異世界帰還もの   作:Wakuto

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2話 孤独

ギィは親切だ。

強面で筋肉質、言うべきことのみを喋るせいで誤解はされやすいが……

 

特に教育面は頭が上がらない。

オレのために毎日のように童話や民謡を聞かせてくれる。

童話や民謡は数少ないこの世界の娯楽だ、気づけば好きになっていて、ギィよりオレの方が覚えているだろう。

そういえば母さんもよく絵本や小説を読み聞かせてくれたっけ。

 

あれがなければオレはずっと喋れないままだっただろうし、ギィへの苦手意識をずっと抱えていただろう。

……まぁ今も仲がいいとは言えないかもしれないが……

 

「コウ、これをやる。」

「なにこれ……牙?」

「お前が初めて狩ったジャイアント・ブルの牙だ。弟子が初めて狩りを成功させれば、その獲物の牙に蕾模様を彫り、与える。」

「お守りみたいなもの?」

「魔法を使えないノストでは魔物との遭遇は死闘だ。故に男は全員狩人であり戦士だ。これはその証だ。」

 

認めてはくれている……のだろうか?

 

 

 

***

 

 

 

何度帰る日を夢見ただろう。

あの日転移した森も、今は庭のように歩けるようになった。

だからたまにこうして来てしまう。

ここはオレが転移した場所だから。

 

あの日の謎の光線。

あれはなんだったのだろう……?

四つ目の狼、魔物の首を落としたあの光は……

正直、わからない。

危険なものの可能性もあるし、人に見られればどうなることか……

唯一あの光線を見たギィは、危険だから使うなといっていた。

オレも、そうすべきだと思う。

 

――あぁ、そうだあの日だ。

思い出すたびに胸が締め付けられ、吐き気がする。

特に……転移する前のことだ。

 

「光、次の祝日キャッチボールしないか?」

「えー、オレサッカーしたい。」

「そういうな、車で運動公園まで行こう。おやつも買ってやるぞ?」

「ほんと!?なら行く!」

 

もう約束は明日だったのに……

なんで、そんなに楽しみでもなかった約束を思い出すのだろう……?

 

いつの間にかオレの帰る理由に……支えになっている気がする。

この世界に野球用のボールなんてない。

オレは足元の石を遠くへ強く投げた。

 

「父さん、オレこんなに大きくなっちゃったよ……」

 

今何センチか、測りたいな。

森の奥からパキッと音が響いた。

 

 

 

***

 

 

 

「コウくん、またあの話してよ。シンデレラ!」

「もう2回はしただろ?」

「いいじゃん。憧れるなー、舞踏会とか!」

 

ギィは街での用事があると俺を連れ出し、孤児院に置いていく。

子供ながらに察せたのは、オレに友人を作らせたいらしかった。

ここには孤児となってしまった成人前(15歳未満)の子供が多くいた。

今話しているのは14歳とオレより1つ上のフォルトナという少女だ。

この教会で子どもたちのまとめ役のようなものをしているしっかり者だ。

 

「コウくんはどうする?」

「オレは……分からない。ギィみたいな生活、かな?」

「えー、もったいないよ。王都は賑やかで何でもあるらしいよ?王都の商人とかどう?」

「えーっと難しいんじゃない?お金とか?」

「夢がない!」

「そーかな……」

 

この教会はこの小さな村にしては綺麗な場所で、神父のツテで譲り受けた貴族の別荘を改築したらしい。

そこの神父とシスターはこの街では珍しいギィの友人らしかった。

ギィがこの街で、いやこの国では差別されていることは雰囲気だけで十分に分かった。

目が違うのだ。

それは隣のオレにも刺さるようだった。

 

「だからさ、一緒に来ない?」

「オレ来年成人してないし……」

「すぐじゃなくてもいいよ、再来年!」

「……なんで?」

「ん?」

 

オレはここにたまにしか来ない。

そしてフォルトナはしっかり者で、明るくて、どこまでも自分で走って行けそうだった。

 

「なんでオレなの?」

「君だからだよ。」

 

それは……無責任なほどの肯定の言葉だ。

縋りたくなるほどに。

 

 

 

***

 

 

 

ギィが死んだ。

年は聞いたことがなかったが、50代ぐらいに見えた。

突然倒れ、血を吐いた。

オレはギィの巨体を運べず、街まで何も持たず駆けた。

 

この街に医者は2人しかおらず、1人には出張はできないと言われた。

もう1人には住む場所を伝えるとあからさまに嫌な顔をされ、無理な金額を言われた。

 

ギィが病に効くと言った薬草をオレが買い、戻る頃には手遅れで。

ギィの体温も残っていないように思えた。

 

それ以来、オレはこの森を出なくなった。

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