魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.B組勝ち目無かったの?
 A.全然あった。黒色が【黒影】の妨害に徹したり小森が【キノコ】を温存して不意打ちに使ったりすれば勝てた。

 Q.A組とB組の差って何が原因?
 A.躊躇のなさと手札の切り方。森岸の回復があったことで訓練が超ハードモードになったせい。

 Q.葉隠はスタンガンどうやって隠してたの?
 A.別に隠してはない。手で持てるサイズだったから少し目を離すとすぐ分からなくなるので隠さなくても問題なかった。

 Q.どことは言わんが挟んで隠してたのでは!?
 A.(上の回答と)どちらもありうる……そんだけだ……





94.反省会 兼 休憩 兼 作戦タイム

 

 

 

 本日二度目の4-0……B組の完敗。それも裏の裏を取って結局似たような展開になっての敗北。言い訳のしようもなかった。

 

 もう誰が見てもめっちゃくちゃに落ち込んでる。吹出が個性を使ったわけでもないのに四人からドヨーン……って聞こえてくる。

 

 

 拳藤の意識が落ちた頃、常闇と青山によって小森と吹出の二人も倒されていた。

 

 A組の四人が合流したのは自陣の激カワ据置プリズンの前。四人で三人を連れてきたA組を見た黒色は愕然としたまま敗北のアナウンスを聞かされることとなった。

 

 余談だが最も負傷が酷かったのは小森。万が一ダメ元の道連れでも企まれたら面倒なことになると思った常闇が確実に意識を刈り取ろうとし、まあまあ強めに叩いたからである。

 

 

「色々言いたいことはあるが……随分と派手にやったな」

「一戦目と打って変わって被害がえげつないですね……」

「ヒーロー科の訓練はこういうものだ。しかし……流石にちょっと壊し過ぎたな」

 

 

 そうして戻ってきたならば第一試合と同様に森岸に回復してもらい、それから反省会……の前にブラドキングと相澤は顔を顰めながら同じ意見を口にした。

 

 というのもこの第二試合、あまりにもフィールドに対する被害が大きい。

 

 どうせ消えるからと小森がぶちまけた無数の【キノコ】に、分断という明確な目的の為に規模を大きくせざるを得なかった吹出の【オノマトペ】……ちょっとした災害規模の攻撃を二発も使っている。

 

 そういう状況設定といえばそれまでではあるが、これでは流石に次の試合に支障が出てしまう。それに万が一被害が連鎖した場合、事故が起きる可能性もある。

 

 

「……移動も兼ねて少し休憩にするか」

「それがいいだろうな」

 

 

 ということでステージ変更をするついでに休憩をとる事に。ブラドキングとしてもあそこまで落ち込む程反省している生徒達に無理やり改善点を言わせるのは少し気が引けたらしい。

 

 それにこの二試合を見て作戦会議や感想の話し合いもしたいだろう。二連続で完敗を喫したB組の負けず嫌いな者達は特に。

 

 何より第三試合に控えているのは轟に森岸、飯田に障子と分かりやすい戦闘強者ばかり。準備する時間はいくらあっても不安は拭いきれない。

 

 休憩を告げられた生徒達はその場に腰を下ろしたり身体を伸ばしたり、思い思いに休憩に入ることにした。

 

 

 

 

 

「……当たり前だけど皆個性だけじゃなくて、精神面での成長が更に個性を強くしてるんだ」

 

 

 緑谷は腰を下ろしてメモに記入を開始。先の試合を見て気づいたことや成長していた部分を纏めながらそれを自分にどう活かせるかを考えている。

 

 未だ自分は未熟。個性の取り扱いという点においては誰よりも遅れているのだと自分を戒めつつ、だからこそどうすべきかを同時に考えなければならない。

 

 

「デクくんも成長しとるさ」

「だといいなあ……」

「オイラにゃ及ばんけどな」

 

 

 静かに積み上げている緑谷を見ていると応援したくなるのか麗日は励ましの為に、峰田は軽い調子で声をかけた。

 

 入学当初から絡みの多い二人は何となく緑谷の焦燥感を理解していた。何せ緑谷といえば個性を使う度にどこかしらを負傷する危なっかしさの塊だったのだから。

 

 それが安定して個性を扱えるようになり、できる事が増えてきた。選択肢が増えた事でやりたいこともやらなければならないことも更に増えた。

 

 緑谷からすれば自分には大量のタスクが積み重なっているような感覚なのかもしれない。

 

 

「緑谷少年!」

「はい!」

「私が静かめに来た! ちょっと来てくれるか?」

 

 

 メモに視線を落としていた緑谷に背後から声がかかる。反射的に振り返った先にいたのはオールマイト。チョイチョイ、と手招きをしており緑谷は慌てて立ち上がりチームメンバーに一言『行ってくる』と告げてから駆け足で向かった。

 

 休憩中の生徒達から離れた待機所の隅まで来ると、オールマイトはどこか心配そうにこう尋ねた。

 

 

「引き続き何か違和感などは?」

「あ……特にはないです」

 

 

 オールマイトの不安。それは昼に緑谷から相談された【ワン・フォー・オール】……の先代の記憶を辿った夢についてのもの。

 

 あの日神野で打倒されたオール・フォー・ワンとその弟……初代【ワン・フォー・オール】の持ち主である人物の記憶。

 

 それが終わったかと思えば初代は緑谷へと語りかけてきたと言うのだ。

 

 初代と緑谷の手が触れ合った瞬間、そこで目を覚ました……否、暴発した事で飛び起きた。

 

 バチバチと迸る【ワン・フォー・オール】と一部が吹き飛ばされた毛布。嫌な汗を流しながら乱れた呼吸で自分の手を見つめていた。

 

 

「お師匠が何か仰っていなかったかグラントリノにも伺ってみるつもりだ。くれぐれも気をつけてくれ」

「……はい」

 

 

 おそらく今の緑谷……【ワン・フォー・オール】はどうしてか不安定な状態にある。おそらくは何かしらの一刺しで爆発しかねない程に。

 

 ともすれば第五試合の相手となった心操の個性がトリガーになる可能性もある、とオールマイトは語った。

 

 

 

 

 

「オイ」

「わっちゃんビックリした!」

 

 

 するとまたしても背後から声がかかる。話している内容が内容だけに素っ頓狂な悲鳴を上げたが、それが爆豪だと知ると緑谷はすぐに落ち着きを取り戻した。

 

 仮免試験後の喧嘩で【ワン・フォー・オール】の事情を知った爆豪。当然彼も無闇矢鱈に情報をひけらかしたりはしていないのだが、だからこそ許せないことがあった。

 

 

「テメェら人に守秘強要しといて分かりやすくコソコソしてんじゃねェぞ。バレるぞ」

「ムム……」

「ムムじゃねェよ!」

 

 

 それは『今から内緒話してきます』みたいな振る舞いしてんじゃねえ、というあまりにも真っ当な指摘。極秘情報だろうが。

 

 ただでさえクラスメイトから『なんかオールマイト、やけに緑谷に目をかけてるよな』と思われているというのに。これ以上怪しまれるような真似を重ねるなと爆豪は苛立ちを隠そうともせず二人に釘をさした。

 

 しかし何かあったのならそれはそれで気になる。爆豪は指摘もそこそこに緑谷達に尋ねた。

 

 

「何かあったんか?【ワン・フォー・オール】」

「……実は」

 

 

 オールマイトに相談したことを爆豪にも語る。先代【ワン・フォー・オール】の記憶を見た事、そして手が触れ合った瞬間に暴発した事を。

 

 

「暴発……ハッ、成長してんのか後退してんのかわかんねェな」

 

 

 暴発と聞いて思い出すのはやはり入学当初の頃。しかしその時の暴発とは状況が違うし負傷もしていない。

 

 だが爆豪としてはあまり面白い話ではない。今の爆豪にとっては緑谷も超えるべき壁のひとつとして見ている。それが超える前に自分から壊れられても困るのだ。

 

 そこでふと爆豪はとある疑問を思い出した。どこかで尋ねるつもりでいた事を。

 

 

「……そういや聞きてえンだが、オールマイト」

「なんだい?」

「あの魔法野郎……森岸の奴は【ワン・フォー・オール】の事知ってんのか?」

 

 

 オール・フォー・ワンに狙われた同級生、よく緑谷の訓練に付き合っている人物。何よりオールマイトとも何かしらの繋がりがあるように見える。

 

 加えて元オールマイトのサイドキックであるサー・ナイトアイとも何か話をしていたりと怪しむ要素しかない。

 

 対するオールマイトの答えはNo。首を緩く横に振って否定した。

 

 

「彼は……私の怪我を治してくれただけだ。神野で戦ったオール・フォー・ワンとの戦いで刻まれたものを」

「…………その怪我ってのはどの程度で、いつつけられたモンだ?」

「? 呼吸器官半壊、胃袋全摘。五年ほど前だ」

 

 

 爆豪は頭を抱えた。今の絶対聞いちゃいけない情報だろ、と。

 

 だってそうだろう。もしオールマイトが語ったことが真実ならば森岸は五年前の大怪我を後遺症ごと回復させてしまえる個性だということになる。

 

 何年も前に失われた身体の部位すら回復させる個性? なるほどそりゃあオール・フォー・ワンも欲しがるだろう。というかオール・フォー・ワンでなくとも欲しがる。

 

 

「ンな重要な情報サラッとぶちまけてンじゃねェよ!!」

「え……ええ……?」

「極秘情報増やすなっつってんだボケ!!」

 

 

 それでようやく爆豪も色々と合点がいった。同時にキレた。

 

 つまり森岸は【ワン・フォー・オール】とは無関係。しかし回復役としてオールマイトと緑谷の二人と関わっていたのだ、と。

 

 

「……アイツには教えねえのか?」

「教える理由がない。恩はあるが【ワン・フォー・オール】に巻き込む必要はない」

 

 

 そうなるとまた別の疑問が出てくる。オールマイトの怪我について知らされていて、オール・フォー・ワンの事もある程度教えている。

 

 ならば【ワン・フォー・オール】のことも話してしまってもいいのでは? と爆豪は考えた。協力者なんていくらいても困るものではないし、何より森岸は味方となればこれ以上なく頼もしい存在になるだろうと。

 

 しかしオールマイトはこれにも首を横に振る。そもそもオールマイトとしては爆豪に教えたことすら想定外なのだ。

 

 

「正直に言うと、森岸少年ならば自力で答えにたどり着く可能もある。彼に【ワン・フォー・オール】の事を教えるとすればそれからだ」

「……そうかよ」

 

 

 オールマイトの負傷、そして因縁があったオール・フォー・ワン。この二つを知った上で近くにオールマイトのような超パワーを持つ緑谷がいればほんの少しでも考えてしまうだろう。

 

 もし森岸が自力で答えにたどり着いた時……それをオールマイト達に確認しに来た時には全てを話そうと、そう答えた。

 

 

「……そろそろ休憩も終わるはずだ。行きなさい」

「あ、はい!」

「……おう」

 

 

 今はこれ以上話すことはない。手遅れだとは思うが怪しまれる前に二人を戻らせることにした。

 

 かつての歪な関係から変化し始めた二人の少年のやり取りを見送りながらオールマイトは笑う。きっと爆豪なりに気を遣っていたのだろうと、森岸の事も考えてくれたのだろうと。

 

 不器用で分かりにくい気遣いだが、それをするようになっただけでも成長だろう。後は言動さえなんとかなれば……と思わずにはいられない。

 

 

「頑張れよ……少年」

 

 

 次代を担うヒーローとなるその日が待ち遠しくて堪らない。オールマイトは頬を緩めながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? どうしたの耳郎? 何か顔色悪いよ?」

「いや……うん、ナンデモナイ……」

 

 

 

(何かとんでもない話聞いちゃった……)

 

 

 

 はーい犠牲者一名追加でーす。

 

 

 

 






緑谷「──(絶対聞いちゃいけないような話)」
オールマイト「──(絶対広めちゃいけないような話)」
爆豪「──(絶対信じて貰えなさそうな話)」

耳郎「」
葉隠「それでさー……聞いてる耳郎?」
森岸「大丈夫か?顔色悪いぞ」
耳郎「イイヤナンデモナイ……」



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