遅刻した上に短くなってもうた。許してヒヤシンス。
Q.森岸と耳郎とエリちゃんって他の人達からはどんな風に見えてたの?
A.何人かすれ違いざまに二度見していた。どう思われていたかはご想像におまかせします。
Q.何でクソデカクレープ渡したの?
A.ファンだった。ついでにヒーロー科の友人から相澤の食生活がカスであると聞いていたので美味しいものを沢山食べて欲しかった。
Q.食べきれたの?
A.3割くらいプレゼントマイクにも食べさせてた。
「雄英で預かることになった」
「近い内にまた会えるどころか!!」
11月も下旬に差しかかる頃、ハイツアライアンスには再びエリちゃんが訪れていた。ついでにエリちゃんの様子が気になっていた雄英ビッグ3も来ている。
文化祭で別れを惜しんでいたのがつい昨日のことのように思い出せるのに、まさかこんなにも早く再会できるとは思わず緑谷は驚きの声を上げた。
インターンで関わっていた森岸や切島、麗日に梅雨ちゃんも再会を喜んでいる。しかし何故雄英で? という疑問もある。
相澤は少し考えた後、ビッグ3にエリちゃんを任せて五人を外に連れ出して説明を始めた。
「……エリちゃんは親に捨てられたそうだ」
「えっ!?」
「血縁にあたる八斎會組長も長い間意識不明のままらしくて、現状寄る辺がない」
死穢八斎會の一件が終わった後、改めて地下空間の調査に入ったところ厳重に隠された部屋の中に管に繋がれた組長が眠っていたという。
オーバーホールに何かされていたらしく、そう簡単には目覚めないだろうと診察を担当した者は語った。
なら森岸に治してもらえばいいのでは? という意見も上がったが、そこに公安が待ったをかけた。
「『ヒーローや市民ならともかく、指定敵団体にまで使わせるのは不安が残る』って事だそうだ」
「そんな……」
「それにその組長が
そしてもう一つ。エリちゃんを預かることになったのは彼女の個性が原因だと相澤は語った。
エリちゃんの【巻き戻し】は本人が制御できないこともありかなり危険な個性になってしまっている。
その【巻き戻し】の放出口となっているのが彼女の額にある角なのだが、その角が再び伸び始めているという。
【巻き戻し】は暴走し続けると人一人を跡形もなく消し去ってしまえる能力。一度は森岸の【ベホマ】で縮んだものの、また伸び始めたということは暴走する可能性が出てきたということだ。
「万が一の時は相澤先生の【抹消】を……って事ですか?」
「ああ。あと森岸の【ベホマ】もな。何かあった時に対応できる個性を持った人間がいる雄英で、となった」
普段は教師寮の空き部屋で過ごしてもらい、様子を見て個性との付き合い方を模索していくという。幸い設備も整っているため検証等、養護施設では難しいことも可能だろう。
もし何かあったら面識のある五人に頼ることもあるかもしれない。相澤はそこまで話すとエリちゃんの元に戻り、しばらくの間は雄英ビッグ3に任せると伝えていた。
◇
「へっちょい!」
「うおっ、びっくりした」
「風邪? 大丈夫?」
「いや……息災! 我が粘膜が仕事をしたまで」
エリちゃんを預かるというサプライズニュースがあった日の夕方。一階の共有スペースにはA組のメンバーが全員待機していた。
エリちゃんを連れていった相澤から来賓があると言われての事だが、気温が下がり始めたせいか常闇がくしゃみをしたりしている。本人は独特な表現で風邪を否定している。
「噂されてんじゃね? 八百万がCM出てファンついたみたいに」
「常闇くんはとっくにおるんやない? だってあのホークスのとこインターン行っとったんやし」
「……いいやないだろうな。あそこははやすぎるから」
常闇は思い出す。始めてインターンに行った日の事を。
元々空を飛べる者と飛べない者では機動力に大きな差が出るものだが、ホークスは別格。仮に自分が飛べたとしても追いつけないだろうと思わされる程に。
ホークスのサイドキック同様、ホークスが活躍した後始末をして回るばかりで追いかけることさえ難しかった。
そんな活動しかできていないのに噂される程のファンはいないだろうと常闇は語った。
そんな風に雑談をしていると、入口の方からコンコンとノックの音が響いた。
「あ! 来たぞ皆! お出迎えだ!!」
「煌めく眼でロックオン!」
「猫の手手助けやって来る!」
「どこからともなくやってくる」
「キュートにキャットにスティンガー!」
「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」」」
ジャーン! と効果音が聞こえてきそうな決めポーズを取りながら、オフのプッシーキャッツ達が現れた。
「プッシーキャッツ! お久しぶりです!」
「元気そうねキティ達!」
合宿以来の再会を喜びながらA組が彼女達を出迎えた。一人厳つい肩幅の虎がお土産の『にくきゅうまんじゅう』を手渡しつつ、申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にした。
あの時は自分達プロヒーローが守ってやらねばならなかったのに、ずっと後手後手に回って酷い目に合わせてしまった、と。
特に唯一攫われてしまった森岸。他の生徒やラグドールを守ってもらった挙句にその当人だけが攫われてしまうなどヒーローとして詫びのしようもない大失態だ。
「大丈夫ですよ。特に何事もなく終わりましたし」
「いやあれは明確に我らの落ち度だ」
「本当にねー……アチキなんか助けるどころか助けてもらっちゃったし」
もっともその森岸は特に気にした様子はない。あの時攫われてしまったのは『数発なら食らっても倒れない』と驕っていた自分が悪いと思っている。
プッシーキャッツからすればそれも含めてプロの責任なのだが、本人からそこまで言われてしまえば後は自省するしかない。お詫びの品としてもう一箱『にくきゅうまんじゅう』を取り出して森岸へと渡していた。
それからもう一人、プッシーキャッツの後ろに立っていたのは出水洸汰。やけにマセていたヒーローを毛嫌いしていた少年だ。
あの時は"血狂い"マスキュラーに襲われていた所を緑谷に助けてもらい、それ以来緑谷に懐いている様子。
手紙を送ったり緑谷と同じ赤色の靴を履いて来たりと微笑ましいくらいにファンになっている。あら可愛い。
その間に砂藤がお茶を淹れて来たり麗日が【無重力】を使って障子がソファと机を運んできたりとしていたが、ふと気になったことを口にした。
「しかしまた何で雄英に?」
「少し前に復帰したでしょ? 本当ならその時にご挨拶に来ようと思ってたんだけれど……文化祭の準備があるだろうから忙しいかもと思ってこんなタイミングになってしまったの」
合宿の一件から神野までの一連の出来事が終わった後、プッシーキャッツはしばらくの間活動を自粛していた。
極小数の意見ではあるがやはり合宿襲撃を許してしまった事への批判だったり、またそうした声が大きくなることを防ぐ意味合いでもしばらくは大人しくしておけとヒーロー公安委員会から通達されていたのだとか。
それから復帰したのは10月半ばのこと。人々の記憶からある程度薄れたと判断されプッシーキャッツはヒーローとして復帰していた。
「それにね、今度発表されるんだけどヒーロービルボードチャートJPの下半期……私達179位だったんだ」
「え、前回は32位じゃ……」
「なるほど急落したからか!! ファイトっす!」
ヒーロービルボードチャートとは。事件解決数や社会貢献度、国民の支持率などを集計し毎年二回発表される現役ヒーロー番付のことだ。
上位に名を刻んだ者ほど人々に笑顔と平和を齎したヒーローということであり、ヒーロー飽和社会ということもあってまさに戦国時代のような様相となっていた。
それでも最上位層……特にトップ100辺りの顔ぶれはほとんど変わることはなく、プッシーキャッツもその中に含まれていた。
それが100位よりも下に落ちた。その為張り切っているんだなと切島が納得しているとラグドールはそれを否定した。
「違うにゃん! 全く活動してなかったにも拘わらずまだ100位代ってどゆことって事!!」
「我々は支持率の項目が突出していた」
「待ってくれてる人がいるって事」
「立ち止まってなんかいられにゃい!」
これまでの功績もあってか人々はまだ自分達に期待してくれている。それが分かって大人しくしていられるほど彼女達は薄情ではなかった。
ここに来たのはそういう事。決意表明も含め、一度雄英に挨拶に来たらしい。
それでふと皆ある事を思い出した。
「ビルボード……そういえばまだ下半期発表されてなかったもんね」
「色々あったからなあ」
「オールマイトがいないビルボードチャート、どうなってるんだろうな」
平和の象徴は去り、新たな時代が来ることを。
ラグドール「何かあったらいつでも力になるにゃん」
マンダレイ「というわけで私達の連絡先あげとくね」
虎「こっちがプッシーキャッツ全体の、こっちが個別の方だ。覚えておいてくれ」
ピクシーボブ「有望株だからね! ツバつけとかないと!」
森岸「あ、俺予約済なんで」
ピクシーボブ「クソわよ!!」
マンダレイ「ええ……」