魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.葉隠に【バーハ】使ってあげなかったの?
 A.使ってもらった上でちょっと寒い。それに急激な変化を防ぐという性質上、時間が経つと普通に寒くなる。

 Q.原作だと物間が文化祭のアンケート結果で煽ってたけどここではどうなったの?
 A.普通にA組の方が人気があったから何も言わなかった。二曲目の分で差がついた模様。

 Q.それ(ベルト)を減らすなんてとんでもない!
 A.常闇と黒色もそうだそうだと言っています。






91.順当な第一試合

 

 

 

 第1試合。

 

 A組からは切島と上鳴、口田に梅雨ちゃんの4人チーム。個人で見た場合は上鳴の攻撃力と切島の防御力が目立ち、チーム全体で見た場合はサポート可能な梅雨ちゃんと索敵支援ができる口田もいてバランスが取れたチームと言える。

 

 対するB組からは塩崎に宍田、鱗に円場の4人。これはどちらにも言えることだが、相手の個性をちゃんと見たのは体育祭が最後。そこから合宿での個性伸ばしを経て時が経った今、多少の予測はできても詳細までは把握できていない。

 

 

「だからこそ基本数で押せるようにバラけないで行きましょう」

「数の暴力ってスゲーからな……」

「いや森岸いねえから今回はそこまでねえから。過信もダメだし警戒し過ぎんのもよくねえぞ」

 

 

 指揮を取ったのは梅雨ちゃん。個性伸ばしで会得した新技【保護色】を使い視認されにくくなった状態で先行し偵察している。

 

 加えてスタート直後に口田の【生き物ボイス】を使い鳥を放ち、上空からの索敵も行っていた。

 

 彼らが警戒しているのは一人、塩崎茨。【ツル】の個性を宿した彼女の髪は広範囲への展開が可能な上、束ねて重ねた時のパワーと防御は弱点を突かなければ突破できない程のポテンシャルがある。

 

 

「俺達は塩崎をどうにかしたいが……向こうは上鳴をどうにかしたいだろうな」

「うぇ? 俺?」

「向こうの中で上鳴ちゃんに対抗できそうなのは茨ちゃんだけだもの」

「逆に言えば上鳴さえいれば他の三人は何とかなりそうって事だ。お前が決め手なんだからな」

「プレッシャー……!」

 

 

 そして何よりこのチームのメインウェポンと言ってもいい上鳴。彼と塩崎の相性が悪いことも理由だ。

 

 半ば自惚れのようなものだが、塩崎以外の三人ならどうとでもなる……というのが彼らの認識。つまり塩崎さえ警戒していれば勝てる試合と言える。

 

 

「……左方向から塩崎さん。一人だって。【ツル】で広範囲を探りながらこっちに向かってる」

「さっそくか……!」

 

 

 

 だが、そこで思考を止めている者に勝利の女神が微笑む事はない。

 

 

 

 

 

──【ガオンレイジ】!!

 

 

 

「ケロっ……!」

「っ……ぶねェ!?」

「ぬ!? 避けた!?」

 

 

 全員の意識が塩崎に向けられた一瞬を逃さず宍田が切島と梅雨ちゃんを襲撃する。膨れ上がった肉体から振り抜かれた大きな手が二人を掴もうとし──あと数センチというところで手の中から逃げ出された。

 

 回避とも呼べない大ジャンプ。攻撃の軌道から逃れる事に全てをかけた不格好な動作だが、完全に隙を突いたつもりでいた宍田を動揺させた。

 

 だがそれも長くはない。奇襲の一撃で仕留められれば僥倖、そうでなくとも脅威である上鳴が攻撃できない状況で戦えればそれでいい。

 

 【ビースト】によって若干ハイになった思考でそう判断し、強化されたパワーとスピード、耐久力や体格を押し付けてやろうと戦闘続行を選んだ。

 

 着いてきていた円場も追いつきまずは数を減らそうと拳を構えた。

 

 

「ですが! この密集した状況! 上鳴氏が放電すれば仲間を巻き込み───」

「やれ上鳴ィ!!」

 

 

 

 それが間違いだった。

 

 

 

「───は?」

「おっしゃあッ!! いくぜ無差別放電130万Vォ!!」

「な───!?」

 

 

 切島が何を言ったのか理解できなかった。だってまだ周りには梅雨ちゃんや口田もいるのに攻撃を指示するなんて思ってもみなかったのだ。

 

 だからこそ判断が遅れた。

 

 言葉の意味を咀嚼する間もなく上鳴から膨大な電力が放たれる。敵味方を問わない無差別な放電が等しく全員を痺れさせる。

 

 

 ほんの一瞬だけ(・・・・・・・)

 

 

「ぐ……!…………あ……?」

 

 

 眩い電光が弾けたかと思えば瞬きひとつ分もないくらいで放電が途切れた。咄嗟に防御姿勢を取った宍田は強烈な痺れに苦悶の声を漏らし、続けて間の抜けた声で首を傾げてしまった。

 

 

「っ、宍田! 前!」

「遅ェ!【烈怒頑斗裂屠】ォッ!!」

「ブギャッ!?」

 

 

 疑問も立て直しも間に合わない。目まぐるしく変わる対応に目を白黒させていた宍田の鼻っ面を限界を超えて【硬化】させた切島の拳が打ち抜いた。

 

 獣化し体格や筋力が大幅にアップしているはずの宍田が殴り飛ばされる。その上に乗っていた円場は慌てて飛び退いた。

 

 ガシャン、ズドンと盛大に音を立てて転がされる宍田。それから間もなく膨れ上がっていた体が縮んでいき、意識を失ってしまった。

 

 

「は!? 一撃って……!」

「切島ちゃんね、とても鍛えたの」

「やべ───グエッ!?」

 

 

 宍田が一撃でノックアウトされた事に動揺した円場も逃がさない。同じく放電を受けて痺れていた梅雨ちゃんが復帰し、無防備な円場の土手っ腹にドロップキックを叩き込んだ。

 

 こちらも蹴り飛ばされた先で壁にぶつかり気絶。奇襲を仕掛けた側の二人が返り討ちに遭うという結末となった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 一方待機組。ブラドキング達教師の実況解説を交えながら見学していたB組は唖然としていた。

 

 

「……いくら後手に回ったからって、いきなり味方ごとやる? 普通」

「躊躇なさすぎだろ上鳴……いや指示した切島もか」

 

 

 上鳴に限った話ではなく、個性を使う上での最低限の意識。ほんの一瞬とはいえ味方を巻き込んではいけないというタブーを無視したA組の行動に目を丸くしていた。

 

 それはミッドナイトやブラドキングも同じ。プロの現場ではそうしなければならない場面もあるにはあるが、あまりにも躊躇のない様子にあんぐりと口を開いたまま固まっている。

 

 『激カワ据置プリズン』……A組の陣地に置かれた簡易牢獄に宍田と円場が放り込まれたあたりでようやくブラドキングが我に返った。

 

 慌てて宍田と円場が捕まったことをアナウンスし、それからブラドキングは信じられないといった様子で相澤へと詰め寄る。

 

 

「お前何を教えたんだ? 一瞬に収めるつもりだったとはいえ味方を巻き込むとは……」

「……別に不思議なことじゃない。A組(ウチ)には森岸がいるからな」

「? それはどういう……」

 

 

 何故あんな真似ができるのか。そう尋ねたブラドキングに返ってきたのは『森岸がいるから』という意味不明な言葉だった。

 

 首を傾げるブラドキングを見て相澤は話を続ける。

 

 

「A組は戦闘訓練や自主練でも容赦なくお互いを攻撃し合う。森岸がいれば即死でない限り治してくれるからな」

「……まさかそれで今回も大丈夫だろうと?」

「そうじゃない。何度も繰り返した結果、シンプルに打たれ強くなってるんだ」

 

 

 森岸の【魔法】の中でも特に無法と言える回復能力。回復能力がある事によりA組の生徒達は日頃の訓練から過剰な程のトレーニングを積んでいたりする。

 

 文字通り手が砕けるまで打ち込みをしたり足が折れるまで走ったり……いっそ狂気的とも言える程過酷なトレーニングが常態化した結果がこれだ。

 

 個性もそうだが身体能力が大きく成長しており、純粋なフィジカルにおいてはA組がB組を圧倒している。

 

 

「切島も上鳴も躊躇わなかったのは『一瞬なら大丈夫だろう』と信頼していたから。実際に蛙吹の復帰は早かったしな」

「……なんというか、凄いな」

「まあな。ただ悪い癖でもあるから矯正しておきたいんだが……」

 

 

 そうではない。ブラドキングが戦慄したのは森岸の事だ。

 

 たった一人いるだけでこうも違う。たった一人の個性でクラス全体のフィジカルが底上げされ、それを前提とした信頼関係が構築されている。

 

 モニターの中ではA組の四人が再びB組の陣地を目指して進み、片やB組の残る二人はまだ動揺と困惑から抜け出せていない。

 

 

(……今回はB組にとって厳しい訓練になりそうだな)

 

 

 物間を筆頭にA組に対抗心を燃やす者は少なくない。それこそ物間が言っていたようにシロクロつけてやるつもりでいた者もいるだろう。

 

 視線だけを動かして見ればあの通り。信じられないといった様子で気圧されている者や顔をひきつらせている者が見られる。

 

 それも試練か、とブラドキングは心を鬼にして実況解説へと戻った。ブラドキングは優しくも厳しいのだ。

 

 

「さて、戦況だが……索敵ができて機動力と攻撃力に優れた宍田、一瞬で相手を拘束したり防御ができる円場が落ちたのは相当痛いな」

「アイツらからすればまだ塩崎という脅威が残っているが……B組が人数差を覆せるかどうか……」

 

 

 塩崎は【ツル】を展開しながらゆっくりと、しかし確実に進行中。鱗は二人が捕まった事に焦りを感じているのか塩崎から離れすぎないように動いている。

 

 攻めのようで消極的な動き。最悪A組は塩崎を相手せずに逃げ回るだけでも勝ててしまうのだ、そうでなくとも悠長にしていると制限時間でどの道負けてしまう。

 

 対するA組は進行していた【ツル】を発見。その先に塩崎がいる事は分かっているので先に塩崎達の場所がバレてしまった。

 

 

『これ辿った先に塩崎いるんだよな? どうする?』

『あ、いい事考えた。俺だけ捕まるってのはどうだ? 向こうが警戒してんのは俺だろ?』

 

「ほう……考えるようになったな」

「囮作戦か」

 

 

 そこで上鳴が考えたのは自身を囮とすることだった。

 

 向こうは元々上鳴を警戒しており、チームメンバー二名が捕まった焦らざるを得ない状況。そこへ一番警戒していた上鳴を引き当ててしまえばこれだけ展開している【ツル】も引っ込めるしかなくなる。

 

 【ツル】が引っ込めば他のメンバーが動きやすくなる。上鳴に【ツル】が集中しているうちに接近し撃破してもらおうという作戦だ。

 

  口田の鳥による索敵もあって塩崎と鱗の大まかな位置は把握できている。上鳴本人からの提案ということもあり切島達はその作戦を採用。上鳴が【ツル】に接触すると同時に塩崎達の方へと駆け出した。

 

 【ツル】はすぐさま上鳴へと殺到。広く長く伸ばされていた【ツル】が上鳴一人へと集中し、思い切り引っ張られていく。

 

 それを追って梅雨ちゃん達も移動。宍田が捕まった今、向こうの索敵は【ツル】にさえ触れなければ機能しない。

 

 

『ハイ残念ハズレクジー!!』

『──!磔刑(クルセフィクション)】!【信仰の盾(フェイスズシールド)】!

 

 

 案の定というか予想通りというか。上鳴を引き当ててしまった塩崎は展開していた【ツル】を防御と拘束に集中させた。

 

 そうして他への索敵や防御が薄れた瞬間、梅雨ちゃんに投げられた切島が塩崎の胴体へと直撃した。

 

 

『がはっ……!?』

『なんっ……だそりゃあ!?』

 

「投げた!?」

「……そういえば森岸が似たような事をしていたな。真似したのか?」

 

 

 仮免試験前、必殺技を開発していた時。森岸がスピードを乗せて【アストロン】を使い突進していた事を覚えていたのだろう。それを見様見真似で再現した一撃だった。

 

 梅雨ちゃんが舌で投げた事により速度が乗った切島はまさに砲弾。ラリアットのように横に伸ばした腕をぶち当てられて耐えられるはずもなく。

 

 塩崎も一撃でノックアウト。塩崎が意識を失ったことにより上鳴を捕らえていた【ツル】が解けていく。

 

 

『余所見してちゃ駄目よ』

『! しまっ───』

 

「……これで鱗もダウンか」

「クッ……! よく頑張ったぞお前達!」

 

 

 奇襲を返り討ちにあってからの流れを覆すことなく、順当にB組が押し切られての決着。第1試合から4-0とA組の完全勝利となった。

 

 

 







上鳴「本当は仲間を巻き込んだりするのはよくないと思うけど……まあ森岸が治してくれるし皆耐えられるでしょ」
蛙吹「一瞬なら上鳴ちゃんの放電を受けても問題ないわ。それより迎撃を優先よ」
切島「女子にあんまり酷いことしたかねえが……まあ森岸が治してくれるだろうし訓練だし仕方ないな」
口田「念の為大量の虫を控えさせてたけど出番なかったなあ。鳥さん達はありがとね」

物間「A組怖っ……」


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