魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 前回の感想に『前衛すんなサポーターやれ』という意見が多くてワロタ。ワイトもそう思います。

 ちなみにですが森岸君がサポーター路線で真っ当に能力を伸ばしていると神野で話が完結するくらいにはヴィラン側が詰みます。お前何で前衛志望なの?





9.悲劇は未来への燃料

 

 

 

「クソ……クソクソクソ! どうなってやがる……!」

 

 

 とある廃墟。かつては小洒落たバーだったそこには人の影もなく、ただ静寂が在るだけだった。

 

 今となっては悪党のアジト。何も無い場所に広がった【ワープゲート】から転がるように飛び出た死柄木弔は子供の癇癪のように声を荒らげた。

 

 

「何が対オールマイト用脳無だ……! 手下共々何の役にも立たなかった! 平和の象徴は健在だった……!! 話が違うぞ先生……!」

『違わないよ』

 

 

 答えるものはどこにもいない、はずだった。

 

 

 声の主はチープなモニターの向こう側。何も移さないプレーンな画面から、地の底から響くような悪意を滲ませる声が答える。

 

 先生、と呼ばれた人物は死柄木弔を宥めるように、生徒の面倒をみるように言葉を続けた。

 

 

『ただ……見通しが甘かったね』

『うむ、舐めすぎたな。敵連合なんちうチープな団体名でよかったわい』

 

 

 その声に賛同するようにもう一人。また画面の向こう側から言葉が続いた。ややしわがれた老人らしき声だ。

 

 老人はさほど死柄木弔に興味がないのか、先生よりも言葉に遠慮がなかった。反省点を探る前に【ワープゲート】の持ち主、黒霧へと話しかけた。

 

 

『ワシと先生の共作……脳無は回収していないのか?』

「それどころではありませんでした。死柄木弔か脳無か、であれば死柄木弔を取るしかないでしょう」

『そうか……せっかくオールマイト並みのパワーにしたのに……まぁ、仕方ないか……残念』

「パワー……そうだ……!」

 

 

 そこで話は終わるかと思われたその時、死柄木弔はある違和感を思い出していた。

 

 

「イレイザーヘッド……教師の一人がやたら強かったな……」

『…………へえ?』

「何だったんだありゃ……増強型みたいなパワーとスピードしやがって……!」

 

 

 聞いていた話と違う。そのうちの一つとして挙げられるのがイレイザーヘッドの実力。

 

 先生から聞かされていた【抹消】の個性は使っていたのかも分からない。それが分かるより早く返り討ちにあってしまっている。

 事前情報が間違っていたか、それとも別の何かによって強化されていたか。でなければありえない。

 

 先生は興味を示したようだが、それ以上の言及はしなかった。今はまず死柄木弔を優先したらしい。

 

 

『悔やんでも仕方ない! 今回だって決して無駄ではなかったはずだ。精鋭を集めよう! じっくり時間をかけて!』

 

『我々は自由に動けない! だから君のような"シンボル"が必要なんだ、死柄木弔!!』

 

『次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』

 

 

 そこまで伝えると今度こそモニターは沈黙した。

 

 

 

 

 モニターが消える前、すんごい小さい声で『知らん……何それ……怖……』と聞こえたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

「16……17……18…………うん、指を負傷した彼を除いてほぼ全員無事か」

 

 

 一方、死柄木弔が去った後のUSJ。

 

 黒霧の【ワープゲート】によって各災害エリアに散らされていた生徒全員の保護が完了していた。

 

 

 どの段階から侵入されていたのか、生徒達が移動させられた先には何人ものヴィランが待ち構えており、イレイザーヘッドとオールマイトが駆けつけたことで──反動で負傷した緑谷を除けば──ヴィランによる被害はゼロだった。

 

 また、中には轟や爆豪といった戦闘に自信のある生徒達が自力でヴィランを撃退しており、そうでなくともオールマイト達の救援が来るまで凌いでいた。

 

 

「……にしても、死柄木弔だったか」

「何かありました?」

「いやね、何となく気になる点が多くてね……」

 

 

 オールマイトから見た死柄木弔というヴィランは何もかもがチグハグだった。

 

 連れてきたヴィランの大半はチンピラ崩れ。頭数だけを揃えて勝てる気でいたし、思惑通りにいかないというだけで激しく取り乱して子供のように怒りを撒き散らしていた。

 

 かと思えば優秀な個性を持った黒霧という仲間を引き連れており、また僅かながらオールマイトに食い下がるだけの脳無とやらを連れてくるだけの能力もある。

 

 

「……正直、あの死柄木弔だけならどうとでもなる。幼児的万能感が抜け切れてない、典型的な子供大人だ」

「……それがどうしたんです?」

「そんな未熟な人間に、チンピラ崩れとはいえあれだけの人間が着いてきた……私達が思っている以上に、抑圧された悪意に限界が来ているのかもしれない」

 

 

 つまるところ死柄木弔は未だヴィランとしては未熟。逆に言えば時間をかければより強大な悪へと変じる可能性がある。

 

 また、彼が洩らした言葉の端々から何者かが後ろに潜んでいる可能性も高い。

 

 もしその後ろに潜んでいる者が死柄木弔を巨悪として育て上げるつもりでいるのなら、今のうちに止めなければ危ういかもしれない。オールマイトはそう考えていた。

 

 

「でも、それは生徒達も同じだよ」

「…………まあ、そうですね」

「入学して日も浅いのに、本物のヴィランと戦うという経験をした。この体験はきっと彼らを強くしてくれる!」

 

 

 守るべき大人としての立場としては素直に喜べないものの、本物のヴィランを前に臆することのなかった子供達の未来を想像し、ニカッと笑った。

 

 

 

 

 

「……でもその前に一度、アイツ(森岸)の【魔法】について確認した方がいいかもしれません」

「………………確かに!」

 

 

 約一名だけ別の方向で未来を想像して少し真顔になった二人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして翌日。ヴィランによる襲撃なんて事件があれば臨時休校になるのも当然の話。

 

 それでもあれ程の事件を一年目から体験してしまった彼らの気が休まるはずもなく。

 何となく気分が落ち着かない耳郎響香は森岸家、それも森岸詠士の部屋で毛布に包まっていた。

 

 

「……あの、そろそろ何か言ってくんない?」

「………………」

 

 

 最早日課となっていた早朝のランニングから帰ってきてみれば、親が幼馴染を家に上げていた。膨らんだ毛布をみてひっくり返りそうになってしまった。

 

 恐る恐る毛布を捲ってみれば顔を伏せた幼馴染。昨日の今日ということもあってヴィランに目をつけられていたか? と不吉な思考をしていた森岸はホッと息を吐いた。

 

 

 それから二時間。二時間このままである。

 

 何を言うでもなく何をするでもなく、何かずっと毛布に包まったまま出てこない。

 

 一応シャワーを浴びに行く時や、朝食を摂る前にも声をかけてはみたけれど反応はなし。これはオトメゴコロとやらが分からぬ俺のせいか? と森岸は頭を抱えた。多分そう。部分的にそう。

 

 

「…………昨日さ」

「! はい!」

 

 

 かと思ったら急に口を開いた。

 

 

「山岳ゾーン……だっけ。あそこにヤオモモと上鳴と移動させられててさ……」

「……おう(ヤオモモ?)」

 

 

 知らんうちにアダ名で呼ぶ仲になっていたらしい女子はさておき、話の続きを聞く。

 

 

「上鳴の個性って広範囲攻撃できるじゃん? 味方巻き込んじゃうけど」

「【帯電】だっけ?」

「うん。それで、ウチとヤオモモを巻き込んだらマズイから使えなかったんだけど……あ、ヤオモモの個性聞いてるよね?」

「【創造】でしょ? 何創ってたん?」

「厚さ100ミリ? の絶縁体シート。それ被ったら上鳴が全力出せるからさ」

 

 

 八百万(ヤオモモ)が創った絶縁体シートを被り、次の瞬間に上鳴が全力で放電。周囲にいたヴィラン達を一人でノックアウトしていた。

 

 その後地中に潜伏していたヴィランが奇襲を仕掛けたようだが、その瞬間にイレイザーヘッドが到着。一撃で鎮めてしまった。

 

 

 ここまでの時点で特に何か問題があったようには思えない森岸。じゃあ何をそんなに深刻な顔で話しているのかと首を傾げていると、耳郎は更に続けた。

 

 八百万の【創造】は自身の脂質を消費して物を創り出している都合上、作り出された物は彼女の身体から出てくる。

 峰田垂涎の露出度高めな戦闘服(コスチューム)もそれが理由になっており、下手に着込むと個性を使う度に服が破れてしまうのだとか。

 

 耳郎は少し悲しそうな顔をして目線を下に落とした。

 

 

「……その時創った絶縁体シート、結構デカくて。ヤオモモの戦闘服、破れちゃって」

「………………一応聞くけど、それで?」

 

 

 

 

 

「畜生……! 持ってかれた……!!」

 

「元々あなたのじゃなくってよ!?」

 

 

 何を気にしてるんだお前。シリアスな空気返せ。

 

 要約すると『ヴィランとの戦いの最中にヤオヨロッパイを見て敗北感を覚えた』だそうです。いや本当に何考えてんの? あの状況で。

 

 

「同い年! 同い年でどうしてあれだけの差がつくのさ!?」

「……ほら、八百万さん個性の関係上たくさん脂肪つけなきゃいけないし、身体が勝手に蓄えようとしてんじゃね?」

「ウチの【イヤホンジャック】だとこうなるって言うの!?」

「違うそうじゃない。だからプラグをこっちに向けるのやめろォ!?」

 

 

 耳郎ちゃん涙目である。泣きたいのは多分森岸の方だと思う。

 

 

 ちなみに読者の諸君に言うまでもない事だとは思うが、八百万百と耳郎響香のスタイルの差は歴然である。どっちが上かって? そりゃお前、性癖はともかく数値上は……ね……?

 

 オブラートをぶち抜いて端的に表現するならば八百万はメリハリのある丸みを帯びたボディ。対する耳郎響香はスレンダー……どことは言わんが『貧』である。

 

 今まで生きてきて困ったことなんてなかったし、取り立てて比べるような事も多分してこなかった。でも目の前に実物をお出しされたら嫌でも気にしてしまうようだ。

 

 

「というか俺に伝えてどうしたいんだよ!? 先に言っとくけど胸デカくする【魔法】なんて無いからな!?」

「唯一の希望が絶たれた……もうマジ無理、カッティングしよ……」

「今ここにギターねェよ……てか寝ろ。深夜テンションで人の部屋に突撃するんじゃあない」

 

 

 それはそれとして大分参ってはいるらしい。妙なテンションの高さは昨日の寝付きの悪さが原因だったようだ。

 

 耳郎も自覚はあるのか「んー……」と眠たそうに唸っており、モゾモゾとした後枕まで頭を持って行って寝る姿勢に入った。

 

 

「……詠士はさー」

「今度はなんじゃい」

「おっきいのとどっちがいい?」

「今聞く!? あの話聞かされた後に答えるのスッゲェ嫌なんだけど!?」

 

 

 結局この後昼過ぎまでベッドを占拠されていた模様。帰る頃にはスッキリとした顔をしていたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いがまだ戦いは終わっていない」

 

「あんな事が起こった後でいきなりだが──」

 

 

 

「雄英体育祭が迫っている」

 

 

「「「クソ学校っぽいの来たああああああ!!!」」」

 

 

 






 Q.先生【魔法】無警戒なの?
 A.どういう個性か把握してない。なんならオールマイトの現状も把握してないので後で酷い目にあうことになる。

 Q.こいつら付き合ってんの?
 A.付き合ってないです。

 Q.アレで?
 A.アレで。

 Q.森岸はどっち派?
 A.小さい派の模様。曰く、そもそも身体の一部分だけで判断すること自体ナンセンス。大きいのも嫌いじゃないけど小さい人のボディラインに興奮するタイプ。細かい好みを言うなら細いけどガリガリまでは求めてなくて手足がスラッとしてて薄い身体というのが良くて小さけりゃいい細けりゃいいというわけでもなくて───(以下5,000文字超カット)

 Q.一番ヤバイ【魔法】は?
 A.森岸によると【⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎】だそうです。

 Q.相澤先生から見た一番ヤバイ【魔法】は?
 A.全部。


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