Q.公安って今どういう状況なの?
A.ナガンの気分次第で上層部がゴッソリ消えるくらいには後ろめたい事山盛り。でもやらなきゃいけないので自分達で弱みを増やし続けてる。
Q.原作8位だったウォッシュさんは?
A.ナガン捩じ込む為に一番支障がなさそうなヒーロー減らそうとしたらその人しかいなかった。特に喋ってないからいいかなって。
Q.燈矢とトガ一緒にいたの?
A.ホークスが押し付けて行った。ナガンとしてもトガ一人で留守番させるよりはと受け入れた。
Q.なんでや阪神関係ないやろ!
A.その感想が見たかった……数字に反応するその構文がァ! ヒャハハハハ! ヴエァハハハハハァァ!
社会とは我慢でできている。
誰がどうではなく、生きる人すべてがちょっとずつ我慢して成り立っている。
超常社会となってからは殊更我慢は増えた。人間という枠組みすら不確かになりつつある昨今、抑圧され続けてきた者達に限界が訪れ始めている。
書店にはかつて物議を醸した過去の思想を綴った本『異能解放戦線』が並び、ふと手に取ってしまう者も増えた。
「クソ会社……散々がなってから……解放せよ、解放せよ……! 異能解放万ざ──」
そして今日も一人、思想にあてられた阿呆が何事も成すことなく【剛翼】に打ち抜かれた。
「キャアアア!?」
「うわ何やこいつ!? 露出狂やん!」
「エンデヴァーさん好きな食べ物とかあります?」
「…………」
「おと……エンデヴァーが好きなの葛餅とかだぜ。昼飯になりそうな好物とかないぞ」
つい先日、不遜にもトッププロ達を嘲笑うように語ったNo.2と、頂点を目指し続けた果てに不本意な形で手に入れてしまったNo.1。そして何か生きてた息子、
街の喧騒を他人事のような顔で歩く三人をすれ違う人々は物珍しそうに見つめていた。
ビルの前で何かをブツブツと呟いていたコートの男に不吉なものを感じ、動き出そうとしたエンデヴァー。
しかしそれよりも早くホークスの【剛翼】が動いており、納得が行かないといった様子で倒れた男を睨んでいた。
「そこの水炊きスゲー旨いんですよ。鳥の味がしっかり出てて」
「鍋やだ。焼き鳥屋がいい」
「…………」
その間にも事件は起こる。飼い主の手からリードがすり抜けた瞬間に道路に飛び出す小型犬。そこに待ち構えていたかのようなタイミングで来てしまうトラック。
一秒後に訪れる悲劇に誰もが息を飲んだ瞬間、数枚の羽根がフワリと犬を持ち上げてトラックを回避させた。
ホークスは視線すら寄越さない。背中に生えた【剛翼】から羽根を飛ばして雑談の片手間に当たり前のような顔をして人助けをしていく。
(……広い視野、素早い判断、適切な対応……あれだけの大口を叩くだけの事はある、か)
「焼き鳥ねえ……『ヨリトミ』のレバークセになるもんね」
「タレのヤツ食いたい。あと豚バラを塩で」
「……普通に腹減ってきた」
燈矢も同じ。ホークスのソレを見て驚くことも自慢することもなく、これが当たり前の光景だと言わんばかりに自然な立ち振る舞いだった。
ただ生意気な若造だと思っていたエンデヴァーとしては評価を改めざるを得ない。なるほど自分の次のNo.2になるだけのことはある、と。
しかしNo.1とNo.2が二人揃って歩いていれば注目を集めるもので、邪魔をしないようにとしていた人々も一旦落ち着いたのを見ると群がり始めた。
"はやすぎる男"という肩書きに違わず、基本的にはその【剛翼】で空を飛び回っている為か歩いているホークスはファンにとって新鮮に映ったらしい。
あっという間にファンの人集りに呑まれ、エンデヴァーは居心地が悪そうに黙っているしかない。
「ホークス二位おめでと! 見たぞ昨日の! 謙虚にいかんと敵増やすだけぞ!」
「敵て」
「ホークスホークス! 写真!」
「写真? イエーイ」
「あの! 息子が大ファンでサインを……」
「まーオシャレなバッグ! いいの書いて?」
ついでにファンサもはやい。慣れた様子で受け答えをし、サラッと女性とツーショットを撮り、親子連れからリュックを受け取ってサインを書いている。
一方エンデヴァーはというと日頃の行いというかヒーローとしてのスタンス故か、ファンがいても遠巻き。ザワついてはいても近寄ろうとはしていなかった。
するとその中の三人。友人なのか三人組の会話がふと聞こえてきた。
「お前サイン貰ってこいって」
「いややし」
「好きって言っとったやん」
「好きだけど! 違うやろ!!」
その時エンデヴァーの脳裏を過ぎったのは前No.1……オールマイトの姿。思えば彼は自分と違って積極的にファンサを振り撒いていたような……と。
今は自分がそのNo.1。ならば彼に倣って自分もファンサとやらをやってみようかと三人組の方へと歩み寄った。
「遠慮などしなくていい」
「…………!」
「違う」
「違うのか!?」
まさかの真っ向からの否定。これにはエンデヴァーも素で驚いた。
差し出した手を引っ込めながら唖然としていると目の前の男は血涙を流しながら己の手を掴んで震えていた。
「エンデヴァーはファンサとかせん……!! 媚びん姿勢がカッコイイったい……!」
「ガチ勢やったんか……」
(ガチ勢とはなんだ……!? 何を言っている……!?)
「変わってしもた!! 変わってしもたよあーた!!」
聞く人が聞けば『ああ、解釈違いだったんですね』と教えてくれたであろう初めてのファンサ。それは想定外のエンデヴァーガチ勢によって困惑を残して終わった。
その後ろで燈矢がゲラゲラとバカ笑いしていたのはご愛嬌。
◇
「ダハハハハ! あんなお父さん初めて見た! 濃いファンだったなあ!」
「その筆頭は君でしょうに……まあキャラじゃないのはそうですね」
「むぅ……」
人に囲まれた状態では話もできやしない。ホークスの提案と燈矢の要求によりとあるビルの15階にある焼き鳥屋『ヨリトミミドリ』へと移動した。
そして個室に着くなり燈矢が再び大爆笑。色々な感情を向けていた父親がまさかあんな事になるとは思ってもみなかった。おかしくて堪らないと声を上げて笑っていた。
エンデヴァーとしては何が悪かったのかさっぱり分からず、ついでに実は生きていた長男との距離を測りかねて微妙な表情である。
ゴホン、とわざとらしく咳をするとエンデヴァーは真剣な表情になり、ホークスに尋ねた。
「……そろそろ本題を話してもらおうか。改人脳無、オール・フォー・ワンが関わっていた悪趣味な操り人形の件を」
「ああ、昨日の話ですね」
それはビルボードチャート発表が終わった後の控え室でのこと。
舞台上で失礼なことを宣い散々に煽り散らかしたホークスがエンデヴァーの元を訪ね、ケラケラと笑いながら軽い態度で謝罪をしていた。
燈矢が世話になっている事もあってあまり無下にもできず、眉根にシワを寄せながらも追い出せずにいるとホークスはエンデヴァーにある事を頼んだ。
「『チームアップお願いします、地元で脳無の目撃情報が出ている』……だったか」
「ええ。神野で格納されていた数十体をオール・フォー・ワン諸共捕らえ、それ以降連合も解散。なのに脳無の出現が何度か確認されている」
脳無。複数の個性を持たされた改造人間。
当初ヒーロー達は敵連合のバックにいる者が作っていると推測していたが、それ自体は正しかった。
読みが外れたのはその数。雄英を襲撃した時に二体と、神野で格納されていた数十体。これら全てを捕らえた為もう二度と脳無は出てこないものだと思っていた。
それが死穢八斎會の一件で再び姿を現した。それだけでなくグラントリノが複数体の脳無を捕らえてきた。
生産者と思われていたオール・フォー・ワンは檻の中、首謀者と思われていた敵連合も解散済み。じゃあ、脳無は一体どこから出てきたのか。
「だからオール・フォー・ワンの残党がいるって懸念があって……まだ何か企んでるんじゃないかって警戒してるんですよね」
「それで? 俺にチームアップを頼んだからには何かを掴んだと見ていいのか?」
「まだです」
「…………は?」
No.1を引っ張り出して何かあったのかと思えばそうではないと言う。ここからが本題になるとばかり思っていたエンデヴァーは急に梯子を外されたような気分だ。
だがホークスは至って真面目。呆然としているエンデヴァーに更に話を続けた。
「まだ話は終わってませんって。実は脳無の目撃談はここだけじゃないんですよ。知らないでしょ?」
「何……?」
「ホークスが調べた限りの話だよ。全国でそういう噂が立ってるらしい」
燈矢が補足のように語る。
メディアが取り上げる程のものでもない不確かな情報。女性の井戸端会議だったり小中学生の下校の会話の中だったり……脳無と関わりがないはずの人間からもそうした話が出てきていた、と。
出張先の地元の人間に聞いたのが始まり。少し気になったホークスは自分の【剛翼】で全国を飛び回って調査をしてみたという。
結果から言うと全て噂止まり。信用するには何の証拠もない確度ゼロのものしかなかった……が、そうした噂が全く関連性のない地域で湧いていた。
「どっかの阿呆が不安を煽る目的でホラ吹いて、それが今全国に伝播してるんじゃないかなーと」
「お父さんも聞いてたろ? さっきの露出狂。"異能解放万歳"とか叫んでたけど……あれも大昔の犯罪者の自伝に載ってたヤツだし」
「……"デストロ"か」
ホークス達が出した見解はデマ。確かに脳無の数を把握できていないものの、全国津々浦々で何の目的もなく脳無を動かすはずがないと判断した。
そんな噂を撒く理由があるとすれば不安の扇動。平和の象徴という敵にとって最も厄介な存在が消えた今、抑圧されてきた悪意が噴き出しかけているのではないか。
「まだ詳しくは言えないんですけど、俺もそういう連中について今探ってる途中です」
「……全て半端な話ばかりだな。結局何が言いたい? 結論を言え」
「そう難しいことじゃないですよ。No.1のあなたを頼りたいって言ってるんです」
「?」
「No.1てのはそういうものでしょう? 何かあった時真っ先に頼られる存在。俺はあなたにそうあって欲しいんですけど」
真剣な雰囲気から一転、ヘラリと笑いながらホークスは語る。
本当は楽をしたいと。適当にダラダラパトロールして、今日も一日何もなかったと小学生の日記のようなことを宣いながら床につきたいのだと。
「究極的にはヒーローが暇を持て余す世の中にしたいんですよね、俺」
「…………」
ある意味では最も平和な世界。人助けをするヒーローが暇を持て余す……誰かを助けなければならないなんて事にならない世界。それがホークスの夢だと言う。
同じヒーローだからこそエンデヴァーは否定できなかった。本当に実現できたのならどんなに良いか、理解してしまったが故に。
「何回聞いても無理だろとしか思えないんだよなそれ。それでも何かしたくてなるのがヒーローだろ?」
「間違ってはないと思うけどもうちょい理解してくれよー……一応俺のサイドキックなんだか……ら……?」
しかし会話は長くは続かなかった。
窓の外を見たエンデヴァーの目が鋭くなっているのを見たホークスと燈矢が視線の先を追う。
やや雲が多いが遮るものはない青空。その中に一点だけ浮かぶ黒いなにか。
鳥のようなシルエットをしたそれを見た瞬間、ホークスと燈矢の表情が変わる。
「───来ます!」
ガシャン、と響き渡る破砕音。15階のビルの窓ガラスへと飛び込んできたのは黒い怪物。ボロ切れを身に纏い体のアチコチから禍々しい結晶のようなものを生やした操り人形。
奇しくも噂が流れていた敵、脳無が急襲した。
「ドど、どレが一番強イ?」
「喋った……!?」
「ホークス、避難誘導を!」
「了解! エンデヴァーさんは!?」
ビルの外壁を掴み中へ侵入しようとする脳無。油断なく見つめていたエンデヴァーの腕から【ヘルフレイム】が噴き出す。
「噂ではなかったか……何とも間の良い奴だ」
他のヒーローとは比較にもならない超火力が動き出す。放出された炎はやがてジェットエンジンのような音を鳴らし、エンデヴァーの腕に推進力を与える。
脳無の手が伸ばされる寸前、一手早くエンデヴァーの拳が振り抜かれた。
「どの道そのつもりで来た!」
「【赫灼熱拳:ジェットバーン】!!!」
推進力を乗せた打撃と超火力の炎を合わせた一撃が脳無の胸板を叩き、ビルから引き剥がした。
「スッゲェ……! 流石!」
「ふん……丁度いい」
「来い。
No.1ヒーローとしての初陣が今、火蓋を切って落とされた。
燈矢「
ファンA「わかる」
ファンB「サイン頼んで断られるまでがワンセット」
ファンC「ファンサしない事がファンサ」
エンデヴァー「そ、そういうものなのか……?」
ホークス「真面目に相手してると疲れるだけですよ」