ではないが……君の想い、届くといいな」
それだけを伝えるとジェントル・クリミナルは大人しく連行されて行った。何の抵抗もなく、肩の力が抜けた様子で。
「時間ハ大丈夫カ? A組ハ10時カラダロウ」
「あ、買い出しの品置きっぱなしにしてました……」
「ナント。マア今ハ8時50分……余裕ハアル。一緒ニ行コウ」
こうして誰にも知られない戦いは幕を下ろした。
だがまだ終わっていない。これは始まりですらない。
まだ本来の幕は上がっていないのだから。
◇
AM9:05──緑谷が帰還した。
「あ、帰ってきた」
「少し遅かったけどなんかあったのか?」
「ごめん! 中々見当たらなくて探し回ってたら遅くなっちゃった!」
ジェントルとの戦いはなかったことになっている為話すわけにもいかず誤魔化すしかなかった。
幸い買い物袋の回収の際にはエクトプラズムが許可を出したことで【フルカウル】と【ピオラ】によって二分と経たずに回収し戻ってくる事ができていた。
それもあって『思ったより時間かかったな』程度にしか思われなかったのかそれ以上何かを言及されることはなかった。
しかしやけに疲れてたり汚れてたりするのは何なんだとツッコまれてしまうと少し答えに困った。
「こんな日まで朝練してたらそうもなるだろ。ほれ【ベホイミ】」
「ありがとう!」
「んで、今から全体の流れの確認だけすっから早よ着替えてこい。何と戦ってきたのかは知らんが」
何より困った……というか驚いたのは森岸に看破されたこと。緑谷はギョッと目を見開いてアタフタし始めた。
「っ……!!? 何っ……で……!?」
「朝練と買い出しだけでそんな怪我しないだろ普通……詳しくは聞かないからさっさと準備してこい」
「う、うん……」
どうやら【ベホイミ】を使った際にジェントルの【ジェントリーリバウンド】で負ったダメージを見透かされていたらしい。冷や汗をかきながら慌ててダンス隊の衣装に着替えた。
本当なら始まる前にエリちゃんと会っておきたかった緑谷だったが、どうやら既に一度来た後らしい。
「『踊らないの?』って心配してたからな。後で謝っとけ」
「う……そうだね……」
「さあ! もうすぐ僕らの番だ! 頑張ろう!!」
そして間もなくA組の番が来る。
「さて……どうかな」
「レックスさん……デクさん……」
幕が上がる数分前。エリちゃんの保護役としてエリちゃんを抱えた相澤はポツリと零した。
エリちゃんがいる手前口には出さないが、この観客の中には最近の雄英に対する不平不満をA組に向けている者がいる。
相澤に言わせればその不平不満は正当なものだが、A組だって被害者なのだ。向ける先を間違えているだろうとしか思えない。
だがそれは大人の意見。この場にいない敵よりも身近にいるA組に矛先を向けてしまうのも未熟な子供ならば多少は仕方ないのかもしれない。
そうした者達は楽しもうなんて気はないだろう。品定めのつもりか、或いはそもそも最初から扱き下ろすつもりでいるか。
「……まあ、それも
「?」
どの道自分にできることは何もない。相澤は幕が上がるのを、そして幕が下りるまでを見届けるだけだ。
心配そうにしているエリちゃんの頭を撫でながら相澤はステージを見つめていた。
「いくぞコラァア!!」
"雄英全員音で殺る"をスローガンに、A組のステージが始まった。
ジェントル「君ちょっと強すぎない?」
ラブラバ「【ラバーモード】使ったのに何でよ!」
緑谷「身体能力が跳ね上がる相手に慣れてるので……」
ジェントル「そんなのいるの?」
緑谷「他の人も強化できるんですよその人」
ラブラバ「……私の上位互換?」
緑谷「…………まあ、はい」
ジェントル「雄英怖い!」
ラブラバ「どうなってるの雄英……!?」