魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.さては燈矢一番いい空気吸ってんな?
 A.滅茶苦茶ご機嫌。いい空気吸って完全燃焼の青い炎出さなきゃいけないからね。仕方ないね。

 Q.燈矢って市民からはどういう認識なの?
 A.公安委員会が色々弄って『エンデヴァーの息子という色眼鏡で見られたくなかった』という理由で身分を隠していた事にしている。なのでコアなファンはオブセス=エンデヴァーの息子と知っていたり。

 Q.エンデヴァーの厄介ファンから見た燈矢は?
 A.まさかの同類っぽくてビックリ。エンデヴァーファンクラブの0番になってもらった。時々解釈違いレスバが起こるくらいで特にいがみ合ってたりはしない。





88.火はまた昇る

 

 

 

 地上からおよそ60メートル。冷たい風が吹き付ける天空にてエンデヴァーは炎を解放していた。

 

 

「エンデヴァーさん飛べるんですかぁ!?」

「落ちないだけだ! 抜かるな! こいつはまだ動く!」

 

 

 足からの放出により重力に逆らうその身は落下を許さず、油断なく脳無を睨みつけている。

 

 【赫灼熱拳:ジェットバーン】を叩き込まれて尚黒い肉体は蠢いている。皮膚が焦げ肉が焼かれていながら落ちる気配はなく、露出した筋繊維が巻き戻るように黒い皮膚に覆い隠されていく。

 

 

「こコんな火デ俺レをを……殺セるとと思っ、思っ思っ……たカ?」

「! 治りやがった……!」

「燈……オブセス(・・・・)! コイツは俺がやる!」

 

 

 明らかに異常な速度での再生を目にしたエンデヴァーは思考を回す。

 

 雄英襲撃に現れた脳無にも【超再生】という個性が備わっていたと聞いている。そして保須の一匹にも。

 対して保須にいた他の白い脳無にそうした個性は見られなかった。

 

 

「おそらく"黒"は特別製! 今のお前には手に余る!」

「一言余計だクソお……クソ野郎! んな事言われなくても分かってるっての!」

 

 

 そして何より他の脳無との違い。サー・ナイトアイやグラントリノが遭遇した個体とも異なる点。

 

 

 

「オ前は強いノか?」

「喋る……ならば、生け捕りにして情報を頂く!」

 

 

 それは確かな知性が存在している事(・・・・・・・・・・・・・)

 

 ただ言葉を発する脳無ならば確認されていた。だがそれらの脳無は意味のない言葉を繰り返すばかりで会話になるような単語を発することはなかった。

 

 つまりこの脳無はこれまでの個体と比較しても高性能……より強い脳無だと見るべきだろう。

 そして同時に情報源ともなる脳無。これまでの脳無とは異なり意思疎通ができるのならば捕らえる価値がある。

 

 

 腕に纏わせていた炎を更に指先へと集中。五指から圧縮された熱線が放たれ、脳無へ絡みつかんと向かっていく。名を【赫灼熱拳:ヘルスパイダー】。機動力に優れた敵を封殺する為の技だ。

 

 だが脳無は怯むことなくエンデヴァーへと向かって行った。あたれば肉体を焼き切られるというのに微塵も怯むことはなく、エンデヴァーの真横を通り抜けるように加速し──筋繊維が蠢く腕でエンデヴァーを鷲掴みにした。

 

 

「ぐ……!?」

 

 

 【ヘルフレイム】の逆噴射で抵抗を試みるが間に合わない。そして押し返せない。

 

 まるで触手のように広がり伸びた腕はエンデヴァーを再びビルへと押し付け、外壁をぶち抜いて室内を貫いていく。

 

 その間にも逆噴射による抵抗を行うが押し返せない。反応が遅れたことも言い訳にできない力負けに歯噛みしていると、とうとう反対側の壁をも破って外へと放り出された。

 

 伸びきった腕に【ヘルフレイム】を放ち焼き切るも再生が速い。肉体が炭化していることも気にせず再びエンデヴァーを掴もうと腕を伸ばしている。

 

 

「再生も速い……! パワーもスピードも俺以上か……だが」

「…………んン?」

 

 

 だからこそエンデヴァーは薄く笑った。

 

 

「その程度の耐久性ではそいつの炎は耐えられまい」

 

 

「【赫灼熱拳……ブルーバーン】!!」

 

 

 

 己の炎で炭化するのならば、それをも上回る超高火力になればどうなるかなど火を見るより明らかだった。

 

 片腕が伸びきった状態では身体を庇うことさえ不十分。まるで極太のレーザーのような【蒼炎】が脳無の身体を焼き焦がした。

 

 

 

「ぎッ、GaああアアaaaAA!!?」

 

「はっ、ざまあみろ! およそ人間にゃ使えねえ超高火力だ!」

「うわあ……いや鍛えたの俺達だけども……改めて見るとすんごい火力してるねホント」

 

 

 時間にして三秒程度の放出。極限まで高めて圧縮されたバーナーの如き一撃は脳無の全身を焦がし、抵抗する間もなく炭化させていた。

 

 かつて父親に見放されたと思い込み独学で鍛えに鍛えた超高火力。長い眠りの果て、()()た事でより強くより熱く燃えさかる地獄の【蒼炎】はエンデヴァーさえも超えた炎熱系個性の頂点に到達していた。

 

 エンデヴァーに一撃を叩き込まれて尚揺らがなかった脳無の体が崩れ落ちるように重力に負ける。耳障りな悲鳴を上げていた口もパクパクとするばかりで何も起きやしない───はずだった。

 

 

 

 聞こえるはずのない言葉。

 

 

 聞こえてはならない単語。

 

 

 彼らはその言葉を知っていた。

 

 

 彼らはその単語に助けられた。

 

 

 故に、誰もが耳を疑った。

 

 

 

 

 

 

 

「べ、べべべ……べ……【ベホイミ】……!」

 

 

 

 

「───は?」

 

 

 

 この世の法則に喧嘩を売るような回復作用を見せる力……森岸詠士だけが扱える【魔法】の言葉を脳無が発していた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 ──頭が真っ白になるというのはこういう事を指すんだろうな。

 

 

 なんて、どこか他人事のように呟いていた。

 

 

 お父さんが押し負けたのを見た時点で生け捕りは難しいと判断し、【赫灼熱拳】を殺すつもりで放った。

 

 何せ相手は脳無。死体をツギハギして生み出された趣味の悪い生ける屍。『脳無は既に死んだ人間を使った怪物、殺しても罪には問われない』とヒーロー公安委員会が公表するような存在だ。

 

 何の躊躇もなく、自分に出せる最高火力を叩き込んでやった。致命傷だ、いくら【超再生】を持っていても再生する前に死ぬ。

 

 そのはずなのに。

 

 

 

「何でお前がそれ(・・)を使える……!?」

 

 

 

 有り得ない。あってはならない。

 

 あの誰よりも優しい個性を、こんな、壊すことしか知らない生ける屍が使うなんて、許されるはずがない。

 

 自分を死の淵から救ってくれた、家族と再会させてくれた【魔法】を何故脳無が使っているのか。

 

 信じ難い光景を目の当たりにして思考が機能しなくなっていた。答えが出るはずのない疑問ばかりが渦巻いて、同時に背後にいる何者かへの憎悪が募っていく。

 

 

「──落ち着けオブセス」

「っ…………ごめん」

 

 

 チリ、と自身をも焼く炎が漏れた事を自覚した。まだこういう所が危なっかしいとホークスもよく苦笑いをしていたのを思い出す。

 

 

 熱に浮かされた思考を冷やせ。感情に振り回されるな。ホークスも言っていた。感情は込めるものであって振り回されるものではないと。

 

 奴が使ったのは【ベホイミ】。つまり致命傷から抜け出す程度の回復力しかない。

 

 そして何故か二度目を使おうとはしない。一度回復してからは【超再生】に回復を任せている。

 

 考えられるのは二つ。森岸と違って消耗が激しく乱発できない。そしてもう一つは……

 

 

「……別の【魔法】に回す為に温存しているか」

「まだ上があると……?」

 

 

 森岸の手札の多彩さはよく知るところだが、脳無も同じとは限らない。勿論【ベホイミ】以外には何も使えない可能性だってある。

 

 だが目の前の脳無はあまりにも未知数が過ぎる。ともすれば森岸が愛用している強化を使用してきてもなんらおかしくはない。

 

 

 とすれば、選ぶべきは速攻。準備する時間も回復する余裕も与えず一息に倒してしまう他ない。

 

 【ブルーバーン】ならばそれもできるだろうが自分は警戒されてしまっている。その証拠に焼け焦げた肉の向こう側からギラギラとした目でこちらを睨みつけている。

 

 

「あ熱熱あツい! おオおまお前強イい!!」

「見る目ねえな。俺より強いのがそこにいんだろうが」

 

 

 20階建てのビルだ。ホークスがいても全員が避難するまでにはまだ時間がかかる。できればビルの外で戦いたいが、まだエンデヴァーのように浮くことはできない。

 

 ここはエンデヴァーに任せるしかない。自分にできることは固定砲台──隙をついてもう一度【ブルーバーン】を放つしかない。

 

 言われずとも理解していたのかエンデヴァーが動き出す。再び放たれたのは【ヘルスパイダー】。動きを制限しつつ狙えれば手足を焼き切って再生に時間を使わせるつもりだろう。

 

 

「どこを見ている! お前の敵(No.1)はここにいるぞ!」

「じゃ、ジ邪魔マ!!」

 

 

 並大抵の人間であれば取り囲まれただけで死を覚悟する灼熱の包囲網。それすらあの脳無の前では鬱陶しい程度でしかないようで、露骨に怒りながら振り払おうと腕らしき部位を振り回す。

 

 やはりああいった繊細なコントロール技術においてはまだまだ未熟。今の自分にできることは大雑把な固定砲台のみ。

 

 こちらはいつでもいける。後はエンデヴァー次第だが果たしてどうなるか。

 

 

「オブセス! コイツをもっと高い所まで吹き飛ばせ!!」

「……はあ!? 何で……いや、いい! やる!」

 

 

 だがエンデヴァーが出した指示は違った。【ブルーバーン】をトドメに使うのではなく、脳無をビルから遠ざけろと言う。

 

 何故、という疑問が躊躇を生んだ。だがすぐに捨てた。

 

 

「信じてるからな……!」

「──任せろ!!」

 

 

 No.1ヒーローが俺を見ていろと言っていた。ならば信じてやろう。あの日自分が焦がれた炎は間違ってなどいなかったと証明してもらおう。

 

 あえて見せつけるように【ブルーバーン】を放つ。先のダメージが余程堪えたのか、避けきれないと分かると全身の禍々しい結晶を増やし、防御姿勢を取った。

 

 ああ、それ防御に回せるのか、とどこか冷めた思考をしながらも手は緩めない。結晶を貫けずとも叩きつけられる灼熱の奔流には抗えない。僅かな拮抗の末に脳無が吹き飛ばされていく。

 

 そしてエンデヴァーがそれを追うように【ブルーバーン】に呑まれ、脳無同様に天高く──

 

 

「って、何でお前も焼かれてんだよ!?」

 

 

 いや分かるけども。大方推進力を得る為の炎すら惜しんだのだろうがヒヤヒヤするからやめて欲しい。【蒼炎】はとっくにエンデヴァーの高熱耐性すら貫通してしまう程に成長している。

 

 それをよくもまあ何の躊躇もなく飛び込めるものだ。それとも……それとも自分がそうしたように、エンデヴァーもオブセスを信じていたのか。

 

 

「───行け! やっちまえお父さん!!」

 

 

 

 

 

 

 

「二度目はない……!! 耐えることも再生することも許さん!!」

「ギ……!?」

 

 

 逃走も抵抗もさせない。脳無の身体から生えた結晶が刺さるのも気にせず羽交い締めにし、熱を高めていく。

 

 No.1を見ている者がいる。市民が、敵が、ヒーローが……家族が、息子が見てくれているのだ。

 

 

「俺はもう、負けられんのだああああ!!」

 

 

 かつて嫌悪していた校訓が頭を過ぎる。そんな事言われるまでもないと、ずっと大嫌いだと思っていた言葉が。

 

 

 

Plus ultra(更に向こうへ)ァァアア!!」

 

 

「【赫灼熱拳:プロミネンスバーン】!!!」

 

 

 

 太陽の如き業火が、解き放たれた。

 

 

 真昼の空の下で尚、太陽よりも眩く輝く【ヘルフレイム】が全てを焼き焦がす。【超再生】も【ベホイミ】も間に合わない、極限の炎に呑まれていく。

 

 ほんの一瞬の最大火力が消えた後にはエンデヴァー以外何も残ってはいなかった。

 

 

 






ホークス「避難誘導してたら避難が終わる前に脳無が倒されてた件について」
燈矢「被害なんて無い方がいいだろ」
ホークス「後でニュースとかで『ホークス何もしてなくて草』とか『サイドキックの方が仕事してるやん』とか言われちゃうじゃん!」
燈矢「言われねえだろ」
ホークス「いーや! 俺のサイドエフェクトがそう言ってる! ネットでしばらくネタにされそう……」
燈矢「それ違う作品(ヤツ)


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