チェンソー・ボム   作:一般通過炎竜

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思い出せない火薬の匂い

 

「だからァ!そんときにオレがバッと救ってやったの!あれ完璧オレに惚れてんぜ」

「おぉ、ヨシヨシ。デンジはかっこいいのぉ。そんなこと億が一でも有り得んから大人しくワシに撫でられとけ」

「からあげの油まみれン手で触んな!!」

 

「お前ら、メシくらい大人しく食え」

「静かにしないとお兄さんに怒られちゃうよ〜?」

 

とある大衆食堂の昼下がり。四人の男女が騒がしくも和やかな食事を楽しんでいた。

 

一人は油が付いてしまった金髪に眼帯の少年、デンジ。その隣で素手でからあげを貪っている二本角が特徴的で薄めの金髪の見た目は美少女、パワー。

 

「ったくよぉ……でも、あの心臓がドクンってなったのは何だったんだろなぁ」

「だからアレは心臓ドクン病と言っておろうが」

 

「なぁ、アキ(・・)パイセン。そんな病気マジであんの?」

「不整脈か?」

 

デンジの正面で食事を行儀良く食べているちょんまげみたいに括った髪が特徴的な青年、アキ。

 

「いや!!私には分かる、デンジくん。それはね……」

 

そんなアキの隣で煙草を吸っていた黒髪眼帯の女性、姫野は立ち上がりデンジに顔を近付ける。大人の色香にクラっとキたデンジは一瞬目眩を起こすも、姫野の言葉に正気を取り戻す。

 

……だよ」

 

「コイ…!?」

 

デンジの頭に浮かんだのは、川に住むあんまり美味しくなかった記憶がある淡水魚。

 

「アレあんまし美味しくないぜ」

「そのコイじゃなーい!!」

「姫野先輩、あまり大声出さないでください」

「アキくんには分かんないの!?あの晩あんなに私を求めたく・せ・に♡」

「エロい話しじゃ」

 

真顔でメシを食い漁り終わったパワーは、デンジを見る。少し緩んだ表情、ちょっと赤い頬。何故だかモヤモヤしたパッド入りの胸をドンドン叩いてみせる。そんなパワーを不審がったデンジが引いた表情で話しかける。

 

「なにしてんだお前」

「知らん、ウヌのせいか?」

「なにがだよ」

 

腕を組んで考え事を始めたパワーを見て、デンジは興味を無くしたのかラーメンを啜る。

 

「大将、お勘定」

「ありがとさん!」

「なぁ、コンビニ寄るぞ」

「またかよ……」

 

隣の席で食事をしていたモミアゲが特徴的な男性と、パーカーに短パンの少し黒髪に戻っている金髪の女性が店を出ていく。デンジはそれを見て、何故だか心が少し晴れた様な気分になった。理由は不明だ。

 

アキが、腕に付けている時計をチラリと見てからデンジとパワーに話しかける。

 

「お前ら、そろそろ昼休憩が終わるぞ。午後の巡回の場所覚えてるか?」

「おん?あー……超バッチリ」

「ワシに聞くとか愚かじゃのうちょんまげ!ワシのIQ53万の頭脳をナメておるな!」

「じゃあ言ってみろ、この場で」

 

デンジとパワーは二人揃ってボケーッと虚空を見つめると、勢い良く立ち上がり食堂を出ていく。

 

「「ごちそーさまでしたぁ」」

 

「おい!本当に大丈夫なんだろうな!!」

「アハハハ!大丈夫だよアキくん。なんだかんだ仕事はするもんあの二人」

 

なお、姫野の発言はこの後覆ることとなるのは今の二人には知る由もない。

 

 

デンジとパワーはうすらぼんやり覚えていた巡回ルートをパトロールする。特に悪魔が出現することも無く、至って平和な時間だった。

 

彼女が、現れるまでは。

 

「あの!」

「あ?」

「む?」

 

二人は後ろから声をかけられ、振り向く。パワーは平常運転だが、デンジはその女の子の顔を見て心臓が跳ね上がり、何故か舌がピリリと痛くなった。

 

「私、日本初めてで…連れの人とはぐれて道に迷っちゃって」

 

少し放心していたデンジが、女の子に声をかける。

 

「……な、なぁ」

「?」

 

「オレたち……どっかで会ったことない?」

 

デンジの言葉に、頬を赤らめた女の子は両手でその頬を覆う。

 

「え〜?ナンパですかぁ?」

「えっ!?あっ、ち、違う!!」

 

小悪魔の様な笑みを浮かべた女の子は、あまりにも慌てるデンジを見て吹き出してしまう。

 

「アハハッ!お兄さん慌てすぎ!」

「お、おう……そうかぁ?」

「フー…おもしろ。残念だけど、さっき言った通り私は日本に来たの初めてなの。会ったことないと思うよ」

「そ、そっか……」

 

デンジはそれでも、心の中のモヤモヤが晴れなかった。何故か、どうしてなのか分からないが、彼女から目を離せなかった。

 

「ところでウヌ、道に迷っておったのじゃないのか?」

「あ、そうだった!」

 

パワーがマトモな事を言ったのに驚いたデンジ。女の子はそんなデンジににんまりと笑いながら声をかける。

 

「私、公安調査庁ってところに行かなきゃいけないんだけど、場所分かったりする?」

「それワシらが働いてる場所じゃぞ」

「ほんと!?お願い、連れてって!早く行かないと私あの人に半殺しにされちゃう!」

 

先程までの小悪魔の様な笑みが吹き飛び、なにか特定個人に怯え始めた女の子を見てデンジは歩き出す。

 

「こっちだぜ!」

「ワシに着いてこい!」

「やったー!」

 

この時点で自分達がパトロール中であることなぞどこかへ飛んで行った二人は、足早に公安調査庁に戻る。

 

「お〜!ここが公安!話しに聞いてた通りなんか厳しそう!」

「厳しいぜ、何故かって一日のオヤツは300円までだからな!」

「今どき300円じゃ大したもの買えんのじゃ!」

「超厳しいじゃん!」

 

IQが低すぎる会話をしている三人に、一人の男性が近付いてくる。

 

「おい、どこ行ってた」

「あ、岸辺(・・)さん!」

 

岸辺、そう呼ばれた金髪のツーブロックと頬の縫い目が特徴的なダンディーな男性は女の子の頭を掴む。

 

「あまりウロウロするなと言ったハズだが」

「いだだだだだ頭割れる割れちゃう!」

「おいオッサン!急になにしやがんだ!」

「変態野郎じゃ!」

 

デンジは岸辺に殴りかかり、パワーは脛目掛けて蹴りを仕掛ける。しかしデンジの拳は軽々と受け止められ握り潰される。パワーは蹴ろうとした足を岸辺に脛を蹴り砕かれた。

 

「「うぎゃ〜〜!?」」

「岸辺さん!?やりすぎでしょ!」

「コイツらは血の魔人とその飼い人間だ、資料で見た。この程度は血を飲めば回復する」

 

岸辺の言う通り、デンジとパワーはポケットに仕舞っていた輸血パックをジュースみたいに吸う。砕かれた拳は傷一つ無くなり、砕かれた脛は元通りになる。

 

「魔人……私と同じ」

「丁度いい、お前らも来い。ナユタに用事がある」

「「ナユタに〜?」」

 

デンジとパワーは岸辺に首根っこ掴まれて引きずられながら公安に入っていく。女の子はそれをケラケラ笑いながら追いかけた。

 

公安退魔特異4科。その室長室に岸辺達は入る。そこには、黒髪三つ編みの小さな女の子が犬と猫に囲まれながらゲームをしていた。

 

「あ、岸辺じゃんおひさ〜」

「ナユタ、仕事中にゲームはするなと言ったろ」

「……はぁーい」

 

ナユタ。そう呼ばれた女の子はゲームを机の引き出しに仕舞う。彼女は身なりこそ小さい女の子だが、れっきとしたデンジ達の上司である。ワガママで、横暴。パワー程ではないが。

 

そんなイメージだったナユタが大人しく命令を聞いているのに驚愕しているデンジとパワーを無視し、ナユタは話を進める。

 

「お疲れ岸辺、どうだった?半年程の出張は」

「あっちは酒が多くて良かった。土産もある」

 

岸辺はナユタに紙袋を手渡す。中に入っていたのはクッキーの缶やチョコレートだった。ナユタは早速クッキーを食べ始める。

 

「おいひぃ!やっぱり岸辺はお土産センスがいいねぇ〜、なんでクァンシに振られたんだろうね」

「ほっとけ。あと、コイツが例の奴だ」

 

岸辺は女の子をナユタの前に首根っこ掴んで持っていく。首の後ろを掴まれた猫みたいになった女の子は、ニャアとないてみせる。

 

「貴女が、レゼ?」

 

ナユタが言った、レゼという名前。それを聞いたデンジは頭が痛くなる。

 

「はい」

「ふぅん、まぁ大体岸辺から聞いてるけど、ここで働くってことでいいんだよね?」

「よろしくお願いします」

 

レゼはナユタに頭を下げる。それを見たナユタは満足そうにふんぞり返った。

 

「その意気やヨシ!それじゃあ貴女は今日から退魔4科新メンバーということで、そうだなぁ……デンジ!」

「あ?」

 

「アキに伝えといて、今日からアンタの部屋に一人住人が増えるって」

「は?そ、それって……」

 

「オレと住むってことじゃん……」

「ワシもおるぞ!」

「え〜!?なにそれ楽しそう!」

 

どこかで、アキのくしゃみがしたのが聞こえた気がしたデンジだったが、目の前の現実に大口を開けているしか無かったのであった。

 

「よっしゃー!今日は新人歓迎会ということで、飲むぞー!」

「ナユタはオレンジジュースだぞ」

「え〜〜!?なんでよビール呑みたい呑みたい!なんか強い気がするし!」

「酒臭いと動物に嫌われるぞ」

「オレンジジュース最強!」

 

「これからよろしくね、パワーちゃん、デンジくん(・・・・・)

「おう!まずはひれ伏せ後輩!」

「…………よろしく」

 





続くといいね
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